Pクレープ~対決!パルサラス

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~14人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/03/04 22:00
完成日
2017/03/18 02:11

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ここは同盟領のどこかの田舎村「ポカラ」近くの草原。
 ……ではあるのだが、すでにポカラは、ない。
 ないというか、建物がすべて壊され廃墟となっているのだ。
 もちろん、人もいない。
 なぜなら――。
「奴さん、少し身動きするようになったかなぁ」
 ポカラ跡地からかなり距離のある一本木に隠れつつ双眼鏡を覗いていた自称「戦場詩人」のダイン・グラマンがつぶやいた。背後には愛用の魔導バイク。
 村の廃墟の真ん中に、小さな丘のような物体がででんと存在している。
 それこそ、村を壊滅させた巨大浮遊歪虚「パルサラス」。きのこの傘の形状で、前方に空いた大きな丸い穴は主砲である収束胞子砲の発射口。ビーム状の砲撃で村の家屋を壊しまくったのである。
「ふん。奴は力を蓄えてるに違いないではないか。それなのにわざわざ時間を与えるようなマネを……」
 ダインのバイクの横にいたマッハ・リーはそう鼻息を荒らげる。またがる赤い魔導バイクのカウルに「兵飛神速」の文字。「兵は神速でかっ飛ぶ」が信条だ。
 現在、ダインと組んで偵察に来ていた。
「んじゃ、このまま攻撃した方がいいのかねぇ?」
「馬鹿言え、偵察任務は偵察まで。……それにしても、なぜにパルサラスと呼ばれているのだ?」
 マッハ、改めて聞いてみる。
「主砲発射口のさらに上にパルムが晒されているからみたいだねぇ」
「パルム一匹が人質か?」
 もしもそうなら許さぬ、と義憤に燃えるマッハ。
「あれは飾りらしいね。ほら、シャチの目みたいな模様が実は目じゃない、みたいなとこ」
「まあいい。しかし、なぜすぐに討伐隊を組まんかな?」
「先に刺激して『ソサエティが先に手を出したから近隣村に被害が出た』とは言われたくない、ってところだろうねぇ」
 ダイン、達観している。
 実際、大鑑巨砲のパルサラスには、護衛としてパルサラスより小型だが魔導トラックなどよりも大きなブラブロという俊敏でやはり前部に主砲を持つきのこの傘型浮遊歪虚が付いている。こちらは日々、活動範囲を広げている。
 幸い、近くに村はない。
 ただ、いつまでここに留まっているかしれたものではない。
 近隣村からは早期討伐の依頼が来ているが、遠距離射撃だけに頼った攻撃では抜かれる危険性が高く、近接戦闘では圧倒的な質量差から大被害が想定される。少なくとも、ユニット依頼にして充分な戦力が揃うまで時間が掛かるのだ。
 なお、村人は「とある商人」が手引きして移住した。
「で、南那初華(kz0135)たちが遭遇戦闘したのだろう? 何か情報は?」
「砲撃でも体当たりでも建物を壊してきて、周りには銃撃レベルの胞子をばらまき。移動災害そのものらしいねぇ」
 浮いた状態での巨大砲砲撃なので発射と同時に本体が揺れて照準はいい加減。ただし、ビーム状だから威力減の薙ぎ払い射撃になる。
「決まりだな。西にあるくぼんだ川辺にCAMでも寝そべらせて一斉狙撃で終わりだ」
 ふふん、とマッハが西を指す。前回、住民が避難した場所だ。
 そこに、周囲を警戒飛行していたブラブロが戻って来た。
「あれがいるから怪しいねぇ」
 ダインがぼやいた時だった。
 ――ぐ、ぐぐぐ……。
 廃墟の村に鎮座していた巨大なきのこの傘が、浮上したのだ。
 いや、違う!
「何だ、足があるじゃないか」
 二人は、見た。
 今まできのこの軸の部分がなかったが、細く長い三本の軸――いや、脚となって本体を持ちあげていたのだ。それぞれ関節部が一つあり、丸い球状となっている。そこを支点に折りたたまれていたようだ。
「まずい。こっちを向いたねぇ」
 慌ててバイクでその場を離れる二人。
 ――ぱうっ!
 砲撃、来たっ!
 どすっ、と一本木が吹っ飛ぶ。
「……射撃、正確だねぇ」
「あの足で安定したということだろう。とにかく奴は動いた。やっちまっても問題あるまい」
 逃げながら報告書の文面を考える二人だった。

