ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】愛と希望と決闘と
マスター:樹シロカ
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/14 19:00
- 完成日
- 2017/06/27 20:28
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●村長会議のかたすみで
同盟領、農耕推進地域ジェオルジでは、年に二回『郷祭』と呼ばれる催しがある。
最近では賑やかな祭がメインとなっているが、始まりは地域内の各村から村長たちが集まり、村単位では解決の難しい問題などを話し合う『村長会議』という場である。
今年も春の郷祭を前にした会議では、各村の村長同士が旧交を温めたり、ガンつけあったりしていた。
なかでも今回、デストラ村とシニストラ村の村長同士の関係は最悪だった。
領主のセスト・ジェオルジ(kz0034)はいつも通りの淡々とした表情のまま呟く。
「発端はおめでたい話なのですがね」
「本当に申し訳ありません。領主様に余計な心配をおかけしまして」
セストと膝を突き合わせて腰掛け、そこで頭を下げるのはシニストラ村の村長の息子、アンジェロである。
「いえ。これも僕の務めのうちですから」
余り慰めになっていない言葉だが、セストに悪気はない。
ふたりは村長たちを刺激しないよう、ジェオルジ家の物置小屋でこっそりと話し合っていた。
アンジェロは近々、デストラ村の村長の娘リタと結婚式を挙げることになっている。
だが元々、街道を挟んで位置するデストラ村とシニストラ村は何かにつけライバル心を抱いており、小競り合いの絶えない関係。
ふたりが思いを伝えるのにも、ハンター達が協力したという経緯があった。
そしていよいよという段になって、『ふたりの新居をどこにするか』という問題が村長同士の仲をこれまでになく悪化させてしまった。
下手をすれば村総出の大げんかにまで発展しそうな雰囲気に、責任を感じたアンジェロがセストに相談を持ちかけたのだ。
「アンジェロさんとリタさんの気持ちは固まっているのですね?」
「ええ、あそこなら心配ないと言って、リタもそのつもりで準備しています」
アンジェロの端正な顔が笑顔でくしゃくしゃになる。
セストは頷き、釣られたように笑顔を浮かべた。
「わかりました。では僕もできる限りの協力は致しましょう。ジェオルジ全体にも良いことでしょうから」
●領主の提案
ところが事態は思ったよりも早く悪化していた。
村長たちが集まる会議場で、セストはため息をつく。
「うちのアンジェロは次の村長だ! シニストラ村に住まんでどうする!!」
「そんなことはまだわからんだろうが! だいたい可愛い娘を、一人ぼっちでそっちへなどやれるか!」
掴みかからんばかり……というより、他の村長がそれぞれを引き離していなければ、掴みあっていただろうおっさんどもが喚きあっていた。
「そんな覚悟もないような娘に、村長の奥方なんぞ務まるか!」
「村長がしっかりしておれば、奥方に頼ったりなどせんわ!」
もうめちゃくちゃである。
「ほほう、そりゃさぞかし今のお前の村の村長はしっかりしとるんだろうな。なんならこの場で証明してみるか?」
シニストラ村の村長がにやりと笑った。肩の筋肉がびくびくと動いている。
「……筋肉ダルマは脳味噌まで筋肉らしいわ」
対するデストラ村の村長は、忌々しげに吐き捨てる。
「怖いのか?」
尚も挑発するシニストラ村長。そこに手を叩く音が響いた。
「はい、おふたりの覚悟は良くわかりました。でも今日は会議がまだ控えています。そこで僕からの提案です」
セストがひとつ咳払いをして続けた。
「後に禍根を残さないように決着をつけましょう。僕が許可します。ただし公平を期するために、代理決闘とします。おふたりとも異論はないですか?」
当事者たちだけではなく、会議に集まった村長達全員が、目を丸くしてセストを見つめた。
同盟領、農耕推進地域ジェオルジでは、年に二回『郷祭』と呼ばれる催しがある。
最近では賑やかな祭がメインとなっているが、始まりは地域内の各村から村長たちが集まり、村単位では解決の難しい問題などを話し合う『村長会議』という場である。
今年も春の郷祭を前にした会議では、各村の村長同士が旧交を温めたり、ガンつけあったりしていた。
なかでも今回、デストラ村とシニストラ村の村長同士の関係は最悪だった。
領主のセスト・ジェオルジ(kz0034)はいつも通りの淡々とした表情のまま呟く。
「発端はおめでたい話なのですがね」
