大きな少女と行商団

マスター:春野紅葉

シナリオ形態
シリーズ(新規)
難易度
普通
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2017/05/06 22:00
完成日
2017/05/23 22:34

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●何気ない日常の中で
 ユリアはその日もいつものように仕事をすべく知り合いの老人の元へと訪れていた。
「えっ? お休み……ですか?」
「ほほっ。ユリアちゃんはいつもがんばってくれとるしの。たまにはの。休んでいいと思うんじゃ」
 好々爺然とした老人は、いつものようにたっぷりとした髭を撫で笑う。
「でも……」
「実はその日、行商団が来るんじゃ」
「行商さんですか?」
「うむ、それもただの行商じゃなくての。自由都市同盟に向かう人らなんじゃよ。帝都の方から来る珍しく大きな行商なんじゃ」
「そんな人達がこの町に!?」
 この町は言ってしまえばかなり平凡な町だ。移民を行なって過疎化した町に人を戻す政策の対象になっているのだから、さもありなんという話でもある。
 ユリアはこの町に来てからなんとか町に活気をと努力してきてはいるものの、帝都から立派な行商団が通るというには些か辺鄙に過ぎる。
「ユリアちゃんが着てから色々としてくれたことで試しに、ということらしいのう」
「お爺さんはどうしてそんなことを知っておられるんです?」
「ほっほっ、なに、ただの噂じゃて。行商団が来ることは事実みたいじゃがの」
 髭を触りながら、茶目っ気たっぷりにちらりとこちらを見てウインクする老人にユリアはきょとんとしながらも声を漏らす。
「それなりに大きな行商じゃから色々と見てみるといいと思うぞい」
「ありがとうございます! でもまずは今日のお仕事に行ってきますね」
 そう言って笑みを返したユリアは老人の元を後にした。

●冒険の入り口は突然に
 それから数日が経って、ユリアは町長屋敷に呼び出されていた。老人が言っていた行商というのはすでに到着し、町中が珍しい大規模な行商の集団に湧いて以前に合った祭りにも劣らぬ喧騒が広がっていた。
 そのことに思わず心が疼いて、町に繰り出そうとしたユリアの元へ、まるでそれを遮るかのように町長からの使者が来たのは、今朝も速くだった。
 呼び出されたというのに通された応接間で待つように言われてからはや1時間ほど。
 最後に訪れたのは、試しにと開いた牧場体験会のあとでの報告だったなと思いだして暇をつぶすにも少々長い。
 何となく落ち着かないままにぼうっとしていると、応接間の扉が開き、三人組が入ってきた。一人は新しくこの町の町長になった女性だ。一度は反乱の火種が燻った町だからか、直前まで軍の少々お偉い人だったという話だった。
 話してみれば気さくでこれが歪虚を屠るような仕事をしている人かと驚いたのを覚えている。それ以外の二人は見たことが無い。片方は豪奢な衣装をまとう男性で、もう一人は軽装備だが鎧を纏った男性だ。
「ユリアちゃん。遅くなってごめんなさいね。いま町に行商が来てるのは知ってるわね?」
「い、いえ!」
 男性二人をユリアと対面に座らせながら、自身はユリアの隣に座る。思わず立ち上がろうとするユリアを制した彼女は、そのまま二人の方を掌を見せるように指し示す。
「こちらの方は今回の行商の団長を務めておられる方と、その護衛の方なの」
 行商の団長。そう言われて、豪奢な衣装をまとう理由を理解する。
「お二人とも、こちらが先程の話に出てきたユリアちゃんです」
「ふむ。まだ若いな……町長様から伺った年齢よりは大人びて見えるが……ふふ、先程の反応、まこと愛らしい子だと分かります」
 行商の男性が気持ちよさそうに頷いて見せる。
「町長さん……あの、話が見えないんです」
「ああ、ごめんなさいね。ユリアちゃん……次の町にこの人達を護送して貰えないかしら?」
「ユリアちゃん、君が以前に歪虚の狼をハンターの方々と共に倒したという話は聞きました。ですから恐らくはその森は安全でしょう」
 行商の男性が身を乗り出すようにしながら語り始めた。
「ですが――その先の町にはまだ、歪虚がいるかもしれないのです」
「ふえ……で、でも。それでしたらそちらの護衛の方で充分では?」
「ええ。もちろん、この先も彼には着いて来ていただくのですが、それだけでは足りない可能性があるのです」
「足りない……ですか?」
「あなたが討った歪虚が住まう森の向こう、川を超えた先に林檎の鳴る森があるのですが、その付近で亜人を見たという目撃情報があります。もしものために護衛を強化したいのですよ。もちろん、これからハンターの方々にも応援を願うのですが」
「それで私に? でも、何で私に?」
「ねえ、ユリアちゃん。あなた言ってたわよね? 特産物があるのにそれをどうすればいいか分からないって」
 それまで静かだった町長がふと声を上げる。突然な話に理解が及ばずきょとんとしていると、行商の男性がくつくつと楽しそうに笑う。
「もし受け入れていただけるなら、その代わり、我々がこの町の特産物を、より多く届けましょう」
「それって」
「そう、商談なのこれは。ユリアちゃんを対価にこの町の特産物を多くの町に届けて知ってもらうための」
 優しく、町長がいう。ユリアは思わず目を見開いて驚いた。その後、ごくりと唾を飲む。
「ちなみに出来る限り安全な道を行けるようにりんごのなる森の方の町から移住してきた人を案内に付けるわ」
「分かりました。行きます! いや、行かせてください!」
「ええ、そう言ってくださると嬉しいです」
 男性が満面の笑みを浮かべた。舞い上がりそうになる心を必死に抑えながら、差し伸べられた男性の手を握り返した。

