温泉に居座るならず者退治

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/11/11 12:00
完成日
2014/11/12 01:12

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●とことん揉め事と縁があるようで
「少し前にオープン間近で雑魔が沸いて討伐に行ってもらった観光地……保養地になるのかな。とにかくそこの核をなす温泉を覚えてるかな。
 覚えてなくても今回の依頼には差支えないんだけどあの後オープンしてね。そしたら今度はならず者が居座っちゃったんだってさ。
 で、雑魚が十五人くらいなんだけど一人覚醒者の首領格がいるらしくて楽観視して一般人が戦い挑んでも危ないだろうって事で追っ払ってほしいっていう依頼がね、前のご縁であったんだけど」
 季節感を大事に、自然を生かした作りの温泉は秋には紅葉の名所と菊の芳香で客を楽しませていたらしいがどうやら雅を解さない、どころか己の欲にはた迷惑なほど忠実なならず者の餌食となってしまったらしい。
 オープン前の雑魔騒動といいつくづく不幸に見舞われる温泉であるといえるかもしれない。
「大部屋に居座って無銭飲食、風呂に入りたくなったら温泉浸かり放題。女性のスタッフにセクハラ。男性スタッフに恐喝。随分図に乗ってるみたいだからさ、とりあえずきつめにお灸をすえてきてほしいなって。
 所持金がないわけじゃないどころか結構贅沢な装飾品とか悪趣味に着飾った成金な感じだからさ、身ぐるみはいで慰謝料として温泉に差し出せば金銭面での不遇は解決するんじゃないかな」
 どれくらいきついお灸を据えるかはそっちにお任せ。そういった後ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は追い出てくれたら温泉自由に使ってくれってさ、と付け加えた。
「ならず者って言っても君たちなら赤子の手をひねるレベルで倒せるレベルだし……まあちょっと数は多いから面倒かもしれないけど温泉に浸かる前の軽い運動程度に考えて、あとは寛いでおいでよ」