「本当に申し訳ありません。領主様に余計な心配をおかけしまして」
セストと膝を突き合わせて腰掛け、そこで頭を下げるのはシニストラ村の村長の息子、アンジェロである。
「いえ。これも僕の務めのうちですから」
余り慰めになっていない言葉だが、セストに悪気はない。
ふたりは村長たちを刺激しないよう、ジェオルジ家の物置小屋でこっそりと話し合っていた。
アンジェロは近々、デストラ村の村長の娘リタと結婚式を挙げることになっている。
だが元々、街道を挟んで位置するデストラ村とシニストラ村は何かにつけライバル心を抱いており、小競り合いの絶えない関係。
ふたりが思いを伝えるのにも、ハンター達が協力したという経緯があった。
そしていよいよという段になって、『ふたりの新居をどこにするか』という問題が村長同士の仲をこれまでになく悪化させてしまった。
下手をすれば村総出の大げんかにまで発展しそうな雰囲気に、責任を感じたアンジェロがセストに相談を持ちかけたのだ。
「アンジェロさんとリタさんの気持ちは固まっているのですね?」
「ええ、あそこなら心配ないと言って、リタもそのつもりで準備しています」
アンジェロの端正な顔が笑顔でくしゃくしゃになる。
セストは頷き、釣られたように笑顔を浮かべた。
「わかりました。では僕もできる限りの協力は致しましょう。ジェオルジ全体にも良いことでしょうから」
●領主の提案
ところが事態は思ったよりも早く悪化していた。
村長たちが集まる会議場で、セストはため息をつく。
「うちのアンジェロは次の村長だ! シニストラ村に住まんでどうする!!」
「そんなことはまだわからんだろうが! だいたい可愛い娘を、一人ぼっちでそっちへなどやれるか!」
掴みかからんばかり……というより、他の村長がそれぞれを引き離していなければ、掴みあっていただろうおっさんどもが喚きあっていた。
「そんな覚悟もないような娘に、村長の奥方なんぞ務まるか!」
「村長がしっかりしておれば、奥方に頼ったりなどせんわ!」
もうめちゃくちゃである。
「ほほう、そりゃさぞかし今のお前の村の村長はしっかりしとるんだろうな。なんならこの場で証明してみるか?」
シニストラ村の村長がにやりと笑った。肩の筋肉がびくびくと動いている。
「……筋肉ダルマは脳味噌まで筋肉らしいわ」
対するデストラ村の村長は、忌々しげに吐き捨てる。
「怖いのか?」
尚も挑発するシニストラ村長。そこに手を叩く音が響いた。
「はい、おふたりの覚悟は良くわかりました。でも今日は会議がまだ控えています。そこで僕からの提案です」
セストがひとつ咳払いをして続けた。
「後に禍根を残さないように決着をつけましょう。僕が許可します。ただし公平を期するために、代理決闘とします。おふたりとも異論はないですか?」
当事者たちだけではなく、会議に集まった村長達全員が、目を丸くしてセストを見つめた。
リプレイ本文
●
うららかな日差し、風にそよぐ緑の葉。
「まさに決闘日和ですね」
セストがいつも通りの真面目腐った表情で言った。
「今回はハンターの皆さんに説明をお願いします」
ルーキフェル・ハーツ(ka1064)とウェスペル・ハーツ(ka1065)の双子の兄弟は、精いっぱい背筋を伸ばした。
「みんなで相談したお。それで、騎馬戦と『ラグビー』っていうスポーツを組み合わせた形で決闘しますお!」
ルーキフェルが声を張り上げると、ウェスペルがさらに続ける。
「肩車でお馬は目かくしで、騎手があっちこっちって教えて、この箱をゴールへ運びますなの。箱の中身は秘密ですなの」
意味ありげに、重々しく頷くウェスペル。
「ゴールは、デストラ村の村長さんと、シニストラ村の村長さんにお願いするですお!」
ルーキフェルの言葉に、大爆笑が沸き起こる。
当事者ふたりは赤くなったり青くなったりしたが、余りの盛り上がりぶりに引き下がれなくなってしまった。
「じゃあ決まりだな。馬は俺と――」
ヴァイス(ka0364)が水流崎トミヲ(ka4852)の肩をぽんと叩く。
「よろしくね」
つやつや丸顔でぽっちゃり体型のトミヲに、ざわめきがおこる。
「ではコイントスをどうぞ。代理となる馬を指名していただきます」
セストが差し出したコインを、シニストラ村長が弾きあげた。手の甲に伏せると、デストラ村長が唸り声をあげる。
「表……いや、裏だ!」
現れたのは表。デストラ村長は頭を抱え、シニストラ村長は勝ち誇ったようにヴァイスを指名した。
「じゃあ、ゴールのおふたりはあたしについてきてね」
ルイーザがふたりの村長をゴール地点へ連れて行く。
セストはそっとトミヲに声をかけた。
「水流崎さん、お気を悪くされたらすみません」
だがトミヲはニヒルに笑って見せる。
