• 万節

【万節】ヒーローショー・VS雑魔's!

マスター:旅硝子

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~4人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/14 12:00
完成日
2014/10/25 05:27

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「先日はお疲れだったね、グリューエリン」
 そう包帯だらけで執務机に座る皇帝ヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021)に、グリューエリン・ヴァルファー(kz0050)は畏まって頭を下げた。
「……大丈夫なのでしょうか、公務に戻られて?」
「ありがとう、けれど見た目ほど大した怪我じゃないよ。傷口が出ていると怖がられそうだから、包帯を巻いているだけなんだ」
 それって結構な大怪我では、と思ったが、ヴィルヘルミナがニコニコしているのでグリューエリンはそれ以上ツッコまないでおいた。
「ところで、ピースホライズンで万霊節というお祭りをやることを知っているかな?」
「万霊節、ですか? 噂程度には……ハロウィンという、あの?」
 きょとんと首を傾げたグリューエリンに、皇帝はにっこり笑って頷く。
「ピースホライズンは我が帝国とも国交のある街だし、どうやらハンターズソサエティにもハロウィンの準備やトラブルの解決などの依頼が出ているらしい。せっかくだからAPVを通じてまたハンター達に頼んで、ライブをしてきたらどうだろう」
「ピースホライズンで、ライブですの?」
「そう。帝都では随分活動も積み重ねているし、そろそろいろんな場所にその名を知らしめてもいいんじゃないかと思ってね。ちょっと一足飛びかもしれないけれど、ピースホライズンは素晴らしい街だとカミラ……ああ、第三師団長のカミラが言っていたし、祭を盛り上げるとあれば歓迎してもらえるだろうし」
 その名を知らしめる、とヴィルヘルミナが言った瞬間、ぴくりとグリューエリンの肩が動いた。
 皇帝は笑みを深める。グリューエリンの『ヴァルファーの家名復興』という野心は皇帝の知るところでもあるし、グリューエリンを送り込むことは帝国がピースホライズンに協力する立場であるとの表明にもなる。
 ――利害一致。
「ありがとう存じます、陛下。陛下が下さった機会を、無駄には致しませんわ」
「うん、じゃあタングラムを通じて手配しよう。いい舞台にしておいで」
「はい!」
 勢いよく一礼して御前を辞し、飛ぶような足取りで退出していくグリューエリンを、ヴィルヘルミナは目を細めて見送った。

「……断ってもいいんだよ?」
 帝国歌舞音曲部隊長クレーネウスの言葉に、グリューエリンは首を振る。
「せっかく陛下が名を上げる機会を下さったのですわ。それに、陛下もあのような状態で仕事をしていらっしゃるのですから」
「まぁ……それは、うん」
 確かにヴィルヘルミナが包帯まみれなのは、クレーネウスも知っている。
 その割にはほいほいいつもと同じ足取りで歩いているから、深刻さというものがないけれど。
「俺はちょっと仕事というか、準備することがあって、一緒には行けないが、ハンター達にはよくお願いしておこう」
「ありがとう存じます、お願いいたしますわ」
 礼を言ってから、グリューエリンはふと首を傾げる。
「準備、とは、また新しいライブや催し物でしょうか?」
「そういうわけじゃないが、まぁこの部隊に、そして君にも関係することだ。帰ってくる頃には、準備を終えているだろう」
 悪戯っぽく笑うクレーネウスに、グリューエリンは疑問符を浮かべながらも頷いた。
「ま、ピースホライズンのハロウィンはとても盛大な催しだと聞く。ライブも、そして祭りも楽しんでおいで」
「はい! 皆様に楽しみを、そして帝国アイドルの名を、……広めてまいります」
 僅かな沈黙に入る言葉を、クレーネウスは悟っていたけれど。
「ああ、その意気で。行っておいで!」
 指摘することはなく、ただ励ましの言葉と共に肩を叩くのみであった。

