往来の足を止めるモノ

マスター:村井朋靖

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/16 15:00
完成日
2014/06/23 16:57

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●突然の来訪者

 蒸気工場都市フマーレ。

 ここで作られる製品は同盟内のみならず、他国へも輸出される。食器や農具など、フマーレで作られる商品は数知れず。大きな工場でいろんなものを作るところもあれば、気難しい職人が何十年も包丁だけ作り続けているという小さな工房もあるのだ。
 一日中ずっと稼動する工場もあるので、ある意味で「眠らない都市」とも言えるが、基本的に朝と夕方は人通りが多くなる傾向にある。この都市を支える労働者は、海沿いに建つ工場区域と家が立ち並ぶ住宅区域を行き来する。その間に広がるのが商業地域で、商人たちはこの時間を狙って商売をしている。
 この都市の日常は、ごく当たり前のように過ぎていく。人の往来は北から南へ、そして南から北へ。日は東から西へ、月も東から西へ。

 そんなある日の早朝のこと。
 商業区域の川に架かる1本の橋に、珍客が我が物顔で寝そべっていた。
 体長は1メートル半、体重は不明。ゴツゴツした肌は岩のようだが、開いた口はとても大きく、非常に獰猛な印象を受ける。ただ目はつぶらで小さく、短い手足を使って橋を歩くが、基本的には動かない。
「なんだ、アイツ? 幻獣か?」
 この橋の横幅は7メートルほどあるので、端を歩けばスルーできそうだ。作業着姿の男は音を殺して歩き出す。
 しかし次の瞬間、謎の幻獣は大きな口を開いて威嚇した!
「ガアァァーーー!」
 朝日とよだれで輝く無数の牙は、相手を威圧するには十分すぎた。
「ひ、ひぃぃーーーっ!」
 これを見た男は腰を抜かし、慌てて来た道を戻る。その悲鳴で、周囲の目も覚めた。
「なんだ、あの幻獣は……」
 誰が何と言おうと、幻獣はどこ吹く風。またお決まりのポジションに戻り、何事もなかったかのようにくつろぎ始める。
 こうも堂々と居着かれると困ったもので、人々は「仕方ねぇや」と諦め、この日ばかりは道を迂回して工場や家へと向かった。

●噂話が集まるティーパーティー
 この奇妙な出来事は、瞬く間に都市を駆け巡る。
 工場で顔を合わせる上司や同僚、家族や恋人との話のネタとなり、ついには優雅なティーパーティーでも紹介された。
 このお茶会を主催するのは、フマーレの雇用者側を代表する貴婦人のサンドラ・ボナッタ。蒸気工場都市フマーレを代表する立場であり、自由都市評議会の評議会員のひとりでもある。
「まぁ、白い幻獣ですって?」
 サンドラは奥様方にお茶とお菓子を振る舞いながら、その噂話に耳を傾ける。
「それは、とても危険な存在ではありませんの?」
 彼女の心配は、都市の誰かが怪我をしていないかに及ぶが、そういった噂は今のところ出ていない。
「今は橋の両側を同盟陸軍が封鎖して、幻獣の様子を伺ってますのよ」
 お喋り好きな奥様はそう言うと、どこで情報を仕入れたのか、噂の幻獣について細かく話し始めた。

 幻獣はこちらから近づかない限り、誰も襲おうとはしないが、そこから動く気もないようだ。日が昇れば橋の中腹に寝そべり、日が沈むと橋から下りて水の中へ。これを毎日繰り返す。
 気になるお食事は、夜に川魚を食べているようだが、急に空腹でイライラして暴れられても困るので、日中は陸軍が定期的に果物や肉を橋に投げ入れている。この時ばかりは幻獣も動き、ご丁寧に残さず餌を平らげるそうだ。
 陸軍も処理はしたいが、ここの川べりは急な角度になっているので危険。しかも川に入ろうにも水位が高く、そこそこの川幅もある。じゃあ小船を出せばいいと思うかもしれないが、相手は水陸両用で大きな口を持つ幻獣。船底でも喰われたらおしまいだ。
「陸軍もただ眺めてるだけじゃなくて、さっさと追い返してくれればいいのに……」
 奥様は最後に陸軍へのイヤミを言いつつ、その話をまとめた。
 すると、別の奥様が「幻獣をフマーレ名物にするつもりかしら」と率直な感想を述べると、先ほどの奥様が「そう簡単な問題でもないのよ」と答える。
「皆があそこ通れないのわかってるから、あの辺の商店に人が寄り付かなくなってるらしいわ」
 これにはサンドラも「なるほど」と納得したが、同時に「これは捨て置けない」とも思った。
「それはいけませんわね。早急に何とかいたしませんと……」
 この会合が終わってすぐ、貴婦人はハンターズソサエティに連絡を入れ、謎の幻獣を排除するように願い出た。