「……ふっ」
実際、トミヲは若干気分を害していた。
だがそれは、幸せになろうとするふたりの意向が完全に無視されているから。
このままじゃ魔法使い(意味深)なトミヲだが、若いふたりの幸せを願うことはできる。
となれば、方法はひとつ。
「せいぜい面白くなるよう掻き回してやろうじゃないか……そして……」
轟! 眼鏡の奥のつぶらな瞳に炎が燃え上がる。
「勝つ! 大人気なくても! 完璧にィ!!!」
そしてルーキフェルを担ぎあげる。
「るーくん、いいね!!」
「高いお! 高いお!」
箱を片手に大はしゃぎのルーキフェル。
「くっくっく。もっとしっかり足をかけても大丈夫だよ!」
「……ハッ、るーは代理決闘を託されたハンターのひとり……クールに決めますお」
ルーキフェルががんばって悪い顔をしたので、見た目と闘志がどこか奇妙な騎馬ができた。
一方、ヴァイスはウェスペルを肩に乗せる。
「絶対に勝つぞウェスペル。最高の指示頼んだぜ」
村長たちもふたりを愛しているからこそ、これからを案じ、睨みあうのだ。
だから今日は声を張り上げ、笑いあい、色々な雑念を吹き飛ばしてほしい。
そのためにも、手は抜けない。
「全力で盛り上げようぜ」
「アンジェロとリタが幸せになるように頑張りますなの!」
ウェスペルもぎゅっとヴァイスにつかまる。
エーミ・エーテルクラフト(ka2225)がトミヲとヴァイスに目隠しをしていく。
「途中に色々あるけど、頑張ってね」
悪戯っぽく笑いながら、『馬』達の耳にささやいた。気のせいかトミヲが身震いし、ちらりとセストが視線を向ける。
セストが片手をあげた。
「では用意……スタート!」
ぷお~。
角笛の響きと共に、ヴァイスとトミヲが走り出す。
●
エーミがほっと息をついた。
「お疲れですか?」
セストは走っていく『馬』を見ながら声をかける。
「そうね。さすがにちょっと疲れたわ。でも」
ふふっと意味ありげに笑うエーミ。
「色々と面白いお話が聞けたわね」
依頼から今日の『決闘』まで数日しかなかった。
ハンター達は、この短い期間で会場の下見から競争の内容の決定までこなしたのだ。
さらにエーミは、ルイーザとリタを通じて、両村の女性達に集まってもらった。
「女の人たちはどうなのかしら? 先に聞いておきたいわ」
すると村長の奥方ふたりは顔を見合わせ、互いに笑いだしたではないか。
「そりゃあ、さびしいわ。でも私たちだって、親と離れて結婚したのだものねえ」
エーミはそれを聞いて、笑顔を見せる。
「よかったわ。じゃあ私からお願いがあるの。聞いてもらえるかしら?」
エーミの提案は、互いの村に伝わる料理をふるまう露店を出すことだった。
その過程でリタにはシニストラ村の料理を覚えてもらう事もできる。
(結婚生活が異郷の味付けで破綻する例もあるし、ね)
逆にアンジェロには、リタの村の味を知ってもらうのだ。
「そういうことなら喜んで」
女たちは、すぐに自慢のお料理について相談を始めた。
リタも一通りの料理はできるようだったが、嫁ぎ先の村の人と料理を通じて交われば、すぐに溶け込めるだろう。
「若妻の手料理って宣伝すれば、箔がつくわよね?」
エーミが呟くと、リタが熟れたトマトよりも真っ赤に頬を染める。
「な、なんですかそれ……!」
「ふふっ、いいじゃない。習うより慣れね。これだけ大量に作れば、嫌でも覚えるわ」
エーミ自身、料理には一家言ある。それでもジェオルジの伝統料理は色々と面白かった。
「ああ、この野菜くずは捨てないでね。スープを取るのよ」
「そっちのお鍋のお湯も捨てちゃだめよ」
料理があまり得意ではないルイーザが、それらの内容を頑張ってメモしていく。
「はー、それにしてもスープひとつでも案外違うものね。うちの味とも違うわ」
ルイーザが感心する通り、それぞれの村に特産物を生かした料理があり、それぞれの家に主婦の自慢の味がある。
「まるで魔法ね」
エーミは改めてそう思う。人を笑顔にし、身体と心を温め、命を繋ぐもの。
エーミ自身、今回で新しく増えたレパートリーが嬉しかった。
「あ……そういえば。ルイーザさん、お婆様ってどんな方だったのですか?」
「え?」
「いえ、ルイーザさんの馴染んだ味のルーツなのかしらって思って」
ルイーザは笑いながら、答えてくれた。
すでに亡くなった祖母は、とびきり美味しいタルトを焼いてくれたこと。
甘やかすだけではなく、悪いことをしたときは厳しく叱られたこと。
そして領内の仕事で忙しい母のかわりに、ふたりをたくさん愛してくれたこと。
「素敵なおばあさまだったわよ。私もああなりたいわ」
「そうなんですね」
エーミは手を休めず、ルイーザの話に耳を傾けていた。
●