●同時刻ごろ
 川を挟んだ南方にある森林部を突っ切る街道沿いのある地点にひょっこりと醜悪な顔をした10人の小人たちが姿を現わす。人ならぬ人らは何かを語らい、そそくさと森の中へと消えた。
 そのすぐ後、ギャという声とともに再び小人たちは街道沿いへと現れ、逃げるように反対側の森へと走り逃げていく。その後を続くように、ぬっとソイツは姿を現わす。
 どこで見つけたのか、騎士のような胸甲に身を包み、人よりも僅かながら大きなソイツは、欠伸のような動作を示すと木々を踏み散らしながら、小人たちの消えた方へと歩みを進めていく。

リプレイ本文


 空が澄んだ青色を見せ始めた頃。町の入口に八台の馬車と荷車が並んでいた。その周囲には護衛部隊の面々と、新たに加わる六人のハンター、それにユリアがいる。
「話には聞いてたが。子供に押し付けすぎなんじゃねぇかって気がちっとばっかしするんだよなぁ」
 そうぼやきながら髪を掻きむしるのはトリプルJ(ka6653)だ。彼は相棒のダックスフンドを伴ってユリアに近づいた。
 ユリアの周囲には、既に数人の女性がいた。
 火艶 静 (ka5731)はユリアに彼女が今回の依頼でやるべきことをもう一度言い聞かせていた。彼女の気遣うような言葉に、ユリアも熱心に頷いて見せる。
「お久しぶりなのユリアちゃん、今日はよろしくお願いしますなの」
 そう言ってユリアの両の手を取り、ぶんぶんと振るのはディーナ・フェルミ(ka5843)だ。
「町に特産品が増えて美味しい物が増えるのは正義なの、じゅるり」
 ふんわりとした銀色の髪を靡かせながら語るその瞳はとても純粋な輝きを見せている。
「お久しぶりです、ディーナさん。そうですね……何か見つけられたらいいなって……」
 期待半分、緊張半分といった様子をみせるユリアの元に、少しだけ浮かない顔をしていたユーリヤ・ポルニツァ(ka5815)が近づいていた。
「やぁ、久しぶりだねっ。ユーリヤちゃんだよー、元気してた?」
「はい、おかげさまで。病気なども特にはしていません」
 身長差から見上げるようにしながらユーリヤが問いかけると、ユリアは笑みを見せながら頷いた。
「ユリア。自分でも分かってると思うが、ユリアの本当の仕事は護衛じゃねぇ。敵が出たら俺達を呼んですぐに行商団と一緒に隠れろ。ユリアの仕事はこの行商団についていくことと……他の場所を見て何を特産物にできるか考えることだと思う、多分な。間違えんなよ、自分のしなきゃいけないことは」
「はい……分かってます」
 深く頷くユリアを見た後、トリプルJは連れているダックスフンドに指示を出してユリアの方に押し出した。
 そのままトリプルJは踵を返すと行商団の団長の元へと歩みよった。団長は護衛隊の隊長と共に、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)とロニ・カルディス(ka0551)を交えて最終的な打ち合わせをしているようだ。
「昨日の話し合いで護衛の動きは一通り打ち合わせたし、それでいいと思う。あとは……休憩場所は決めておいた方が良いんじゃないかな?」
 アルトの言葉に、向かう先の町出身だと言っていた若い男が少し考える様子を見せている。
「森の中で休むのは出来る限り止めておいた方が良いでしょう……この馬車と荷車の数ですし、何よりあそこはわざわざ突っ切るように街道を作っただけで旧街道よりも細く、横に2台並べると道がほとんど塞がってしまいます」
「出来るだけ縦一列で進んだ方が良いか……となると、昼食は森の入り口よりも前で取りたいな」
「それでしたら、街道と旧街道の分岐点のほど近くにひらけた場所がありますので、そこがいいかと」
 彼らの話し合いが一段落した頃合いを見計らって、トリプルJは団長に歩み寄って声をかけた。
「出発前に言っておこうと思ってよ。分かってると思うが、アンタらは俺らの依頼人だ、汚させるつもりはねぇ。でもな、それを言ったらユリアも同じだ。戦闘訓練も受けてねぇひよっこを前に出す気はねぇ。あいつには敵を発見したらそれを教えてから身を護れと言っておいた。あんたらはユリアを見定めるのも仕事の内だろうが、あいつが身を護るのは俺の指示だ……勝手に見誤るんじゃねぇぞ」
「ほっほっほ……なにやら勘違いされてるような気も致しますが。心にとめておきましょう」
 柔和な表情で、しかし商人らしく、煙に巻くように団長が笑った。