●奇妙な注文
 後日、サンドラはお茶会を催す広間にハンターを迎え、「今回はよろしくお願いします」と挨拶する。
 ここで彼女は、ある注文をつけた。それは「幻獣の正体がわからないのは危険なので、武力行使は最終手段。できるだけ穏便に済ませてほしい」という内容である。
「皆様にお怪我があるといけませんので。なお、陸軍の方に大きな檻を用意していただきました」
 幻獣を捕える檻は、陸軍がハンターの指示する場所に設置する手はずとなっている。ここに閉じ込めさえすれば、今回は任務完了だ。また餌や道具などは、周辺の商店が提供してくれることになっている。
「作戦の決行は、昼にお願いしますわ。川に戻る夕方までになんとかしてくださいね」
 サンドラは明るい笑顔を皆に振り撒き、心の中で作戦の成功を祈った。

リプレイ本文

●謎の幻獣?
 ハンターが現地に到着すると、まずは同盟陸軍が張った警戒線を越え、白い幻獣の姿を確認する。
「わぁっ! 本当に真っ白なんよ!」
 率直な感想を述べるのは、ミィナ・アレグトーリア(ka0317)。その声に応じるように、幻獣が大きな口をグワッと開く。その仕草を隣で見ていたコーネリア・デュラン(ka0504)は「もしかして、ご挨拶でしょうか」と小首を傾げた。
「見慣れないのが来たから、威嚇してるのかな。それとも、餌のおねだりか?」
 生まれはエルフ、育ちはドワーフ。豪快な性格を持つヴィルナ・モンロー(ka1955)は、遠目ながらもまじまじと相手を見つめる。「餌」という言葉を聞き、コリーヌ・エヴァンズ(ka0828)は陸軍が用意した各種お食事を見つめながら呟く。
「白い幻獣っていうか、おっきなトカゲ? こんなに美味しそうなもの、たくさん食べてるんだー」
 幻獣には随分なご馳走だ。しかも量が多い。ミィナは「羨ましいのん」と言いつつ、トカゲ似の風貌に同意する。
「お顔も気配も怖いけど……なんやろー? それほど違和感はないんよ」
 それを聞いたウルヴァン・ダイーヴァ(ka0992)が、淡々と説明する。実は参加者の中で、彼だけがリアルブルー出身なのだ。
「あれはワニという動物だ。俺のいた世界にはいくらもいたが、白いのは珍しい」
 ウルヴァンはそういうと、さっさと捕獲に必要なものを軍人に依頼し始めた。
「……ふえっ!? 幻獣さん、幻獣さんじゃなくて動物さんなん?!」
 しかし、ミィナは大いに驚き、ヴィルナも「ほー」と言いながら腕組みをする。
「こいつも転移してきたってことか? それとも、世紀の大発見か?」
「リアルブルーでも珍しいんやし、大発見……なん? ほぇー、不思議なのん」
 正体がわかっても、依然として謎の多いワニなる生物。コリーヌは「そこで大人しく待ってるんだよー」と言い、捕獲の準備を急いだ。

●準備はしっかりと
 陸軍の面々は、ハンターに指定された道具を次々と持ち込む。それを、軍人系ドワーフのミグ・ロマイヤー(ka0665)が、ひとつずつ丁寧に確認した。
「ロープに大きめの板、サスマタ状の長い棒に大きめのタライ……うむ、どれも揃っているのである。餌はどうであるかー?」
 ミグが聞くと、遠くからミィナの元気な声が響いた。
「大丈夫ー。ちゃんともらえるのん!」
 彼女は近くの商店に鳥を提供してもらい、袖をまくってから手際よく捌く。それを肉と血に分けた。
「新鮮なお肉なんよー。きっと幻獣さんもまっしぐらなのん」
 肉は切り分け、大きなタライの中に入れる。血の方はそれとは別に保管し、これは奥の手として使う手はずだ。
 一方、コーネリアは魚屋さんに向かい、新鮮で大きな川魚を2匹いただいた。この胴体にロープを巻きつけ、少し引っ張り、すぐに解けないかを確認する。
「んしょ、んしょ。これで大丈夫かな。これくらい大きければ、きっと目立つのです」
 コーネリアは微笑みながら、「うん」とひとつ頷いた。