 というわけで、早急に討伐隊が組まれることになる。

リプレイ本文


 決戦の草原に風が渡る。
「酷いもんだね」
 先日まで一本木の立っていた丘に隠れ、ミリア・エインズワース(ka1287)が眉をひそめた。
 見詰めた小村「ポルカ」はすでに村中の建物が崩壊し、廃村というにもむごたらしい姿をさらしていた。
 その中心に不自然な形で小さな丘がある。
 実は丘ではなく大型歪虚であるが。
「あれがパルサラス。そしてその近くを飛んでいるのがブラブロ」
 同じく大地の抉れた丘に身を伏せ隠れながらアルバ・ソル(ka4189)が説明した。
 その時だった。
 ――ぐぐ……。
 突然、パルサラスが立ち上がったのだ。
 キノコ型の傘というべき巨体の下に畳んでいた三本の足を伸ばす。関節部には大きな球体がついている。
「気付かれたのか?」
 アルバ、さらに身を低くした。
 パルサラスの方は左右に体を振りながら、主砲一閃。
 前部の大型開口部から収束胞子砲がビーム状に伸び、草原に円弧の爪痕を残す。
「気まぐれに撃ったようですね……」
 アルバの横にいたリラ(ka5679)がぽそり。
「おい、何があった?」
 着物「荒磯」のたもとをなびかせながら榊 兵庫(ka0010)が背後から慌てて丘を上って来た。
「見つかったわけじゃないよ。砲撃訓練でもしたんじゃないかな?」
 ミリアが少年のような口調で返す。
 振り返った先――つまり、丘の下にはCAMや魔導アーマー、魔導トラックがずらりと並んでいる。ミリアの連れて来たイジェド「ざんぎえふ(ka1287unit001)」も大人しくそこで待っている。鼻先を上げて見詰める瞳が主人の言葉を待っているようでもある。ミリア、首を振ってやると伝わったようで、クリーム色の体毛に覆われたずんぐりむっくりした体でおすわり。大人しいものだ。
 一方、大人しくない者もいた。
「アイツ、酷いのよ! 壊した建物もさらにコテンパンにしてさ。まるで壊すの楽しむように……」
 魔導トラック「Pクレープ」の前で南那初華(kz0135)がまくしたてていた。
「高威力の武器を持つとそうなるのは分かりますの。でも……」
 八劒 颯(ka1804)が自身の体験を顧みて一定の理解を示すが、きっぱりと違いについて説明し否定しようとする。
「村の惨状を考えてもこの2体、けして野放しには出来ない……ざくろのアルカディアは、こういう時の力なんだ!」
 颯の心中を力強く代弁した時音 ざくろ(ka1250)が振り返る。そこにはR7エクスシア「魔動冒険機『アルカディア』(ka1250unit002) 」の雄々しく立つ姿があった。
「ん……ですが、敵はコンビネーションを組んでいるようですね」
 サクラ・エルフリード(ka2598)が現実的な話をする。
「大丈夫。サクラと颯と一緒に、いつものように大冒険だ!」
 ざくろ、冒険団仲間と意気を上げるのだった。

 一方、初華は怒りが収まらない。
「まったく、私がもうちょっと強かったからぎったんぎったんに……」
 だしだし地団駄踏んだところで肩ぽむされた。
「まあ、今度は敵が分かってるんだ。こっちが壊すのを楽しませてもらうぜ」
「店長はここから動かないように」
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)が自信たっぷりに笑っている。そして真田 天斗(ka0014)が初華が余計な行動をしないようくぎを刺した。
「って、ボルディアさん前回地味に無茶してたでしょ? 天斗さんも無茶しちゃダメなんだからねっ!」
「はいはい」
「心に留めておきましょう」
 逆に噛みつかれたがボルディアも天斗も涼しく受け流した。
「珍しいですね」
 その荒れた様子をやや離れていた場所で見ていたGacrux(ka2726)、何か思いを胸に背を向け丘の上を目指した。
「前回、それだけ好きに暴れられたからねー」
 すい、と横にメルクーア(ka4005)が付く。
「そうですか……それにしても、ああいう初華はあまり見たことがないので」
「村人との交流も楽しみにしてたところ、あれじゃねぇ」
 あたしも前回残念だったし、とメルクーア。
「屋台の前で初華の笑顔がなくなると……寂しいものです」
「それもそうねー……とにかく、許さないぞー!」
 静かに歩きつつも闘志をみなぎらせる二人だった。
「ま、仕方ないのかもしれん」
 その横に柊 恭也(ka0711)がついた。
「どうしました?」
「遺恨があるのが集まったようだ。こうなると作戦も何もないな」
 聞いたガクルックスに恭也が諦めたように言う。
「パルサラスとブラブロを分断して各個撃破するくらいなら問題ないだろう。それに、西の川には影響のないようにする、というのは大丈夫そうだ」
 ロニ・カルディス(ka0551)も横に付いた。皆に確認して得た共通認識を伝える。
「ブラブロの方は任せるのじゃ。以前の依頼も読み込んで対策を練って来たぞ」
 ミグ・ロマイヤー(ka0665)も加わる。
 そして丘の上。
「よし、また脚をたたんだ。動くなら今だろう」
「ブラブロもまた離れそうです」
 アルバとリラが身を翻して三人と入れ違いに丘を下った。
「あ、メルクーアさん。僕とメルクーアさんが最初に出撃で良かったよね?」
「出撃? よーし、やるわよ~」
 ミリアに呼ばれ一緒に丘を下りるメルクーア。
「俺はおとなしく射撃手に徹する事としようか」
 やれやれ、と顎を撫でる兵庫。
「……連射はできないようですね」
「とはいえ、撃った直後だとまだ立っているからその分射程が長いままか」
 ガクルックスと恭也、先の砲撃痕を確認してから出撃準備に移る。



「ざんぎえふ。頼むぞ」
 サドル「アフスタールセ」をしつらえたイジェドに跨ったミリアが風となる。
「そう言えば別に最初に出撃するわけじゃないわね」
 続いて、A1(魔導トラック)(ka4005unit001) に飛び乗ったメルクーアも出撃する。
 実際、メルクーアの言う通りだ。
「あーあー、全機聞こえてるな? A、B班に分かれて、東側から全機で仕掛ける」
 ギガント(魔導型ドミニオン)(ka0711unit001) のコクピットに収まった恭也が全体の指針を再確認。
 東側から、全機で。
 戦力の逐次投入という愚は犯さない。
 もっとも、固まれば広範囲兵器で一網打尽ではあるが。
「ま、移動力の差でどうせ散らばる」
 ギガントの速度を上げつつ周りを見る。
 移動力自慢のイジェドと魔導トラックが先行することとなる。

