奪われた島

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/02/21 07:30
完成日
2017/02/24 04:07

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●次の一手を
 机の上に広げられた一枚の地図。
 アルテミス艦隊の位置となる場所に船の形をした駒が置かれていた。
「先の海戦で、マーグミュル島の守備艦隊を撃破しました」
 『軍師騎士』ノセヤが駒を進める。
 位置はマーグミュル島沖合だった。
「規模的には他にも艦隊が居ると思っています。ここは偵察を出すべきでしょう」
「痩せ坊ちゃんの言う通りだな。ついでに、島の戦力も見られればいいが」
 ランドル船長が髭に手を伸ばしながら言った。
「となると、潜入偵察という事でしょうか?」
 ソルラ・クート(kz0096)の質問にランドル船長が応える。
「随分と、海の男らしくなってきたじゃねぇか」
「……ランドル船長、私、女性なんですけど」
 逞しいという意味で使ったランドル船長の言葉にソルラが抗議の言葉を発するが、当然のようにそれを聞く男ではない。
「潜入という事なら、小舟を使って少人数で乗り込む必要があるが……」
「そこについては、刻令ゴーレムを使おうと思います」
 何やら資料の束を取り出したノセヤ。
 それは、刻令ゴーレムの水上対応について記されていた。
「凄い! ノセヤ君、いつの間にこんな秘密兵器を!」
 ソルラは大いに驚くと、その資料を確認する。
 刻令術の管理と新型兵器の開発や試作に追われているノセヤがこの時の為に用意したものとは――。
「……ノセヤ君、これ、ただの小舟に見えるけど」
「はい。率直に言います。水上対応はまだ未開発です」
 堂々と答えるノセヤ。
 ソルラが見た小舟は、刻令ゴーレムが牽引するものであった。
「刻令ゴーレムには魔法で海面に浮かべるようにし、波風が穏やかな時を見計らって潜入を図ります」
 ユニットにも魔法は掛けられる。
 それを活かした先の海戦からノセヤがこの作戦を思いついたようだ。
「という事は、今回はノセヤ君も同行するの?」
「もちろんです。ウォーターウォークの魔法を掛ける必要がありますので」
 ノセヤは青の隊所属の騎士であるが、魔術師のクラスだ。
 その実力を聞いた事はソルラには無かった。一度も戦場で接近戦を経験していないという噂もある。
「大丈夫なの?」
 心配というよりかは疑いの視線を向けてくるソルラに対し、ノセヤは緊張した趣きで答えた。
「……頑張ります」
「まぁ、痩せ坊ちゃんの護衛は俺も付くからな。実際の島の探索はハンターらの役目だ」
「ランドル船長、大声だけは出さないで下さいね」
 頼りなさそうな視線を向けてくるノセヤの背を、ランドル船長が笑いながら思いっきり叩いた。

●マーグミュル島上陸
 ノセヤ、ランドル船長を乗せた刻令ゴーレム『頑張れ☆へくす君』と刻令ゴーレムに牽引されている、ハンター達が乗った小舟が島へと向かう。
 定期的にウォーターウォークの魔法を掛け直す必要はあるが、ノセヤにとっては大した事ではない。
「ランドル船長、一つ、伺ってもよろしいですか?」
 真剣な表情で島をみつめながらノセヤが尋ねる。
「なんだ?」
「……あくまで噂ですが、青の隊にはゲオルギウス隊長からの特命で、秘密裏に情報を集める騎士も居ると聞きます」
 その問いにそれまで呑気な顔をして海原を眺めていたランドル船長が顔を強ばらせた。
「噂、なのだろう」
「僕も青の隊の隊員です。もっとも、島を奪われた時はまだ文官を目指していた少年でしたが――」
 軍港であったマーグミュル島の情報をノセヤは王都に戻って漁った。
 場合によっては当時、青の隊に所属していた古参の騎士にまで聞きに行った。
「――ランドル船長の一人息子さんが、島に赴任していました」
「『軍師騎士』とはよくいったものだ」
「教えて下さい。ランドル船長の息子さんは、“何故”島に赴任したのですか?」
 表向きは軍港の整備補助という事だった。
 だが、島と軍港を治める貴族が整備関連を行っていた。わざわざ、青の隊の隊員が赴く必要はない。
「……痩せ坊ちゃんの考えている通りだ」
「この事はハンター達には?」
 ランドル船長は首を静かに振った。
「詳細は話していない。だが、目星の一つとしてある場所を教えた」
 ハンター達には調査場所の目安を伝えてある。
 きっと、歪虚の監視の目を潜り抜け、目的を達成してくれると信じ。
「それでいいのですか」
 ノセヤの言葉に対してランドル船長から返事は無かった。
 静かな海原をただ険しい表情でみつめ続けていた。

