ゲスト
(ka0000)
猫カフェ用の猫グッズを作ろう!
マスター:なちゅい
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/26 19:00
- 完成日
- 2017/07/30 16:51
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
港町「ガンナ・エントラータ」。人々の活気で溢れ、物が行き交う街。
この地には陸上からだけでなく、自由貿易同盟から船による輸送などもあり、大量の物資が集まるが、その多くは王都イルダーナに運ばれることとなる。
先日、そんな流通の要となるこの街に、大量の猫が現われた。
その際、街路を封鎖していたこの猫達は、ハンター達の働きによって一部を除いて裏通りの空き倉庫へと移動させた。
猫カフェをやってみてはというハンターの提案もあり、オープンの為にオーナー、エンリコを始め、猫好きな住人6人が入れ替わり立ち替わり訪れ、その準備を進めている。彼らは猫についての知識を学びつつ、猫達を躾ける日々を過ごす。
ところで、オーナーであるエンリコの本職は流通などに携わる商人だ。彼は本音と建前はしっかりと使い分け、利にならぬことはしないというドライな考えを持つ。
元々、この倉庫を貸したのも、猫カフェが金になるというハンターの話があったからこそ。こうして、エンリコが猫の世話をしているのは、いつかうまく利益になるからという打算的な考えが少なからずある。
とはいえ、エンリコも幾分か猫に慣れ、世話を覚えていた。こうして猫と触れ合うことで情が沸いてきている部分もある。
しかし、現状は……。
興味を持ってやってくる人がまれに利用料を置いてくれはするが、カフェとしてのサービス提供には至っていない。ほぼ、猫のえさ代などで支出のみかさんでいる状況であり、この状態を長く続けるわけにも行かない。
ただ、準備が全く進んでいないわけでもない。客に振舞う飲料などをつくるコーヒーメーカー、ジュースを作る為のミキサー。清掃の為の道具、備品、ソファやテーブル、カウンター。そうした備品は徐々に買い揃えてきてはいるのだが……。
「猫モチーフのグッズ、か……」
折角店としてオープンさせるならば、客が楽しめる場所にしたい。その為に、足りないグッズがある。
エンリコはそれらをうまく調達できず、頭を痛めてしまっていた。
ガンナ・エントラータのハンターズソサエティ。
「猫カフェ用の猫グッズを作ってくれる人を募集していますー」
カウンターからハンターへと説明していたのは、金髪ウェーブヘア、糸目の女性シェリーだ。
現在、この港町の裏通りの倉庫で、猫カフェのオープン準備が進められている。
オーナー、エンリコはオープンに当たって使用する備品を揃えていた様だが、折角だから猫をモチーフとしたグッズを使用してはどうかという案が協力しているハンターから挙がっていた。
「その為、エンリコさんもそうしたグッズを探しているようなのですがー」
いくら流通の要となる街とはいえ、猫グッズがそこまで大量に売られているはずもない。
ならば、作ってみようとエンリコは考えるが、彼はさほど絵心や美的感覚がない人間の為、これをハンターに募集したいと考えていた。
「全ての数を用意するのではなくて、こういったグッズが欲しいって試作品を作って、専門の業者に発注する形ですねー」
主に用意したいのは、コップ、皿。装飾品やクッションなどのグッズだ。
できれば、店内のテーブル、椅子なども猫モチーフとしたいが、こちらはエンリコがすでに用意している物がある為に優先順位としては少し落ちる状況だ。
「この辺りのグッズが揃えば、開店準備はある程度整うそうですねー」
オープンに向けて大きく前進しそうな状況ということで、オーナー、エンリコの力が篭った一筆が依頼書にはある。
『協力者求ム、エンリコ』
エンリコとしても、少しずつ猫に情が沸いて来ている状況。ここで、猫カフェ開店をご破算にはしたくないのだろう。
「そんなわけで、よろしくお願いいたしますー」
シェリーはそうしてエンリコの代理となり、ハンター達へと助力を求めるのだった。
港町「ガンナ・エントラータ」。人々の活気で溢れ、物が行き交う街。
この地には陸上からだけでなく、自由貿易同盟から船による輸送などもあり、大量の物資が集まるが、その多くは王都イルダーナに運ばれることとなる。
先日、そんな流通の要となるこの街に、大量の猫が現われた。
