走れ、ダイコン馬車!

マスター:村井朋靖

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/18 12:00
完成日
2014/06/25 13:33

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●名物を喰らう

 農耕推進地域ジェオルジ。

 同盟領内で最大の面積を有するこの自由都市は、農畜産物の生産や加工で「クリムゾンウェストの食卓を支える」ことを目標にしている。他の都市とは違い、ジェオルジは牧歌的な風景が広がり、草木の緑と澄んだ青空がとても印象的だ。手付かずの自然も存在するため、動物との出会いも多い。
 ジェオルジは、村単位で農畜産物の生産を管理を行っている。これは統治者一族のジェオルジ家の方針だ。
 一族は大量生産や品種改良に関わるノウハウを伝え、それにかかる資金援助を行う。どの村もそれに応えるべく、生産量や売り上げを伸ばす努力をする。これは長年の信頼関係があればこその関係といえよう。時代は変われども、地域の絆は決して変わらない。

 ジェオルジ西部に位置する、とある小さな村。ここでは大根の生産に力を入れていた。
 白くて長いおなじみの大根はもちろん、収穫までの期間が早いラディッシュ、皮が黒く中身が白い黒大根など、種類もさまざま。これを毎日のように統治者一族の村まで運んでいる。馬車は大根の重みに耐えられるよう、大きくて丈夫なものを用意。村の利益も皆のやる気も、文字通り「右肩上がり」だった。
 しかし、つい先日の早朝。いつものように出荷の準備をしていると、そこへ小鬼・ゴブリンが出現した。彼らは粗末な武器を振って村人を威嚇すると、村人は一目散に逃亡。村長の家へと駆け込んだ。
 その後、ゴブリンは馬車の中に運び込まれた新鮮な大根を見つけ、これを本能的に「食い物だ」と確信。手に取って一口かじってみる。先端はやや硬く辛味があるが、全体的にはやわらかくて甘い。ゴブリンはよほど腹を空かせていたのか、ご丁寧にも葉っぱまで残さず平らげた。
 収穫された分を全員で平らげてご満悦の小鬼は、腹を擦りながら悠々とご帰宅。のこのこと南西の森に向かって歩いていく。

「おおい、村長。連中、帰ったみたいだぞ~」
 この様子を窓の隙間から見ていた若者が、声を潜めて言う。こちらは皆、ホッと胸を撫で下ろした。
「しかし、なんであいつらはあっさり帰ったんじゃ? 周りには大根がいくらも植わっとるのに……」
「連中、なんとも満足そうな顔しとったわ。腹いっぱいになったから帰っただけかもしれんの」
 そう返事した男は「そんな顔を見たって、ただ腹が立つだけだがな」と苦笑いした。
「今日来たのが、だいたい4匹くらいだったかのぉ。村長、どうする?」
 ああいう連中は「食い物がある」とわかると、何度でも来るだろう。今は大根が地面に埋まってるのに気づいていないが、もし知られれば村は大損害を被る。
「よし、ハンターさんに連中の退治を頼もう」
 ジェオルジでは、村長が独自の判断でハンターズソサエティに依頼を出すことが可能である。彼らは「善は急げ」とばかりに、状況をまとめて報告した。

●派手な出迎え
 ジェオルジには、ハンターズソサエティの支部が5箇所ある。
 統治者一族の村にひとつ、そこから東西南北に広がる形でひとつずつ。今回は西側の支部から、馬車で大根の村へと移動する。
 到着したハンターを待っていたのは、統治者一族のひとりである「ルイーザ・ジェオルジ」だった。一族の中で唯一ハンターの素質を持ち、領内では猟撃士として活躍している。ちなみに、若き領主「セスト・ジェオルジ」の実姉だ。
「ほら、早く行くわよ。みんなが困ってるんだから」
 そういって用意した馬車に案内するルイーザだが、大自然がウリの領地にはまったく似合わないド派手な衣装を着こなしている。
 純白の生地に豪華な赤い縁取りをあしらったマント、露出度高めの白い革鎧、白に塗り直したショートボウ……人間はおろか動物でも、彼女の発見は容易だ。もはやこれは「動くカカシ」である。本人によると、このファッション、流行の最先端を発信する極彩色の街ヴァリオスでお求めになったらしい。
「普段ならこの手の依頼はハンターさんにお任せするんだけど、今回はあたしが説明するわ」
 ルイーザはそう言って、村の状況を話し始める。