リプレイ本文

●懲罰のお時間です
 かつてオープン前に雑魔の被害を受けた温泉。今度はならず者が居座っているらしい。
 食事のための大広間の方から野太い、酔っぱらったような男たちのわめき声が聞こえてくる。
 さっさと突入して終わらせるか、と久延毘 大二郎(ka1771)が仲間に問うとエミリー・ファーレンハイト(ka3323)がちょっと待ってほしい、と異議を唱えた。
「なにか準備が必要か?」
 その問いに対してエミリーはにっこり笑うと自分の考えた『お仕置き』を覚醒者たちにこっそり告げる。
 とたんにこらえきれずに吹き出すものが何人か。
 幸いならず者たちは自分たちで騒音をまき散らしているため爆笑が向こうに届くことはなかったようだ。
「どうでしょう? 誓約書を書かせたうえでこの方法を取れば解放されても二度とこの観光地には顔を出せないと思うのですが……」
「結構えげつない気もするけどいいんじゃないかな。また来られても迷惑だろうし誓約書を破って『こんなものは知らない』って言い張られても二度手間だ」
 アルテア・A・コートフィールド(ka2553)が大人びた口調で同意すると他の笑っていたメンバーも異論はない、と頷きながらエミリーの案を受け入れた。
「では使えなくなった座布団や手拭いがないか伺ってまいりましょう」
 できたばかりの温泉施設だがならず者が暴れているせいで使い物にならなくなった布地はそれなりの数があったらしい。
 ワインがまだらにしみ込んだせいで使えなくなった布や洗っても完全には落ちなかった汚れのある布地を利用して人が被れるほどの大きさのキノコの被り物をならず者の人数分作成する。
「……白地に赤でまだらとか典型的な毒キノコっぽいな」
 アルテアの呟きにまたにっこり笑うエミリー。
「のぞきダケはきっと毒キノコですから問題ありませんよ」
「心癒すスポットにはびこる迷惑な輩は退散してもらわねばのぅ……しかしのぞきダケか、よく思いつくものじゃ」
 ヴィルマ・ネーベル(ka2549)が感嘆したような呆れたような口調で呟きながら被り物の作成にいそしんだ。
「ラッツィオ島の騒動に続けて王国でも騒動が起こっている。更なる備えとして体を休めるには丁度良い仕事だが……このアイディアはなかったな」
「依頼主も災難だと思うが、ならず者も嘆かわしいな。もっとまともな生き方があるだろう。呆れて溜息しか出ないぞ」
 大二郎やジーナ(ka1643)もそんな呟きを漏らしながら縫い針を動かす。
「わるいことしたら、必ず痛い目に合うんだよっ。これはその一端でもあるんだよね。温泉はいるためにさくっと済まそう!」
「温泉は皆で楽しむものなのだ! ささっとやっつけて楽しむのだ♪」
 エルレーン(ka1020)とネフィリア・レインフォード(ka0444)が楽しげに少し個性的な被り物を一体ずつ作成した。
「悪いことはいけないことだってちゃんと言えばおじさんたちもわかってくれると思うの。……でもその過程にこれは必要なの?」
「無銭飲食してた分と従業員の皆さんの心痛を考えたら金銭だけじゃなくこういうお仕置きも必要かしら、と思いまして」
 桜庭 あかり(ka0326)にエミリーが朗らかに答えた。
 そして出来上がった被り物はひとまず従業員に預かっていてもらうことにしてまずはならず者を広間から引っ張り出す作業の開始である。
 ジーナ、ヴィルマ、エミリーが広間に入ってならず者たちに可愛い子たちがいるのだけれど遊ばないか、と色仕掛けをかけるふりをして他の仲間が待機している、建物の裏手にある広場で軽く締め上げる予定だ。
 当初は広間に全員で突入を考えたが建物に被害が出ても困るだろうしどこか適した場所はないかと聞いた結果裏の広場なら滅多に人も寄り付かないし特に重要なものもおいていないからそこがいいのでは、と返事が返ってきたのだった。
「酒だ! 酒を持ってこい! 料理も足りねぇぞ!!」
「お酒と料理が届くまでもっと美味しく味わえるように私たちと少し散歩に行きませんか?」
「あ? なんだ? お前ら」
「貴方たちを楽しませるようにと雇われたのだ」
「我らでは不満かえ?」
 三人の衣装は遊女の類を連想させるものではなかったが男たちは遊女が手配されたと勘違いしたらしい。
 無銭飲食とマナーの悪さで温泉施設に迷惑をかけておきながら遊女の手配を自分たちのためにしたと認識する辺り酔いが回っていなくてもおめでたい脳の構造をしていそうだ。
 にやにやと笑み崩れてしたたかに酔った千鳥足で三人に近づくならず者たち。
