或る少女と畑の初陣

マスター:佐倉眸

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/03/03 07:30
完成日
2017/03/11 17:22

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 ウェイトレスの仕事を無事に終えて、報告と次の依頼を探しに向かったオフィスの掲示板に新しい依頼が張り出されていた。

『人手募集 畑のコボルト退治 初めての方でも安心、簡単なお仕事です』

 コボルトを模したらしいコミカルなイラストを添えられたそれを見詰め、メグ、こと、マーガレット・ミケーリは、うわ、と、零した。
「胡散臭い……きゃあ」
 その後頭部で跳ねる緑色の光り。
 メグが咄嗟に振り返ると、するりとその視線を避けて頭上へ浮かんでいく。
 不定形の光りは鞠の様にメグの頭で弾むと、すぐにどこかへ隠れてしまった。
 そういえば、前の依頼もこの精霊の計らいで引き受けた様なものだっけ。
 この依頼も引き受けさせたいのだろうか、と、メグは改めて張り紙を見るが、表題以上の事は解らない。
 仕方ないと溜息を吐いてこの依頼を掲示しただろう受付嬢を探した。

「はい! その依頼は間違いなく、初めてのハンターさんでも安心安全、完璧完全なコボルト退治です。畑の横に巣を作ってしまったコボルトをハンターさんに駆除して頂き、最後は巣も崩して埋めてしまうとの事です。戦う相手は勿論ただのコボルト、それも、巣から追い立てるために燻されてふらふらですので、通常よりも弱っているはずです。戦闘の依頼は初めて? 何の問題も御座いません。是非是非、協力して下さい!」

 捲し立てる受付嬢に押しきられて引き受けてしまった依頼。
 当日までに何を準備したら良いだろう。
 そんなことを考えながら、参加メンバーと顔を合わせ簡単な打ち合わせが始まった。


 嘘を吐いた訳ではありません。
 依頼内容に比べて高い報酬を訝しんだハンターに詰問され、受付嬢はきっぱりと答えた。
 煙で巣から追い出したコボルトを駆除するだけ。
 それは何も間違っていない。
 ともすれば、一般人の自分でも出来てしまうくらいの仕事だ。
 窓から差し込む西日を眩しげに見詰め、受付嬢は溜息を吐く。

「このごろ、温かくなったり、冬に戻った様に寒かったりで、雪解けした畑が凍て付いたり、それが解けたり、一昨日も雨が霙になりましたし……それで、ですね……」

 山の陰に作られ、冬は休ませ、春を待って苗を植えるその畑は今、夜に凍って昼に溶けて、ぐちゃぐちゃで、どろどろのぬかるみらしい。
 自分でも出来ないことは無いんだが、と畑仕事で鍛えた腕の逞しい依頼人は言っていた。
 しかし、足を取られて転んだりしたら厄介だと。
 勿論、コボルト以外が湧いている様子も無く、巣の数も1つのみ。

「これで、泥跳ね必至じゃ無ければ、ほんっとうに、初心者向けだったんですけどね。――長靴の貸し出しは致しますので、汚れてもいい格好でお願いします」


 打ち合わせを終え、次は当日にと解散し、資料を眺めるメグはテーブルに1人ぽつんと残っていた。
 転んで足手纏いになってしまいそうだと項垂れたその背にふわふわと緑の光が揺れている。
 テーブルを片付けた受付嬢はメグにココアを差し出しながらその表情を覗き込んだ。
「やっぱり、嫌でしたか?」
「――え、えっと……そうじゃなくて、そうじゃなくて、私が、ダメだから……」
「うーん、泥まみれはやっぱり、そうですよね、嫌ですよね」
「ちがいますっ」
 思わず叫んで、真っ赤になったメグが机に伏せる。
「泥まみれになって、ハンターさんの足を引っ張るのが、いやと、いうか、もうしわけ、なくて……」
「大丈夫です! それくらいで失敗したりしませんし、ハンターさんはすごいんですよ。きっとあなたが、立派なハンターさんになれるまで、先輩ハンターさんが支えて、導いてくれます」