 同じ頃、コリーヌはもはや餌係と化した軍人に、ワニの食事量を尋ねていた。
「あ、軍人さん。あの幻獣、どのくらいで満腹になるのー?」
 少女は檻への誘導を行うにあたり、相手を空腹にさせておくのが得策と考え、餌を投げ入れる量を少なめに調整してもらった。
 ウルヴァンは手の空いた軍人に協力を求め、檻を橋のたもとまで移動させる。
「こんだけ近づけるなら、橋の上に半分乗っかる形でもいいんじゃないか?」
 ある軍人からの提案に対し、ウルヴァンは静かに首を振った。
「そこだと近すぎて危険だ。ワニを刺激するかもしれない」
 設置してる最中にお尻をかじられたのでは、それこそ格好がつかない。そんな痛々しい想像をしたからか、軍人たちは慎重に動き出す。
 あの口で、あの牙で噛まれたら、長い間みっともない姿でベッドに寝転ぶことになる。もともと陸軍の評判はよくないが、これ以上地に落とす必要もないし、自分が痛い目に遭うのは嫌だ。
「ど、どのくらいの場所に置くのがいいんですかね……」
 隣の軍人が急に怯えた声になったので、ヴィルナが「しっかりしろよ!」と笑い飛ばす。
「大丈夫、私らがいるんだ。これを降ろしたら、後は任せろ」
 すると、ウルヴァンが「ここでいい」と言い、ヴィルナの合図でそーっと設置する。そして檻も負けじと、大きな口を開けた。
 この中に、タライと桶が設置される。鶏肉入りの豪勢な餌に、たっぷりの飲み水……檻の中でもストレスを感じない快適空間になっており、捕獲後の安全を確保している。
「さてと。後は誘導用の餌をロープで括りつけるのである」
 ミグはロープを幻獣に食いちぎられることを想定し、いくらか余分に用意。また、想定外の動きをした場合に備え、先端が輪になったロープも準備する。こちらは女性陣が総出で作った。

 ウルヴァンは集められた板をひとつずつ確認し、使えそうなものに石や棒の土台として括りつけ、ワニの行く手を阻む壁を作った。
「よし、ひとまずはこれでいい」
 これらは、ワニの進行方向を固定するために使うが、あまり近くにまで設置できないので、基本的にハンターが対応する。
 また、橋のたもとに檻を設置したとはいえ、両側にはワニが逃げられるスペースが存在する。これを塞ぐため、ウルヴァンは陸軍に「所定の場所で壁を作ってもらえないか」と依頼した。
「体を板にあてて、後ろから押しているだけでいい」
 さすがに危険は及ばないとは言えなかったが、陸軍の面々は「活躍の場を与えられた」と喜び、この役目を果たすことを約束した。
「お、さっきより元気になったじゃないか。いいことだ!」
 ヴィルナがそう言えば、自然と皆の気持ちも高揚してくる。いよいよ幻獣捕獲作戦の開始だ。
「それでは、張り切っていってみるのだ!」
 ミグはロープを回しながら、白き幻獣を見やる。その時、相手はただただボーっとあくびしていた。

●ストップ・アンド・ゴー
 いざ作戦が始まるとなると、周囲に緊張感が走る。
 橋の近くにあるすべての商店は、陸軍の要請で一時休業となった。昼間だというのに静寂に包まれ、ハンターや軍人の息を飲む音さえ聞こえそうだ。