 村長の予想通り、村には毎日ゴブリンが来るようになった。昨日の時点では7匹くらいに増えたという。
 しかし腹が満たされれば帰るので、最初の襲撃と同じようにわざと大根を置いておき、食ったら帰るように仕向けている。もちろん準備は安全のため、深夜に行っている。敵に大根の在処を悟られては困るので、仕方なく打った苦肉の策だ。
 同じ理由で、大根の出荷も完全に止めている。実はゴブリンが、馬車を「大根をある部屋」と勘違いしている疑いがあり、無理に使おうにも使えないのだ。
「ゴブリンの数はこれ以上増えないと思うわ。あと、奴らは臆病だから、何匹か倒せば逃げてくはずよ。全部は倒さなくても大丈夫ね」
 むしろ逃げてもらって、仲間に「あそこは危ないから、もう行かない」となってもらった方がいい……彼女はそう言い添えた。
「日が出てすぐに仕事だから、今日は早めに休んでね」
 ルイーザが話し終える頃、馬車が止まった。そう、ここが大根の村。今回の依頼の舞台である。

リプレイ本文

●準備は入念に
 その夜、大根の村にハンターを乗せた馬車が止まる。
 軽い身のこなしで荷台から降りたロイ・J・ラコリエス(ka0620)は、村長を先頭に出迎える者たちに向かって「俺たちに任せとけ!」と猛アピール。そんな彼の後ろからひょっこり顔を出すのは、可憐なエルフ・メーナ(ka1713)である。
「大丈夫、なんとかなるのよ!」
 屈託のない笑顔から放たれるその言葉に、村人も「さすがはハンターさん!」と安堵の表情を見せる。ルイーザ・ジェオルジは荷台を降りながら「戦わずして安心させるとは、なかなかだね」と舌を巻いた。

 村民の心をガッチリ掴んだところで、次は村長に作戦の説明を行う。
 リアルブルー出身の偉丈夫、エドガー・ブレーメ(ka1808)はまず握手を求め、世間話から入った。
「害獣っていうのは、どこにでもいるものだが、その相手がゴブリンとはなぁ」
「誰彼構わず襲い、何でも食ってしまうあたり、非常に厄介でしてな……」
 エドガーが渋い顔で頷くと、同じリアルブルー出身のクリス・ガードナー(ka1622)も戸惑いながら話す。
「大根泥棒とは、な。でも、村の人には死活問題、か」
 こういった事情に明るいアマービレ・ミステリオーソ(ka0264)が「その通りよ」と答える。
「そういえば、ゴブリンは村で使ってる馬車を大根倉庫と勘違いしてる可能性があるのよね?」
「今はそこへまっすぐ向かってくるという話だ」
 彼女の疑問にエドガーが答える。
「ええ。そうなると村には来なくなっても、この馬車を襲いに来るようになるかもしれませんわ」
 この指摘はもっともだ。クリスも「理に叶っているな」と同意する。
 そういった懸念を払拭すべく、妖艶さの中に無邪気さを秘めたエスカルラータ(ka0220)が「私に考えがあります」と切り出す。
「そこはルイーザさんにお任せしましょう」
 この言葉を聞いた誰もが、きょとんとした表情になった。ルイーザもあっけに取られている。
「あたし、そういう話はまだ聞いてないんだけど」
「ええ、今言いましたから」
 エスカルラータのさわやかな笑顔に対し、ルイーザはジト目で返事する。
「農耕推進地域の代表として恥ずかしくないレベルで、できる限り印象に残る服装と芝居をしてもらいたいのです」
 ルイーザは「なぜ」と問うても、彼女は「後でお話しますよ」と言葉を濁した。
「何なら、私が見立てて差し上げてもいいですよ?」
 奇抜な服装を好むルイーザにとって、他人の見立てにはいささか興味がある。それもスタイル抜群のエスカルラータとあれば、どんなコーディネートをするのか見てみたい。
「わかった、任せるよ」
 ルイーザは彼女の提案に乗ることにし、馬車をケアする話をまとめた。
 ここに元気印のロイとメーナが、大根を持って合流。これは明日、ゴブリンに食わせる分として用意されたものだ。
「よっし、これに苦~いの塗っていこうぜ! 俺、こういうの得意なんだ!」
「村の人に、この辺に生えてる苦いハーブを煮詰めてもらってるの! まだまだあるよ!」
 いたずら大好きを自称するロイは、ジャマダハルで大根に切り込みを入れ、その内側にハーブを塗っていく。やけに手馴れた動きで数をこなしていくもんだから、冷静沈着なクリスもさすがに「へぇ」と感心した。
「これで大根を嫌いになるかどうかはわからないが、『人の食べ物を奪うと碌な事にならない』と思わせることはできるか」
 エドガーはそう言いながら、問題のハーブを小指で救い、ごく少量を舌に乗せた。これが口の中の水分と混ざった瞬間、とんでもない苦さが口の中で広がる。そして匂いは鼻へ、苦味は喉へ。むせ返るエドガーを心配した村人が水を差し出すが、それを飲んでもまだ風味が残るという代物だった。
「ゴホゴホッ! こ、これはなかなかの苦味だ」 
 それを見たメーナは、まるで自分が舐めたかのような表情で「舌にえぐみが残ってヤな感じなのよね……」と呟く。
 そこへなぜか、アマービレは自作したという白蜜を差し出した。
「よろしければ、こちらもお使いください」
「へ? 美味しいものは、別にいらないだろ?」
 疑問に思ったロイはいったん手を止め、おもむろに瓶の蓋を開け、中身をペロリと一舐めした。
「う、ううっ。な、な、なんかわかんないけど、とにかくおいしくない、ぞ……」
 子供の純粋さは、時として残酷だ。それでもアマービレは動揺した姿を見せず、いつもの調子で「色も大根と同じなので、表面に塗ってお使いいただけるかと」と説明する。だが、彼女の視線は、夜空に輝く星だけをじっと見つめていた。
「ああ、なんで私の作った料理はおいしくなくなるんでしょう……」
「うわ! これもスゴいね!」
 メーナの味見と感想が追い討ちとなり、ますます遠い目をするアマービレ。それを見たエスカルラータは「大丈夫、明日には報われるわよ。アマービレさんも白蜜も」と肩をポンポンと叩いて励ました。