その際、街路を封鎖していたこの猫達は、ハンター達の働きによって一部を除いて裏通りの空き倉庫へと移動させた。
猫カフェをやってみてはというハンターの提案もあり、オープンの為にオーナー、エンリコを始め、猫好きな住人6人が入れ替わり立ち替わり訪れ、その準備を進めている。彼らは猫についての知識を学びつつ、猫達を躾ける日々を過ごす。
ところで、オーナーであるエンリコの本職は流通などに携わる商人だ。彼は本音と建前はしっかりと使い分け、利にならぬことはしないというドライな考えを持つ。
元々、この倉庫を貸したのも、猫カフェが金になるというハンターの話があったからこそ。こうして、エンリコが猫の世話をしているのは、いつかうまく利益になるからという打算的な考えが少なからずある。
とはいえ、エンリコも幾分か猫に慣れ、世話を覚えていた。こうして猫と触れ合うことで情が沸いてきている部分もある。
しかし、現状は……。
興味を持ってやってくる人がまれに利用料を置いてくれはするが、カフェとしてのサービス提供には至っていない。ほぼ、猫のえさ代などで支出のみかさんでいる状況であり、この状態を長く続けるわけにも行かない。
ただ、準備が全く進んでいないわけでもない。客に振舞う飲料などをつくるコーヒーメーカー、ジュースを作る為のミキサー。清掃の為の道具、備品、ソファやテーブル、カウンター。そうした備品は徐々に買い揃えてきてはいるのだが……。
「猫モチーフのグッズ、か……」
折角店としてオープンさせるならば、客が楽しめる場所にしたい。その為に、足りないグッズがある。
エンリコはそれらをうまく調達できず、頭を痛めてしまっていた。
ガンナ・エントラータのハンターズソサエティ。
「猫カフェ用の猫グッズを作ってくれる人を募集していますー」
カウンターからハンターへと説明していたのは、金髪ウェーブヘア、糸目の女性シェリーだ。
現在、この港町の裏通りの倉庫で、猫カフェのオープン準備が進められている。
オーナー、エンリコはオープンに当たって使用する備品を揃えていた様だが、折角だから猫をモチーフとしたグッズを使用してはどうかという案が協力しているハンターから挙がっていた。
「その為、エンリコさんもそうしたグッズを探しているようなのですがー」
いくら流通の要となる街とはいえ、猫グッズがそこまで大量に売られているはずもない。
ならば、作ってみようとエンリコは考えるが、彼はさほど絵心や美的感覚がない人間の為、これをハンターに募集したいと考えていた。
「全ての数を用意するのではなくて、こういったグッズが欲しいって試作品を作って、専門の業者に発注する形ですねー」
主に用意したいのは、コップ、皿。装飾品やクッションなどのグッズだ。
できれば、店内のテーブル、椅子なども猫モチーフとしたいが、こちらはエンリコがすでに用意している物がある為に優先順位としては少し落ちる状況だ。
「この辺りのグッズが揃えば、開店準備はある程度整うそうですねー」
オープンに向けて大きく前進しそうな状況ということで、オーナー、エンリコの力が篭った一筆が依頼書にはある。
『協力者求ム、エンリコ』
エンリコとしても、少しずつ猫に情が沸いて来ている状況。ここで、猫カフェ開店をご破算にはしたくないのだろう。
「そんなわけで、よろしくお願いいたしますー」
シェリーはそうしてエンリコの代理となり、ハンター達へと助力を求めるのだった。
リプレイ本文
●
グラズヘイム王国、港町「ガンナ・エントラータ」。
「さて、王国にやって来たは良いものの、此れからどう致しましょう?」
クリムゾンウェストへと転移して日が浅い茶髪少女の亜都 優里音(ka6977)は、この街を探索していた。
賑やかな街並みを歩く彼女は、帝国の丘陵地帯からやってきたらしく、少し戸惑い気味だ。
いつしか、裏通りへとやってきた優里音は、どこからか猫の鳴き声を耳にして。
「あら? 猫さんの鳴声が……ねこカフェ??」
裏路地に並ぶ2つの倉庫。優里音がその中を覗き見ると……。
「すごい! こんなに一杯! 三毛にアビシニアンにそれから……可愛過ぎます」
そこにいる数え切れないほどの猫の姿に優里音は感激し、1匹を抱き上げて可愛がり始める。
その中では、ほんの少し前に数人のハンターがすでにやってきていたところだった。
「猫さんたち、元気でしょうか」
やや小柄なエルフのミオレスカ(ka3496)が倉庫内の猫を見回し、マイペースな一時を過ごす猫に頬を緩ませた。
「やぁ、元気そうですね。すっかりくつろいで……」
