靴磨きの少年は見ていた

マスター:村井朋靖

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/19 12:00
完成日
2014/06/26 16:29

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●奇妙な関係

 港湾都市ポルトワール。

 この都市は古くから漁業を営み、近年は他国との貿易で栄え、最近は観光立国として成長を続けている。
 目標は言わずもがな、首都機能を有する極彩色の街ヴァリオス。都市の発展を指揮する「ポルトワール都市統合本部」の代表であるロメオ・ガッディ(kz0031)は、今や同盟最大の商人派閥「ヴァリオス商工会」にマークされるほどの人物である。
 彼がこの都市の代表になったのは、歪虚の事件がきっかけだ。いくつもの海商が他国へ輸出するために用意した積荷を歪虚に消され、その補償問題で頭を抱えていた頃、海商の事務局長を務めていたロメオが「同盟海軍を誘致しよう」と提案した。当時、基地機能の拡大を検討していた海軍と思惑が見事に一致し、とんとん拍子で交渉が成立。こうして、ポルトワールに同盟海軍の約半数が駐屯することになった。その後、他国へ向かう貿易船に同盟海軍の船が随行するようになると、歪虚絡みの事件が激減。ポルトワールは文字通り「港湾都市」としての不動の地位を手に入れた。
 貿易と都市の安全を手に入れたポルトワールを見て、ロメオは漁業を活かした観光業にも挑戦。これも成功させ、ついに都市の代表にまで上り詰めた。

 しかし、それはあくまで表向きの話。無論、すべてうまく行くはずもない。
 ポルトワール発の貿易が急激に発達したせいで、ダウンタウンが各所で成立し、生活に困窮する者や住処を持たぬ者が流れ込んでくるようになった。今では都市に数ヶ所の拠点が点在しており、誰がどのくらい住んでいるのかは把握できていない。
 現在、ここを取り仕切るリーダーは、ヴァネッサ(kz0030)。彼女はダウンタウンの統治に腐心しており、住人による重犯罪の抑制に貢献。ポルトワールと共存できるよう、狐のようにズルく立ち回っている。ロメオは「自分だったら手に負えなかったろう」と結論付け、ヴァネッサやダウンタウンの存在を黙認するつもりだった。
 ところが、これに「待った」をかける組織があった。ポルトワールへの招致を今も恩に感じている同盟海軍である。
 現在、ポルトワールに駐屯する海軍の指揮官は、モデスト・サンテ少将。その有能さから、軍人だけでなく市民からも「提督」と呼ばれており、白熊のような愛嬌ある体型も手伝って、非常に人気があった。
 そんな彼が掲げる目標というのが、「ダウンタウンの浄化」である。ポルトワールをよりよい街にすべく、とりあえずヴァネッサ一味を捕まえて、邪魔者がいなくなったところでダウンタウンをきれいに掃除しよう。それが彼にとっての恩返しなのだ。
 同盟陸軍ならいざ知らず、海軍は非常に有能なので、少将ほどの人物が各方面の現場に出張る必要もない。だから普段は直属の部下を従えて、街のパトロールをしている。そう、彼の人気はここから得たものなのだ。