 そして、ピースホライズン。
 仮装に身を包む大人、老人、それに少年少女。かぼちゃのランタンが飾られて、昼も夜も優しい灯りに包まれた街で、グリューエリンとハンター達は連日のライブに明け暮れていた。
 まだ祭りの準備の期間だが、たくさんの人に帝国アイドルのグリューエリン・ヴァルファーとして楽しみを広めるため、そして準備に疲れた人の癒しになれば、様々な目的で、様々な舞台で歌い踊る。ピースホライズンの人々は衣食に満ち足り楽しいものを好み、クリムゾンウェストでは珍しい『アイドル』の歌や踊りに見入り、耳を傾け、喝采を送ってくれる。

 ――それは、子どもや観光客が多く集まる街道沿いでのライブでのことだった。
「悩んだりする そんなときはいつも 雲間に隠れるけれど♪
そんなときは思い出して あなたの夢 ♪
かっこ悪くても 失敗しても 気取らない あなたの輝きを見せて♪」
 舞台の前をいっぱいに埋め尽くすのは、ほとんどが幼子から少年少女といった、仮装を纏った子ども達。
 グリューエリンとダンス&コーラス担当のハンター達が舞台で繰り広げる歌と踊りに、ふと町に入って来たうさぎ影……いや、コック帽を乗せたうさぎの着ぐるみ姿の人影に、まだ注意を留める者はいない。
 だが……、
「一度やすんで また走り出そう その輝きは どこまでも続いている――♪」
 曲が終わった瞬間、ふっと頭上に影が差す。はっと顔を上げたハンター達が見たのは――蝙蝠の羽根が生えたリンゴと、ふわふわ空飛ぶジャック・オ・ランタン――雑魔の群れだ!
 息を呑むグリューエリン、武器に手をかけるハンター達。けれどその瞬間、コックうさぎ姿の女性がさりげなく舞台に飛びあがる。

「どうかしたのか?」
 仮装のおかげで、観客達が演出だろうかとわくわく見ている間に、急いでグリューエリンは事情を説明する。
 そしてすばやく簡単に自己紹介を交わす。お互い一方的にだが、顔と名前を知っていた。
「あれが雑魔だと知らない子ども達が手を出してしまったら大変です。ですが、ここにいるのは子ども達ばかり、避難させるにもパニックを起こしてしまえば、守りきれないかもしれませんわ」
「そういえば街道沿いでは雑魔も目撃されているのだったな。普段は滅多にないのだが……」
 そこで――ハンター達とグリューエリンが考えたのが、リアルブルーで子ども達に大人気という『ヒーローショー』!
 だが、この数の歪虚を相手取るには、人数が足りない。
「遊びに来ているハンターもいくらかいるだろう。少しならこの場で私が雇ってしまえばいいさ。私は既に舞台に上がっている」
 演じるのは得意ではないが、仮装で誤魔化されてくれるだろうとカミラは笑う。
「ありがとう存じます、頼らせていただきます……!」
 決意を込めて頷いたグリューエリンは、すらりと双剣を抜いてカミラに続いて声を張り上げた。
「悪魔を倒すため、今こそ『帝国アイドル』の本当の力を見せる時! 皆様、どうかご声援、よろしくお願いいたします!」

