災いをもたらす転移 ~騎士アーリア~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/02/12 19:00
完成日
2017/02/20 05:04

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 グラズヘイム王国の南部に伯爵地【ニュー・ウォルター】は存在する。
 領主が住まう城塞都市の名は『マール』。自然の川を整備した十kmに渡る運河のおかげで内陸部にも関わらず帆船で『ニュー港』へ直接乗りつけることができた。
 升の目のように造成された都市内の水上航路は多くのゴンドラが行き来していて、とても賑やかだ。
 この地を治めるのはアリーア・エルブン伯爵。オリナニア騎士団長を兼任する十七歳になったばかりの銀髪の青年である。
 前領主ダリーア・エルブン伯爵が次男である彼に家督を譲ったのは十四歳のとき。すでに闘病の日々を送っていた前領主は、それからわずかな期間で亡くなっていた。
 長男ドネア・エルブンはそれ以前に死亡。妹のミリア・エルブンは健在である。幼い頃から秀才ぶりを発揮し、弱冠十五歳ながらも内政を担う。
 偽金事件によって、亡くなったはずのドネアの生存が何者かによって仄めかされる。事故と発表されたドネアの死因だが、実は謀反に失敗して命を落としていた。
 アーリアの兄は本当に死んだのか。ハンター達によって真相が暴かれる。
 ドネアは歪虚軍長アスタロトとして復活。そして謀反に関与していた元親衛隊の女性ロランナ・ベヒも歪虚の身となっていた。
 武器防具を積んだゴンドラの沈没事件、領地巡回アーリア一行襲撃事件、穀倉地帯における蝗雑魔大量発生等、アスタロト側が仕組んだ陰謀はことごとくハンター達の力添えによって打ち砕かれる。
 だが、これらの陰謀には搦め手が存在した。ネビロスが運河の湧水個所破壊を密かに企んでいたのである。
 看破されたことに焦ったネビロスが湧水個所を急襲。ハンター達の協力によって撃退されたものの、一ヶ月後に再度襲ってきた。歪虚アイテルカイトの尊厳をかなぐり捨てたネビロスだったが、騎士団とハンター達の前に敗北して最後の時を迎える。
 勝利に沸く城塞都市マールの民。アーリアが喜んでいたのも事実だが、振り払ったはずの兄への気持ちは心の奥底でかすかに残る。
 そんな折、マール城にアスタロトから晩餐への招待状が届いた。ミリアの反対を押し切り、アーリアはその場へと出向く。そこで交わされたアスタロトの発言はまさに傲慢に満ちていた。
 アスタロトが父ダリーアに抱いていた不信感も判明する。流行病に冒された村の過去の一件はエルブン兄妹の胸を締めつけたのだった。


 マール城の門前に立つ男は不思議な出で立ちをしていた。纏う服装はカーキ色でポケットや装具が非常に多い。同色の帽子を被り、肩からはライフルをぶら下げている。
「頼む。どうかここの代表者に会わせてくれ! このままだと大変な事態になってしまうんだ!」
「紹介状もなしに素性のわからぬ者を通せるはずがないだろう。さあ帰った、帰った!」
 男は門番の衛兵達に何度も追い返された。そのうち衛兵の一人が気まぐれを起こし、男に事情を訊ねる。
「俺も別世界で兵士だった。任務で輸送トラックを運転していたところ、突然にこの世界に飛ばされたようで……。そのトラックは大破してしまったが、運んでいた物資の三分の一が食糧、残りすべてが『TNT』だったのだ」
「TNTって?」
「爆薬だ、TNT爆薬! そのほとんどを妙な集団に持ち去られてしまった。俺は茂みに放りだされて、酷い打ち身でしばらく動けなかったんだ。息を殺して眺めていることしか……」
「よくわからんが爆薬だろ? そりゃ危ないだろうが、大げさすぎるぞ」
「威力と扱いやすさが……ああ、説明してもわかってもらえそうもないな。英文のマニュアルも入っていたんだ。あいつら崇拝するアスタロ何とかに捧げるとかいっていた。危険思想を持っている奴ら特有の、ぎらついた目をしていたんだよ」
 衛兵は男の真剣な眼差しを眺めて、信じてみる気になった。そこで助言を与える。
「転移者ならハンターズソサエティーを頼るのが一番だ。あそこならいろいろと世話してくれるだろう。同じような境遇の者がたくさんいるぞ」
「そのハンター何とか、どこにあるのか教えてくれ!」
 男は衛兵にハンターズソサエティー支部までの道筋を教えてもらうと全力で走りだす。到着して肩で息をしながら受付嬢にこれまでの顛末を説明。すると魔導伝話を介して領主アーリアとの面会を取りつけてくれる。
 あらためてマール城を訪れた男はアーリアが待つ執務室に通された。
「よくあきらめずに報せてくれた。礼をいわせてくれ。それと衛兵達を恨まないでやって欲しい。彼らは任務に忠実なだけだ」
「私も軍人ですので心得ております」
 アーリアと面会した男の名はゲイツといった。経緯を精査すると貨物を盗んでいった集団はアスタロトに傅く歪虚崇拝者だと思われる。
 マニュアルが解読されてTNT火薬が破壊活動に使われるようになれば、大変な事態に陥る。急遽ハンターズソサエティー支部で依頼が行われるのだった。