「ここで楽しめばいいじゃねぇか。なぁ?」
「他の娘が菊と紅葉が見事だから散策した後の方が雅やかでいいとごねてのぅ」
「ふむ、雅か」
 ごてごてとした成金の雰囲気丸出しの、宝石の魅力を全く生かせていない趣味の悪い服を着た男たちは自分たちを教養のある男に見せたいのかその言葉に惹かれたようで案内しろ、と全員が立ち上がった。
 古来リアルブルーの位の高い遊女は身を任せる相手を自分で選んだという説があることをこの男たちが知っているかどうかで考えれば知らない可能性の方が高そうだが教養や風雅を愛する部分を見せないと三下にみられる、という認識位はあったかもしれない。
 仲間が待つ建物の裏手に向かうまでの間肩に手を回されたり腰を撫でられたりとセクハラの枚挙には暇がない。
 それを顔を引きつらせないように、かつ無駄に警戒させないようにかわしながら徐々に目的の場所へと近づいていく。
「随分人気のない場所へいくんだな?」
「穴場スポットだそうですよ」
「袋だだきの、な」
 ならず者たちが完全に広場に足を踏み入れたところで隠れていた大二郎たちが姿を現す。
「なっ……!?」
「無銭飲食で迷惑かけてるのに綺麗なお姉さんあてがってもらおうとか図々しいにもほどがあるのだー♪ 盗人猛々しいってこういうことを言うのかな? 何はともあれ、お仕置きタイム開始、なのだ♪」
「な、何なんだてめぇら!?」
「悪者退治にやってきたエージェントだよ!」
 エルレーンの言葉にならず者たちが色めき立つ。
「騙しやがったな!?」
「騙される方が阿呆な気がするがのぅ……まぁ、遊んでやることは事実じゃ。そなたらにはちときつい灸になるかもしれんがの?」
 仲間が射程に含まれていないことを確認してヴィルマがスリープクラウドを発動させる。
 空間に青白い雲状のガスが一瞬広がり、そのガスに包まれた三人のならず者が昏倒した。
「スリープクラウドには酒との相乗効果があるのかのぅ、少しばかり気になるのじゃ」
「ああ、それは興味深い。客観的なデータは此処で取れそうだが自分が食らうのは遠慮したいところであるな」
 とりあえず私は比較的酔いのまわりが遅そうな連中を狙うとしようか。
 知的好奇心が旺盛な大二郎もまた眠りへ導くガスを発動させてならず者を三人を昏倒させる。
「僕みたいな年頃でもハンターなら怖いんだよ?」
 アルテアが怪我をしないぎりぎりの位置を狙って銃弾を飛ばすと物理的な恐怖に動けなくなったのかならず者が静止する。
「さっきのセクハラのお返しです。あ、女性スタッフにもセクハラしてると聞いてるのでその分と恐喝されて心痛を患った男性スタッフの分も上乗せしますから少し痛いですよ?」
 エミリーがその静止したまま動けなくなったならず者へと距離を詰めて平手打ち、というか往復ビンタをお見舞いする。
 上乗せする、とは言ったが本当は手加減されていることにならず者が気づけたかどうかは定かではない。
「歪虚なら射撃で牽制してから問答無用で切り捨てる所だが、一般人と覚醒者なら加減するしかないな。自分が歪虚でなかったことを感謝しろ」
 ジーナが中央部に半球状の盛り上がりがある円形の盾で気絶させたのが一人。
 これで残りは首領を合わせて七人だ。あっという間に半数以上が撃破された形になってならず者たちが及び腰ながらも虚勢を張るという奇妙な体勢で、体勢と同様しゃっきりしない反撃に出るが一般人が覚醒者に敵うはずもなく。
 エルレーンに投げ飛ばされたりネフィリアにバットで殴られたり。
 殴る際にネフィリアの手が滑って男性にとっての急所を攻撃する形になってしまったりと珍事を含めながらペースは終始覚醒者側にあった。
 最後に残ったリーダーもあかりの手加減なしの峰打ちで昏倒したのだった。
 昏倒したならず者たちを縛り上げ、のぞきダケの名札を付けたキノコの被り物をかぶせている最中にならず者たちが目を覚ましたのでお説教とリーダーに誓約書を書かせ、これからは心の底から反省したと施設の人が判断するまで『のぞきダメ、絶対!』という幟を背負って縄で繋がれた状態で観光地を練り歩くのが罰、目利きのスキルを持っている覚醒者が被害総額分の宝石を温泉施設側に渡したのは慰謝料の様なものだと説明すれば抗うかと思われたならず者たちは抗うには実力差がありすぎることからか割合素直に頷いたのだった。
「この人たちがまた何か悪さをしたらハンターオフィスの方に連絡入れてくださいね」
 その一言も相当堪えたことだろう。
 さて、開拓者たちはこれから一働きした後の温泉タイムという至福の時間を味わおうとしていた。