草地を走り、岩を飛び越え、柵を避けて駆ける『馬』たち。
「次はカーブなの、右に曲がって……罠はおまかせなの!」
「右だな!」
ウェスペルの言葉を信じ、ヴァイスが速度を落とさないまま身体を傾ける。
そこに飛んでくるのは、干し草の塊。柵の外から投げ込んでくるように、村人に頼んでおいたのだ。
「そうはさせないなの!」
アースウォールの土壁が出現し、干し草を遮断する。
「10数えたらジャンプなの! それですぐに左に曲がるなの!」
観客達の声が聞こえるので、そちらに突っ込むことはないが、とにかく放牧地なので足元が悪い。下手をしたら思わぬ『落し物』で滑りかねないのだ。
だがヴァイスはそれで盛り上がるなら、と覚悟を決めて走り続ける。
別の『馬』達も頑張っている。
「まずはこのまままっすぐだお!」
「伝説のアンカーと謳われた僕の脚……走れるデブの力を魅せてやるぁ……!」
ルーキフェルの指示を信じ、トミヲは全速力で走りだす。
……ものすごく早い。
一体どうやって走っているのか、めちゃくちゃ早い。
「ふおおお……はやいですお! いい感じだお、まずあのラインまで……ふお、危ない!!」
熟れすぎて潰れたトマトを、ルーキフェルは盾で受け止めた。
「トミヲの上半身は、るーが守るお!」
なお下半身は盾が届かないのでごめんなさい、らしい。
だがトミヲの足は、一般人が投げた物など当たらないほどに素早く動いていた。
……あ、お腹に当たったかも。
「あァーっはっはっはっはッ!!」
なんか笑っている。痛むのは心か腹か分からないが、目を覆う布がほんのり湿っている。
「このノリまんま体育祭じゃないかー!!! やだァーーーッ!!!」
叫びながらも、トミヲは走るのをやめない。
「「あっ……!」」
そのとき、ふたりは同時に気付いてしまった。
「ストップ!」
「どっちが早くちゃんと食べるか競争だ……ッ!!!」
ルーキフェルが何か言うより早く、トミヲは迷わず走り出す。そう、コースを外れた方向へ。
「いらっしゃ~い」
そこでは村の奥さん達が待ち構えていた。
アツアツのカツレツがいい匂いでふたりを呼んでいる。
「肉は……るーを裏切らないお」
真面目な顔でお皿を受け取り、ばくばく頬張るルーキフェル。
「これはゴールするために必要な燃料、仕方ないことだお……はい、トミヲもあーんだお」
「ほふっ! うまっ! 大丈夫、お皿ちょうだい。自分で食べるよ」
目隠しなど食欲の前では無意味。トミヲは研ぎ澄まされた感覚で料理を平らげる。
「ごちそうさまでした。おいしかったよ」
ぺこりとお辞儀をすると、ルーキフェルが落ちそうになって必死に掴まる。
「さあ、行くよ!」
「がんばるですお! ……あ、穴ぼk」
「うああああああ」
天国から地獄と二重の罠に阻まれながらも、トミヲは夢中で走り出す。
「あっ……!」
走りだしたトミヲの姿に、ウェスペルが気付いた。
気付いたけど、野菜たっぷりのミネストローネを一生懸命口に運ぶ。
「競争は大丈夫なの?」
笑っているおかみさんに、ウェスペルは堂々と答えた。
「これは名物料理なの! お料理トラップは防げないの!」
もちろんヴァイスのことも忘れていない。美味しそうなアツアツのミートパイを口元に運ぶ。
「ヴァイスさんもあーんなの」
「あー……あちあちあち!?」
何とか口の中に押し込み、喉に引っかかったものをスープで飲み下し、ヴァイスはぜえぜえと肩で息をする。
「できたら後で、改めてゆっくり味わいたいぜ!」
ごふっ。口元からは赤い液体が溢れ出し、なんだかものすごく怖い。
「おいしかったですなの! あとでもういちど来るなの!!」
ウェスペルは満面の笑みでヴァイスを再びコースに導いた。
●
ゴール地点で待つ村長ふたりは、土煙をあげて接近する物を呆然と見つめていた。
それがぼろぼろ崩れ落ちるストーンアーマーの残骸だとは、一般人にはわかりにくい。
わかりにくいが、なんだかやばそうだと本能が告げていた。
「ヴァイスさん、ゴールが見えたなの! あっ、逃げたの! 待てーなの!」
「そりゃ逃げるわい!!」
デストラ村長はそう言いつつ、屈みこむと辺りの草を手早く結ぶ。簡易式の罠だ。
一方で、想像もしなかったスピードで迫るトミヲに、シニストラ村長は全力で逃げ出す。
「あっちのチームがゴールしそうなら教えて! 奥の手を使う!!」
「奥の手ですかお?」
「うん、なるべく近づいて!!」
その間に、デストラ村長の作った罠に引っかかったシニストラ村長が倒れこむ。
だが倒れながらもデストラ村長の服の裾を掴み、死なばもろともの勢いだ。
「いまですなの! 10時方向にゴー!!」
「よし!!」
ウェスペルの指示どおりにヴァイスが向きを変えたところで、エレメンタルコールでトミヲの声が飛んでくる。