 こちら、ロニ。
「慣らし運転も碌にできていないが……」
 操縦する最新型のR7エクスシア(ka0551unit003) はロールアウトしたばかりの機体で、まだ完熟できてない。というか、名前すらまだない。
「今回に限ってはちょうどいい」
 落ち着いて言うのは、東へ移動する隊列から遅れているから。
「収束胞子砲に纏めて狙われることもないだろう」
 ちら、と横を見る。
 そこには同じく遅れている機体があった。
「何と言ってもブルーアースのサブカルチャーの影響をもろに受けて重装改に改造してしまったからな!」
 ミグのハリケーン・バウ(魔導型ドミニオン)(ka0665unit002) である。いかにも重たそう。
「重装甲と重火力と知力で歪虚に立ち向かうミグは向かうところ敵なしである」
 えへん、という息遣いが通信機越しに聞こえて来る。
「ミグも足の速い方の敵だろう?」
「何、知力で戦えばいい。足の速いのは放っておいても寄って来るじゃろ!」
 やはりえへんという息遣い。
「いいだろう。まずは分断だな」
 ロニ、魔銃「ナシャート」を構え撃った。
 非実体弾が遠くの敵に向かって行った。

 その少し前。
「あちゃ、先にブラブロが来たか」
 ミリア、しばらく東に走っていたがブラブロの接近に顔をしかめた。
 それより東側を走っていたA1操縦席では、メルクーアがハンドルを回していた。
「さあ、アルケミストタクト。あたしに力を貸して」
 メルクーア、主武器の魔導機械から流入するマテリアルを身体中で感じた。
 そしてトラックにしつらえた30mmアサルトライフルの銃口に敵を捕らえる!
「1年前とは違うぞー、見てろ~」
 ドン、と射撃。狙うはブラブロのクロー。
 が、敵は高速移動中。確実にヒットさせるのは至難の技。
「でも牽制になれば……」
 言いかけて、やめた。
「ざんぎえふ、かわすぞ!」
 目の前ではミリアがブラブロの突撃の直前に横っ跳びしてかわした。たかかか、とばらまく胞子砲を食らったのと、何より衝撃に持って行かれて後肢のバランスが崩れた。
「いいだろう。まずは分断だな」
 この時、ロニの援護射撃も来た。ぱすっ、とブラブロ本体に後ろ側を掠った。高速移動の横から狙うのはちょいと難しいようで。
「あれがブラブロか、なるほどでかいな……ふむ、反転して逃げたトラックを完全に追い掛けるようじゃの」
 横のミグの言葉。
 ロニとミグはこの場に残ったが、他の機体は軒並みブラブロとは反対のパルサラス方面に進路を変えていた。
 分断成功である。
 そして場面はメルクーアに戻る。
「加速……本格的に狙ってきたってことね!」
 ぐあっとブラブロ、一直線。
 このままいくとあっという間に距離が詰まる。しかも明らかに狙われている。
「ちょっとぉ、牽制どころか鬼さんこちら、だわね!」
 狙われたメルクーア、ばたばたハンドルを回して慌ててUターン。さらにぱちんとボタン操作。
 ばすっ、と後ろにスモークを張った。
「ついでにターボブースト!」
 ぐいん、とアクセルを強く踏み込む。ヒューンという甲高いターボ独特の唸りが響き、加速。斜め方向に逃げた。
 間一髪、先ほどいた空間にブラブロの巨大クローが振り下ろされていた。



「よし、ここから折り返しだね」
 R7エクスシア「アルカディア」のざくろ、人型兵器としては一番東側深くに抉り込んでから西へ向きを変えた。まずは東に開いたのは、南と西にしか遮蔽物がなく初期配置できなかったから。加えて、西は生活用水が流れているため戦場にしたくはなく、南は最初からパルサラスが正面を向いてまっすぐ突っ込めなかったから。
 ただ、この動きは隊列のばらつきにつながった。
「魔導ローラー「デスティーノ」の威力を見るですの!」
 冒険仲間の颯。機体は四足に改造したGustav(魔導アーマー量産型)(ka1804unit002)で続いている。両手のドリルは近寄って穿つため。そのため移動力にもこだわった!
「ブラブロにこちらは用はないのです……。こちらの班の目標はあのあぷ……もといパルサラスのみ…!」
 同じくサクラの魔導型デュミナス(ka2598unit001)もブラブロの突っ込みを無視して転進していた。ざくろや颯よりもかなり後方。ただし、パルサラスからは扇状に近いため距離は変わらない。
「さて、前回の借りをお返ししましょうかね。倍返しで」
 天斗もサクラの近くにいた。
 駆るは魔導型デュミナス「絶影」(ka0014unit001) 。
 手にはぎらりと魔導機爪「アポテフロスィ」の三本爪。近寄らなければ意味がない。
「ちょうど二手に分かれる形になりますね」
 改めて隊列を確認したサクラが呟く。
 イジェドのミリアを中心に、後方広く左右に近接二機が続いている形だ。
 さらにこれより南側の遠い場所。
 つまりスタート地点近く。
「本来の戦いが出来ずに不満かもしれないが、今回は堪えてくれよ【烈風】」
 兵庫がここにいた。
 烈風(R7エクスシア)(ka0010unit004)に片膝を付かせてロングレンジマテリアルライフルを構えている。
「マジックエンハンサー展開。魔導エンジンの出力を上昇……」
 R7エクスシアならではの機能を起動。背部にある円形のマジックエンハンサーを展開。魔導エンジンの出力を上昇させマテリアルの力を高める。威力命中とも高め最初の一発を狙う。
 その時だった!