 アルトは打ち合わせを終えるとハンターと護衛部隊の者を集めて、今回の護衛方法の決定案を述べていく。
「通信機を渡しておくよ。拡声器は……ユリアちゃんが持っていた方が良いかもしれないね。そう言えば、馬はいるのかな?」
「軍用じゃないですけど、あの子と一緒に行こうと思います」
 言ってユリアが指さす方向には、栗色の馬がいる。世話が行き届いている様子が、こちらからも見て取れた。
「そう……良い馬なのかな?」
「はいっ。私を助けてくれたこともあるんです」
 ユリアが嬉しそうに語る様子をアルトは頷きながら聞いていく。

●行く道は暖かく
 行商団の最前列、その少し先をアルトとトリプルJが行き、行商団の最前列に付くようにロニは元々護衛をしていた者と左右に別れて進んでいた。分岐点で昼食を取り、少しの休憩をはさんだ後、既に一行は森の中に入っていた。
「何事も無ければ一番いいのだが……そう虫のいい話は無いだろうな」
 ぽつりと呟きながら言うのは、事前に情報を得たゴブリンのこと。ここまでの道はほぼ安全圏と言って良かった。ここからこそが本番なのだ。
 二人で別の場所を見るように心がけ、出来る限りの広範囲に警戒を向けていく。

 最後列、ユーリヤは周囲へ警戒を向ける傍ら、ユリアに話しかけていた。荷車を見ていると、昔のことを――まだ覚醒者になる前の事を思い出して。それがユリアと重なり、ユーリヤは妹分を見るような気持ちでユリアを見ていた。

「リンゴ~、シードル~、タルトタタン~、アップルバターも美味しいの~」
 ディーナは気持ちよさそうに自作の歌を歌いながら側面を馬に乗って進んで行く。お花見で見た、綺麗な桜。林檎の花も同じように綺麗だという。出来る事なら、それも見つけたい。その思いが彼女の視線を動かしている。