同じく、長身の鬼である鳳城 錬介(ka6053) が目を細める。まだまだやんちゃな猫もいるが、それはそれで何よりだと彼は頷く。
「今回もよろしくお願いします」
銀髪長髪の魔術師、エルバッハ・リオン(ka2434)が一足先にこの場を訪れていた倉庫のオーナー、エンリコへと丁寧に頭を下げた。
「エンリコさんはお店、ありがとうございます」
こうして猫を引き取り、猫カフェオープンの準備を進めていることに錬介が感謝の意を示し、その準備の為、客も猫達も笑顔になれるお店になるよう頑張りたいと彼は語る。
「お店のお仕事に、参加させてください」
滅多に来れないが、できることは協力させてもらいたいと、ミオレスカが申し出る。
「乗りかかった船っていうのかな、せっかく前回アイディアを出したんだし、実現まで漕ぎつけたいよ」
帽子を取って挨拶する夢路 まよい(ka1328)も、可愛い猫グッズの完成を見たいと今回この依頼に参加している。完成した試作品で、たっぷりと猫と戯れたいのだとか。
「猫カフェかぁ……、いいわね」
続いて倉庫にやってきたのは、黒髪の美女、冷泉 雅緋(ka5949) 。彼女は、家族であり友人であるオートマトンのT-Sein(ka6936) 、ドラグーンのユウ(ka6891)と一緒の参加だ。
初めての依頼でこの港街に来てから半月だというユウは、にっこりと笑う。
「またここに、今度は歪虚討伐の依頼以外で来れるなんて、何だか嬉しいな」
「猫様です猫様。にゃーにゃーにゃー」
T-Sein(ka6936)も猫好きらしく、自分から猫に近づいて戯れ始める。
「ザイン、雅緋さん、今日は猫さんカフェのグッズ作り頑張ろうね」
「猫に触れてお茶飲めるなんて癒しの空間。となると、めいっぱいお手伝いしないとね」
「うん……」
ユウの言葉に雅緋が同意するものの、T-Seinはすでに猫に夢中でそれどころではなさそうだった。
●
猫好き達が入れ替わり立ち替わりやってくる倉庫。前回は6人だと思ったが、気づけば、老父や少女など見ない顔が増えている。
彼らが猫を世話している間、ハンター達は猫と戯れながら、状況確認を行う。
ユウは大量の猫に目を輝かせ、なでなでと1匹の猫を撫でる。
「こんなに猫さんがいるなんて凄いです。この猫さん達の為に立ち上がったエンリコさんの手助けを出来るなんて嬉しいです」
善意で猫の為に動くと思うエンリコに対して、彼女は敬意を示す。
「いや、俺はそこまで立派じゃない」
だが、エンリコはそれを否定する。商売上本音を漏らさぬ部分はあるのだろうが、依頼主に対して誠実な態度をとるのは好ましいと言えるかもしれない。
流れでこの場にやってきた優里音は、状況にやや戸惑いながらも、自己紹介する。
「はい! そうですわ」
自身が魔術師として登録したことを示しつつ、優里音は猫をもふもふしている。
「ああ、なるほど。都会ではお家の都合から飼えない方も多いと!」
すでに、ハンター達が20匹ほど猫を引き取ってもらうのに苦慮した状況を聞き、優里音は自身で飼わない、あるいは飼えない住人の状況を察したようだ。
「……なんか世知辛いですわね」
「まあ、優しいだけで生きていける世界ではないからな」
優里音にそんな一言をかけたオーナーエンリコの考えているのは、猫カフェで使う備品の発注案だ。
それについて、メンバー達はテーブルを囲み、意見を出し合う。
「マスコットはやはり、丸っこい感じの方が可愛いでしょうか」
早速、錬介が口を開く。周囲の猫を観察しつつ、可愛らしいポーズをシルエット風にして採用してみると楽しそうだ。
「そのアイディアだけど……」
エルバッハもこの店を代表するようなマスコットキャラクターの作成を提案する。それに人気が出れば、そのマスコットキャラクターのイラストが入った商品を販売する事もできる、と。
「……そちらの具体案は保留としよう」
それには、複数のデザイン案と、有志のスタッフの投票をと考えるのならば、時間と人手も欲しいところだとエンリコは語る。
「商品のアイディアが先だったわね」
そう呟くエルバッハ。女性、子供の興味を引く為に、装飾などに可愛らしくデフォルメされた猫のイラストを入れたらどうかと彼女も提案する。
その中で、エルバッハはリアルブルーの雑誌を取り出し、イラストについても丁寧に説明してみせる。
「私はシンプルなデザインでいいかと思いますが」
意外にも真似は難しいからと、比較的単純でわかりやすいものでよいではないかとミオレスカは話す。