 だから安心して付いて行って。
 今、出来ることが無くたって、見学するのも良い経験になるはずです。

「さ、そろそろここも片付けますよ……そういえば、その子の名前ってなんて言うんですか?」
 受付嬢がメグの背後に漂う緑の光を指して尋ねた。

リプレイ本文


 依頼人が脇の道を通って仕掛けに向かう。集まったハンター達は畑でそれぞれ支度を済ませながら、煙に追い立てられるだろうコボルトを待ち構える。
 ヴァイス(ka0364)は双眼鏡を巣穴に向ける。ここだと言う様に手を挙げる依頼人を見付け、倍率を上げた。燻し始めたばかりの巣からは、まだ獣の気配が無い。
 先に足下を確かめようと、巣の方向へ数歩歩む。泥濘む水音が鳴りブーツのラギッドが沈み込んだ。
 歩きにくさに辟易しながら、双眼鏡を覗く。依頼人は仕掛けを終えて戻るところらしい。倍率をもう一段上げると燻る火のちらつきが見えた。
 絢爛な長着を置いて畑へ、着込んでいた水着1枚ではまだ雪の残る春先、山の陰りの寒さには無防備で無雲(ka6677)は自身の肩を抱いてふるりと身を震わせる。
「ん、懐かしい顔がいるねぇ! ボクのこと覚えてる?」
 寒さを堪え手を振ると、メグはこくりと頷いて、あの時はお世話になりましたと頭を下げた。
「やっぱりハンターになったのね」
 八原 篝(ka3104)が声を掛けると、メグは最後深く頭を垂れ、その頭上で精霊が瞬く様に光りを明滅させた。
 何を思ってこの精霊は彼女を導いたのだろうと、八原が向ける茶色の静かな眼差しに、その淡い光が僅かに映り込んだ。
 いつもの白衣を置いて参戦したノワ(ka3572)が鞍馬 真(ka5819)とメグに手を振った。
 先日のケーキはとても美味しかったと楽しげに話しながら、メグが戦闘は初めてだと話すと励ます様に目を細めた。
「初めてってドキドキしますよね……」
 言いながら見回す畑には、慣れた様子で巣を観察し、或いは身支度を調えるハンター達が集まっている。
 心配して不安になるのも、彼等の戦術を見て経験を積むのも、経つのは同じ時間だから。
 ノワに釣られて見回すメグの目がぱちくりと瞬いた。
「同じ時間なら楽しんだ方が得じゃないですか!」
 ノワの言葉に鞍馬も同意を示して、初めは自分で考えるようにと促した。
 間違えることも、足を引っ張ることも気にしなくていい。そう告げる穏やかな言葉に頷きながらも、考え込んで戸惑うメグの様子を見ると、肩を竦めて不安げに揺れる目に視線を合わせた。
 出来ることを尋ね、一緒に考える様に首を傾がせる。
「……そうだね、なら、怪我をしたら癒やしてもらっても良いかな?」
 鞍馬の問いかけにメグは確りと頷いた。
 杖を握って意気込む様子にほっと息を吐きながら足下を眺める。依頼を終えたら、風呂に入りたいなと深い溜息が零れた。
「……今回は新人さんと一緒か……っと、俺も新人だったな」
 メグとハンター達の会話が聞こえ久瑠我・慈衛(ka6741)は独り言を零す。
 ハンターとしては新人だが、とメグを手招く。
 元は狩人、戦いそのものの経験は浅からず積んできた。気を置いているように見える鞍馬に粗方任せられるだろうが、久瑠我自身も掛けられる言葉が有るかも知れないと仮面の奥で考える。
 ヒールを、飛ばすのなら。と、身に着けた防具や得物を示す。これで軽い攻撃は十分防げるから。
「慌てずに、本当に回復が必要かどうかを数秒でいいから考えてみるのもいいかもしれない」
 頷いたメグは他のハンターにも目を向けている。
 畑の泥濘みのために軽装だが、それぞれに身を守る支度は整えている。
 射程を量りメグの近くまで下がった八原が頷く様な視線を向けた。
 ハンター達を見る様に促しながら、メグの立ち位置を問う。範囲に収められるように意識するといいと助言し、装填を終えた銃を構えた。
「それから、討ち漏らしたコボルドの足止めをお願いするかもしれないから、その心の準備もしておいて」
 頑張ると言いながらも、小さな杖を握って強張ったメグの手にノワが触れた。
「よかったら、これどうぞ」
 片手の指を解いてその手の中に握らせた小さな石。星屑を込めたように燦めく緑色。気持ちを落ち着かせるんですよと囁くと、小さな声がありがとうございますと告げて、その石を握り締めた。
 よし、と無雲が大鎚を振り翳して気合の籠もった声を発する。
「後輩の為に良い所魅せちゃうぞ」
 溌剌とした笑顔で巣に向かって駆った。
 ヴァイスが双眼鏡を下ろす、肉眼でも確認出来る程度に煙が上がり始めている。
 特異な意匠の刀をすらりと抜いて、足下を確かめながら前進する。