リプレイ本文

●軍港北側
 半壊した建物の中で、星輝 Amhran(ka0724)がゴミ箱らしき物の中を漁っていた。
 パッと視界が明るくなった。Uisca Amhran(ka0754)が自身の杖に聖なる灯りを灯し、先端を向けたからだ。
「キララ姉さま……」
 潜入調査は苦手という意識を振り払い、Uiscaが静かに声を掛ける。
 星輝は真剣な眼差しで振り返ると、声もなく頷く。決して、目にも痛くない可愛い妹の水着姿を堪能している訳ではない。
 潜入捜査が上手くできるように、装備にも極力気をつけての事だ。
「どこかにあるはずじゃ、あのノセヤが欲しがっているモノが」
「私も、そのように思うのですが……」
 辺りは散乱としていた。襲撃を受けたままというよりかは、長い年月、放置されていたという方が正しいだろう。
「人はもう生きておらんじゃろう……であれば、何かの品……資料、情報……痕跡かのう?」
 残念ながら手がかりになりそうな痕跡をここでは見つからなさそうだった。
「古地図とも地形はあまり、変わりはなさそうです」
「海岸の方も当たってみるかのう。接岸できる場所は調べておいた方が良かろう」
 スっと立ち上がった星輝だったが、すぐに何かに気がつき、Uiscaの水着を引っ張りながら身を潜める。
 隙間から見えたのは、水兵服に身を包んだ人型の藻……みたいな雑魔だった。曲刀をだらりと下げて軍港を徘徊している。
「……こっちに向かってくるの」
 手裏剣を構え、マテリアルを込める。
 幸いにして1体しかいない。今までは極力、やり過ごしていたが、状況によっては瞬殺も必要だろう。
「私の出番は無いみたいです」
 一応、杖を構えるUiscaだったが、星輝の様子にそう呟いた。
 あっという間に手裏剣の一撃と続く追撃を受けて、消え去る雑魔。
「歪虚さん達は少ない?」
 Uiscaが首を傾げた。
 占拠されているはずというのに、歪虚が少なく感じられたからだ。
 軍港に船の影は無かった。出撃しているのなら、上陸前には分かりそうなものだが……。
「大丈夫……そうじゃな」
 周囲を確認し、星輝が一歩踏み出した。
 敵影なし――だが、ふとした違和感を覚える。
「なんぞ?」
「藻の足跡でしょうか?」
 姉妹仲良く?マークを浮かべた。
 二人の視線の先には、先程の藻雑魔と類似の“何か”が岸壁へと向かっていたのだ。それも、かなりの数が。
「入水でもしたのか……藻だから、海が恋しくなったのか」
 怪訝な表情で星輝は言った。
 岸壁へと向かう無数の藻の足跡はそのまま海へと吸い込まれるように消えている。
「……キララ姉さま、これって、乗船した可能性があると思いますか?」
「まぁ、そう考えるのが妥当じゃな」
 船の姿が見えないのは、たまたまなのだろうか……行き先が分からないのは不気味であるが。
 二人は軍港での調査を終えて、次の目的地へと向け、静かに移動を開始するのだった。

