• 界冥

【界冥】リゼリオでのひととき

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/09/13 19:00
完成日
2017/09/25 03:55

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「初華さん、ちょっと」
「ほへ?」
 ヒマだな~とか言う感じで南那初華(kz0135)がハンターオフィスをうろついていると、見知った受付嬢に呼び止められた。
「最近初華さん、深夜にハンターオフィスに来ないんですね」
「え?! そ、そりゃもう涼しくなって夜に寝苦しいとかなくなったから……」
「こっちは夜勤の時に話し相手がいなくて楽しくないんですけど」
「えーっ!?」
 とんだとばっちりだが、初華が夏の暑さの厳しい夜に寝付けずハンターオフィスに涼みに来ていたことがあるので仕方がない。
「ま、それは冗談として、初華さん向きの依頼があるから参加にしておきますね?」
「ほへ? また【初心】依頼で新人さんのバックアップ?」
「いいえ。【界冥】関係ね。初華さんって大規模作戦、いつもサボってるでしょ?」
 ぐい、と顔を近付け責めるような口調をする眼鏡の受付嬢。
「サボってるわけじゃなくって、私を気に入ってハンターオフィスに仕事通してくる人がいつお願いに来るか分からないからだよぅ」
 初華、街角屋台「Pクレープ」という移動販売車でクレープ販売をしている。もちろん本業はハンターなので、たいてい地域の治安警備とかいう仕事とセットだったりする。出資者はポルカ商会で、同盟領の田舎を商圏とする中小商会だ。ハンターを雇ってまでクレープ販売しても赤字確定なのだが、目的は「同盟領一の都会で、後発商人が店を構えることすら困難とされる極彩色の街「ジェオルジ」で取引がある」という実績とステイタスを得るためだ。事実、田舎でこの肩書はかなり効く。なお、後発すら割り込むことが困難な場所で小さいながらも屋台が出せるのは、ひとえにハンター店員による治安維持という名目があり地域に望まれているからだったりする。これが常設店舗であるなら間違いなく既存同業者に潰されているはず。臨時の「屋台」という形式なのも大いにポイントだったりする。
 閑話休題。

「そんな最前線いやんいやんな初華さんにもピッタリなのが、これ」
 眼鏡受付嬢がぴしっと書類を初華の鼻先に突き付けた。どれどれ、と初華。
「へえ~。リアルブルーでの激闘を終えてリゼリオ入りするサルヴァトーレ・ロッソ乗組員や負傷兵との触れ合い、かぁ……」
「そう。クルーたちが半舷上陸してくるから、特設の広場で労うの。……自分たちが最前線で戦ったのに、戻った時に知らんふりじゃ士気も上がらないでしょ? 戦場に行かない人は感謝して、戦場に行った人は自分たちが命を張って守ったものを実感してもらう。とっても大切なことよ」
「あ……じゃあ私、クレープ焼いてもいいかな?」
 初華、殊勝な様子で聞いた。
「そうしてもらえればこっちもうれしいけど……どうしたの?」
「うん。私、リアルブルーから転移したんだけど……お父さんとお母さん、リアルブルーで元気かなって思って」
「それは心配よね。でも……」
 眼鏡受付嬢、初華の言いたいことが分かった。そしてそれが無理であることも。
「あ、ううん。普通なら安否が分かるはずないんだけど、私のお父さんちょっと特殊だから」
「特殊?」
「私のお父さん、マイナーだけど怪奇幻想作家だから。……活劇マンガ『舵天照』ノベライズ版の作家の一人でもあるから少しは知ってる人がいるかもだし」
「ああ、舵天照なら知ってます。ショップにも関連商品が少し出回ってるくらいですから」
 それなら確かに知ってる乗組員がいるかも、と受付嬢。
「新刊が出てるならちゃんと生きてるってことだし」
「なるほどです。……で、作家の名前は?」
「瀬川潮、っていうの」

 とにかくこうしてロッソ乗組員や負傷兵を歓迎する広場に、移動屋台「Pクレープ」の出店が決まった。
 ほかにもステージで出演者や屋台の出店者、リゼリオ観光案内係などが募られることとなる。