リプレイ本文

 ピースホライズンに巡業と聞いて、アナスタシア・B・ボードレール(ka0125)は思ったものである。
(これが謳われる『アイドルのドサ=マワリ』なのでしょうか)
 どさ回り、すなわち地方巡業。確かに間違ってはいない。
「いざ経験となると――これはコレで。楽しそうですね」
 準備の為に借りた一室。呟いてから衣装に袖を通し、アナスタシアは見た目通りの貴族の令嬢へと口調を変える。
「――こほん。このような感じでよろしいかしら?」
 そこそこ豊かに見える胸が上げ底だという事実から、そっとグリューエリン・ヴァルファー(kz0050)は目を逸らした。
 彼女の衣装は道化師を模したゆったりとしたものである。
 ゆったりしすぎて詰める場所がない。
 そして目を逸らし過ぎたグリューエリンは、米本 剛(ka0320)と目が合って思わず曖昧な笑みを浮かべた。
「ホッホ……なぁにか問題でもぉ~?」
 グリューエリンにそう言って微笑んだ剛は、しばしの沈黙の後そっと遠い目をして呟いた。
「生半可にやるから恥ずかしいのです。故におもいっきり……フルスロットッルでやればオカシクナイハズデス」
 普段通りに戻した口調だが、棒読みだった。
 リアルブルーの日本は東京、歌舞伎町――そこには異性装を好む男性が、女性の装いでいられる場所だという。剛の今日の仮装は、メイクも相まってまさにそれを彷彿とさせる。
「一回リアルブルーっぽいの着てみたからったからこれにしたんすけど、普段のと比べてちょっと窮屈かも?」
 フューリ(ka0660)の方は、同じリアルブルー風(?)でも白いスーツのような男性アイドルらしい衣装である。
 確かに、普段から軽装を好む彼にしてみれば、やや堅苦しく思えてしまうかもしれないが。
「でもこれで僕もカッコよく見えてるに違いないっす……!」
「ええ、お似合いですよ」
「あ、ありがとうっすよ……!」
 声を掛けた剛は普段通りの口調だったが、フューリの笑顔はちょっとだけ引きつった。
 歌舞伎町にうっかり踏み込んでしまった美少年と百戦錬磨のバーのママ、と言えば、リアルブルー出身者にはわかりやすい状態かもしれない。
 そしてその傍らで。
「どういう仮装だこれ……」
 ロジャー=ウィステリアランド(ka2900)はそっと遠い目をしていた。
 アニメキャラ風。ピエロ。パルム。
 その全てを合成したらどうなるか。
 今のロジャーの姿になるのである。詳細は皆さんの想像力にお任せしたい。
 ちなみに『祭に来たら最近噂の帝国アイドル略して『てこどる』がライブをするというので野次馬しようとしたら巻き込まれた』とは本人の弁である。
 で、巻き込まれた結果これしか着ぐるみがなかったのだ。
「この手のショーの見所はヒーローの活躍にあるのは当然。だがそれと同じくらい、悪役に魅力がねぇと物足りないものになっちまう」
 そう言い放つデスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)が扮するのは、闇ハロウィンの使者、ヒーロー達の前に立ちはだかる存在。
 纏う衣装は黒い杖を持つ貴族風の装束に、ジャック・オ・ランタン風のかぼちゃを被って。
「普段の格好だとどうしても正義の味方っぽいからな。やっぱり仮装は必要ってもんよ」
「……正義の……いえ」
 そっとグリューエリンはツッコミを飲み込み、助けを求めるように視線を彷徨わせて。
「このアニメ、小さい頃大好きだったんだよね!」
 近未来風の機動スーツにヘッドギア、赤い大きな両手剣を素振りしながらにこにこ言う時音 ざくろ(ka1250)に、グリューエリンはオアシスを見つけた旅人の顔をした。