さらにミオレスカは、そういったデザインを根付やキーホルダーなどのアクセサリーにも活かすことができないかと提案する。
「ただ、それは次の段階ということですね」
お土産として、この街、猫達を覚えてもらえたら。ミオレスカは将来の展望を示す。エンリコは彼女の案をメモしながら、頷いた。
今は皿、コップといった食器の準備が先とのこと。
そちらの案については結局、錬介、エルバッハ、ミオレスカのデザイン折衷案で、シンプルな猫に関するシルエットなどのデザインで食器の製作を進めることにしていた。
また、エルバッハが考えているのは、裁縫関連のグッズだ。
「クッションなどの布製品なら、比較的自由なイラストが入れられるかもしれませんね」
「街のおねーさん達に、私の考えてるコースターやクッションのデザインを伝えていきたいな」
まよいがこの後、協力してくれる街の女性達へと直接出向く考えのようだ。
「ああ、こんな枕はいかがでしょう」
錬介がそこで挙手する。猫がだらーんと寝そべっている姿を枕にするという案だ。
「抱き枕よりは幅を取りませんので、部屋が狭いからという人にもオススメかなと思います」
「うん、そういうのいいと思うな」
錬介はこの後、家具のカスタマイズを行うということで、まよいにデザイン案を託す形となりそうだが、まよいも似たデザインの物を考えていたそうだ。
「椅子、テーブルも可愛らしい方がよければ、背もたれを猫の形にして、肘掛けを前足にする……とかでしょうか」
それらを肉球の形にしても可愛らしいと、錬介は考える。エンリコも、いい家具職人がいれば対応しようと前向きだったようだ。
続いて、雅緋が案を出す。彼女が目をつけたのは、すでに案としてあるコースターについてだ。
「それを持ち帰り、非売品のアイテムとしてつけるというのはどうだろう」
お店に来ないと入手できないアイテム。例えば、セットサービス利用という条件で配布してみてはと、雅緋は提示する。
「コースターは数種類のデザインを用意して、コレクション要素を入れるのもいいかもしれない」
そのデザインは、猫の仕草が分かるシルエット。喜怒哀楽くらいなら、数としても多すぎず、少なすぎないだろうか。
「……って、ぐらいになるんでない?」
その雅緋の説明中、T-Seinは猫の世話を頑張る。
猫について、知識や習性を学んできていたT-Seinだったが、残念なことにポンコツな彼女はあまりデザインを出せず、猫の世話係りに収まっていたらしい。
「ふむ、これはすぐに出来そうだな。いただこう」
採算もうまくとれると踏んだエンリコは、すぐにコースターは動き出すとのことだ。
話が一段落したタイミングで、優里音が挙手する。
「何度か通って仲良しの猫が出来たら、写真でツインポートレイトなどいいですわね」
それをコップに転写や服に刺繍などし、プレミアムグッズとして販売を。優里音も彼女なりに案を出してみせる。
「……案はいいが、如何せん特注になりそうだ。その費用はどうしても、客に請求することとなってしまう」
エンリコは商売人として考える。サービスは対価にあったサービスをせねばならない。こうしたところは理想を現実にする難しさと言える。
「ポートレイト……猫達1匹1匹を写真に収めて、グッズ資料の作成とか、あと、来店したお客さん用に名前と写真を張り出すのはどうでしょう?」
優里音はさらに、猫じゃらしについても話す。
猫との交流用として、毛玉タイプの猫じゃらしだけでなく、鳥の羽根、昆虫タイプ、布きれ、豪華な皮革タイプなどを、市場で安く素材を仕上げて作るのだという。
「こんなところかしら?」
「うむ……そちらも検討しよう」
その提案にも頷くエンリコがそこで、メモ帳を閉じる。
「ともあれ、入り用な物だけでも早急に用意したい」
エンリコが改めて助力を請うとハンター達は頷き、椅子を立って動き始めたのだった。
●
エンリコが助力を仰いだ女性達の集まりにまよいが出向き、先程出たコースター案を伝える。
猫の喜怒哀楽ポーズのシルエット版に、自身の考えた肉球型、猫の顔型案を加え、量産を見越して簡素なものとして作成する形だ。
コルクボード、編み物といった力の入った案を考えていたまよいは少し残念がりながらも、その分、クッションに力を入れる。
「薄く切ったパンの形とか、目玉焼きの形を作って、猫さんをサンドイッチしてみたいんだ」
そんな楽しそうな状況を演出したいと彼女は微笑みながら語る。
もちろん、先程話に上がった猫の枕も忘れない。長い猫の胴体を枕に見立て、サイドに頭と尻尾。背中は猫の顔型にデザインされている。