 ――ぱうっ!
 突撃の先頭を行くミリアに、ついにパルサラスの強力な主砲が火を噴いた。
「ざんぎえふ、ジグザグだ!」
 ばりばりばりっ、と一直線に大地をえぐる収束胞子砲。
 ミリアとざんぎえふ、間一髪かわしている。それまでのジグザグステップが生きた形だ。
「……偶然だけど、鋒矢陣形に近くなっていたこともあるか」
 抉れた小石と衝撃波を受けつつ、横なぎの一撃ではなかったことに安堵するミリア。速度が落ちた分、後続も追い付いて来ている。より鋒矢陣形に近くなった。
「よし、ここだ」
 この隙に恭也のギガントがアクティブスラスターで飛んで来た。着地とほぼ同時に大型兵器、ツインカノン「リンクレヒトW2」を腰溜めに構える。
 きっ、と見上げてパルサラスを見据える。
 そこに遠方からの射線。
 兵庫の烈風からロングレンジ射撃だ。パルサラス本体に命中するが、敵は衝撃で一瞬傾いただけ。主砲発射口を狙ったようだが横合いからでは難しかったようだ。
「長距離射撃ができるからって離れてばかりもいられねぇな。距離を詰める!」
 兵庫、反撃の可能性を考慮に入れ直線ではなく斜めに距離を詰めた。
 そして近接部隊はかなりパルサラスに近寄っている。
 恭也、口元を引き締めた!
「反動制御用補助脚、展開。バーチャルヘッドマウントディスプレイ「ヴァイトゼーエン」、装着……」
 どっしりしたドミニオンMk.IV強化改修型の膝から下が細かく変化する。補助脚展開で命中力を高めたのだ。回避はやや低下する。加えてヴァイトゼーエンでさらに命中を高める。半面、負担増によって抵抗力が低下するが、いまこの時にそんなマイナスの影響は些細なことだ。
「ドミニオンの性能上、中距離砲撃が限界」
 二連の砲口がぴたりと決まる。照準は固定した。
「さぁて、動くなよっ、と……」
 どうん、どうんと二連砲が火を噴いた。
 ――ぼふっ、がくん……。
 狙った補助脚の内の一つの球体関節に命中。
 バルサラス、体勢を少し崩しただけだがその動きが主砲発射口の揺れにつながる。
 味方はこの隙にさらに近付いた。



 こちら、ブラブロ班。
 先行しブラブロの標的となったメルクーアに、CAMなど人型六機が続いている。
「すまねぇが、先に試させてもらうぜ?」
 第二陣先頭にいたボルディアの乗機は、炎帝(R7エクスシア)(ka0796unit003)。野性味あふれる流線型の装甲を持つ機体で、炎をイメージしたカラーリングが人呼んで「炎砂の獣王」の彼女に相応しい。
 ざっし、ざっし……ぼうっ!
 その炎帝、走ってメルクーアのA1を追う動きからスラスタージャンプ。
 同時に可変機銃「ポレモスSGS」を構え射撃。
「ん?」
 この音にメルクーア、気付く。
「味方が来たならお願いするしかないわね」
 きゅきゅ、と左にハンドリング。追っているブラブロは大きくオーバーしてから左に向きを変えていた。
「もらったぜ!」
 そこの前に炎帝が着地。同時に鉄の棒ともいうべき外観のMハルバード「ウンヴェッター」を構える。同時に柄にあるトリガーを引く!
「噛み砕け、砕火ァ!」
 ボルディア、馴染んだ技をスキルトレース。構えるウンヴェッターに非実体の刃。魔法攻撃だが、武器自体は斧の特性を残す。当然、斧で使える「砕火」も使える。
 が、ブラブロも気付いている。身をひねって巨大クローが向かってくる。
 ――ガガッ! ドカッ!
「おわっ!」
 炎帝、吹っ飛んだ!
 ただ2度斬りによりブラブロも本体左側を大きく削られている。この影響で敵の速度は少し落ちることとなる。
 そこに、次なるR7エクスシア(ka2726unit003)がスラスターで突っ込んできていた。
「その目、もらって行きますよ」
 ガクルックスである。
  ワイヤードクローを射出せず、クローの部分で横にらみしてくる瞳を狙った!
「よし。……むっ!」
 見事、瞳に突き刺さった。
 その分速度に引きずられバランスを崩し吹っ飛んだが。
「今度こそ、逃がしはしない」
 後続は、アルバ。R7エクスシア(ka4189unit002)に持たせたマシンガン「プレートスNH3」で弾をばらまく。
「決めた。プリネアだからね?」
 アルバと一緒のリラは、これまで決めかねていた乗機、R7エクスシア(ka5679unit002)の名前を初めて口にした。魔法使い然とした風貌を持つ薄紅色の機体は返事をすることはないが、握るスティックの手ごたえはいい。
「お願い、プリネラ」
 Mハルバード「ウンヴェッター」を手に弾幕を張ったアルバ機の背後から躍り出て通過しそうなブラブロを狙った。
 目をやられているなら確実に入るはず!
「え? ……きゃっ」
 しかし、敵は寸前で傾いてかわした。しかもクローを合わせて来てこれをもろに食らうことに。
 この様子を、最後尾にいたロニとミグが見ていた。
「見えているな」
「リアルブルーの漫画本にドハマりしたミグになら分かるぞ。おそらくサブカメラがあちこちについておるのじゃ」
 冷静に観察するロニに、あれだけの大型なら当然じゃといわんばかりのミグ。
 とにかく、二人が結果的に隊列最後尾にいたのは、パルサラス側から見たら最前線に位置するから。つまり、ここから先に行かすわけにはいかない。
「少々の射撃ではびくともしないようだな。ならば……」
「対空兵器としても優秀らしいの。支援砲撃は任せるのじゃ」
 円形シールドでもあるマテリアルドリルを構えてスラスタージャンプするロニ機。援護射撃するミグは大口径の機関砲「ゴルペアール」をだかかかか……とばらまく。たまらず軌道を逸らすブラブロ。もちろん、ロニはそこに突っ込んでいた!
 しかし、近付く敵の迫力も怒涛!
「シールドバッシュ、使えるかっ?!」
 身の危険を感じたロニ、普段自分の使うスキルをトレース。ぶっつけ本番だ。ドリル付きの盾をいつもしているようにがっちり構えて敵の体当たりを受ける準備をする。
 ――どごぉ……。
 両者、斜め対角に吹っ飛ぶ。
 もちろんこの一連の流れによりブラブロがパルサラス方面に飛び抜けることはなかった。
「逆に私が追う立場になったわね~」
 ここにメルクーアが突っ込んできている。
 それまでは追われるばかりで守勢に回っていたが、接敵した時以来の正対の形。
 いや、敵の背後を取っているのだ。
「これなら後ろの推進ユニットに当たるでしょ?」
 銃声とともにブラブロの後部が跳ねた。命中である。
「よぉし、今だ」
「ここしかないですよね?」
 ボルディアの炎帝、そしてガクルックス機がこの隙に殺到した。
「パルサラスは大丈夫だ!」
「おとなしくしてもらいます!」
 援護射撃しながらパルサラスの主砲を気にするアルバ。リラ、安心して突っ込む。
「頃合よし。あれをやる時がきたようじゃの」
 ミグも感じ取ってブラブロに急ぐ。
 秘策、いま陣を描くとき――。