 どれくらい森を進んで来ただろうか。前衛の方向から、もう少し進んだら休憩を取ろうという通信が入ってくる。それに返事を返し、顔を上げた時、微かに草を踏む音を聞いた。
 次の瞬間、ゴブリンが2匹、草陰から躍り出る。そいつらはぎょっと驚いた様子を見せ、喚き散らすようにこちらに向かって走ってくる。
「左側面、敵襲です……!!」
 そう通信機に対して告げ、ゴブリンに対して刀を振るう。疾風のごとく奔る一閃が、ゴブリンの胴部を裂いた。浅かったのか、怯えるようにゴブリンは後ろに下がり、周囲を見渡してから行商団の前方に向けて逃げていく。
 追いすがろうとしたところで、新手が四匹。同じように、何かから逃げてきたかのような動き。しかし今度は静を見つけると、囲むように動いていた。剣を構えながら、息を整える。
 獲物は木の棒に、錆びた剣とどこかで誰かが落としたのか、有り触れた物ばかり。怒号のような物を上げながら、近づいてくる。
「屈んでほしいの!」
 そんな声がして、咄嗟に屈む。そこに向けて反対側面にいたディーナが馬と共に現れた。
 動きを止めた行商団、その馬車と馬車の間を潜ってきたのだろう。次の瞬間、少女の身長よりも大きなメイスから、眩い輝きと共に衝撃が放たれた。悲鳴を上げ、ゴブリン達が膝を屈する。
「ありがとうございます……!」
 言いつつ、一気に一匹に近づいて追撃の一閃。素早く踏み込みながらの一撃は、今度は勢いよくゴブリンの胴を裂いた。悲鳴を最後に、一匹が後ろに向かって倒れていく。
 そこに来て周囲を確かめると、事前の打ち合わせ通り、護衛達は行商団に張り付くようにして固まっている。
 間合いを確認しながら、敵を迎え撃とうとした時――さらにまた四匹。今度の者達は、逃げるどころかこちらの様子を見て、嬉しそうににやりと笑った――ように見えた。
「まずそうなの……」
 ディーナの声に返事を返しながら、唾を飲む。一匹一匹は大したことはないとはいえ、後ろに守るべきものがある中で囲まれていてはどうしようもない。
「さぁ。このボク、スネグーチカが相手だよ!」
 そんな声が響き、氷の矢が飛んで一匹のゴブリンに着弾した。揚々と語るのは、ユーリヤだ。ゴースロンに跨る少女は、既に次の矢を放とうと構えを見せる。それに気づいたゴブリンが、猛るように叫んだ。血の臭いと微かな獣臭さに、怒号と悲鳴を混ぜ合わせ、戦いの喧騒は徐々に激しさを増していく。

 アルト、ロニ、トリプルJの三人は前方に向けて移動して来たゴブリンを屠り終えると、すぐに行商団の中ほどに合流せんと走り出していた。三人の力量があれば、数の少ないゴブリンなど、物の数ではなかった。
「大丈夫か!」
 六匹のゴブリンに囲まれる少女たちに向けて、トリプルJは叫びながら、一匹に向け幻影の腕を伸ばす。捕えられたゴブリンがギャッと声を上げる。
 そのゴブリンに向けて、紅い風の如くなったアルトが走り込み、切り刻む。凄まじい早業に、断末魔を上げる間もなく、その一匹は息絶えた。
 それに気づき、他のゴブリンが振り向いたところに、ロニの放った衝撃が襲いかかった。それまでに傷を負っていたのか二匹ほどが血を吐いて倒れ伏す。
「ヒィ!!」
 我に返ったのか、一匹が叫び、踵を返して脱兎のごとく逃げ出した。
「オイマテ!!」
 違う一匹が草むらに消えて行ったそいつに叫ぶ。その直後だった。消えて行った草むらから、悲鳴が届いた。
「何かいるのか……?」
 ロニがそう呟くのに答えるように、草むらからソレは姿を現わした。
 身長はざっと三メートル。普通のゴブリンよりも明らかに筋骨隆々とし、身に着けた鎧は綺麗に作られた騎士のような甲冑。片手には美しく鋭利な片刃の剣と、それを濡らす血。
「まるで何かから逃げているかのようでしたが……そういうことですか……」
 静の納得したような声がした。ソイツは、つまらないモノを見るかのように傷だらけのゴブリンを見つめる。
「モ、モウシワケゴザイマセン! イノチバカリハ!」
 いつの間にか平伏し、懇願する彼らに向けて、ソレは無造作に剣を振り降ろした。ゴトリと首が落ちる音二つ。
「なっ……!」
 息を飲んだのは誰だっただろう。ソレは今初めて目についたと言わんばかりのゆったりとした仕草でハンター達を見渡した。
「デキレバ、ニガシテホシイガ……ソウハイカン、カ?」
 ズンと腹に来るような重い声。アルトはラティスムスを構える。注意を向けながらも、周囲の同行者たちを見て彼らも同じ思いだという事は理解した。
 もしここで逃がしても、コレはきっと、次をする。そんな予感がした。護衛任務であって討伐ではなくとも、逃がすのは危険だと今まで積み上げてきた経験が告げていた。
 初めに動いたのはトリプルJだった。幻影の腕を伸ばし、動きを止めようとする。しかし絡みついた腕は、ソイツの動きを止めるが、さほど気にしてはいないように見えた。
 アルトは走り出した。凄まじい速度で、ソイツを斬りつけていく。振りむき、相手を確認した時、ソイツの身体から鮮血が舞い上がる。
「グゥゥオォォ」
 声らしきものを上げ、ソイツが動いた。振り抜かれゆく剣筋、その先にいた静はラウンドシールドを構えた。ガンという強い音がして、盾に剣が食い込んで止まる。
「おらぁ!!」
 生じた隙を狙い澄ませ、脚甲から噴出された気流に後押しされながら放たれた連撃は、ソイツの肉に綺麗な打撃痕を残す。
「グオォォォ!!」
 その時、後衛に下がっていたディーナが形成させた光の防護壁が前衛にもたらされた時、雄叫びのようなものを上げながら体のバランスを崩したそいつは、前のめりになりながらも空いていた手で静を殴りつける。
 その衝撃で、静が少し後退する。ユーリヤが精製した火の矢が猛るソイツに向けて撃ち込まれた。
 ロニとトリプルJが足止めし、アルトと静が近距離で斬りつけ、出来た隙にユーリヤの矢が飛ぶ。それが数度繰り広げられた後、ソイツの動きは遂に止まり、崩れ落ちた。