 ポルトワール都市統合本部、ダウンタウン、同盟海軍……この三者の絶妙なバランスの上で、港湾都市は成り立っている。

●提督、現る
 そしてこの日もいつものように、モデストが部下を引き連れ、ロメオのいる都市統合本部へとやってきた。
「代表! おとといから善良な市民が、夜の暗がりで突然切りつけられる事件が続いていると聞いた!」
 こう来ると二言目には「きっとヴァネッサの仕業だ!」と続けるのが、提督お決まりのトーク。毎回の流れに食傷気味のロメオは、思わず眉間にしわを寄せ、唇を上げる。
「ヴァネッサさんはダウンタウンの住人にそういうことはさせないと思いますが……」
 ロメオも事件についてはある程度把握しており、同盟陸軍を通じて情報を得ていた。
「その根拠は?」
「犯人はダウンタウンの一角に身を隠し、無差別に人を切っているそうです。背丈も低く、まるで唸っているようだったとも」
 モデストはあごに手をやって思案し、「もしかして歪虚という可能性もあるのか?」と尋ねる。
 ロメオは「さすがは提督」と手放しに褒め、ようやく安堵した表情を見せた。
「ですから、今回はヴァネッサさんじゃありませんよ」
 そう結論付けられると、提督も「うーん」と唸る。これは『理解はできるが納得はできない』というやつだ。
 しかし、その横に立つ部下は心の中で思った。もし意味もなく人を切りつける者がダウンタウンにいたなら、それこそヴァネッサが放置しないだろう。下手すると、こんな話が我々の耳に届く前に片がついているはずだ。ダウンタウンを端的に表すとすれば、同盟海軍のシンボルカラーである白とは真逆の黒。いや、正確には闇というべきか。かの地にもかの地の掟が存在するのは確かだ。

 ここまで思案した頃、ロメオが思い出したかのように声を上げた。
「あ! それに、この件はハンターさんに調査をお願いしてあります」
「おお、例の一件でずいぶんとハンターが増えたそうだな。じゃあ今回は、お手並み拝見と行くかな? はっはっは!」
 すっかり宿敵・ヴァネッサのことを忘れたモデストは「邪魔したな」と言い残し、本部を後にした。

●靴磨きの少年
 モデストはその後、事件の起きたダウンタウンの近くに足を伸ばす。
 別にハンターの仕事を奪おうというのではない。ここには熱心に靴を磨く少年がおり、提督は彼に仕事を与えるために立ち寄ったのだ。
「少年、儲かっているか? 今日も頼むぞ」
「あ、提督の旦那。ありがとうございます!」
 いつも同じ薄汚れた服を着ているが、少年は必ず笑顔で迎える。モデストはそこが気に入っていた。
「でも、いつも磨かせてもらっていいんですか? 提督って、靴は履き潰すタイプに見えるんだけど」
 あっさりと意図を見抜かれた提督は、部下に向かってばつの悪そうな顔をしてみせる。
「はっはっは、こりゃ一本取られた! ま、君も大人になればわかるさ」
 部下も「そうそう」と笑うと、少年も手を動かしながら笑った。
「そういえば、提督の旦那はこの辺で起きてる事件は知ってるの?」
「ああ、提督だからな。それがどうかしたか?」
 少年は手を止め、モデストの目を見ながら話す。
「俺、見たんです。俺より少し背の高いくらいで猫背っぽいフードの奴が、ひとりでうろちょろしてて……」
 その手にはなんと、紅に染まったナイフが握られていたという。彼は身の危険を感じ、息を殺して動かずにいた。それが幸いし、何とか難を逃れたという。
「ふむ、これで決まりだな。ヴァネッサの関係者じゃない、か……」
 それでもまだ少し悔しそうな顔をする提督だが、すぐに気を取り直す。
「少年、その話をもう一度みんなの前でしてくれないか。駄賃は弾むぞ」
 モデストは歪虚の犯行であるとの見方を強め、ロメオと共にハンターの到着を待つことに決めた。