 ――バシュッ……ガキィ……。
「一番拘束、とったぁ!」
 ボルディアの炎帝がショットクロー「スカロプス」を発射し敵を絡めた。
「この戦場にて確実に狩りきるのじゃ!」
 ミグ機もショットアンカー「スピニット」を発射。
「正面からの砲撃は怖いですからねぇ」
 側面に回ったガクルックス機、先は発射せずに使ったワイヤードクローをついに射出。
「いっけーーーー!!」
 リラのプリネラも、渾身のショットアンカー「スピニット」。
 四機のチェーン付き固定兵器で、ブラブロを見事X字に拘束した。
「やったわね!」
 走り抜けたメルクーア、バックミラー越しに味方の作戦成功ににやり。
「よし」
 ロニは、アギオミカニエンブレムを頼りに静かな鎮魂歌に聞こえる旋律を響かせる。レクイエムで拘束したブラブロを念のためさらに行動阻害するつもりだ。
「地面に落として動きを止めてやる。せーのっ!」
 ボルディア、息を合わせて大地に叩きつけようとする。
 その時だった!
 ――パウッ、ぶうん……。
 何と、ここで前部主砲発射。
 狙いは……どこを狙ったわけでもない。後部推進をやめて主砲のみ発射することで反動推進を狙ったのだ。そのまま身をひねる。
「お?」
 ぐらっ、と一機がその動きの影響を受けチェーンごと引きずられた。
「何だと?」
 その一機を見たボルディア。拘束したショットクローの射程は、「5」。
「そんな」
 同じくリラ。拘束武器の長さは、「4」。
「4機で押さえておったつもりが、長さの短かったその一機に負担が集中しておったということか」
 同じくミグ。リラと一緒で「4」。
 ――ぶうん……。
「機体制御……ぐっ!」
 その一機はガクルックス機だ。
 いち早く危険を察知したガクルックス。あらかじめアームにつかまれて投げられることは想定していた。その場合の姿勢制御と着地はシミュレーション済みだった。
 が、射程「3」の長さを介して投げられるとは思わずタイミングがずれた。
 ――どがっしゃ~、ん……。
 これは致命的な投げとなった。機体損傷はそこまででもないが、内部の操縦者にもろに衝撃の伝わる落ち方をした。もちろん、ガクルックスのR7エクスシア、ぴくりともしない。
 振りほどく動きはそれだけにとどまらない。
「ちくしょう!」
「そんな……」
「おのれ」
 拘束バランスの崩れたボルディア、リラ、ミグの三機もバランスを失うのだった。



 場面はパルサラス班に戻る。
「ここだ。こっちを向け!」
 遠くから伸びる射線。
 兵庫は全長650cmのロングレンジマテリアルライフルをまだ使っている。
「撃ち合いに応じないのか?」
 また一射。
 実家は古武術【榊流】の家系。兵庫本人も祖父から刀槍などの扱いを学んできた。
「そっちの得意に合わせてるんだ。付き合ってくれてもバチは当たるまい?」
 と言ったところで、ついに被弾を繰り返していたバルサラスがこちらを向いた。
 ――どっ……。
「一箇所に留まるは誘い。振り向けばそこにはいないってね」
 アクティブスラスター、まだ使用制限は残っている。
 ――ばりばりばり……。
 敵主砲が大地をえぐり一直線に伸びてきた時にはすでに兵庫機の姿はない。
 先の恭也の射撃と合わせ、これが大きく戦局を左右した。

「収束胞子砲を喰らうわけにはいかない…ダッシュだアルカディア」
 この隙にざくろ機、アクティブスラスター一閃で兵庫機に向いたパルサラスの背後を取った。
「例えどんなに巨大な敵だって、ざくろ達が力を合わせれば絶対負けない! 魔動ランチャーエネルギー充填120%……」
『ピーガガガガ』
 すかさずMライフル「イースクラW」のチューブを伸ばし機体と接続しカートリッジからマテリアルを補充する。操縦席のざくろの横に浮く2体のサポートロボ、アルカとディアのテンションも上がっている!
 その背後を、四足の何かが物凄い勢いで通り過ぎて行った。
「ざくろは狙うがいいですの。はやては……」
 通過しつつ友軍機を見上げ、信頼の声を投げる
 そしてその奥のパルサラスの巨体をきっ、と見詰めた!
「はやては伊達や酔狂でどりる機導師やってるわけではありませんの!」
 まだ接近するつもりだッ!