 そして特設会場で舞台の幕は開き、順調に――とはいかなかった。
 もちろん原因は、他ならぬ雑魔達の乱入。けれど舞台に飛び乗った帝国第三師団長カミラとの打ち合わせを終えたハンター達は、グリューエリンと共に『まるでそれが演目であるかのように』雑魔たちと向かい合う。
 その中で、それぞれ別々に動いたのはデスドクロと、子どもを多く含む観客達の避難を買って出た蘇芳 和馬(ka0462)だ。
「はーっはっはっはっは! ダークハロウィンの闇に包まれて菓子となれヒーロー共よ!」
「わあああデスドクロ将軍がこっちきたぞー!」
「にげろー!」
 咄嗟に人の波に飛び込んでそう声を上げ、ばさりとマントごと腕を広げたデスドクロに、楽しげに子ども達が悲鳴を上げて距離をとる。
「……おっと、なにやら新たな敵が現れたようだぞ?」
 そこにやはりステージ袖から飛び降り、子ども達を見渡したのは赤く硬質な鎧を纏った和馬だ。
「会場のみんな、だけど安心してくれ。この会場には、グリューエリン・ヴァルファーとその仲間達がいる」
 大きな声で和馬がそう告げれば、ハンター達とグリューエリンがすぐに手を振って子ども達の歓声に応える。
「きっと彼女達が倒してくれるはずさ! さぁみんな、ここは危ない。敵は彼女達に任せてちょっと下がろう」
「はーい」
「えー!」
「このカボチャに触るとお前達もお菓子になってしまうぞ!」
「きゃー!!」
 和馬が観客を誘導し、それに反抗しようとする子ども達をデスドクロがおどかして、流れ弾が行かない程度のスペースが作られる。既にカミラの呼びかけに応えたハンター達も観客に下がるよう呼びかけているし、客席にいた大人達もハンター達の落ち着いた様子にアトラクションの一環と思ったのか、もしくはハンター達の腕を信頼してくれたようでパニックは起きていない。
 その間に、ステージの上では。
「現れたなデスドクロ将軍! 歌と笑顔が未来を拓く……アイドルヒーローの力、今こそここに。機導騎士(アルケミックナイト)ざくろ、ここに見参! ざくろ達がいる限り、お前のカボチャ仮面にライブを潰させはしないよ」
 びしっと赤きスーツに包まれた指を突き付け、両手剣の構えに移るざくろ。
「帝国アイドルは屈しませんわ! 皆さん! 力の見せどころですわ……!」
 アナスタシアが貴族の令嬢の如き誇り高さで、アルケミストタクトを振りかざし、もう片手で銃を抜く。
「パルむんも頑張っちゃうぱる! るんるんら~♪」
 小刻みに震えながら飛び出したアニメキャラ風ピエロパルムの着ぐるみ――ロジャーが、片手にデリンジャー、もう片手にトンファーの構えを取る。
 明らかに飛び出した時と構えの時でキャラが違う。
「ヒーロー、男子の憧れっす……」
 客席に聞こえぬよう小さくそう呟いたフューリは、両手のナイフを抜きながら覚醒。髪と同じ紅の狼耳と尾が、ぴんと天を目指して揺れる。
「愛と勇気のロンリーウルフ、見参ッ!」
 びしりとポーズを決めたフューリ(孤独ではない)は、子ども達の『うるふ?』『犬さんだー!』『わんこだー!』という声にずるりとすっ転びかけた。
「狼っす! がおがおー!」
「きゃー!」
 大喜びで歓声を上げる子ども達。思わず微笑んだグリューエリンが、すらりと二刀を突き付ける。
「舞台を飾るべきは笑顔と喜び、邪魔するならば容赦は致しません! 帝国アイドルグリューエリン・ヴァルファー、参ります!」
 全員の身体を順に、きらきらと白い光が取り巻く。剛が舞台袖で盾を掲げ、舞台演出を兼ねて信仰の加護を授けたのだ。
 舞台を邪魔せぬよう、祈りは声に出さずに――やると決めたら完璧にやり遂げる、それが剛の信条だ。
 仮装も含めて。
「笑止、このカボチャ仮面の前にはヒーローなど単なるお菓子の山よ! それ、往け!」
 デスドクロが杖を振れば、カボチャ仮面達が舞台のヒーロー達へと押し寄せていく。
 ――そう見えるように、機を測ってデスドクロは演出してみせたのだ。
 和馬や他のハンター達による避難誘導が機導砲の射程外まで済んだのを確認し、アナスタシアが突き付けたタクトから機導の光を解き放つ。それが、戦いの嚆矢。
「南瓜……後で美味しく食べてやるからかかってこいっす! 僕もうお腹ペコペコなんすよ!」
 叫びに応えるかのように突撃してきたジャック・オ・ランタンに、素早いステップで横に飛びながらフューリがナイフをすらりと振るう。カボチャの頬に刻まれた傷、睨むように振り向いた顔にフューリは軽くターンして真正面から向き直る。
 その隣でロジャーが、トンファーを滑らせるようにジャック・オ・ランタンの攻撃をいなし、軌道を読み切ったように銃を撃つ。衝撃でステージの床に転がりながらも、跳ね返るように突撃を敢行する南瓜を、今度はトンファーで弾いて再び銃撃。
「光の矢――!」