●灯台
 軍港南側の調査に続き、ボルディア・コンフラムス(ka0796)とアイビス・グラス(ka2477)は灯台へとやって来た。
 もちろん、使われている訳ではない。半分朽ちかけた灯台は無残な姿だったが景色だけは長閑で平和そうでもある。
「……青の隊、か。奴等が何も遺せなかった、とは考えにくいな」
 聴覚と嗅覚をフルで感じながら塔に入ったボルディアが言葉を口にした。
 ノセヤやランドル船長から、探索のヒントになるようなものを得られなかったのは残念な事だ。
 ただ、ノセヤからは、貴族が治めていたこの島に、青の隊の騎士が赴任していたらしいという事は告げられている。
「……何か、手掛かりになる物が見つかればいいけれど」
 アイビスが拳を握り直す。
 道中に遭遇した雑魔のうち、無視できない雑魔は瞬殺していたからだ。この灯台にも居ないという保証はない。
 灯台への侵入は思ったよりも楽であった。入口は大きく口を開いていたからだ。
「軍港では何も収穫がなかったからね」
 苦笑を浮かべるアイビス。軍港で報告書や日誌の類を探そうとしたが、見つけ出す事が出来なかったからだ。
 紙類はあっても、特に関係ない文書だったりしたのも、疲労感を増やしてくれる。
「命に代えても、何かを残してるはずだ。だとすりゃあ、どこだ?」
 極限まで意識を高めボルディアが聴覚や嗅覚だけでもなく、視覚も他の感覚も研ぎ澄ませる。
 何か……違和感を感じる壁に触れる――感触が違う。
「……パッと思いつくのは地下室や隠し部屋だな」
 力を込めて押すと、壁が音を立てて“動いた”。
「当たりのようだけど……騎士っぽくはない感じだね」
 周囲を警戒しながらアイビスは隠し部屋に入る。
 そこには一つの遺体。既に白骨化していた。服もボロボロだが、経過している年数を思えば、元は上等な服だったかもしれない。
「ここはやっぱ、知ってる奴に聞くのが一番だな」
「それなら、私は邪魔が入らないように、見張りをしておこう」
 アイビスが隠し部屋から見張りの為に出ていき、ボルディアは霊闘士としての力を使う為、マテリアルを集中させる。
 最初は、青の隊の騎士の遺体があればと思っていたのだが、ここに誰かの死体が残っているのだ。なにか情報が得られるかもしれない。
 時間が経過していると、入手できる情報に限りがあるとも言われるが、こればっかりはやってみないと結果が分からない。

 ―――

「青の隊のお前を巻き込ませてしまった。済まない」

……気にしないで下さい、マーグミュル伯。むしろ、僕が居て良かったですよ。

「もはや……ここまで、だ……」

……えぇ。マーグミュル伯には申し訳ありませんが、ご遺体を隠蔽させて頂きます。エドワンドに利用される訳にはいきませんので。

「あぁ……構わぬ……ありがとう……」

 ―――

 会話の中に、一瞬だけ、血まみれの騎士の姿が映った。
 死体からの思念は、その者が青の隊の騎士だと告げる。
「どうやら、この遺体は、マーグミュル伯らしいな」
 ボルディアが呟いた。
 ここで散った者の想いは、必ず拾うとも、心の中で決意する。
「証拠になるだろうか」
 遺体からマーグミュル伯の持ち物をアイビスは見つけ出して手に手に取る。
 紋章が刻まれた懐中時計が、アイビスのマテリアルに反応して、秒針が動き出した。