 この時、サクラ。
「粒子砲がチャージされる前に一気に接近した方がよさそうですね…。突撃支援はさせて貰います…。多少は硬いですから…」
 側面に回り込もうと急いでいたが、そちらにパルサラスが向いた。ざくろと颯が右に展開し敵後方に着く動きをしているのは確認した。
「よろしいですね。……さて、まずはあの足のどれかを頂きましょうか」
 同行する天斗も同意した。
 アクティブスラスターで二機が右にずれ、先ほどまで敵正面で今は敵側面の位置を取るべくジャンプした。
 その少し手前。
「ざんぎえふ。あの奥の足を狙うよ。ボクについて来てくれるよね?」
 ミリアが敵の下を通過し、味方に手前の足を譲るという作戦に出た。
 危険を伴うがミリアが奥を狙うことでほぼ一斉に三本の足に攻撃ができる戦法だ。
 ミリアを乗せて疾走するざんぎえふの頭がやや下がった。
 覚悟を決めてくれたのだ。
「ありがとう。よーし、そうとくれば……」
 元気に、明るく斬魔刀「祢々切丸」を掲げた。やや突撃の軸線をずらした。奥の足に一直線に向かう位置取りとなる。
 それを、背後に回ったサクラと天斗が視認する。
「どうやらあの脚を譲ってくれるようですね」
 天斗、ミリアの動きから狙いを手前の足に定めた。魔導機爪「アポテフロスィ」を装着した腕をやや下げ、引き続き高速接近する。
「足が折れて落ちて来ることはないでしょうけど…粒子砲の命中は下がるはずです…!」
 さくら機は長大な突撃槍「ヘビーイグニッション」とCAMシールドを構える。デュミナスに乗っても戦闘スタイルは生身の戦いと変わらない。
「ん、デュミナスでの出撃も久しぶりですね……高速演算」
 天斗機、さくら機、ともに攻撃体勢。
 頭上ではパルサラスが主砲斉射。兵庫を狙ったのだ。もちろん兵庫、避けている。
 これが合図になった!

「……いっけぇぇ、マジカルシュート!」
 後背のざくろ機、ついにMライフル「イースクラW」を発射。三本足のうちの一つの関節球体を射貫く。
「これが僕の神速の突きだっ!」
 瓦礫を足場に軽快に突っ込んだざんぎえふ。鞍上のミリアが身体をいっぱいに伸ばして頭上の関節球体を狙う!
「強化した機体の性能、見せる時です…」
「一気に潰させていただきます!」
 先に恭也の狙った球体の足には、サクラと天斗が突っ込んでいる。
 ――どかっ、どかかっ……。
 ざんぎえふ、サクラ機、天斗機が攻撃をして着地。
 しかし!
「そんな、ボロボロのままで立ってるなんて」
 射撃後見上げるざくろ。思わず構えを解き接近。
 パルサラス、脚の球体はほぼ破壊され、細い足もぐらぐらながらまだ身を崩すなどしていない。
「そんなことだと思いましたの」
 そこへ、大きく回り込んでいた颯のグスタフが最接近している。
 それだけではない。
「前回のお返し、倍返しです!」
 何と天斗、ワイヤードクロー射出。
 パルサラスの傘に引っ掛けるとハイパーブースト。確実に、余力を余るくらいの能力を集中させて……。
 バルサラス本体の上に乗った!
 ここからは一瞬だ!



「はやてにおまかせですの!」
 この時、敵後背真下を取った颯が奥の手を使用。
 何と、四本足のグスタフが一瞬壊れたかのような意味不明の機敏な動きを見せた後、ぴょーんと大ジャンプしたのだ。魔導アーマー用の高速機動モード、バトルダンス・バタフライである。
 その勢いのまま敵後部の傘の下にアーマードリル「轟旋」をぶっ刺す!
「びりびり電撃どりる!」
 スキルトレースで愛用のオリジナルスキル発動。電気を纏った螺旋のドリルが敵を穿つ。
 ――がくん……。
 その反動でパルサラスが前傾姿勢となる。
「これで発射口にも届くですの!」
 颯、もう一度バトルダンス・バタフライで今度は前傾姿勢になった正面に行こうとする。

「これは……」
 時にパルサラスの上に乗ったばかりの天斗がこの巻き添えを食らう。ぐらりと揺れたのだ。
 下りるか?
「いや……」
 覚悟を決めた天斗。傾き下を向く敵の主砲発射口を見据える。
「な、なにするの? 天斗さん!」
 実際にはここにいない初華が、そう言ったような気がした。ふ、と自嘲気味な笑みを浮かべる天斗。
「店長が知ったらまた怒られてしまいますか。店員失格ですね……」
 呟いてから、再びスラスターオン!
 ――どうっ!
「その発射口頂きます!」
 アーマーダガーを構えて砲口の前に飛び出した。撃たれる前にスラッシュエッジの飛燕を叩き込む!
「ん?!」
 見事、攻撃は入ったが前のめりになった敵は前足がつっかえていた。思ったより前方に移動しつつ……。
 ――ずず……ん。
 上から前に回った天斗のR7エクスシアがもろに下敷きとなり、下から前に回ろうとした颯のグスタフがややこれに巻き込まれ潰される。