 その後、準備を終えたハンターは村長の家で休息を取り、早朝の襲撃に備えた。

●お仕置き開始
 翌日。
 夜が白み始める頃、ハンターたちは大根馬車を中心に潜伏し、招かれざる客の来訪を待った。
「まず脅かすってのは、いたずらの基本だぜ?」
「そうそう! バーンって出てくとカッコいいし!」
 小声で話すロイとメーナはすっかり意気投合。ふたりは今、大根馬車の荷台に隠れている。ここに迫るゴブリンの隙を突き、一気に畳みかける手筈だ。
 馬車の近くにある倉庫の裏にはエスカルラータとクリス、反対側で畑に面した大きな茂みにアマービレとエドガーが身を潜めており、戦闘が始まればゴブリンを包囲する。

 空が朝焼けで染まる頃、ゴブリンの団体さんが馬車に向かってくる。
「ギャギャ……ギャギャギャ」
 敵の接近を確認しやすいのはエドガーだ。彼は冷静に数を確認する。
「なるほど、7匹のままだ」
 それを聞いたアマービレは胸を撫で下ろすと、馬車からはみ出るように配置された大根を凝視する。これはクリスの発案で、意図的に罠大根をいくつか地面に転がしておいたのだ。
 この作戦にゴブリンはまんまと引っかかり、先頭の1匹がこれをゲット。仲間たちに「いつも通りだ」とばかりにアピールし、さっそく一口かじる。
 最初のうちはいつもの味だったが、どんどん食べてくうちに違和感を覚えた。
「ギャギ? ……ンゲンゲッ!」
 唐突に迫り来る苦味にむせ返り、何度も胸を叩く。この声が響くと、ロイやメーナはおろか、誰もが各所で口に手を当てて笑いを堪えた。
 ただひとり、アマービレだけが俯きがちに「そうですよね……」と悲しく微笑むが、エドガーは「き、気にするな」と必死にフォローする。