リプレイ本文

●敵の正体は?
 靴磨きの少年を先頭に、ハンターとモデストらがダウンタウンへと向かう。
 ラピス(ka1333)は「目撃者から詳しく話を聞きたい」と、護衛も兼ねて少年の隣を歩く。
「うろちょろしてた、ということだけど、物陰に隠れながら動いてたのか、それとも獲物を探すのを優先して動き回ってたのか、どっち?」
 少年は「うーん」を考えた後に答える。
「特に獲物を探してるって感じじゃなかったと思います」
 ならば、答えは前者か。ラピスは「なるほどね」と頷いた。
「死角が多くて、細い路地とかにいる確率が高そうね」
 そう分析し、A班として探索する木ノ下 道也(ka0843)に伝えた。
「じゃあ、これがきっと役に立つでしょう」
 道也はポケットからハンディLEDライトを取り出す。これで見通しの悪い箇所でも、ライトを照らして調べることができる。
 照らすといえば、そう。A班メンバーであるウェルス・ホーエンハースト(ka2048)を忘れてはならない。彼は突然、聖導士として少年の心に安堵を捧げるべく、彼の前で膝をつき、恐怖に震えているであろうその手をしっかりと握り、デカい声で励ましの言葉を送った。
「ああ、少年よ。この私、ウェルス・ホーエンハーストが希望の光となろう! 愛があれば、愛さえあれば大丈夫!」
 セリフを喋るごとに披露される豊富なポーズの数々を目の当たりにし、少年は圧倒されまくり。しかし、それでも説得力はあったようで、彼は「ご心配ありがとうございます」と返した。

 B班に所属するイレーナ(ka0188)は、魔導短伝話を持つ道也と定期的に連絡を取り合うことを確認。行動を共にするピロー・クラースヌィ(ka1435)に「準備はよろしいですか」と声をかける。
「はい、大丈夫です。不謹慎かもしれませんが、初めての仕事、少し楽しみです」
 小さな体にみなぎる大きな好奇心。しかしその反面、少女の仕事は実に繊細だ。道也と共にモデスト・サンテに対して、事件解決のための協力を要請する。
「モデストさん、もし戦闘が起こったら、現場の避難指示は海軍が出してもらえませんか?」
 恰幅のいい白熊提督は、困った表情を浮かべながら頭を掻く。
「いかに提督が指示を出そうとも、ここの連中は海軍の言うことは聞かんよ」
 そう、同盟海軍とダウンタウンは犬猿の仲。迅速な避難は難しいだろうと答える。
「それでもお願いします。ダウンタウンに住む人を守るためにも、モデストさんの力を貸してください」
 道也も言葉を尽くして説得すると、提督も「わかった」と頷き、部下に「今回はハンターの顔を立てるべく、キッチリやるぞ」と指示を下す。提督を心酔する彼らは、威勢よく「はっ!」と答えた。
「全力を尽くすが、逃げる気のない奴の面倒まで見ないぞ」
「提督、そこはご安心を。そんな方はこの私、ウェルス・ホーエンハーストが安全な場所へ導いて差し上げます!」
 海軍との協力体制が整ったところで、ハンターたちは問題の一角へと足を踏み入れる。
 ここで靴磨きの少年はいったんお別れだ。B班で囮役を担うケイジ・フィーリ(ka1199)は「道案内ありがとう」と礼を述べ、手首を回して戦闘の準備を整える。自分と年の近いハンターが最前線で戦うと知り、少年は「気をつけてくださいね」と声をかけた。
「大丈夫、俺たちはハンターだからな」
 ケイジがそう言うと、イレーナとピローも少年の方を向き、力強く頷く。
「少年は部下を護衛につけて帰らせるから安心してくれ。君らこそ気をつけるんだぞ!」
 提督の言葉に、A班のラピス・道也・ウェルスがそれぞれに頷いた。