 依頼人が後は任せたと退避し、ハンター達もそれぞれの得物の間合いに散開する。
「ハチ」
 久瑠我が呼べば、狼は居住まいを正し静かな目を向ける、メグを指して傍にと命じれば、吠えることも無くすっと移動し彼女の傍に控え周囲を警戒する。
 その様子を見届けると、刃の握りをグローブを軋ませ、固く握り締めた。高く昇った日が差して、鋭い刃の切っ先を燦めかせた。
 動きやすさを重視する装いの中、肌に蛇の文様が這い、仮面の奥で黒い双眸はその動向を縦に細めた。
 足音を極力殺して、静かに巣穴へと近付いていく。
「さーて、お仕事お仕事!」
 鎚を担いで足下を確かめる様に数歩、そして無雲は巣の近くまで前進する。
 歩いた感覚では、攻撃に差し障りは無さそうだ。踏み込むときに跳ねそうだが、水着なら然程気にならない。
 動くときに下駄の歯に気を付けた方が良いだろうか、鎚も横より、縦の方が振りやすそうだ。
 動きを一通り確かめて振りかぶる鎚が空気を薙ぐ。悲鳴の様な音が鳴った。
 水着の紐が渡るしなやかな背に赤い蜘蛛の痣が浮かぶ。全身の筋が硬く引き締まり、鎚を軽々と操りながら獣の巣を見遣る。
 ヴァイスも数歩足を進めながら畑の土の感触を確かめる。
 泥濘みに足を取られそうになることもあるが、ブーツが沈み込むほどでは無い。
「こんなところだな」
 膝下に跳ねた泥の跡を一瞥し、問題は無いと巣を間合いに捉えるまで進む。
 大剣を構え煙の回った巣を眺めながら、背後を1度だけ振り返った。メグは不安そうな顔でハンター達を見回している。
 今は彼女自身に任せよう、何かあればここからでもフォローは出来ると視線を巣に戻し、炎の様に揺らめいて立ち上る紅蓮の幻影を纏った。
 その炎は明るく燃え上がり、日中の陽光に照らされて尚赤々と眩い。
「コハクさん、終わったら綺麗に洗ってあげますから、思いっきり頑張って下さい!」
 鬣を持つ犬はノワに従いふさふさと尾を揺らした。
 ノワの髪がふわりと跳ねる。短い毛束が犬の立ち耳の様に上向いて風に戦ぐ。
 空を仰ぎ差し込む陽光を受けて輝く瞳は、様々に色を変えながら、畑の端に動き始めた獣を見据えた。
 位置を定めた八原は、巣を睨むように照門を覗き、足まで覆うグリーヴのスパイクを立てて、泥濘む中に不安定な身体を支える。
 エルフの紋様を刻んだ長弓を撓らせ、鞍馬の双眸が金に明滅する。近い的は狙いづらいその得物の射程を保って後退し、番えた矢の切っ先は鋭く巣の方へ向けた。
 杖を握り立ち位置を量るメグに、大丈夫だと言う様に視線を向け、静かに狙いを定めた。
「戦いとも言えない様な展開になると思うわ」
 煙に燻され、藻掻く様にふらりと巣から出てきたコボルトを貫いた一発の銃弾。
 八原が呟く様に告げて次の的を狙った。