「危ない!! 右だ!!!!」
「えっ?」
その一瞬に、トミヲはかついだルーキフェルもろとも倒れこむ。ルーキフェルは必死に手を伸ばして、シニストラ村長にしがみついた。
ほぼ同時にウェスペルがデストラ村長に抱きついている。
「うまくいったのかな?」
トミヲがぜえぜえと息をついていた。同時ゴールで、結果を有耶無耶にして恨みを残さない。それがトミヲの狙いだったのだ。
ルイーザはその意図を察して、声をかけた。
「残念、同時ゴールね。とにかくお馬さんたちはお疲れ様!」
沸き起こる拍手。
既に皆、本来の目的よりも、奇妙なレースのほうを喜んでいるのは明らかだった。
●
たくさんの料理と、たくさんの笑い声。
晴天の下、両村長の健闘をたたえて(?)の大宴会となった。
ヴァイスは何度も例を言うアンジェロとリタに、鷹揚に笑って見せる。
「お祝がわりになったなら嬉しいぜ。で、だ。ここでふたりがどうしたいのか、確りと宣言してみたらどうだ?」
「そうですね。……さっきの箱をいただけますか?」
アンジェロは、双子がしっかり抱えていた箱の中から手紙を取り出す。
「これが僕たちの答えです」
村長達は中身を読み、驚いて顔をあげる。
「どういうことだ……!」
そこには『ふたりでバチャーレ村に移住する』と書かれていたのだ。
「僕たちは皆さんに大事にされてきました。だからこそ、恩返しがしたいんです」
バチャーレ村はサルヴァトーレ・ロッソからの移民が住む、リアルブルー人達の村だ。
そこでは新しい知識を得られると同時に、逆に教えることもたくさんあると、アンジェロは知った。
「領主様には了解いただきました。シニストラ村とデストラ村だけでなく、ジェオルジ全体が発展していけるように。お互いに交流できる、僕たちはその役に立ちたいと思っています」
「そ……そんなこと、許すわけが……!」
シニストラ村の村長の声が震えている。今初めて、従順だと思っていた息子が、ひとりの若者になったことを思い知ったのだ。
トミヲがぽんぽんと、ごつい肩を叩いた。
「あのさ、結局は彼らが決める事じゃない? いい大人だよ? 門出なんだからさ、祝ってあげようよ……」
村長ががっくりと肩を落とす代わりに、周り中から大きな拍手が沸き起こる。
その光景を、ヴァイスは少し眩しそうに眺めていた。
「皆に祝福されてのスタートか。……いいもんだな」
「るー知ってるお、お手紙でお父さんが泣くのが婚式の定番だお」
「本当はみんなわかってるの、村長さんたちは子離れが寂しいだけなの!」
双子がうんうんと頷く。
「……ふたりとも、どこでそんなことを覚えてきたんだ?」
苦笑いを浮かべるヴァイスの前に、いい匂いのするプレートが置かれた。
「ふたりとも物知りだものね。さ、お腹すいたでしょ。今度はゆっくり食べてね」
エーミは皆にとりわけた食事をすすめる。
そこにセストが顔を出した。
「お陰で良い方向に進みそうです、有難うございました」
さっきより少し和らいでみえる表情に、エーミもまた安堵する。
「領主様もいかが?」
「……ではいただきます」
席についたセストに、双子が嬉しそうに顔を見合わせる。
「セスト、一緒にご飯食べるお。おにくぅいっぱい美味しいですお」
「お野菜のスープはエーミが作ったですなの」
こんな賑やかな食卓が新しい土地でみられる日も、きっとそう遠くはないだろう。
<了>
うららかな日差し、風にそよぐ緑の葉。
「まさに決闘日和ですね」
セストがいつも通りの真面目腐った表情で言った。
「今回はハンターの皆さんに説明をお願いします」
ルーキフェル・ハーツ(ka1064)とウェスペル・ハーツ(ka1065)の双子の兄弟は、精いっぱい背筋を伸ばした。
「みんなで相談したお。それで、騎馬戦と『ラグビー』っていうスポーツを組み合わせた形で決闘しますお!」
ルーキフェルが声を張り上げると、ウェスペルがさらに続ける。
「肩車でお馬は目かくしで、騎手があっちこっちって教えて、この箱をゴールへ運びますなの。箱の中身は秘密ですなの」
意味ありげに、重々しく頷くウェスペル。
「ゴールは、デストラ村の村長さんと、シニストラ村の村長さんにお願いするですお!」
ルーキフェルの言葉に、大爆笑が沸き起こる。
当事者ふたりは赤くなったり青くなったりしたが、余りの盛り上がりぶりに引き下がれなくなってしまった。
「じゃあ決まりだな。馬は俺と――」
ヴァイス(ka0364)が水流崎トミヲ(ka4852)の肩をぽんと叩く。
「よろしくね」
つやつや丸顔でぽっちゃり体型のトミヲに、ざわめきがおこる。
「ではコイントスをどうぞ。代理となる馬を指名していただきます」