●横のつながり
 虎口に飛び込んだハンターは、まず情報収集を行う。
 B班のイレーナは、すぐ近くにある薄汚れたバーへと足を向けた。まだ明るい時間だというのに、外にまで賑やかな声が響いている。
 彼女が店の中に入った瞬間、その華麗な姿に息を呑む者も少なくなかった。
「おい、何を探してんだい? 姉ちゃん」
 小さな丸いテーブルをひとりで占拠する白髪の老人が、遠慮せず声をかけてきた。
「どうして私が探し物をしていると思われたのでしょうか?」
「ワシらの仲間と思われたいんだったら、もうちっと着る服を選んだ方がいいな。身なりがよすぎる」
 老人がそう諭すと、他の客も楽しそうに笑う。どうやら皆、飲み友達のようだ。
「探しているのは、無差別に人を斬る犯人です。心当たりは?」
 老人はぐいっと酒を煽り、ぷはーっと声を上げてから口を開く。
「ない!」
 素っ気のない返事を聞いたケイジは、ここで食い下がる。
「その、ひとりでいたとか、暗がりに入ったとか……そういうのだけでもいいんだよ!」
「ほほぉ、坊やはそいつをとっちめて、名を上げたいクチかい?」
 ニヤニヤしながら話す老人に子供扱いされたのを我慢できず、ケイジは「俺はハンターだ!」と言い返す。
「じゃあ、お利口な頭でよーく考えろ? 心当たりがない、目撃者がいないってのは、どういうこった?」
 その話を後ろで聞いていたピローが、不意に呟く。
「犯人は、ひとりになったところを襲撃している」
 それを聞いた老人は「他には?」と聞くと、今度はイレーナが話した。
「目撃者が少ないのは、人気のない暗がりか路地で襲うからですね」
「そうじゃ、ワシらのつながりは広くて強い。そんなモンが来れば、すぐヴァネッサが片付けるからな」
 ケイジはふと、さっき老人が笑った時のことを思い出す。あの時、皆が笑っていた。そして今もそう。ダウンタウンは、主に横のつながりで構成されたコミュニティーなのだ。
 老人は「参考になったかな?」とお茶目に笑うと、イレーナがある依頼をした。
「ヴァネッサ女史に、本件の協力をお願いしたいのです。我々との同行は不要ですが、不審者を発見した時は何らかの手段を用いて連絡してほしいと」
 モデストに嫌疑をかけられるのは日常茶飯事でも、犯人を放置するのは不本意のはず……イレーナはそう説いた。
「姉ちゃんよ。くたびれた老いぼれに伝言託したって、ヴァネッサにまで届くかどうかわかんねぇよ?」
 老人は自虐的に笑うが、イレーナは気にせず「よろしくお願いします」と言って席を立つ。ケイジも「た、頼んだぜ!」と慌てて後を追い、ピローも「お願いします」と一礼して店を出た。

 バーの外に出ると、イレーナはさっそく魔導短伝話を使って、道也に経緯を伝える。
「ええ、おそらくダウンタウンの協力は得られると思います。そちらの状況はどうですか?」

●暗闇の中から
 A班はラピスが囮役を担当。わざと独り言を呟きながら歩く。
 その後ろでは道也とウェルスが物陰などを探り、敵の行方を追っていた。
「噂通りの薄暗さですね。よっと」
 道也は建物の隙間をライトで照らし、奥の様子を伺った。すると、毛布に包まって寝ていたオジサンが「んあ?」と驚く。
「すみません! お休みのところを……」
「ふーぁ。いや、構わんよ。ところで見慣れん顔だが、この辺でなんかあったかい?」
 ウェルスは「何を隠そう!」と前置きし、事件の詳細を説明。最後に道也が「ということで、気をつけてくださいね」と話をまとめる。
「ふーん、ありがとよ。じゃあ、昼寝は別のところですっかぁ~」
 オジサンがそう言うと、ライトの届かない奥から何人もぞろぞろと出てきた。これにはさすがの道也もあっけに取られる。
「こんな狭い路地で、皆さん寝てらっしゃるんですね」
「雨風を凌げて、そこそこの広さもあるんだ。ここはいいとこだよ」
「早いとこ、その物騒な奴を追っ払ってくれると助かるね」
 オジサンたちはふたりの肩を叩き、一時避難のために動き出す。固まっての移動なので、敵が牙を剥くこともないだろう。ふたりは彼らを見送った。