「え?」
 攻撃して駆け抜けていたミリア、振り返って目を疑う。
「おい、まさかやられたんじゃないだろうな?」
 一番遠距離にいた兵庫は中距離まで近寄っていた。この事態を目の当たりにしてロングレンジマテリアルライフルを手放し、より火力に勝る30mmアサルトライフルを構えぶっぱなす。
「バランスを崩したなら今がチャンスです…! 一気に畳み掛けて救出しまいましょう…!」
 サクラ、ジャッジメントは寸前で中止しホーリーセイバーで渾身の突き。
「天斗の敵は取る! アルカディアビーム!」
 ざくろはデルタレイ。エクスシアの額と目の三点から光の筋が伸びていく。
 が!
 ――どふっ……ドゴォッ!
 全周胞子砲の前部のみを発射し体勢を整えると低空のまま主砲発射。しかもわざと回転しながら扇状にぶっ放した。威力を捨てて形勢逆転を狙う範囲掃射だ。
「くっ……おい、本当にやられたんじゃないか?」
 恭也、シールド「ストルクトゥーラ」を掲げがっしりと耐える。威力を捨てたとはいえモロに食らっているのでひどい軋みが伝わって来る。
「建物も一発で吹っ飛ぶわけだな……ん?」
 そして気付く。
 パルサラス、主砲発射口をこちらに向けて体勢を整えていたのだ。
 主砲は撃った後。横からカットインなどではなく、今ならじっくり狙える。
「さぁて、俺の技量が試されるぞ……」
 すかさず盾を捨てる。この一撃に懸けるのだ。二連カノンをしっかり構える。
「……っと!」
 発射。
 伸びる実体弾が見事、敵主砲発射口を捉えた。
 たまらずまたもバランスを崩すバルサラス。
「ん、助けます」
 サクラ、天斗機を連れて離脱。
「お前を倒し、ざくろは颯、サクラと添い遂げる!……冒険パワーオン、ブレストヒートレイ!」
 ざくろもスラスターオンで滑り込むように突っ込んだ。
「大丈夫?」
「はやては無事ですの」
 ミリアが駆け付けると、グスタフは移動できる様子。アルカディアの拡散ヒートレイがヒットする隙に自力離脱した。
「あとはひたすら……」
「撃ち込むだけだ」
 全周砲撃など繰り返し周囲の掃討に切り替えたパルサラスに対し、とにかく火力で押す兵庫と恭也だった。



 そしてブラブロ。
「ちょっと、ガクルックスさん大丈夫?」
 ぶきゃきゃきゃ、と激しくUターンするメルクーアのA1。拘束していた4機を振りほどいたものの反動でぐらぐらしているブラブロにアサルトライフルをぶち込みつつ心配する。
 ぐらっと揺らぐブラブロ。
 これで完全にバランスを崩した。
 それ以前に、得意の高速移動を止められたのだ。
 ブラブロにとってすべてが計算外だろう。
 そんな戸惑いも感じられる不安定な状態だった。

「ん?」
 この時、拘束作戦には参加せずパルサラスの方を見張っていたアルバが振り向きまるで時が止まっているかのような体験をしていた。
 アルバは知っている。
 こんな劣勢に立たされたブラブロの姿を。
 一瞬で思い出される前回戦った時の記憶。
「お前は覚えているか? ……僕の事を」
 機体のスコープからブラブロを見遣り思わずつぶやく。
 前回、後一歩まで追い詰めながら結局逃げられた。
 逃げる前、どうしたか?
「僕は知っている。こいつは危急になれば上空へと退避することを」
 マジックエンハンサー展開。エネルギーゲインして走る。
「その癖もタイミングもよく覚えている」
 ブラブロ、底部全体からブラウン・ブロウ。一気に上空に逃げようとする。
「だから今度はそこを狙う!」
 アルバのエクスシア、半身で滑り込みつつ魔銃「ナシャート」を構える。そして叫ぶのだッ!
「リラ!」

「アルバ?」
 立ち上がったプリネラで、リラがアルバの呼び掛けにこたえる。
 すぐに狙いが分かった。マジックエンハンサー展開。ブラブロの下、アルバと別の角度に急いで移動するとMハルバード「ウンヴェッター」を魔法の杖のように掲げる。
「あの村の仇です! おちなさい!!」
 リラの叫びでマテリアルライフル発射!
 これを合図にアルバもシュート。マテリアルライフルの光条が伸びる。
「いっけーーーー!!」
 がくん、と揺れるブラブロに、リラからの追撃の一撃。さらにアルバの一撃も。
 これで完全に浮力と推力を失ったブラブロが落ちて来る。アルバとリラの2機よりも離れた場所だ。
 その場所に!
「生身と機体とで感覚は違うが……」
 静かに呟く口元。
 この瞬間を、拘束作戦に参加してないもう一機が体勢十分で狙っていた。
「有効距離に違いはあるまい」
 行くぞ、と上げる顔。ロニである。
 スキルトレースから、断罪の光の杭。
 ぐさっ、と落ちて来たブラブロに刺さる。ジャッジメントだ。
「もらったのじゃ!」
 そこへ、ミグのハリケーン・バウ!
 なにをもらったかというと……。
 ――がしぃっ!
 敵のアームを、アーマーペンチ「オリゾン」でひっつかんでいたのだ!
「木星帰りの力とやら見せてもらうぞ」
 言葉の意味はよく分からんがミグ、とにかくすごい気合いだ!
 ペンチで敵の腕をつかんだまま、一本背負いでどしーん!
「ちょっと試させてもらうぜーっ!」
 大地に引きずりおろしたブラブロにボルディアの炎帝が殺到。カートリッジを消費して霊魔撃の乗ったウンヴェッターでぶっ叩く。手ごたえは最高にいい。
「解体じゃの」
 ミグもそのまま攻撃に参加する。
 こうなってはもう、時間の問題だ。