セストが差し出したコインを、シニストラ村長が弾きあげた。手の甲に伏せると、デストラ村長が唸り声をあげる。
「表……いや、裏だ!」
現れたのは表。デストラ村長は頭を抱え、シニストラ村長は勝ち誇ったようにヴァイスを指名した。
「じゃあ、ゴールのおふたりはあたしについてきてね」
ルイーザがふたりの村長をゴール地点へ連れて行く。
セストはそっとトミヲに声をかけた。
「水流崎さん、お気を悪くされたらすみません」
だがトミヲはニヒルに笑って見せる。
「……ふっ」
実際、トミヲは若干気分を害していた。
だがそれは、幸せになろうとするふたりの意向が完全に無視されているから。
このままじゃ魔法使い(意味深)なトミヲだが、若いふたりの幸せを願うことはできる。
となれば、方法はひとつ。
「せいぜい面白くなるよう掻き回してやろうじゃないか……そして……」
轟! 眼鏡の奥のつぶらな瞳に炎が燃え上がる。
「勝つ! 大人気なくても! 完璧にィ!!!」
そしてルーキフェルを担ぎあげる。
「るーくん、いいね!!」
「高いお! 高いお!」
箱を片手に大はしゃぎのルーキフェル。
「くっくっく。もっとしっかり足をかけても大丈夫だよ!」
「……ハッ、るーは代理決闘を託されたハンターのひとり……クールに決めますお」
ルーキフェルががんばって悪い顔をしたので、見た目と闘志がどこか奇妙な騎馬ができた。
一方、ヴァイスはウェスペルを肩に乗せる。
「絶対に勝つぞウェスペル。最高の指示頼んだぜ」
村長たちもふたりを愛しているからこそ、これからを案じ、睨みあうのだ。
だから今日は声を張り上げ、笑いあい、色々な雑念を吹き飛ばしてほしい。
そのためにも、手は抜けない。
「全力で盛り上げようぜ」
「アンジェロとリタが幸せになるように頑張りますなの!」
ウェスペルもぎゅっとヴァイスにつかまる。
エーミ・エーテルクラフト(ka2225)がトミヲとヴァイスに目隠しをしていく。
「途中に色々あるけど、頑張ってね」
悪戯っぽく笑いながら、『馬』達の耳にささやいた。気のせいかトミヲが身震いし、ちらりとセストが視線を向ける。
セストが片手をあげた。
「では用意……スタート!」
ぷお~。
角笛の響きと共に、ヴァイスとトミヲが走り出す。
●
エーミがほっと息をついた。
「お疲れですか?」
セストは走っていく『馬』を見ながら声をかける。
「そうね。さすがにちょっと疲れたわ。でも」
ふふっと意味ありげに笑うエーミ。
「色々と面白いお話が聞けたわね」
依頼から今日の『決闘』まで数日しかなかった。
ハンター達は、この短い期間で会場の下見から競争の内容の決定までこなしたのだ。
さらにエーミは、ルイーザとリタを通じて、両村の女性達に集まってもらった。
「女の人たちはどうなのかしら? 先に聞いておきたいわ」
すると村長の奥方ふたりは顔を見合わせ、互いに笑いだしたではないか。
「そりゃあ、さびしいわ。でも私たちだって、親と離れて結婚したのだものねえ」
エーミはそれを聞いて、笑顔を見せる。
「よかったわ。じゃあ私からお願いがあるの。聞いてもらえるかしら?」
エーミの提案は、互いの村に伝わる料理をふるまう露店を出すことだった。
その過程でリタにはシニストラ村の料理を覚えてもらう事もできる。
(結婚生活が異郷の味付けで破綻する例もあるし、ね)
逆にアンジェロには、リタの村の味を知ってもらうのだ。
「そういうことなら喜んで」
女たちは、すぐに自慢のお料理について相談を始めた。
リタも一通りの料理はできるようだったが、嫁ぎ先の村の人と料理を通じて交われば、すぐに溶け込めるだろう。
「若妻の手料理って宣伝すれば、箔がつくわよね?」
エーミが呟くと、リタが熟れたトマトよりも真っ赤に頬を染める。
「な、なんですかそれ……!」
「ふふっ、いいじゃない。習うより慣れね。これだけ大量に作れば、嫌でも覚えるわ」
エーミ自身、料理には一家言ある。それでもジェオルジの伝統料理は色々と面白かった。
「ああ、この野菜くずは捨てないでね。スープを取るのよ」
「そっちのお鍋のお湯も捨てちゃだめよ」
料理があまり得意ではないルイーザが、それらの内容を頑張ってメモしていく。
「はー、それにしてもスープひとつでも案外違うものね。うちの味とも違うわ」
ルイーザが感心する通り、それぞれの村に特産物を生かした料理があり、それぞれの家に主婦の自慢の味がある。
「まるで魔法ね」
エーミは改めてそう思う。人を笑顔にし、身体と心を温め、命を繋ぐもの。
エーミ自身、今回で新しく増えたレパートリーが嬉しかった。
「あ……そういえば。ルイーザさん、お婆様ってどんな方だったのですか?」
「え?」
「いえ、ルイーザさんの馴染んだ味のルーツなのかしらって思って」