●温泉のお時間です
 温泉に浸かるのが初めてというアルテアは温泉がどういうものなのかいまいちわかっていなかったようで女性用更衣室でパニックに陥っていた。
「露天風呂と内風呂と混浴……? 何が違うんだろう……ってなんでみんな裸になるのさー!?」
「温泉とはいわば公共の風呂じゃからのう。混浴は男女一緒に入るから水着じゃろうが風呂には普通裸で入るであろう?」
前髪だけは垂らしたまま、他はアップにしたヴィルマに逆に不思議そうに問われて自分は水着を着る、と宣言するアルテア。
 彼女同様ジーナも温泉は初体験だったが焦った風もなく女性用の露天風呂へと向かっていった。
「うふっ、おニューのかぁいい水着だよっ」
 嬉しそうにピンクのビキニを見せるのはエルレーン。
「男湯は無理だけど全部のお風呂に入るぞー」
「お・ん・せ・んー♪ しっかりと堪能するのだー♪」
 こちらも女湯と混浴両方試す予定のネフィリアはまず水着が必要な混浴に入った後、女湯ではタオルもはぎ取って入浴を楽しんだ。
 あかりは大はしゃぎで浴場をダッシュして盛大にこけた後年長組に危ないから走らないように、と窘められて女湯に浸かっていた。
 最初はお風呂はみんなで入った方が楽しいということで大二郎も混浴に誘ったのだが断られたのでより賑やかな方に、と女湯に来たのだ。
 誘いを断られたことにしょんぼりしつつ初めての温泉は楽しいらしくはしゃいでいるのも感じられるから器用といえるだろう。
「わあ! おっきいお風呂だ! ひろーい!」
「湯船が広いですね……泳いでみてもいいかしら。温かいお湯の中で泳いだらどんな気分か……私とっても気になるので」
 ぽっと頬を赤らめながら呟いたエミリーの言葉を聞いたネフィリアやエルレーン、あかりが自分も泳ぐ! と言い出して女湯は賑やかになる一方だった。
 一方唯一男性の参加者だった大二郎は男湯で寛いでいた。
「成程、綺麗な紅葉だ。故郷の山々を思い返してしまう。リアルブルーへの未練は断ち切ったつもりだったが……簡単に蘇ってしまうものだ。
 我が父君、母君、そして弟妹達は息災だろうか」
 そんな独白を聞くものはなく、けれど彼らに言葉を伝える手段があるならこう伝えたいと願う。
「家族達よ、私は遠く離れた異世界で、のんべんだらりと温泉に浸かっている」
 と。果たしてそれを聞いた彼の家族がどんな顔をするのかは分からないが――シリアスな語り口と『のんべんだらりと』という気の抜ける装飾詞のギャップにガクッといったかのようなタイミングで赤い紅葉が一枚、湯に落ちた。

 そうしてならず者たち改めのぞきダケの集団は次の日から捕縛されたまま幟を背負って自分たちが使い物にならなくした布地で作られた被り物を被り練り歩き、観光客や保養客から奇異と好奇のまなざしで眺められ、さりとて反撃もできずに、そして目を合わせて睨み付けようにも羞恥で顔をあげることもできずに結局は諾々と決められたコースを辿って温泉施設に戻る日が始まるのだが、彼らが解放されるのが何時になるのかは今のところ未知数なのだった。
 自業自得のならず者の心の平穏はまるっきり保たれていないが二度の不幸を被った温泉施設は今日も平和に営業中である。

依頼結果

依頼成功度普通
面白かった! 6
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • ゆうしゃ(山猫団認定)
    桜庭 あかり(ka0326
    人間(蒼)|13才|女性|霊闘士
  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • ぽわわんはわわん
    エルレーン(ka1020
    人間(紅)|14才|女性|疾影士
  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 絵師目指す者
    アルテア・A・コートフィールド(ka2553
    人間(紅)|12才|女性|機導師

  • エミリー・ファーレンハイト(ka3323
    人間(紅)|15才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アルテア・A・コートフィールド(ka2553
人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/11/11 00:30:27
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/09 22:59:17