 A班は住民の避難こそ順調に進むが、それ以外での進展がない。道也はこの状況をB班のイレーナに伝えた。
「そういえば最初に歩いてる頃よりも、ずいぶんと人が減った気がしますね」
 そんな道也の言葉を聞き、イレーナが「ヴァネッサさんが動いたのでしょう」と答える。きっとあの老人から情報が伝わったのだ。これで住民が危険に晒される可能性は低くなった。
 しかし、まだどちらも犯人を発見していない。すでに捜索は半分は済んでおり、何事もなく終われば、両班が合流する手筈になっている。
「僕たちも、このまま探索を続けます」
「わかりました。お気をつけて」
 通信を終え、イレーナは再び歩き出した。隣にいたピローに詳細を話しつつも、その目はケイジを見ている。
 ケイジはこの時、今までになく細くて暗い路地に差し掛かった。しかも道が左に折れており、一瞬だけ後続と分断される。
「さて、鬼が出るか、蛇が出るか……」
 進入する腹を決めるも動作には現さず、ケイジはさっきと同じ調子で進む。
 曲がり角を折れた瞬間、彼の鼻っ柱を血染めのナイフが掠めた!
「うわっ! 予想通りか!」
 ケイジは模造刀を抜き、敵の追撃をなんとか受け止め、そのまま鍔迫り合いの形に持ち込む。相手はその勢いを殺せず、壁に背中をしこたま打ちつけた。
「フードの男! お前が犯人だな?!」
 とは言うものの、ケイジは不思議で仕方なかった。
 敵の身長は自分よりもわずかに低く、息遣いも粗い。そのくせ、この状況を力で振り解こうとする……彼は「もしや人間じゃない?」と考えたが、今は敵を抑えこむので精一杯。考えはまとまらない。
 そこに現れたのが、後衛に控えていたピローだ。彼女は敵の正体を暴かんと、メイスファイティングを駆使して頭部を狙う。
「大人しくするのです!」
 ピローの一撃は残念ながら空を切ったが、その顔を隠す布を揺り落とした。
 そこから出てきた顔は……醜悪な面構えをした小鬼・ゴブリン。しかし正体がバレても臆せず、猛然とケイジに切りかかる。
「ゲガアァァ! アガアァァ!」
「ゴブリン? なぜ、こんなところに」
 ピローは考えを巡らせるが、今は答えを導き出せない。それは標的にされているケイジも同様だ。
 イレーナはとっさに「ゴブリンです、避難してください!」と周囲に呼びかけ、すぐさま魔導短伝話でA班の道也に連絡を入れる。
「緊急です。こちらに敵が出現しました。ゴブリンが1匹です」
「ええっ! ゴブリンが1匹? とにかく急ぎますけど、僕たちは土地勘がないので……」
 急いで救援に向かおうにも、ここはダウンタウン。道が入り組んでいて、速やかな移動は望めない。イレーナは「なんとか持ちこたえます」と答え、慌てて出てきた住人たちの避難させることに集中した。

●戦士の最期
 敵が執拗にケイジを狙うため、自然と彼が前衛、ピローが後ろという陣形になった。
 A班が合流すれば、もはや勝ったも同然。しかし相手は、戦いにかなり自信を持つ小鬼である。となると、こいつは強敵か……ふたりに緊張が走る。
「行くぞっ! はあっ!」
 ケイジは自らに攻性強化を施し、真正面から斬りつけるが、そのすべて命中させることは難しい。また反撃は受け止めることで気を引こうとするが、その凶刃を食らい、手傷を負わされてしまう。
「くっ、やるな……!」
 その間隙を縫うように、ピローが攻撃を仕掛けたり、ヒールを用いてケイジの傷を癒す。
「必ず、持ちこたえてみせます」
 敵の刃が彼女に向けられても、ケイジと同様に受け流すことに専念。決して相手に逃亡を意識させないよう、必死に立ち回った。