 他のゴブリンは先に食った奴が苦しむ姿を見て不思議そうな表情を浮かべていたが、空腹からか痺れを切らし、我先にと罠大根を手にした。コイツもまた「大根がマズイ」という確信が持てないので、ひとまず状況を見極めようと、今後の推移を静かに見守る。
「……ン? ゲガッ!」
「ギャギー! ギャギギャ!!」
 だが、食ってみての感想と反応は、皆ほぼ同じ。どれもマズいらしい。
 毎日食ってた大根の味がいきなり変わるはずがないと、ゴブリンは大根小屋……いや、大根馬車へ殺到し、中身を確認をしようとした。
「今がチャンスだね! 行こ!」
「いたずらで一番盛り上がるとこだぜ!」
 メーナの合図で、ロイが大根の山を飛び越えてゴブリンの背中に乗っかる!
「なぁ、お前らの驚く顔って、どんなんだ?」
「ゲ! ギャギー!」
 乗っ掛かられた方はロイを振り落とそうとがんばるが、目の前にいたゴブリンは表情豊かに驚きを披露する。これには少年も大満足だ。
「はは! 結構いい顔できるんだね! さぁ、俺とちょっと遊んでくれる?」
 振り落とされた勢いを活かし、前にいるゴブリンにジャマダハルで攻撃。敵の肩口をバッサリと切る。
 そこに登場したメーナはメイスファイティングを活用し、愛用のスタッフを横スイングで振り回す。そして馬車からゴブリンを文字通り叩き出した。
「みんな、お待たせ~!」
 彼女の合図で、他の4人も行動開始。エスカルラータは地面に転がった敵にマジックアローを飛ばし、確実に痛めつけていく。できれば殺生は避けたいので、彼女は理想の展開に持ち込めるよう尽力する。
 エドガーは機導砲で、無傷の者を優先的に攻撃。ゴブリンをこれ以上調子付かせないとするなら、全員が痛い目に遭うべきだ……彼はそう考えた。
「人の糧を奪うという行為は、遠回しに人の命を奪う行為とも言える。相応の報いを受けてもらおうか」
 合図と共に茂みから飛び出したアマービレは、後方に位置するゴブリンに狙いを定め、踏込から強打を使って胸を切り上げる。可憐な姿からは想像もつかないほど強力な一撃に、ゴブリンは絶叫を響かせた。
「あら、ごめんなさいね」
 その後も自分のリズムを披露し、敵を翻弄しながら切っていく。今までの鬱憤を晴らすかのように見えるのは、たぶん気のせいだろう。
 クリスは身を晒しつつ、機導砲で攻撃。獲物へと伸びる光は、敵の腹を存分に焼いた。ただ、今ここを刺激するのはよくない。空腹に苦しむゴブリンは顔を赤くし、石を掴んでクリスへと投げる。
「なっ……これは」
 彼はとっさに身を隠して難を逃れたが、ゴブリンの投石はなかなかの腕前だ。
「こんな事ができるんだから、ファンタジーなんだよね」
 クリスはリアルブルー人らしい感想を呟きつつ、仲間に投石について注意を促した。

●決着の時
 数の上ではほぼ五分だが、ハンターの「ゴブリン包囲作戦」が機能し始めると、ゴブリンは徐々に劣勢となる。
 馬車の正面では、メーナが相変わらずスタッフを振り回して応戦。元気なうちは餌を得ようと、敵は欲望丸出しで襲い掛かってくるが、そんなヨコシマな気持ちでは、ブンブン攻撃に専念する彼女の覇気を凌駕できるはずがない。
 スタッフでの打撃がうまく手にヒットし、ゴブリンの武器を弾き飛ばすと、メーナは思わず満面の笑みを浮かべた。
「よーし、素手で来られるモンなら来ーい!」
 そう言い放ち、慌てた敵のこめかみに鈍器がクリーンヒット。ゴブリンは気絶し、地面に倒れこんだ。
 この音に気づいた敵はすっかり怯え、これ以降マトモに攻撃を当てられなくなった。
 とはいえ、馬車の前にはロイが執拗に攻め立てる。
「そらそら、お尻を刺される気分はどうだ!」
 ロイの攻撃はスラッシュエッジによって精度を増しており、変幻自在の戦法で敵を追い詰める。
 この嫌がらせから逃れようとすると、今度は側面からアマービレが確実に隙を突くから堪らない。
「こっちの剣も痛いわよ?」
 彼女も手加減も兼ねてロングソードで突きを放ち、チクチクとダメージを与えていく。
 こうなるとゴブリンは逃亡を決意。後方に位置する3匹が悲鳴を上げながら逃亡を実行するが、クリスとエドガーが逃げ遅れた1匹に狙いを定めて機導砲を撃つ。さらにエスカルラータが集中を乗せたマジックアローで脚を狙い、これを命中させて逃亡を阻害した。
「逃亡に失敗した仲間を見捨ててでも逃げるっていうのは、精神的に大きなダメージよね」
 その敵を捕えんと、ロイがランアウトを使って猛追。武器の爪を首筋に当てて「もう抵抗するなよ!」と諦めさせ、ロープで身柄を拘束した。