 その銃声を皮切りに逃げ出してきたコボルトをヴァイスが灯火を纏わせた様に赤い光りを纏う剣を、仕込みの鎖で鞭の様にうねる刃で掻っ捌く。
 得物を取る間も無く倒れたコボルトが濁った声を響かせ、それはすぐに、他のコボルト達が立てるぺちゃぺちゃと慌ただしくも不揃いな足音に掻き消された。
 紅蓮の炎に目を奪われたコボルトが集まってくる。
 ヴァイスも、こちらだと誘う様に得物を構え直した。
「よいしょっと」
 そこへ振り下ろされた鎚。
 無雲の操る砦を思わせる大鎚の衝撃がコボルトの骨を砕いた。
 振り上げて、振り下ろす、大振りの鎚らしからぬ扱いに、畑を耕す様だと笑いながらマテリアルを込めたその鎚を再び振り上げて、次の敵へ狙いを付けた。
 休耕の畑は身を隠すところの乏しい。
 久瑠我はその地面を滑る様に走り真っ直ぐに巣に迫る。跳ね飛んだ泥が水溜まりに歪な波紋を重ねた。
 殴る要領で貫く得物を構え、巡らせるマテリアルで更にその動きを鋭く研ぎ澄ます。
 音を抑えて近付くと、ヴァイスに注意を向ける1匹、その喉を的確に裂いた。
 煙に朦朧と、深傷を負って定まらぬ攻撃が久瑠我の脇をすり抜ける。
 1体ずつ、確実に。止めを刺した刃に纏う血を振り払い、縦の瞳孔を開いて次の獲物たる敵を探す。
 傍らに控える狛犬とノワはマテリアルを通わせる。魔力を重ねて放った攻撃は牙を剥き爪を立てて飛び掛かる様に敵を捕らえる。
 反撃の脆い爪は丈を優に越す長柄に捉えていなし、再び攻撃に転じればコハクと呼び慕うその狛犬と同調する魔力が違わずに敵を貫いた。
 頑張りましたねと褒めて、けれど、敵への警戒は解かず、感覚を巡らせて次の攻撃に備えた。
 前に出て戦うハンター達の隙間をふらふらと抜けてきたコボルトの身体を貫いた矢が放たれた勢いのまま畑に沈み、その身体を泥の中に射止めた。
 鞍馬が次の矢を番えるまでも無く絶える。
 辺りを見回すと、まだ巣から出てくるものも、前衛を抜け出そうと煙に巻かれながらも畑へ進んでくるものも少なくない。息を吐いて番え直した矢の先を据える。

 飛び出してきたコボルトの最後の1匹を無雲の鎚が押し潰したが、巣の中からは微かな音が聞こえる。
 ハンター達も得物を構え、警戒を解かずに見据えている。
「まだいるみたいですね」
 ノワが巣を見ながら感覚を澄ませ呟く。
 煙に追われていないものがいるらしい。どこから出てくるのだろうかと見回していると、ハンター達の怪我を尋ねて前に出ていたメグの方へと、四つ足を突き跳ねる様に飛び出したコボルトが向かってきた。
 悲鳴を上げて竦んだメグの傍らでハチが吠える。
 その声に振り返り様に投じられたダーツの針がコボルトの腕を裂く。
 我に返ったメグが棍棒を振り下ろすが、手応えは浅い。
 コボルトは動きを止めたものの、飛び掛かる隙を覗う様に唸っている。
「こわい?」
 膝を震わせるメグに、八原が声を掛けた。見開いた目を潤ませて頷く。
 八原を振り返ろうとするのを留まらせ、コボルトに銃口を向ける。
「一方的に命を奪うのは抵抗がある? けれど、こいつ等は人の領域を侵したのよ」
 今日はこれで済んだけれど、放置して更に数を増やせば力を付けて村や町が襲われる。
 殆ど至近から、頭を撃ち抜いた銃声。メグの頬を温い返り血が伝った。