女性達はにっこりと笑い、早速それを形にすべく布を断ち始めた。
手馴れた女性達の作業を眺めながら、まよいも試しに自分でも裁縫をやってみる。
「ううん、難しいな」
針に気をつけながら作業を行うが、うまくいかない。彼女は女性達に教わりながらも、一生懸命作業に励んでいたようだ。
仲間達が食器のデザインを持って発注する中、ミオレスカは、控えとして使われる倉庫で、スタッフ数人と掃除を行っていた。
「爪とぎで小さなゴミが、たくさん出てきてますね。壁は……、大丈夫そうですよね」
普段、猫好き達だけではなかなか手の行き届かぬ部分をチェックし、ミオレスカはゴミを掃きとる。
さらに、壊れたケージの修理も行い、彼女は忙しなく動き回っていた。
店に目を移せば、ユウが魔導カメラを手にし、猫達をあやしながら撮影と印刷を繰り返す。
ユウは隠の徒で気配を消したり、壁歩きを行ったりして、猫の自然なポージングが撮れるようにと試み、仲良しグループを纏めて撮影してもいたようだ。
同時に、エルバッハが猫の管理状況を確認する。
彼女は前回、猫達に首輪をつけており、記録簿に記載されているかを確認していた。ただ、人手不足もあってか、その記録は少し飛び飛びになっている。
「さすがに、80匹もいると……ね」
開店準備、スタッフの教育が合わさる中、有志の猫好き達の助力だけで記録を取り続けるのは難しいようだ。
T-Seinが今は世話をしているが、彼女は思いっきり猫に引っかかれてしまっている。それを見て、エルバッハは前回作成した檻よりもさらに狭い、躾け用の檻を用意しようと考えていた。
錬介はすぐには難しい家具のカスタマイズ作業を保留し、内部のレイアウトに手を加える。彼はテーブル下にハンモックを張っていた。
「猫達はこういう隠れ家みたいな場所が好きですからね」
こうすることで、客と猫との距離が近くなればと錬介は考える。
「本当は天板がガラスだと、下でくつろぐ猫が見えて楽しいのですが」
ただ、現状の予算ではこの位でしょうかと、彼はエンリコに承認をとっていた。
雅緋も観葉植物を調達し、それを東の壁際へと置くことで店内のレイアウトに手を加える。
「東は出会いの方角、そして子供の健やかな成長を願う方角。
沢山のお客さんとの出会い、子供とは違うが看板猫達の健やかな成長を願って……なんて」
趣味でかじった程度の風水知識らしいが。それでも、雅緋の願掛けする気持ちは本物。猫好き達も少しでも晴れやかになる店内に表情を明るくしていたようだ。
●
日暮れが近づき、一仕事終えたハンター達が倉庫で一息つき始める。
帰ってきたまよいがクッションの試作品を持ち、早速猫をはべらせてクッションに沈ませる。彼女は気持ちよさげに猫と戯れていた。
発注作業から帰ってきた優里音がテーブルに腰を下ろすと、T-Seinがヤンチャな猫と根気よく向き合っていた。
撮影をある程度終えたユウも手伝うが、T-Seinはかなり引っかかれて身体に傷をつけていた。
それでも、猫に寛大な態度を示すT-Seinは、埋もれようが、かまれようが、猫と触れ合っているだけでも満足だったらしい。
そんな連れの2人に、雅緋も母として満足そうに頷く。
ミオレスカもなんとか、掃除と補修を終えたらしい。
猫に忘れられているかもと少し不安になりながらも、ミオレスカは猫と触れ合い、毛づくろいや餌槍を行う。猫がだいぶ人に慣れていたのを見て、彼女はちょっとだけ役得感を感じていた。
そんな仲間の状況を見ていた優里音。
(最初思ってたハンターのお仕事とは大分違うけど、楽しいものね)
ある程度、依頼も終えたのはよいのだが。この後、宿を探さなければなと彼女はぼんやりと考えるのだった。
グラズヘイム王国、港町「ガンナ・エントラータ」。
「さて、王国にやって来たは良いものの、此れからどう致しましょう?」
クリムゾンウェストへと転移して日が浅い茶髪少女の亜都 優里音(ka6977)は、この街を探索していた。
賑やかな街並みを歩く彼女は、帝国の丘陵地帯からやってきたらしく、少し戸惑い気味だ。
いつしか、裏通りへとやってきた優里音は、どこからか猫の鳴き声を耳にして。
「あら? 猫さんの鳴声が……ねこカフェ??」
裏路地に並ぶ2つの倉庫。優里音がその中を覗き見ると……。
「すごい! こんなに一杯! 三毛にアビシニアンにそれから……可愛過ぎます」
そこにいる数え切れないほどの猫の姿に優里音は感激し、1匹を抱き上げて可愛がり始める。