 赤い大剣はアルケミックギアブレイド、機導の力を併せ持つ。剣に宿った輝きを飛ばすかのように振るい、機導砲をぶち当てるざくろ。後ろに吹っ飛んだジャック・オ・ランタンが、ざくろをターゲットと定めて懐に飛び込む。
 グリューエリンが片手の刃で攻撃を捌きもう片手で踊るように一撃を加える様子に、ロジャーは戦いには慣れているようだと小さく頷いた。必要ならばアドバイスをと考えていたが――必要ないならばその方が安心できる。大きな戦いの経験は、確かに彼女を成長させたのだろう。
「ボクが先に仕掛けるからキミはその隙に奴を倒すぱる!」
「はいっ! デスドクロ将軍の企みなどには負けませんわ!」
 銃を構えたロジャーに頷き、グリューエリンは僅かに足を引く。距離を詰めようとしたジャック・オ・ランタンに、すかさず一撃を入れようとしたグリューエリンの刃が光り輝く!
 一瞬目を見張ったグリューエリンはふっと笑み、上下に水平になるよう構えた刃を体の回転と共に振り抜く。避けようとしたランタンの軌道を、読み切ったようにロジャーの銃弾が遮る。
 ごっ、と鈍い音がして地面に転がった南瓜が、それでもまだふらりと起き上がる。
「まだ起きて来たぞ!」
「つよいぞあのかぼちゃ!」
「がんばれー!」
「てーこくあいどる、まけるなー!」
 子ども達の中から声援が上がったタイミングを、和馬は見逃さずに声を張り上げた。
「みんな、ここからグリューエリン達に声援で力を送るんだ。帝国アイドル達に、力を分けてあげてくれ!」
「はーい!」
 声を揃えた子ども達は、声が良く届くよう口元に手を当てて、大きく息を吸い込み和馬の合図を待つ。
「せーのっ!」
「がんばれー、帝国アイドルー!」
 子ども達の声が大きなうねりとなって、ステージへと届く。
 その瞬間、力が――機導と祈りの力が、ハンター達の身体に流れ込む。声援によってパワーアップしたかのように、武器や鎧を輝かせて。
 アナスタシアと剛が、声援と同時に一気に強化を施したのだ。
「さぁ、あと一息ですわ!」
 その言葉を証明するかのように、アナスタシアの機導砲がジャック・オ・ランタンの1体を消し飛ばす。
「行くよグリューエリン、リズムで2人の鼓動を合わせて!」
「はい、ざくろ殿。旋律で2人の狙いを合わせて!」
 頷き合ったざくろとグリューエリンが、左右からジャック・オ・ランタンに飛びかかる。
「今、必殺のトリニティーエンド!」
 クロスさせた双剣で弾くように放った一撃を、ざくろが受け止めるように大剣一閃。それは、まるで音楽に合わせたダンスのように。
 その隙にグリューエリンに突撃をかけたカボチャの前に、光の壁が現れて南瓜がぶつかると共に砕け散る。機導の力で守りの壁を張ったのは、アルケミストタクトを構えていたアナスタシア。
「くっ、なんて不甲斐ない……っとぉ!?」
 ぎりりと歯噛みしながら悔しげに演じていたデスドクロが、突然の攻撃に慌てて飛び退く――ように見せてわざと当たりに行く。カミラが用意していたキャンディガンが、殺傷力を持たないのはわかっているし――舞台上からはともかく、近くにいるリンゴ歪虚担当のハンター達からは、攻撃されない方が理不尽に見えるかもしれない。
 ちゃんと服の上を狙って撃ったシロップは、熱さを皮膚まで伝えはしない。
「ええい、我らがジャック・オ・ランタン! 早くハンター達をやってしまえ!」
「おお! ですどくろ将軍が慌ててるぞ!」
「がんばれがんばれヒーロー! まけるなー!」
 デスドクロの慌てたような演技に、わっと子ども達が盛り上がる。
「そうはさせないっすよ! 狼の力、みせてやるっす!」
 フューリが胸の前で短剣を持った手をクロスさせ、ジャック・オ・ランタンの懐へと飛び込む。攻撃をかわしながら一撃、二撃、三撃、入れたところで――渾身の一撃!
「いまだ! 食らえ、クラッシュブロウ!」
 祖霊の力をいっぱいに込めた二振りの短剣が、音を立ててジャック・オ・ランタンに食い込み二筋の傷をつける。くしゃりとそこから崩れながら、雑魔の灯りが消えていく。
 最後に残った1体に、ロジャーがマテリアルを込めて放った弾丸とアナスタシアが解き放つ機導の輝きが交錯し、さらにグリューエリンとざくろ、フューリが息を合わせて飛び込み――!
「皆の力を1つに合わせて……インフィニット・ハッピーエンド!」
 剣閃が交わった瞬間、白い輝きが弾けて――!
「くっ、やられてしまったか……覚えていろ、この借りはいつか返すからな!」
 捨て台詞を吐きながら身を翻し、観客達の間を抜けてからデスドクロはにやりと笑う。
(ピンチの時にどう動けるかが人の本質だ。グリりんもまあ随分とサマになってきたじゃねぇか)
 デビュー当時から見つめ、サポートしてきた少女の成長を、嬉しい思いでデスドクロは噛み締めるのだった。