 あれからしばらくの時が経過したが、戦況は一進一退のままだった。
 しかしイレーナの「こちらです」という声と共にA班の面々が姿を現すと、ついに形勢が逆転する。
「お待たせしました!」
 道也はいい笑顔を添えて、味方に到着をアピール。そして集中を乗せたマジックアローで攻撃し、敵の胸を貫く。
 ラピスは「敵さん、待ってました!」とばかりに地を駆けるもので距離を詰め、闘心昂揚を発動。ジャマダハルを存分に振るい、その恵まれた体躯と長い髪を躍動させる。
「一気に決めるわよ!」
 後衛にキラキラ聖導士・ウェルスが回復役として控えに回ると、ピローが攻めに転じた。
「わかりました、決めましょう」
 少女は渾身の力でロッドを振り上げ、敵のあごに砕き、小鬼を昏倒寸前まで追い込む。
 ここでピローは、ケイジにトドメを任せた。
「あとは、お願いします」
「ありがとう、恩に着る!」
 ケイジは気持ちを落ち着かせた上で袈裟斬りを放ち、動きの止まった敵の胸を存分に切り裂く。
「グバアッ! ブワァ……」
 この一撃で孤独の犯罪者は絶命し、静かに地面へと倒れた。
 これを後方から見届けたイレーナが「終わりましたね」と呟くと、皆が武器を納め、大きく息を吐く。ウェルスは前衛で奮起した者たちに「素晴らしいぞ!」と健闘を讃えながら、順番にヒールで傷を癒した。

 こうして、ダウンタウンを騒がせた無差別傷害犯は、ハンターたちの手によって退治された。

●支援者たち
 モデストは戦闘発生を伝え聞いた後、避難誘導を携わっていたが、それを終えた後、戦闘のあった場所にやってくる。
 彼は犯人の顔を見て「これはゴブリンの上位種だ」と説明した。
 ここまでの実力者ともなると、徒党を組まずに1匹で活動したり、ゴブリンを手下として率いたりすることもあり、非常に危険な存在であるという。
「自分のテリトリーを形成すべく、近づく者を脅していたのだろう。もし腹でも空かせていたら、被害が拡大していたかもしれない」
 モデストは「ハンター諸君、お手柄だな」と手放しに褒める。
 道也は「ありがとうございます、提督」と答えると、モデストは「おお、君もその名で呼んでくれるか!」とご機嫌な表情になった。
「でも提督。今回のお手柄は、僕たちだけじゃないんです」
「と、言うと?」
「僕たちがケイジさんたちの元に駆けつけようとした時、ダウンタウンの皆さんが協力して、近道を教えてくれたんです」
 道也がそう言うと、イレーナも言葉を続けた。
「あの騒ぎから逃れた方も、ヴァネッサ女史を慕う小さな子供たちも……皆が協力して木ノ下さんたちを送り届けてくれたからこそ、最良の結果を得られたのです」
 モデストは「ヴァネッサ」と聞き、露骨に渋い顔をするが、すぐに「まぁ、今回はそういうことにしておこう」と折れた。
「じゃあ、今回は同盟海軍とダウンタウン双方の協力があって、事件を解決したと報告しますね」
 ケイジがそう提案すると、ピローも「それに賛成」と頷く。
 提督は「わかった、もう任せた!」と言い放った後、靴磨きの少年に「もうこれで安全だ。また商売に励めよ」と声をかけた。
「また、この街や提督の力になりたいです。みんなが幸せになれる街になるといいですよね」
 道也がそう言うと、モデストも「今後ともよろしくな」と全員と握手し、この事件を締め括った。

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参加者一覧

  • 微風の未亡人
    イレーナ(ka0188
    エルフ|27才|女性|魔術師
  • めざすは相棒?
    木ノ下 道也(ka0843
    人間(蒼)|16才|男性|魔術師
  • 鉄の決意
    ケイジ・フィーリ(ka1199
    人間(蒼)|15才|男性|機導師

  • ラピス(ka1333
    エルフ|25才|女性|霊闘士

  • ピロー・クラースヌィ(ka1435
    ドワーフ|14才|女性|聖導士

  • ウェルス・ホーエンハースト(ka2048
    人間(紅)|27才|男性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン ダウンタウンに潜むものの退治
ラピス(ka1333
エルフ|25才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/06/18 23:16:29
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/15 01:08:26