リプレイ本文


 城塞都市マールから馬車で出発して一時間半が経過する。依頼人ゲイツを連れたハンター一行は、転移が発生した森の外縁へと辿り着く。
「俺はあの辺りの茂みで倒れていたんだ。見た通りにトラックはあそこだ」
 まずはゲイツ自身によって転移の状況が語られる。
「よく爆発しなかったものだな」
 ヴァイス(ka0364)は大地に散らばる残骸を眺めた。トラックのなれの果てだけでなく、破損した箱や食糧なども散乱している。
「ほいほーい、なんと爆薬が盗まれてしまったのですかー。確かお名前はTNTとやらでしたねー」
 小宮・千秋(ka6272)が片手で持てるほどの四角い棒状の物品を拾いあげた。
「ティーエヌティー? お茶の親戚みたいなの美味しそうなの」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)が小宮千秋の手元を覗き込む。表面の泥を拭うとTNTの文字が覗える。
「ゲイツ、これはどうやって使うんだ? いざって時は現場の俺らが処分せにゃならんしな。中途半端な知識にならないよう分かりやすく教えてくれよ?」
「これ単体では非常に安定している。こんな有様でも爆発しなかった程度には」
 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)の問いにゲイツが答えていった。茂みの中から一つだけ発火装置が見つかったので爆発させてみることに。トラックの残骸へと仕掛ける。
「残っていた発火装置は無線式だが、爆薬に信管を差し込み、ケーブルを引いて爆発させるのが基本だ」
「折角の機会だ。私がやろう」
 ゲイツが教えた手順通りにアウレール・V・ブラオラント(ka2531)が作業を行う。
 百mは距離を置いて準備完了。人気がないのを確認してから無線爆破のスイッチを押した。火薬量を減らしたはずだが、その爆発でエンジンルームがきれいに吹き飛んだ。
「たったあれだけで驚いたんだよ。この爆弾が歪虚の手に渡ったら大変なんだよ。急いで取り返さないとだよ」
 両耳から手を離した弓月 幸子(ka1749)が鳳凰院ひりょ(ka3744)に顔を近づける。
「幸子の言うとおりだ。これを放っておいたら大変なことになるぞ」
 鳳凰院は爆破の手順を記録したメモ帳に、威力についても書き込んでおく。
「異世界の兵器は、やはり強力な物が多いですね。これは慎重に当たらないといけませんね」
 ミオレスカ(ka3496)は残りのTNT爆薬をまじまじと眺める。
 相談の末、ここから十km円範囲にある町村で聞き込みすることとなった。仲間同士で連絡が取れるようトランシーバーの周波数を調整する。
「これなら覚醒してなくても使えるの。渡しておくの」
「ありがたい」
 ディーナはゲイツに無線を貸したのだった。