その中では、ほんの少し前に数人のハンターがすでにやってきていたところだった。
「猫さんたち、元気でしょうか」
やや小柄なエルフのミオレスカ(ka3496)が倉庫内の猫を見回し、マイペースな一時を過ごす猫に頬を緩ませた。
「やぁ、元気そうですね。すっかりくつろいで……」
同じく、長身の鬼である鳳城 錬介(ka6053) が目を細める。まだまだやんちゃな猫もいるが、それはそれで何よりだと彼は頷く。
「今回もよろしくお願いします」
銀髪長髪の魔術師、エルバッハ・リオン(ka2434)が一足先にこの場を訪れていた倉庫のオーナー、エンリコへと丁寧に頭を下げた。
「エンリコさんはお店、ありがとうございます」
こうして猫を引き取り、猫カフェオープンの準備を進めていることに錬介が感謝の意を示し、その準備の為、客も猫達も笑顔になれるお店になるよう頑張りたいと彼は語る。
「お店のお仕事に、参加させてください」
滅多に来れないが、できることは協力させてもらいたいと、ミオレスカが申し出る。
「乗りかかった船っていうのかな、せっかく前回アイディアを出したんだし、実現まで漕ぎつけたいよ」
帽子を取って挨拶する夢路 まよい(ka1328)も、可愛い猫グッズの完成を見たいと今回この依頼に参加している。完成した試作品で、たっぷりと猫と戯れたいのだとか。
「猫カフェかぁ……、いいわね」
続いて倉庫にやってきたのは、黒髪の美女、冷泉 雅緋(ka5949) 。彼女は、家族であり友人であるオートマトンのT-Sein(ka6936) 、ドラグーンのユウ(ka6891)と一緒の参加だ。
初めての依頼でこの港街に来てから半月だというユウは、にっこりと笑う。
「またここに、今度は歪虚討伐の依頼以外で来れるなんて、何だか嬉しいな」
「猫様です猫様。にゃーにゃーにゃー」
T-Sein(ka6936)も猫好きらしく、自分から猫に近づいて戯れ始める。
「ザイン、雅緋さん、今日は猫さんカフェのグッズ作り頑張ろうね」
「猫に触れてお茶飲めるなんて癒しの空間。となると、めいっぱいお手伝いしないとね」
「うん……」
ユウの言葉に雅緋が同意するものの、T-Seinはすでに猫に夢中でそれどころではなさそうだった。
●
猫好き達が入れ替わり立ち替わりやってくる倉庫。前回は6人だと思ったが、気づけば、老父や少女など見ない顔が増えている。
彼らが猫を世話している間、ハンター達は猫と戯れながら、状況確認を行う。
ユウは大量の猫に目を輝かせ、なでなでと1匹の猫を撫でる。
「こんなに猫さんがいるなんて凄いです。この猫さん達の為に立ち上がったエンリコさんの手助けを出来るなんて嬉しいです」
善意で猫の為に動くと思うエンリコに対して、彼女は敬意を示す。
「いや、俺はそこまで立派じゃない」
だが、エンリコはそれを否定する。商売上本音を漏らさぬ部分はあるのだろうが、依頼主に対して誠実な態度をとるのは好ましいと言えるかもしれない。
流れでこの場にやってきた優里音は、状況にやや戸惑いながらも、自己紹介する。
「はい! そうですわ」
自身が魔術師として登録したことを示しつつ、優里音は猫をもふもふしている。
「ああ、なるほど。都会ではお家の都合から飼えない方も多いと!」
すでに、ハンター達が20匹ほど猫を引き取ってもらうのに苦慮した状況を聞き、優里音は自身で飼わない、あるいは飼えない住人の状況を察したようだ。
「……なんか世知辛いですわね」
「まあ、優しいだけで生きていける世界ではないからな」
優里音にそんな一言をかけたオーナーエンリコの考えているのは、猫カフェで使う備品の発注案だ。
それについて、メンバー達はテーブルを囲み、意見を出し合う。
「マスコットはやはり、丸っこい感じの方が可愛いでしょうか」
早速、錬介が口を開く。周囲の猫を観察しつつ、可愛らしいポーズをシルエット風にして採用してみると楽しそうだ。
「そのアイディアだけど……」
エルバッハもこの店を代表するようなマスコットキャラクターの作成を提案する。それに人気が出れば、そのマスコットキャラクターのイラストが入った商品を販売する事もできる、と。
「……そちらの具体案は保留としよう」
それには、複数のデザイン案と、有志のスタッフの投票をと考えるのならば、時間と人手も欲しいところだとエンリコは語る。
「商品のアイディアが先だったわね」
そう呟くエルバッハ。女性、子供の興味を引く為に、装飾などに可愛らしくデフォルメされた猫のイラストを入れたらどうかと彼女も提案する。