 散水用の井戸から水を汲み、動物たちの泥を落とす。
 水は矢張り冷たいらしく、ハチもコハクも泥が落ちると辺りに水を散らしながら激しく身体を震った。
 コボルトの亡骸の片付けを手伝って、依頼人と戻ってきたヴァイスが、畑の中で立ち尽くしていたメグに声を掛ける。足を引き摺る様に戻ってきたメグは手を震わせて項垂れていた。
 メグの髪にヴァイスの手が乗る。わしゃと髪を掻き撫でると、金色の目が柔和に笑む。
「自身で考え自身の意思を伝えることを放棄するな」
 ハンターは自身の意思で依頼を受けるのだから。
 メグの見開いた目がヴァイスを見上げた。
「いつかお前が何をしてもやり通したい時の助けになってくれるはずだ」
 怖がるなと言う様に頷いた温かな声。
 誰だって初めは初心者だと、巣穴まで残党を見回りに向かい戻ってきた鞍馬が声を掛ける。
 今日は尋ねるまでも無いほど怯えているようだから。
 久瑠我もメグの様子を見て掛ける言葉を探す。
 戦いに慣れた自身だからこそ、メグには今感じている恐怖や緊張を忘れないで欲しいと思う。
 落ち付いたら感想や反省を聞こうと、メグを守ったハチを褒める様に撫でながら、仮面越しに見詰めた。
 無雲も片付けの手伝いから戻り、泥を拭って着物に着替えている。
 メグがノワに声を掛けた。強張って震える指を解き、熱いほど体温の移った石を返す。
 ありがとうございました、この石がなかったら、きっと動けなかった、今も立っていられないかも知れない。
 そんな言葉を切れ切れに告げてノワの手にそっと石を載せた。
 それから、肩を揺らして息を継ぎながら、鞍馬と久瑠我を見上げた。
 黙ってしまってごめんなさいと、深く頭を下げる。
「……すごく、怖くて、動けなく、って、だから、……こわいから、戦わないと、いけないのに、わたし……」
 何も出来なかったと泣き出した頭に、ぽん、と精霊が跳ねた。

 この子と友達になるためにも、戦える様になりたい。半ば泣きながら告げたメグの指す先を躱し、精霊は彼女の死角でふわふわと揺れる。
 友達になりたいのになんて呼んだら良いのか分からないと、その精霊の名前に首を傾がせた。
 以前からその存在を知っているハンターは、無名だと聞き意外そうにその精霊を眺める。
「緑色だからな、リョク、ミドリ……」
 ヴァイスの言葉に鞍馬も頷きながら、ヴェルデと提案する。
 馴染みの無い音に首を傾げたメグに、リアルブルーの言葉で緑だと答える。
 メグが動く度に隠れる様に揺れる精霊を目で追いながら、考え込んでいた無雲がぽんと手を叩いた。
「らいむ、とか……?」
 無雲の提案にメグが瞳を輝かせた。
 砂糖漬け好きなんです。と手の甲で濡れた目許を拭って笑う。
 気に入ったらしくライムと呼ぶと、それを遮る様に背中に軽い衝撃を受けた。
「ボクあんまりネーミングセンス無いみたいなんだよねぇ」
 食べ物は不服らしい。抗議をする様に揺れる精霊を見て無雲は肩を竦めた。
「緑に光るから、ペリドット……ペリトちゃんとかどうだろう?」
 ペリドットという緑の石があると、久瑠我が尋ねるように精霊を見た。
「緑の石でしたら、スフェーンなどいかがでしょう?」
 人生を変える出会いという意味があるんですよ。と、ノワも提案し、呼び掛けるメグと、その背後で揺れる精霊を見る。
「……それから、ヒスイとか。平穏や安定、飛躍の意味を持っています」
 ヒスイ、とメグが呟いて久瑠我の方へと視線を向けた。
「ヒスイなら……ひーちゃん、ですね」
 ひーちゃん。
 呼び掛けると頭に何かが乗った様な温もりを感じた。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 6
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 弓師
    八原 篝(ka3104
    人間(蒼)|19才|女性|猟撃士
  • ドキドキ実験わんこ
    ノワ(ka3572
    人間(紅)|16才|女性|霊闘士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 明るい戦闘狂
    無雲(ka6677
    鬼|18才|女性|格闘士
  • 強襲の蛇
    久瑠我・慈衛(ka6741
    ドワーフ|18才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/02/27 18:05:19
アイコン メグの初陣お助け隊
無雲(ka6677
鬼|18才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2017/03/02 17:47:51