 一行は二手に分かれる。
「……万が一にでも町中で爆発したら被害の規模が予想できないな」
 A班のヴァイスは先程の爆発を思いだしつつ仲間達と共に愛犬のワンコの後を追う。爆薬のにおいを辿らせて一時間が経過。丘の向こう側に町が見えてきた。
「何の変哲もない町のようだが」
「ここに町の名前があるんだよ」
 鳳凰院と弓月幸子が眺めた北門の石柱には『ブリト』と刻まれている。
「B班への連絡は私がしますね」
 愛馬に跨がったミオレスカは隣の町を目指す。
 道が整備されていたおかげで要した時間は十分程度。町中で目立たぬように無線を使う。少し移動しての二度目の挑戦でB班のゲイツと繋がった。
「怪しいのはブリトの町です」
『わかった。そう伝えよう』
 ミオレスカはTNT爆薬のにおいを辿った成果を簡潔に伝える。この町には怪しい点が見つからなかったとのことで、ブリトでの合流で話がついた。

 B班はA班からの連絡を受け取るとすぐさまブリトへと急いだ。
「同じだと目立ちすぎるな。俺達は南門から入ろうか」
「それがいいと思いますね。賛成ですよー」
 エヴァンスに意見に小宮千秋が同意。別ルートで立ち入れば万が一歪虚崇拝者に勘づかれたとしても、片方が自由に動ける可能性が高くなる。他の三人も賛成して迂回することに。南門からブリトへと足を踏み入れた。
「ちょっとした情報をマールで仕入れてきたの」
 ディーナに案があるとのことで後をついていく。途中でお菓子を買い求めてから門を潜り抜ける。そこは内密ながらも領主アーリアの寄付で運営されている孤児院であった。
 院長にお菓子を分けてもらうつもりだったが、是非にと勧められて直接子供達に配る。
「こら、落ち着け。幼い子からの順番だ。ちゃんと全員分あるから焦らなくてもよいぞ」
 アウレールも一人ずつお菓子を手渡していく。
 B班は子供達と打ち解けながら、最近町で変わったことがなかったかをさりげなく訊ねる。
「えっとね。バリシってお店があるんだけど、何日か前にものすごく忙しかったみたいだよ」
「だね。日が暮れても仕事していたもん。荷馬車が走る音が煩くて眠れなかったよ」
 子供達がビスケットを囓りながら三日前の出来事を話してくれた。ディーナはその内容を聞き逃さずにメモにとる。
 バリシ商店は馬屋と雑貨屋を兼ねた、このブリトの町では新興のお店であった。資金力があるらしく、たった一年で町一番の商いを取り仕切るようになったという。
 ゲイツが町中でこっそりと無線を使ってA班へと連絡する。両方の班とも寝床として孤児院の一室を貸してもらいつつ、遠巻きにバリシ商店を監視し続けた。
「近隣住民への監視協力も要請したぞ」
「輸送の荷馬車には余裕があるようだ。あの様子だと一両日中に運びだすのではないかな」
 アウレールや鳳凰院を始めとして各人が意見を述べ合う。
 もしも英語に堪能な者がいた場合、歪虚崇拝者側は爆薬だと認識していることになる。ブリトの町でTNTが爆発したのなら、大変な事態に陥ることは明白だ。そのリスクは看過できないほどの甚大なものになるに違いない。
「分かったの、移動中なら確かに街の人に被害が出なさそうなの。そっちがいいの」
 ディーナがいうように、バリシ商店に踏み込んでの差し押さえは諦める。輸送中にTNT爆薬を手に入れる選択肢を選んだのだった。