 そんな真昼の決闘は、大きな輪になったロープの投げ込まれる音で始まる。その円の中央めがけて、ヴィルナがブドウを投げ込む。
「よーし、ちゃんと嗅ぎつけてくれよ」
 幻獣の空腹加減は、コリーヌがうまく調整してある。相手は餌が飛んでくるのを片目で確認し、のそのそと歩いて投げ込まれた餌を食い始めた。
 しかし、ここではまだ捕えない。ウルヴァンは別の餌を投げ込むよう、ヴィルナに合図した。今度はロープ付の鶏肉に、少し血をまぶしてもの。視覚だけでなく、嗅覚で操ろうという魂胆だった。
 これが不幸なことに、幻獣の頭に当たって落ちる。
「うー! 当たったんよ!」
 ミィナは小声で驚く。彼女は壁で進路を狭める役として檻のある側で待機しており、同じ役を担うコリーヌに向けて心配そうな表情を向けたが、相手は「大丈夫だぬ」と返した。
「心配するほどじゃないだよー。そのくらい、トカゲのお腹はペコペコなんだよ!」
 コリーヌの言うとおり、幻獣はまったく動じない。それどころか「餌が飛ばしたのを知らせてくれてありがとう」と言わんばかりの態度を取り、鶏肉を頬張ろうとした。
 ところが、鶏肉は意思を持つかのようにスルッと逃げる。相手は完全に気を取られた。
「今だ……」
 ウルヴァンはロープを巧みに操り、ゆっくりと輪を縮めていく。
 餌を追うことに必死なワニは、自分の腹にロープが回っていることにまったく気づかない。そーっと空間を狭めていき、最後は力を込めてギュッと絞ると、ターゲットはようやく不思議そうな表情を浮かべた。とはいえ、まだ頭の上に「?」が出た程度。事の重大さには気づいていない。
「えいっ! 新鮮な川魚ですよ~」
「ああ、これがメインディッシュだ!」
 ここでコーネリアとヴィルナが、ロープでつないだ大きな川魚を目の前に投げ込む。幻獣はさっきの鶏肉を食べた後にこれを見た。この大きさの魚は、彼にとっては堪らない一品である。
 これを得ようと、すぐさま動き出す……が、ようやくここで、自分の体に余計なものが巻きついていることを知る。
「ンガ?」
「ミィナ、行くよー!」
「了解なのん、コリーヌさんも気をつけるんよー!」
 幻獣が罠に気づいたとなれば、もう彼のテリトリーを気にする必要はない。壁役のふたりが板を持って前進を開始すると、ミグも橋の反対側からサスマタ状の長い棒で尻尾のあたりを突っつく。
「えいっ、えいっ! おー、意外と皮膚は硬いであるなー」
 意外な手応えを得たので、壁役のふたりに警戒を呼びかけようとしたが、相手はすでにコリーヌの板めがけて突進を繰り出した!
「ンゴアッ!」
「くっ、本格的に動き出したか」
 ウルヴァンがとっさにロープを手繰るも、勢いをわずかに殺したのみ。コリーヌは地を駆けるものを発動し、幻獣に壁を向けたままジグザグに走り、なんとか回避した。
「左右の動きには弱そうに見えるんだけど、どうかな?」
 生魚が見える範囲でジグザグに逃げるというのは、なかなか難しいものだ。その辺はコーネリアとヴィルナがうまくロープを手繰る。どちらかの魚で気を引ければいいので、状況的にはかなり楽だ。
「コリーヌ、そこでストップ!」
 ヴィルナが指示を出すと、ひょいと板の裏に身を隠す。それと同時に、ウルヴァンの手綱取りとミグの突っつきもストップ。相手がポカンとする状況を作り出した。
 その隙を突いて、ミィナは低い姿勢を保ちつつ、ゆーっくりと幻獣の横を通り過ぎ、設置した壁まで移動。コリーヌも同様に動く。川魚を操るふたりはロープを小まめに動かすことで、彼女らのフォローと幻獣の気を引く役目を担った。
「おいしそうでしょう、このお魚さん。お店の方が新鮮なものをご用意してくださったんですよ」
 コーネリアの呟きが最高の調味料になったのか、幻獣がまた大物に向かって動き出す。これを見て、また皆が行動を開始。着実に檻の入口と誘導していく。

 だが、相手の歩幅が小さいこともあり、状況がなかなか進まない。この辺は唯一の傍観者である陸軍の気持ちを大いに焦らせた。はたして、夕方までに決着がつくのだろうか……

●捕獲決行!
 これを繰り返しているうちに、檻まであとわずかの距離にまで近づいた。
 ウルヴァンの手綱捌きも慣れてきて、多少の暴れっぷりなら制御できる。側面の視界を塞ぐ壁役のふたりの移動も安全に行えるようになり、状況的にかなり安定していた。
 しかし、万全とはいえない。後ろから追い立てる役のミグが、逃げ場のない橋の中央にまで出ているのだ。もしここで後ろでも振り向こうものなら、状況が一変してしまう危険がある。