「いつでも来いデスドクロ将軍、帝国アイドルがいる限り、この世に悪は栄えない!」
 ざくろの決め台詞と共に全員がポーズを取り、大拍手の中ヒーローショー――を模した雑魔退治は終わり。
(……疲れる)
 普段にないハイテンションで子ども達の相手をした和馬が、そっと汗を拭ってから再び子ども達を誘導し、ステージに戻る。
 そして再び始まる歌、ダンス――今度は、観客の皆も巻き込んで!
「さぁ、皆さまもご一緒に、声を出して行きますわよ!」
 わぁっと上がった歓声、覚えやすい歌に声を上げ、合わせやすいダンスに身体を動かして。
「踊ったことがなくたって、一緒にやれば楽しいっすよ! なんたって僕も初めてだし!」
 ダンスの決まりなんてわからないけど、けれどとっても楽しそうに。踊りたいのに恥ずかしそうな子を見つけて、フューリはひょいとステージから飛び降りて彼女の手を取った。
 ステージ袖から出て来て羽根扇子をぱたぱた踊る剛に、会場から爆笑が上がり一気に盛り上がる。
「お菓子だけじゃなくキノコもちゃんと食べるぱるよ~」
 歌い踊りながらロジャーが、万霊節らしくお菓子を配って回る。
 楽しそうに踊る子ども達を、ざくろとアナスタシアがステージに招き上げる。グリューエリンが安堵した表情で、のびのびと踊り、歌い上げる。
 舞台の下ではリンゴ飴が配られ、楽しげな歌声は秋の青空に高く高く響き渡るのだった――。

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MVP一覧

  • 完璧魔黒暗黒皇帝
    デスドクロ・ザ・ブラックホールka0013
  • 紅色のにぎやかおおかみ
    フューリka0660

重体一覧

参加者一覧

  • 完璧魔黒暗黒皇帝
    デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013
    人間(蒼)|34才|男性|機導師
  • ピュアアルケミーピュア蒼
    アナスタシア・B・ボードレール(ka0125
    人間(紅)|14才|女性|機導師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士
  • 紅色のにぎやかおおかみ
    フューリ(ka0660
    人間(紅)|16才|男性|霊闘士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • Xカウンターショット
    ロジャー=ウィステリアランド(ka2900
    人間(紅)|19才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 仮装用
アナスタシア・B・ボードレール(ka0125
人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/10/14 00:23:02
アイコン おしえて!うたのおねえさん
ロジャー=ウィステリアランド(ka2900
人間(クリムゾンウェスト)|19才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/10/09 01:18:09
アイコン 相談卓
ロジャー=ウィステリアランド(ka2900
人間(クリムゾンウェスト)|19才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/10/14 00:26:00
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/10 00:30:00