 バリシ商店から孤児院までは約五百mで、ぎりぎりだが無線が届く範囲だ。A班とB班は交代しながら昼夜いとわず見張り続けた。
 深夜、壁の隙間に隠れていたミオレスカが白い息を吐きながら目をこらす。男が跨がる馬一頭がバリシ商店の裏庭へと駆け込んだからである。
 散歩をしている風の鳳凰院が、道沿いの倉庫の外壁に耳を当てた。すぐに手を振って緊急の合図を送ってくる。
「これは動きそうだな」
「連絡したほうがよさそうだよ」
 ヴァイスに頷いた弓月幸子が無線を手にとり、孤児院で休むB班と連絡をとった。
 バリシ商店の厩舎から倉庫へと何頭も馬が連れて行かれる。それからまもなく馬車や荷馬車が裏庭へ。最後にでてきた一両の荷台から箱が転げて中身がぶちまけられる。月明かりに照らしだされたのはTNT爆薬で間違いなかった。
 馬車二両に荷馬車四両の計六両。さらに護衛の騎馬三頭の歪虚崇拝者による輸送団が出立した。真夜中で悪路のせいか、人が歩くよりも少し速い程度の進み具合で。
 茂みに隠れながらでも追跡するのは容易く、回り込んでも苦ではなかった。四両の荷馬車には御者が一名ずつ。先頭と殿の馬車には御者の他に六名ずつ乗り込んでいる。護衛の騎馬三名も合わせて敵数は二十一名といったところだ。
 どこで襲撃するかは軍人出身のゲイツに任せられていた。
「このまま進むと高低差の激しい丘の側に差し掛かるはずだ。死角に隠れていて、一気に片付けてしまおう。奴らが発火手順を知っていた場合、その素振りが覗えたのなら即座に報せるからな」
 ゲイツの右手にはトランシーバー、左手には自前の双眼鏡が握られている。
 優先順位としては発火装置と英文のマニュアルの奪取。この二つが抑えられれば、TNT爆薬そのものは後回しにしても構わない。
 各々に覚醒して身を隠して息を潜める。緊張が漂う最中、『いまだ』と無線からゲイツの声が各自に届く。
「平地が多くて検問の誘導は出来なかったが……」
 大きく振りかぶったアウレールが投げたのは発煙手榴弾。遠投に加えて斜面を転がり落ち、輸送団の進行方向が煙に覆われた。
「それを運ばせるつもりはないぞ!」
 ヴァイスは土煙を巻きあげながら斜面を一気に駆けおりる。灯火を纏わせた魔導符剣を握りしめて輸送団の先頭馬車の真横へ。大地が揺れたかと思うほどの踏み込みで、徹刺を放つ。馬車側面だけでなく車軸をもへし折って横転させる。呻き声をあげつつ、乗車していた歪虚崇拝者等が這いだしてきた。
 横転の先頭馬車を避けて後続の車両が進もうとする。それを阻止しようとしたのが弓月幸子だ。
「トラップカード、発動だよ。 ここは通行止めだね」
 弓月幸子のストーンウォールによって大地から土壁が迫りあがってきた。阻まれて先に進めなくなった車両は次々と玉突き衝突を起こす。スリープクラウドも使って眠らそうとするが、こちらは殆ど効かない。血走った目の歪虚崇拝者等は、興奮剤のようなものを摂取しているようだった。
 最後尾の馬車を狙ったのがディーナである。
「だってゲイツさんは無傷で爆薬処理してくれないと困るの」
 ゲイツにプロテクションを施した後で斜面を駆けおりる勢いのまま御者台へと跳ぶ。屋根にしがみつきながら放ったのが、セイクリッドフラッシュの輝きだ。目映い光の波動で周囲の敵全員にダメージを負わせる。
 戦いは近接攻撃だけではない。ミオレスカは魔導拳銃で、鳳凰院はリカーブボウで敵車両の車輪を壊していった。
(ドネアさんの根城は進行方向だと思うけど)
 ミオレスカの脳裏にアスタロトの不敵な笑い顔が浮かんだ。
 歪虚崇拝者等が届ける先にアスタロトがいるとは限らない。ゲイツからTNT爆薬の恐ろしさを聞かされたミオレスカはまずは無力化に尽力。狙い定めた車軸部分を撃ち抜いていく。
「あれは……?」
 鳳凰院は遠方から立ち往生する荷馬車から御者が逃げだしたのに気づいた。直後、抱えている黄色い箱の中身は発火装置だとゲイツから連絡が入る。
 鳳凰院も仲間達に緊急無線連絡。一番近くにいたのはアウレールだった。
 アウレールは無線を聞きながら逃走する歪虚崇拝者の眼前へ。絶火槍による心の刃で足止めしてから、強撃で黄色い箱を叩き落とす。
「もしや使い方を知っているのか?」
 黄色い箱を拾おうとする歪虚崇拝者の腹を槍の石突で強打して、ようやく諦めさせた。
『爆薬と発火装置を抱えた騎馬二人が逃げたぞ! ちょっと待て…………一人はミオレスカさんが射撃で馬を驚かせて足止めに成功したようだ。もう一人は北西方向に逃走中!」
 無線を耳にしたエヴァンスが隠してあった愛馬セラフへと跨がる。横切りながら小宮千秋の腕を掴んで、後ろへと乗せた。
「俺があいつの動きを止める。千秋は爆薬等を奪ってくれ」
「ほほーい。御主人様」
 騎馬の背中が迫ったとき、小宮千秋は馬背から飛びおりる。
 エヴァンスは追い抜いて騎馬の前へと躍りでた。前方を抑えられて騎馬の走りが緩やかになったとき、小宮千秋の肩や背中に乗っていた黒猫やマルチーズが襲いかかる。
「申し訳御座いませんが爆薬お返し下さーい」
 小宮千秋も馬の背に飛び乗って歪虚崇拝者を羽交い締めにした。こうしてすんでの所でTNT爆薬と発火装置を回収する。
 エヴァンスと小宮千秋が仲間達の元へ戻ると粗方片付いていた。
 逃走した歪虚崇拝者もいたが、TNT爆薬と発火装置を持ち去られた形跡はない。エヴァンスとミオレスカがブリトへ戻り、応援として官憲を呼んでくる。
 捕縛した歪虚崇拝者は七名。TNT爆薬関連はすべて回収したのだった。