「……傷を負った人は集まってほしいの~」
 ユリアが持っていた拡声器を借り受けてディーナはそう叫ぶと、集まってきた護衛達とハンターの傷をヒーリングスフィアで癒していく。
「少し急いだ方が良いでしょう。このまま行くと町に着くころには日が完全に沈んでしまいます」
 道案内役の言葉を聞きながら、少なくとも死者がいないことに、ディーナはホッと胸をなでおろした。


 その後の道程は何事もなく進んだ。ゴブリン達との遭遇で時間を取られたため、町に着くころには日が暮れてしまってはいたが。
 町に着いてからユーリヤはホッと胸をなでおろし、充足感を覚えながら、ユリアを見つめていた。商談でもまとまったのだろうか、嬉しそうに町の者と手を取り合っている。

「ユリアちゃん……商談の方はどうでしたか?」
 静は町の者が提供してくれた夕食に舌鼓をうちながら、問いかけた。
「はい。私には商いは良く分からないので、はっきりとは言えないですけど……多分、うまくいきました」
 嬉しそうに、少女は笑う。静はそれを見て、彼女の夢が少しずつ形を帯びて行きつつあることに喜びを感じていた。

「ユリアちゃん、これ甘辛くて美味しいの~」
 そう言いながらディーナは焼き肉の串の上に何やらソースが掛かった代物を食べていた。
「リンゴをすり潰した物とお野菜を混ぜたソースだって、町の方はおっしゃってました」
 もっきゅもっきゅと食べながら、幸せそうな少女の膝の上には、町に住んでいるらしき猫が丸くなっている。

「……となると、ゴブリン共がいたと思われるのはその町ぐらいということか」
 ロニはここまでの経緯を町長に話していた。
「ええ、前に町があった場所なら、亜人が住むだけの設備は整っているかと。それ以外ですと、普通に森の中に潜んでいたとしか」
「となると……寧ろもっと多くのゴブリンが潜んでいる可能性も」
 少し考えながら、ロニは町長から話を聞き続けていく。
 各々が各々の行動を為しながら、その日は終わりを告げていく。


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重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 森の主を討ち果たせし者
    火艶 静 (ka5731
    人間(紅)|35才|女性|舞刀士
  • ヨイナ村の救世主
    ユーリヤ・ポルニツァ(ka5815
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/04 20:07:02
アイコン 夜営は必要?
ディーナ・フェルミ(ka5843
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2017/05/06 18:37:24