その中で、エルバッハはリアルブルーの雑誌を取り出し、イラストについても丁寧に説明してみせる。
「私はシンプルなデザインでいいかと思いますが」
意外にも真似は難しいからと、比較的単純でわかりやすいものでよいではないかとミオレスカは話す。
さらにミオレスカは、そういったデザインを根付やキーホルダーなどのアクセサリーにも活かすことができないかと提案する。
「ただ、それは次の段階ということですね」
お土産として、この街、猫達を覚えてもらえたら。ミオレスカは将来の展望を示す。エンリコは彼女の案をメモしながら、頷いた。
今は皿、コップといった食器の準備が先とのこと。
そちらの案については結局、錬介、エルバッハ、ミオレスカのデザイン折衷案で、シンプルな猫に関するシルエットなどのデザインで食器の製作を進めることにしていた。
また、エルバッハが考えているのは、裁縫関連のグッズだ。
「クッションなどの布製品なら、比較的自由なイラストが入れられるかもしれませんね」
「街のおねーさん達に、私の考えてるコースターやクッションのデザインを伝えていきたいな」
まよいがこの後、協力してくれる街の女性達へと直接出向く考えのようだ。
「ああ、こんな枕はいかがでしょう」
錬介がそこで挙手する。猫がだらーんと寝そべっている姿を枕にするという案だ。
「抱き枕よりは幅を取りませんので、部屋が狭いからという人にもオススメかなと思います」
「うん、そういうのいいと思うな」
錬介はこの後、家具のカスタマイズを行うということで、まよいにデザイン案を託す形となりそうだが、まよいも似たデザインの物を考えていたそうだ。
「椅子、テーブルも可愛らしい方がよければ、背もたれを猫の形にして、肘掛けを前足にする……とかでしょうか」
それらを肉球の形にしても可愛らしいと、錬介は考える。エンリコも、いい家具職人がいれば対応しようと前向きだったようだ。
続いて、雅緋が案を出す。彼女が目をつけたのは、すでに案としてあるコースターについてだ。
「それを持ち帰り、非売品のアイテムとしてつけるというのはどうだろう」
お店に来ないと入手できないアイテム。例えば、セットサービス利用という条件で配布してみてはと、雅緋は提示する。
「コースターは数種類のデザインを用意して、コレクション要素を入れるのもいいかもしれない」
そのデザインは、猫の仕草が分かるシルエット。喜怒哀楽くらいなら、数としても多すぎず、少なすぎないだろうか。
「……って、ぐらいになるんでない?」
その雅緋の説明中、T-Seinは猫の世話を頑張る。
猫について、知識や習性を学んできていたT-Seinだったが、残念なことにポンコツな彼女はあまりデザインを出せず、猫の世話係りに収まっていたらしい。
「ふむ、これはすぐに出来そうだな。いただこう」
採算もうまくとれると踏んだエンリコは、すぐにコースターは動き出すとのことだ。
話が一段落したタイミングで、優里音が挙手する。
「何度か通って仲良しの猫が出来たら、写真でツインポートレイトなどいいですわね」
それをコップに転写や服に刺繍などし、プレミアムグッズとして販売を。優里音も彼女なりに案を出してみせる。
「……案はいいが、如何せん特注になりそうだ。その費用はどうしても、客に請求することとなってしまう」
エンリコは商売人として考える。サービスは対価にあったサービスをせねばならない。こうしたところは理想を現実にする難しさと言える。
「ポートレイト……猫達1匹1匹を写真に収めて、グッズ資料の作成とか、あと、来店したお客さん用に名前と写真を張り出すのはどうでしょう?」
優里音はさらに、猫じゃらしについても話す。
猫との交流用として、毛玉タイプの猫じゃらしだけでなく、鳥の羽根、昆虫タイプ、布きれ、豪華な皮革タイプなどを、市場で安く素材を仕上げて作るのだという。
「こんなところかしら?」
「うむ……そちらも検討しよう」
その提案にも頷くエンリコがそこで、メモ帳を閉じる。
「ともあれ、入り用な物だけでも早急に用意したい」
エンリコが改めて助力を請うとハンター達は頷き、椅子を立って動き始めたのだった。
●
エンリコが助力を仰いだ女性達の集まりにまよいが出向き、先程出たコースター案を伝える。
猫の喜怒哀楽ポーズのシルエット版に、自身の考えた肉球型、猫の顔型案を加え、量産を見越して簡素なものとして作成する形だ。
コルクボード、編み物といった力の入った案を考えていたまよいは少し残念がりながらも、その分、クッションに力を入れる。