「これをすべて持ち帰るとなれば大変だ」
「ちゃんとした護衛をつけて運ぶとなると、目立ちすぎますしねー」
 エヴァンスと小宮千秋は仲間達にTNT爆薬半分の爆破処理を提案する。そうすることで奪取を目論む歪虚崇拝者はいなくなるはずと。反対意見もあったが、多数決で処分が決まった。
「身を隠して耳を塞げ! 爆破十五秒前!」
 ゲイツが処理を手がけて一同は見守る。
 平原のど真ん中で火球が膨らみ、爆音が轟く。かなり離れていたはずなのに熱気と衝撃波が全員に襲いかかる。攻撃魔法とは一味違った威力に多くの者は驚きの声をあげた。

 残りはすべてマール城へと移送される。
 ヴァイスとミオレスカは、アスタロトとの関係が気になり、捕まえた歪虚崇拝者の尋問を行った。
 アスタロトへの崇拝は本当だったが、会ったのは一度きりのようである。伯爵地に被害を及ぼす度に遣い者が現れて、かなりの報奨金を置いていったという。
「一体どこからそんな資金が」
「鋳つぶした黄金ということは何か意味があるのでしょうか?」
 ヴァイスとミオレスカは詮索したものの、真実は今のところ闇の中である。

 鳳凰院と弓月幸子は城の倉庫に積まれたTNT爆薬の箱を眺めていた。
「いざというときには戦闘中に爆破処理をしたいと考えていたけれど、うまくいってよかったよ。不慣れな人間には危険すぎるからね」
「ふむふむ、読めないんだよ。でも英語で書いてあるんだよ」
 鳳凰院に弓月幸子が英文のマニュアルを手渡した。イラスト付きなので試行錯誤を繰り返したのならば、いつかは爆発させられたであろう。但し、その暁には木っ端微塵だったに違いなかった。

 ディーナ、アウレール、ゲイツの三人は宛がわれた城の一室でくつろいでいた。
「ゲイツさんはこれからどうするの。ハンターになるのなら口添えするの」
 ディーナはミルクティを頂きながらゲイツに問いかける。
「アーリア殿から力を貸してくれないかと誘われたのだが、どうしたものか。ひとまずハンターになり、見聞を広めるのも一つの手だと思うのだが」
 ゲイツの気持ちは揺らいでいた。
「軍事物資としての有用性も鑑み、すべてを残しておきたかったが、過ぎたことを言及しても詮なきことだろう。すべてではなく一部は残ったようだからな」
 アウレールは紅茶のカップを卓へと置いて椅子から立ちあがる。
「……ようこそクリムゾンへ。卿にしかできない仕事があると思うのだが……?」
 アウレールが右手を差しだす。ゲイツも立ちあがって握手を交わした。
「……決めた。この城で世話になることにしよう。俺の知識が役立つかも知れないからな」
 ゲイツは伯爵地ニュー・ウォルターを第二の故郷と心に決める。

 二日間の滞在後、ハンター一行はマール城を後にする。アスタロトのことを脳裏に過ぎらせつつ、転移門で帰路に就いたのだった。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 7
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 一肌脱ぐわんこ
    小宮・千秋(ka6272
    ドワーフ|6才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 災いの種を奪還せよ!
ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/02/12 12:24:14
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/02/12 17:32:03