●塔
「『街』になるくらいには、栄えてたんだな……」
 鈴胆 奈月(ka2802)が塔から遠くに見える市街地を眺めていた。
 先程まで調査していた地だ。生活の痕跡は風化が激しいが同時に戦闘の跡は見つけられた。
「明らかに武器による傷跡ばかりだったという事は、敵は同サイズと見てもいいか」
 考えるようにラジェンドラ(ka6353)が呟く。
 もっとも、一戦闘区域だけで判断する訳にもいかないが。
「元々は見張り台みたいだけど……」
 それほど高くない塔である。入口は見つからず、ロープと機導術を用いて、奈月が登らなければならなかった。
「縄梯子が掛けた跡がある所を見ると、そうだったかもな」
「あとは、この下に何があるか」
 二人が居る塔の上部には、塔の中に降りると思われる穴が空いていた。
 元々は木製の蓋が付いていたのだろうが、崩れ落ちている。
「証拠があるといいな。さすがにこれだけじゃ」
 奈月が雑魔から奪い取ったボロボロの曲刀を手にしていた。
 なにかの情報の足しになると思っての事だ。負のマテリアルにあてられると雑魔と共に崩れる物も多い中、運が良い事に残ったのだ。
「敵の中心でもわかればいいのだがな」
 そんな資料か何かがあれば……とは思うラジェンドラ。
 ロープを垂らし、慎重に降りていると、奈月がLEDライトで中を照らす。
 いつもは機導術が放たれるライトなのだが、珍しく本来の用途で使われている。
「……当たり、か?」
「そうみたいだけど……」
 後から降りてきた奈月も塔の中を確認した。
 無理矢理作られたようなスペースの狭さに本棚や机が置かれていて、圧迫感を増していた。
 机の上には日誌が置かれ、大事そうに地図入れの筒が立てかけてある。
「これは……なんだ?」
 日誌をパラパラと捲るラジェンドラの手が途中で止まった。風化が激しくボロボロで読み取れる所が少ない。
 脇から覗き込む奈月が、その頁に書かれている事を読み上げる。
「――イスルダ島を占拠したと思われる歪虚の軍勢が沖合に並んだ――」
 島をグルリと囲まれたらしい。
 頁を次に捲る。
「――領主の相談役であるエドワンド・サッチが裏切り、反乱を起こした。マーグミュル伯は反乱軍と戦闘中――」
 淡々と読み上げる奈月。
 どうやら、この日誌には、島で起こった出来事が記されているようだ。
「――堕落者に囲まれたマーグミュル伯と抜け穴を通り、屋敷を脱出。しかし、海も歪虚に囲まれている為、島からの……」
「島からの脱出そのものは不可能。生き残った者数名。食料乏しく、もはや、死を待つのみ……」
 ラジェンドラがページを捲って、その後を読み上げた。
 最後には、残した情報が敵によって破棄されないように、自らが囮となる事が書かれて終わっていた。
「“我らに勝利を”か……」
 末の文を言葉にしてからラジェンドラは静かに日誌を閉じた。
 奈月がロープを掴む。全てではないが情報は得られた。後はノセヤとランドル船長が待つ集合場所へと向かうだけだ。