 結局、2匹は意図的に逃がし、5匹を捕えるという形で戦闘は終了。
 無傷のゴブリンはおらず、逃げた者が「あの村には近づくな」と仲間に伝えるのは容易に想像がつく。だいたい大根がマズくなっているので、もはや危険を冒す理由がない。
 依頼はほぼ成功に終わったといえるが、まだ仕上げが残っていた。

●仕上げ
 捕えられたゴブリンはロープで縛られ、横並びで配置されている。
 と、そこへ……珍妙な女が姿を現した。
 額に天日干しした大根を巻き、手には大根を矢として番えたショートボウを持ち、腰にはいくつもの大根をぶら下げているこのお方こそ誰であろう、ヴァリオス仕込みのファッションに身を包む領主一族のルイーザ・ジェオルジ様だ。
「オーッホッホッホ! 我こそは大根の使者! よくもこの村の大根を食い荒らしてくれたな!」
 と、威圧的かつ高圧的に喋るルイーザだが、ゴブリンに言葉が通じないため、大根を指差したりのアクションを交えながら必死にがんばる。
「いいか、これ以上の悪事はあたしが許さん! エスカルラータ、あれを持て!」
 彼女が持っているのは、大根の種と苗。ゴブリンは即座に「自分の体にそれが引っ付いている」ことに気づく。
「そうだ、それはお前たちの体についておろう。今度ここに来たら、お前らを大根にしてやる~! どうだ、怖いだろう~? わかったら、さっさとあそこに置いてある大根を持って出てけ~!」
 体に取り付けた大根を振り乱しながら怒りのポーズを表現するルイーザを見て、ハンターたちはもう笑いを堪えるので必死だった。
 大根の使者の姿を見て大いに怯えるゴブリンは拘束を解かれ、持てるだけの大根をちゃっかり頂き、そそくさと村を後にする。
 もちろん、用意された大根は罠用のアレだ。これで痛い目に遭ってないゴブリンでさえ、この村には近づかないだろう。
「……い、行ったか? ふぅ、疲れた。まさか、こんなことをやらされるとは思わなかった」
 大根の使者・ルイーザの呟きと溜息を聞き、エドガーは「お疲れ様」と声をかける。
「やれやれ、初仕事にしては上出来か? どうかね、お嬢さん」
「立ってる者は親でも使えってとこまで含めて、なかなかの腕前だったよ」
 そんな彼女の言葉を聞き、エスカルラータは微笑みながら「ルイーザさんもご立派でしたよ」と囁く。これを聞いたハンターはおろか、村人たちも楽しそうに笑った。
 その時、アマービレはあることを提案する。
「今後1週間ほど、ハンターに村の見回りを頼むのはどうかしら?」
 彼女がそういうと、メーナも「その方がいいよ!」と同意する。それを聞いた大根の使者が「あたしがしばらく様子を見に来るよ」と答えた。これ以上の適任者は、クリムゾンウェストのどこを探してもいないだろう。

 こうして、村に平穏が訪れた。
 クリスは村を離れる直前、村の名物である大根を買い求めるが、村人は金を受け取らないどころか「感謝の気持ちです」と言って、皆にお土産として各種大根を持たせてくれた。
「ありがとう、ございます……家に帰って、料理に使います」
 彼は帰りの馬車の中で、どういう料理にしようかあれこれ考えた。
 同じように、アマービレも唇に指を当て「どうしよっかなー」と悩んでいたが、向かいに座ったロイとメーナが静かに首を横に振る。
「あらあら、ずいぶんと正直だこと」
 別に諌めるわけでもなく、エスカルラータはいたずらっぽく笑った。

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重体一覧

参加者一覧


  • エスカルラータ(ka0220
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 世界中の歌を求め歌って
    アマービレ・ミステリオーソ(ka0264
    エルフ|21才|女性|闘狩人
  • 韋駄天
    ロイ・J・ラコリエス(ka0620
    人間(紅)|12才|男性|疾影士

  • クリス・ガードナー(ka1622
    人間(蒼)|18才|男性|機導師

  • メーナ(ka1713
    エルフ|17才|女性|聖導士

  • エドガー・ブレーメ(ka1808
    人間(蒼)|28才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
クリス・ガードナー(ka1622
人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/06/18 09:06:36
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/15 18:54:15