 こうして、二つの大型歪虚の討伐に成功。
 一行は廃墟のポルカ村に入っていた。
「最後は突然塵になったか」
「面白くないのぅ。キノコの薄切りにしてやったところじゃのに」
 渡る風で乱れる髪に手櫛をいれつつロニが呟くと、その足元に座ったミグが腕を組んでつまらなそうに口を尖らせツンしていた。まるで若い娘のように。
「んもう! 怒っていいのか喜んでいいのか分からないじゃない!」
 その向こうでは初華が涙目でガクルックスを手当て手当て。
「まあ、また平穏な日常が訪れるのなら、俺はそれで満足ですよ」
 ガクルックス、戦いのときの表情は潜めて爽やかに。
「初華さんはそう言うけど……まー、あれは仕方なかったわね~」
 メルクーアも初華を手伝いながら、ガクルックスを弁護。
「私も狙われて結構危なかったし」
「ほ、ほんと?」
「いや、怪我してないから」
 自分の身体をぺたぺた触りだした初華を止めるメルクーア。
「は、ほら、次は天斗さん!」
「明日から平和に真面目に働きたいものです」
 改めて初華が振り向いたのでそっぽを向く天斗。「軍でもこんな無茶はしませんでした…少しはしゃぎすぎましたか」とか言いそうになったところだったので慌てて真面目な言葉に返る。
 目の前には、かなりやられた絶影。被った胞子でかなり埃っぽくくたびれた様子に。
「これで人が住めるようになるかな?」
 ミリアは崩れた町を見回していた。
「きっと……そうなればいいですよね」
 リアが言葉に希望を乗せる。
「だがしばらくはそっとしておいた方がいいかもしれない」
 アルバは、バルサラスたちがやって来たという森の方を警戒していた。すぐに脅威が迫っているなどはなさそうだが、やはり時間を置いた方がいいかもしれない。
「ローラー系は無事ですの」
 颯は、無茶した愛機のダメージを確認していた。
「そう言えば何か言ってましたか? そいがとげ……とか、ブレがレイとか……」
 それを見ていたサクラが急にざくろの方を振り向いた。
「え、どうだったかな?」
『ピーガガガガ』
 どうだっけ、とざくろ。二体浮いているサポートロボット「アルカ」と「ディア」が何か言いたそうだが、残念会話はできない。
「そうですか、その二体の名前が「ソイ」と「トゲ」ですか」
 サクラ、自己納得。勘違いではあるが。

 この時、ボルディア。
「霊魔撃は近接攻撃で使えるから射撃モードじゃ使えねぇんだな」
 炎帝を見上げ、試した攻撃を振り返っていた。
 その横には、兵庫。
「……次に戦場に立つ事があるのならば、その時は存分に槍を振るう事としよう」
 愛機の烈風を見上げ得意の戦法を約束していた。
 ここで、二人の横から出て来る人影。
 炎帝と烈風の横に並ぶ機体に騎乗する者がいた。
 恭也である。
「おい」
 ボルディアが呼び止めると、振り返ってポツリ。
「ワークスドリルで穴掘って、簡素な墓でも作ってやろうかね」
 少なくとも野ざらしのままよりはマシだろ、との言葉は閉じたハッチで届かなかった。ギガント、機動。
「いい報告になるな」
「よっしゃ。手伝おう」
 この動きに気付き、他の者も動き出した。
 前回逃げ遅れ犠牲になった者を弔う。
 破壊された村がまた少し騒がしくなる。
 優しさにあふれた騒がしさであるが。

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MVP一覧

  • Pクレープ店員
    真田 天斗ka0014
  • Commander
    柊 恭也ka0711
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • Pクレープ店員
    メルクーアka4005
  • 正義なる楯
    アルバ・ソルka4189

重体一覧

  • Pクレープ店員
    真田 天斗ka0014
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacruxka2726

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    レップウ
    烈風(ka0010unit004
    ユニット|CAM
  • Pクレープ店員
    真田 天斗(ka0014
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ゼツエイ
    絶影(ka0014unit001
    ユニット|CAM
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    セイレンゴウ
    清廉号(ka0551unit003
    ユニット|CAM
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ハリケーンバウユーエスエフシー
    ハリケーン・バウ・USFC(ka0665unit002
    ユニット|CAM
  • Commander
    柊 恭也(ka0711
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ギガント
    ギガント(ka0711unit001
    ユニット|CAM
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    エンテイ
    炎帝(ka0796unit003
    ユニット|CAM
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    マジカルボウケンキアルカディア
    魔動冒険機『アルカディア』(ka1250unit002
    ユニット|CAM
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ザンギエフ
    ざんぎえふ(ka1287unit001
    ユニット|幻獣
  • びりびり電撃どりる!
    八劒 颯(ka1804
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    グスタフ
    Gustav(ka1804unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    魔導型デュミナス(ka2598unit001
    ユニット|CAM
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    アールセブンエクスシア
    R7エクスシア(ka2726unit003
    ユニット|CAM
  • Pクレープ店員
    メルクーア(ka4005
    ドワーフ|10才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    エーワン
    A1(ka4005unit001
    ユニット|車両
  • 正義なる楯
    アルバ・ソル(ka4189
    人間(紅)|18才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ローゼス・カバリエ
    ローゼス改(ka4189unit002
    ユニット|CAM
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士
  • ユニットアイコン
    プリネラ
    プリネラ(ka5679unit002
    ユニット|CAM

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
柊 恭也(ka0711
人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/03/04 21:11:53
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/03/02 19:05:26