 各々が探索を終えて集合場所へと戻って来た。
 ノセヤとランドル船長と共に集まった情報を整理する。最後に見落としがないか確認する為だ。
「のぅ、ノセヤ。わざわざ、この島に何を探しに来た? 青の隊の知恵袋のお主が直々に、じゃ」
 星輝が単刀直入にノセヤに訊ねた。
「ただの偵察ではあるまい? ソコの船長も……なんぞ、関係があるじゃろ?」
「これだけの軍港があったということは、本来なら簡単には落ちないはずです」
 姉の言葉に追随するようにUiscaも疑問を口にした。
 そして、二人の疑問は、他のハンターにとっても、同様の事であった。
 ノセヤが「う~ん」と唸ってから、口を開こうとした時だった。ランドル船長が重々しく語りだす。
「俺の息子は、青の隊の騎士として、この島に赴任していた。理由は知らない。だが、一つ言えるのは、赴任中に歪虚に襲われ、死んだという事だ」
「島が歪虚に襲われたにしては、建物がかなり残っているような気がするけど」
 アイビスが軍港の様子を思い出すように言った。
 何か違和感があると思ったが、それが何か分かった。歪虚に襲われたにしては、破壊の度合いが少ないと感じたからだ。
「……戦いの跡から、僕もそうだと思う」
 激しい攻防戦になったのならば、建物の損壊も大きいはずだ。
 だが、風化による損傷はあっても大型歪虚によって破壊されたような建物は無かった。
「マーグミュル伯の言っていたエドワンドってのが、元凶か?」
 憮然とした様子でボルディアが言った。
 ノセヤの視線がアイビスが持ち帰ってきた懐中時計に移る。それは、間違いなくマーグミュル伯の紋章が刻まれていた。
「エドワンドが何か、黒い事をしてた可能性――例えば堕落者、とかか?」
 ラジェンドラの言葉にUiscaが悲しそうな表情を浮かべる。
「この島を歪虚が占拠する時に、誰かの手引きがあったとかでしょうか」
「なるほどじゃ。日誌には、エドワンドなる者が裏切ったとある事から、そう見てもいいはずじゃ」
 両腕を組みながら星輝は言う。
 どういう経緯かまでは分からないが、エドワンドが堕落者となって反乱を起こした。
 バックに歪虚が居るのであれば、反乱が成功する可能性もあるだろう。内側から切り崩されたから、激しい攻防戦にならなかったとすれば、建物が残っている理由にはなる。
「そうすると、反乱についた方の成れの果てが、あの藻人間みたいのか?」
 そう言ったボルディアの視線は、奈月が持ち帰った曲刀に向けられていた。
 その曲刀はノセヤ曰く、昔の王国海軍で使用されていた物と似ているという。
「そうだとすると、疑問が残るね」
 握った拳を見つめるアイビス。
 帰り道も何体か遭遇して粉砕したが、軍港の規模を考えると数は少ない。
「敵の数と質、それに海上戦力は見られなかったな」
 見張り塔の上から眺めた光景を思い出しつつ、ラジェンドラが言った。
 それは、軍港を調査しに行った4人のハンターも思う所だ。
「……赴任した騎士は一人だけか?」
「そうだと、息子からは聞いているが」
 ふと、何かに気がついて、ボルディアがランドル船長へと声を掛ける。
 その返事の内容が正しければ、マーグミュル伯と会話していた騎士は、ランドル船長の息子なのだろう。
「俺が『深淵の声』で聞いた内容を伝えるぜ」
 その内容は短かった。だが、日誌に書かれていた事と合わせれば、大体は推理ができる。
 マーグミュル伯を支え、歪虚や反乱軍相手に戦った事を。そして、島で起こった事の情報を残す為に自らが囮になる事を。
「息子さんは、最後の最後まで、諦めずに戦い抜いたのですね」
 Uiscaの言葉にランドル船長は視線を落とした。
 マーグミュル伯の遺体を隠したのは、歪虚や雑魔として再利用されるのを防ぐ為だと思われるが、偶然にも、重要な情報へと繋がった。騎士の諦めない想いが成した奇跡だろう。
「……悪いな。先に話しておけば良かったな……」
「自分の息子が堕落者になっていたかもしれないとも思ったのじゃな?」
 敢えて深刻そうに言わず星輝が尋ねた。
 大切な存在が堕落者と化したのだとしたら――その苦しみや不安は相当なものだっただろう。
「あぁ……馬鹿な親だ。自分の息子を信じられなくてよ」
「まあ、素直に吐けるモノじゃったら最初から言うておろうしのぅ」
 ポンポンとランドル船長の体を軽く叩く。
「“我らに勝利を”……その意志はしっかり継がないとな……」
 魔導カメラで撮った塔の中の様子の写真をラジェンドラはランドル船長に渡した。
 船長の息子が映っている訳ではない。だが、そこに居たという痕跡はあるはずだ。
「綺麗に整頓しやがって……そういう所は、俺に似なかったな」
 本の背表紙が並ぶ棚の写真に手を触れる。
 歪虚との戦いは非情だ。大切な人を失うという事は、きっと、誰でも似たような経験があるのだろう……。
 しばらく写真を眺めていたランドル船長だったが、やがて、顔を上げ、ハンター達を見渡した。
「ありがとう、お前ら」
 それまで険しい顔だったランドル船長が口元を緩めた。
 それは細工な微笑だったが、吹っ切れて清々しい雰囲気でもあった。


 こうして、ハンター達はマーグミュル島での調査を終えた。
 持ち帰った日誌や地図、証拠品の数々から、島で何があったのか、核心に近い情報を得る事ができた。
 敵の戦力については、調査しきれなかったが、島の戦力は少ないと判断。マーグミュル島奪還作戦の決行が前倒しされる事になるのであった。


 『マーグミュル島奪還作戦』へと続く。

依頼結果

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MVP一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • “我らに勝利を”
    ラジェンドラka6353

重体一覧

参加者一覧

  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 戦いを選ぶ閃緑
    アイビス・グラス(ka2477
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 生身が強いです
    鈴胆 奈月(ka2802
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • “我らに勝利を”
    ラジェンドラ(ka6353
    人間(蒼)|26才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/02/17 00:45:52
アイコン 【相談卓】島の謎を追え!
Uisca=S=Amhran(ka0754
エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2017/02/20 23:37:48