「薄く切ったパンの形とか、目玉焼きの形を作って、猫さんをサンドイッチしてみたいんだ」
そんな楽しそうな状況を演出したいと彼女は微笑みながら語る。
もちろん、先程話に上がった猫の枕も忘れない。長い猫の胴体を枕に見立て、サイドに頭と尻尾。背中は猫の顔型にデザインされている。
女性達はにっこりと笑い、早速それを形にすべく布を断ち始めた。
手馴れた女性達の作業を眺めながら、まよいも試しに自分でも裁縫をやってみる。
「ううん、難しいな」
針に気をつけながら作業を行うが、うまくいかない。彼女は女性達に教わりながらも、一生懸命作業に励んでいたようだ。
仲間達が食器のデザインを持って発注する中、ミオレスカは、控えとして使われる倉庫で、スタッフ数人と掃除を行っていた。
「爪とぎで小さなゴミが、たくさん出てきてますね。壁は……、大丈夫そうですよね」
普段、猫好き達だけではなかなか手の行き届かぬ部分をチェックし、ミオレスカはゴミを掃きとる。
さらに、壊れたケージの修理も行い、彼女は忙しなく動き回っていた。
店に目を移せば、ユウが魔導カメラを手にし、猫達をあやしながら撮影と印刷を繰り返す。
ユウは隠の徒で気配を消したり、壁歩きを行ったりして、猫の自然なポージングが撮れるようにと試み、仲良しグループを纏めて撮影してもいたようだ。
同時に、エルバッハが猫の管理状況を確認する。
彼女は前回、猫達に首輪をつけており、記録簿に記載されているかを確認していた。ただ、人手不足もあってか、その記録は少し飛び飛びになっている。
「さすがに、80匹もいると……ね」
開店準備、スタッフの教育が合わさる中、有志の猫好き達の助力だけで記録を取り続けるのは難しいようだ。
T-Seinが今は世話をしているが、彼女は思いっきり猫に引っかかれてしまっている。それを見て、エルバッハは前回作成した檻よりもさらに狭い、躾け用の檻を用意しようと考えていた。
錬介はすぐには難しい家具のカスタマイズ作業を保留し、内部のレイアウトに手を加える。彼はテーブル下にハンモックを張っていた。
「猫達はこういう隠れ家みたいな場所が好きですからね」
こうすることで、客と猫との距離が近くなればと錬介は考える。
「本当は天板がガラスだと、下でくつろぐ猫が見えて楽しいのですが」
ただ、現状の予算ではこの位でしょうかと、彼はエンリコに承認をとっていた。
雅緋も観葉植物を調達し、それを東の壁際へと置くことで店内のレイアウトに手を加える。
「東は出会いの方角、そして子供の健やかな成長を願う方角。
沢山のお客さんとの出会い、子供とは違うが看板猫達の健やかな成長を願って……なんて」
趣味でかじった程度の風水知識らしいが。それでも、雅緋の願掛けする気持ちは本物。猫好き達も少しでも晴れやかになる店内に表情を明るくしていたようだ。
●
日暮れが近づき、一仕事終えたハンター達が倉庫で一息つき始める。
帰ってきたまよいがクッションの試作品を持ち、早速猫をはべらせてクッションに沈ませる。彼女は気持ちよさげに猫と戯れていた。
発注作業から帰ってきた優里音がテーブルに腰を下ろすと、T-Seinがヤンチャな猫と根気よく向き合っていた。
撮影をある程度終えたユウも手伝うが、T-Seinはかなり引っかかれて身体に傷をつけていた。
それでも、猫に寛大な態度を示すT-Seinは、埋もれようが、かまれようが、猫と触れ合っているだけでも満足だったらしい。
そんな連れの2人に、雅緋も母として満足そうに頷く。
ミオレスカもなんとか、掃除と補修を終えたらしい。
猫に忘れられているかもと少し不安になりながらも、ミオレスカは猫と触れ合い、毛づくろいや餌槍を行う。猫がだいぶ人に慣れていたのを見て、彼女はちょっとだけ役得感を感じていた。
そんな仲間の状況を見ていた優里音。
(最初思ってたハンターのお仕事とは大分違うけど、楽しいものね)
ある程度、依頼も終えたのはよいのだが。この後、宿を探さなければなと彼女はぼんやりと考えるのだった。
依頼結果
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MVP一覧
- 静かに過ごす星の夜
冷泉 雅緋(ka5949)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/07/25 23:45:39 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/24 18:29:56 |