ルイーザは笑いながら、答えてくれた。
すでに亡くなった祖母は、とびきり美味しいタルトを焼いてくれたこと。
甘やかすだけではなく、悪いことをしたときは厳しく叱られたこと。
そして領内の仕事で忙しい母のかわりに、ふたりをたくさん愛してくれたこと。
「素敵なおばあさまだったわよ。私もああなりたいわ」
「そうなんですね」
エーミは手を休めず、ルイーザの話に耳を傾けていた。
●
草地を走り、岩を飛び越え、柵を避けて駆ける『馬』たち。
「次はカーブなの、右に曲がって……罠はおまかせなの!」
「右だな!」
ウェスペルの言葉を信じ、ヴァイスが速度を落とさないまま身体を傾ける。
そこに飛んでくるのは、干し草の塊。柵の外から投げ込んでくるように、村人に頼んでおいたのだ。
「そうはさせないなの!」
アースウォールの土壁が出現し、干し草を遮断する。
「10数えたらジャンプなの! それですぐに左に曲がるなの!」
観客達の声が聞こえるので、そちらに突っ込むことはないが、とにかく放牧地なので足元が悪い。下手をしたら思わぬ『落し物』で滑りかねないのだ。
だがヴァイスはそれで盛り上がるなら、と覚悟を決めて走り続ける。
別の『馬』達も頑張っている。
「まずはこのまままっすぐだお!」
「伝説のアンカーと謳われた僕の脚……走れるデブの力を魅せてやるぁ……!」
ルーキフェルの指示を信じ、トミヲは全速力で走りだす。
……ものすごく早い。
一体どうやって走っているのか、めちゃくちゃ早い。
「ふおおお……はやいですお! いい感じだお、まずあのラインまで……ふお、危ない!!」
熟れすぎて潰れたトマトを、ルーキフェルは盾で受け止めた。
「トミヲの上半身は、るーが守るお!」
なお下半身は盾が届かないのでごめんなさい、らしい。
だがトミヲの足は、一般人が投げた物など当たらないほどに素早く動いていた。
……あ、お腹に当たったかも。
「あァーっはっはっはっはッ!!」
なんか笑っている。痛むのは心か腹か分からないが、目を覆う布がほんのり湿っている。
「このノリまんま体育祭じゃないかー!!! やだァーーーッ!!!」
叫びながらも、トミヲは走るのをやめない。
「「あっ……!」」
そのとき、ふたりは同時に気付いてしまった。
「ストップ!」
「どっちが早くちゃんと食べるか競争だ……ッ!!!」
ルーキフェルが何か言うより早く、トミヲは迷わず走り出す。そう、コースを外れた方向へ。
「いらっしゃ~い」
そこでは村の奥さん達が待ち構えていた。
アツアツのカツレツがいい匂いでふたりを呼んでいる。
「肉は……るーを裏切らないお」
真面目な顔でお皿を受け取り、ばくばく頬張るルーキフェル。
「これはゴールするために必要な燃料、仕方ないことだお……はい、トミヲもあーんだお」
「ほふっ! うまっ! 大丈夫、お皿ちょうだい。自分で食べるよ」
目隠しなど食欲の前では無意味。トミヲは研ぎ澄まされた感覚で料理を平らげる。
「ごちそうさまでした。おいしかったよ」
ぺこりとお辞儀をすると、ルーキフェルが落ちそうになって必死に掴まる。
「さあ、行くよ!」
「がんばるですお! ……あ、穴ぼk」
「うああああああ」
天国から地獄と二重の罠に阻まれながらも、トミヲは夢中で走り出す。
「あっ……!」
走りだしたトミヲの姿に、ウェスペルが気付いた。
気付いたけど、野菜たっぷりのミネストローネを一生懸命口に運ぶ。
「競争は大丈夫なの?」
笑っているおかみさんに、ウェスペルは堂々と答えた。
「これは名物料理なの! お料理トラップは防げないの!」
もちろんヴァイスのことも忘れていない。美味しそうなアツアツのミートパイを口元に運ぶ。
「ヴァイスさんもあーんなの」
「あー……あちあちあち!?」
何とか口の中に押し込み、喉に引っかかったものをスープで飲み下し、ヴァイスはぜえぜえと肩で息をする。
「できたら後で、改めてゆっくり味わいたいぜ!」
ごふっ。口元からは赤い液体が溢れ出し、なんだかものすごく怖い。
「おいしかったですなの! あとでもういちど来るなの!!」
ウェスペルは満面の笑みでヴァイスを再びコースに導いた。
●
ゴール地点で待つ村長ふたりは、土煙をあげて接近する物を呆然と見つめていた。
それがぼろぼろ崩れ落ちるストーンアーマーの残骸だとは、一般人にはわかりにくい。
わかりにくいが、なんだかやばそうだと本能が告げていた。
「ヴァイスさん、ゴールが見えたなの! あっ、逃げたの! 待てーなの!」
「そりゃ逃げるわい!!」
デストラ村長はそう言いつつ、屈みこむと辺りの草を手早く結ぶ。簡易式の罠だ。
一方で、想像もしなかったスピードで迫るトミヲに、シニストラ村長は全力で逃げ出す。