 ウルヴァンは、サッと手をまっすぐに上げた。捕獲の合図である。
「了解である! 幻獣、痛いのは我慢するのである!」
 ミグはサスマタを片手で持ち、大きく身を捻って前へ突き出す。ここでかなりの鈍痛を与えなければ、必死に前へ進んでくれないと判断しての行動だ。
「ンガゴォッ!」
 痛みで目が覚めたかのように、幻獣は暴れ出す。今までにない激しい動きに、ウルヴァンは苦戦を強いられる。その分は壁役のふたりがカバーする形となった。
「ここまで来たら、お互いにもう引き返せないんよ! 幻獣さんのアタックはばいーんって跳ね返すのん!」
 ミィナは気合一発、板を体で支え続ける。さっき食べたご飯の匂いは、きっともう消えてるはず。だからこっちばっかり来ないはず……少女は祈る気持ちで板を押さえつけた。
 ここでコリーヌはわざと壁を叩くことで、相手の気を引く。多少の危険は、承知の上だ。
「大人しく檻に入らないと、から揚げにしちゃうんだよー!」
 両側の壁に激しく抵抗しつつも、幻獣の歩みは前を向いている。橋の隙間を埋める軍人たちも身を屈め、全身に力を込めた。

 そして、その時がやってきた。
 コーネリアとヴィルナの操る川魚が勢いよく檻の中に入り、幻獣も暴れながら前進を続け、ついに檻の入口から中へと入る。ちゃんと尻尾まで入ったのを確認し、軍人によって一気に扉が閉じられた!

 ガシャーン!

「ンガ?」
 ワニは一瞬だけ動きを止めるも、すぐに川魚のことを思い出し、これをむしゃむしゃと食べ始めた。よくよく檻の中を見てみれば、たっぷりの餌と水があるではないか。これは住みよい場所だ、いいとこだとばかりに、高い声で「ガーッ」と鳴いた。
 彼の満足そうな様子を見届けたウルヴァンは額の汗を拭いながら、全員に向けて「お疲れ様」と声をかける。
「任務完了だ」
 この声を聞き、ミィナは「つ、疲れたのん……」と呟いた。一方のミグは元気で、勇壮にサスマタを掲げ「当然の結果である!」と大いに喜ぶ。コーネリアはヴィルナの方を向き、「お疲れ様でした」と声をかけた。
「ま、ざっとこんなもんだ! ははは!」
 彼女が豪快に笑うと、軍人たちも明るく笑う。
 この声に導かれるように、硬く閉じられた各商店の扉から人が出てくると、あっという間にいつもの賑わいを取り戻したのだった。

●無事に終わって
 この日の夕方。
 さっきまで橋に居座っていた幻獣を一目見ようと、たくさんの人が集まってきた。彼の身柄は一時的に陸軍が預かる形となり、檻を台車に載せて移動させるという。
 これを聞いたコリーヌは、興味本位で軍人に聞いた。
「捕まえたこの子は、飼うの?」
 まざまざとワニを観察していたヴィルナは「動物だけど、謎は多いよな」と言いながら、事情に詳しいウルヴァンを探したが、すでにこの場を離れていた。どうやら依頼主であるサンドラの元へ、事件解決の報告に行ったらしい。
「大きい囲いとかどこかに作って、街のシンボルに! ……とかは、無理かしら」
 コーネリアがそういうと、軍人たちも「よく見りゃ愛嬌もあるし、それがいいかもなぁ」と同意した。
「うむ、それがいいのである。ミグたちが捕えたのだから、たまに様子を見に行ってやるのだ」
 ミィナも「そうなるといいのん!」と同意。そして皆で、今回お世話になった人たちにお礼を言いに行くことを提案した。
「みんなのおかげで解決できたんよ! お手伝いありがとうを伝えに行くのん!」
「大丈夫です。提供してくれた餌は、全部ワニがキレイに食べますってか?」
 ヴィルナがジョークを飛ばすと、思わずコーネリアが「そうですね」と笑った。そして一同は橋を渡り、向こう側にある商店へと向かう。

 そう、この橋はもう渡れるようになったのだ。
 皆はきっと、礼を述べるハンターたちに感謝するだろう。平穏を取り戻してくれた者たちに。

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重体一覧

参加者一覧

  • 幸せの魔法
    ミィナ・アレグトーリア(ka0317
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • 戦場に咲く白い花
    コーネリア・デュラン(ka0504
    エルフ|16才|女性|疾影士
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 蝶のように舞う
    コリーヌ・エヴァンズ(ka0828
    エルフ|17才|女性|霊闘士
  • 戦場の美学
    ウルヴァン・ダイーヴァ(ka0992
    人間(蒼)|28才|男性|機導師
  • 紫暗の刃
    ヴィルナ・モンロー(ka1955
    エルフ|23才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 幻獣さん捕獲作戦っ
ミィナ・アレグトーリア(ka0317
エルフ|17才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/06/16 14:11:49
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/11 21:16:31