「あっちのチームがゴールしそうなら教えて! 奥の手を使う!!」
「奥の手ですかお?」
「うん、なるべく近づいて!!」
その間に、デストラ村長の作った罠に引っかかったシニストラ村長が倒れこむ。
だが倒れながらもデストラ村長の服の裾を掴み、死なばもろともの勢いだ。
「いまですなの! 10時方向にゴー!!」
「よし!!」
ウェスペルの指示どおりにヴァイスが向きを変えたところで、エレメンタルコールでトミヲの声が飛んでくる。
「危ない!! 右だ!!!!」
「えっ?」
その一瞬に、トミヲはかついだルーキフェルもろとも倒れこむ。ルーキフェルは必死に手を伸ばして、シニストラ村長にしがみついた。
ほぼ同時にウェスペルがデストラ村長に抱きついている。
「うまくいったのかな?」
トミヲがぜえぜえと息をついていた。同時ゴールで、結果を有耶無耶にして恨みを残さない。それがトミヲの狙いだったのだ。
ルイーザはその意図を察して、声をかけた。
「残念、同時ゴールね。とにかくお馬さんたちはお疲れ様!」
沸き起こる拍手。
既に皆、本来の目的よりも、奇妙なレースのほうを喜んでいるのは明らかだった。
●
たくさんの料理と、たくさんの笑い声。
晴天の下、両村長の健闘をたたえて(?)の大宴会となった。
ヴァイスは何度も例を言うアンジェロとリタに、鷹揚に笑って見せる。
「お祝がわりになったなら嬉しいぜ。で、だ。ここでふたりがどうしたいのか、確りと宣言してみたらどうだ?」
「そうですね。……さっきの箱をいただけますか?」
アンジェロは、双子がしっかり抱えていた箱の中から手紙を取り出す。
「これが僕たちの答えです」
村長達は中身を読み、驚いて顔をあげる。
「どういうことだ……!」
そこには『ふたりでバチャーレ村に移住する』と書かれていたのだ。
「僕たちは皆さんに大事にされてきました。だからこそ、恩返しがしたいんです」
バチャーレ村はサルヴァトーレ・ロッソからの移民が住む、リアルブルー人達の村だ。
そこでは新しい知識を得られると同時に、逆に教えることもたくさんあると、アンジェロは知った。
「領主様には了解いただきました。シニストラ村とデストラ村だけでなく、ジェオルジ全体が発展していけるように。お互いに交流できる、僕たちはその役に立ちたいと思っています」
「そ……そんなこと、許すわけが……!」
シニストラ村の村長の声が震えている。今初めて、従順だと思っていた息子が、ひとりの若者になったことを思い知ったのだ。
トミヲがぽんぽんと、ごつい肩を叩いた。
「あのさ、結局は彼らが決める事じゃない? いい大人だよ? 門出なんだからさ、祝ってあげようよ……」
村長ががっくりと肩を落とす代わりに、周り中から大きな拍手が沸き起こる。
その光景を、ヴァイスは少し眩しそうに眺めていた。
「皆に祝福されてのスタートか。……いいもんだな」
「るー知ってるお、お手紙でお父さんが泣くのが婚式の定番だお」
「本当はみんなわかってるの、村長さんたちは子離れが寂しいだけなの!」
双子がうんうんと頷く。
「……ふたりとも、どこでそんなことを覚えてきたんだ?」
苦笑いを浮かべるヴァイスの前に、いい匂いのするプレートが置かれた。
「ふたりとも物知りだものね。さ、お腹すいたでしょ。今度はゆっくり食べてね」
エーミは皆にとりわけた食事をすすめる。
そこにセストが顔を出した。
「お陰で良い方向に進みそうです、有難うございました」
さっきより少し和らいでみえる表情に、エーミもまた安堵する。
「領主様もいかが?」
「……ではいただきます」
席についたセストに、双子が嬉しそうに顔を見合わせる。
「セスト、一緒にご飯食べるお。おにくぅいっぱい美味しいですお」
「お野菜のスープはエーミが作ったですなの」
こんな賑やかな食卓が新しい土地でみられる日も、きっとそう遠くはないだろう。
<了>
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愛と希望と決闘と僕達 水流崎トミヲ(ka4852) 人間(リアルブルー)|27才|男性|魔術師(マギステル) |
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セストに質問なの! ウェスペル・ハーツ(ka1065) エルフ|10才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/06/13 19:51:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/12 22:41:51 |