リプレイ本文


 ロッソ乗組員歓迎広場の本部にて。
「……飲食マップは、ないのですか?」
 ハンス・ラインフェルト(ka6750)が着物「炎陽」の袖から右腕を抜き合わせの間から出して顎をさすっていた。
「あ、それが会場で配る周辺案内地図らしいの」
 配布用に束で配った南那初華(kz0135)の説明。ハンスは「困りましたねぇ」とため息。
「会場の案内地図か、みなみな?」
 横から元気よく道元 ガンジ(ka6005)が首を突っ込んで来た。
「ハンスさんの言ってるのは会場の外のこと、かな」
 初華の横にいた狐中・小鳥(ka5484)が地図を確認してガンジに伝える。
「えーっ。会場も油断したら混雑するぜ? 何かこう、ばーんとでかい地図を会場のどこかに掲示した方がいいんじゃねーのか?」
「そっちの案内地図はこっちだな」
 ばーん、と両腕を横に広げるガンジの背後からジーナ(ka1643)が寄って来て新たな地図でぽんと腕を叩いた。
「お。サンキュー、じーな。俺も下見について行くぜ。でもって大きめの用紙にばーんとまとめりゃいいだろ」
 ガンジ、賑やか。
 その隣ではカイン・シュミート(ka6967)が会場内マップをジーナから受け取り静かに目を落としていた。
「『幻獣を見て触れ合いたい人はここでどうぞ』か……」
 カイン、ちらと連れて来たユグディラ「ブルーメ」(ka6967unit001)の方を見ると一生懸命フリルリボンを可愛らしく整えていた。
「今日は頑張れ」
 ブルーメ、しゅっと手を挙げる。
 一方で虎猫の「フラウ」と柴犬の「フルール」がジト目で見ている。
「お前らは機嫌悪ぃな…」
 カインの一言が気に入らなかったか、フラウはぺしっと猫パンチしてフルールは後ろ足で砂を掛けてきた。
「わっ、こら……おい、俺たちも下見に行くぞ」
 乙女心の分からないことを言うとこうなる。

 なおハンス、納得していない。
「解せませんね。軍の荒くれ者が行っても対処できる気風のいい主人が経営する良心的な酒場などはきちんと案内すべきでしょう」
 ここで会場を運営するスタッフがやって来た。
「言いたいことは分かるんですが、利害関係が難しいんですよ」
 つまり未掲載の店から難癖付けられる、と。
「だから案内役を雇っているわけです」
「案内する人が勝手に書き込むのは問題ない、ということですね?」
 念を押すハンス。頷くスタッフ。
「これとは別に飲食店マップはありますので一部持っておいてください。くれぐれも、これを配ってはいけませんよ」
「めぼしいところは先に書き込んでおきましょう。案内役を見分けてもらうのに腕章などはありますか?」
 これでハンスは納得した。なお、案内役の識別は腕章ではなく小さな旗を持つ方式らしい。
「それよりいいですか?」
 新たにスタッフに詰め寄る姿が。
「避難経路の準備はあります か? 水の入った防火桶の設置は?」
 穂積 智里(ka6819)である。
「ああ。それなら会場案内マップに記載してある通りです。でも、どうしました?」
「人が集まると分かっている場所を見逃さない歪虚も増えてきましたから」
 首をひねるスタッフに人差し指を立てて説明する智里。
「あー、『火付けのY』ね」
「まさかここで、だよ……」
 これに初華と小鳥も反応する。もしも狙われたら困るよねー、な感じ。
「一応、手分けして屋台の出品物の検品をしませんか?」
「ああ、そういう事件があったらしいね。今回はハンターオフィスに出入りする業者のみだから大丈夫」
 もし何かあるならすでにオフィスがやられてるね、と。
 とにかく、やって来る人たちを受け入れるべく持ち場に散った。



「やーれやれ、やっぱ街はいいねぇ」
「たまには羽を伸ばしてぇからなぁ」
 リアルブルーでの激闘をいったん終えたサルヴァトーレ・ロッソから負傷兵や乗組員らが続々と半舷上陸してくる。

「きゃーっ、開店まで準備手伝ってーっ!」
 打ち合わせで移動屋台「Pクレープ」の開店準備が遅れてしまった初華が皆に助けを頼んでいる。
「ま、仕方ない……」
 下見から戻ったカイン、テーブル出しを手伝う。ブルーメは主人について椅子を運ぶ。
「よー、まだやってないのか?」
「あ、いらっしゃいませだよ」
 小鳥、早速やってくる客に対応。手慣れたものだ。
「着替える必要もないし、少し手伝うか」
 ジーナも下見から戻っている。レースやフリルをあしらった燕尾服姿でテーブルを拭いている。
 そしてトラック内の厨房。
「料理は得意ですから仕込みは私が」
「智里さん、ありがとっ」
 智里はボウルを初華から受け取り作業を引き継ぎ。初華、とにかく焼く。
「少し客を足止めしたほうがいいですね……いらっしゃいませ、先に商品を説明しましょう」
 ハンスはメニューを持って窓口に向かう客に話し掛ける。すぐに案内するのではなく商品説明して迷う楽しさを提供している。
 これに智里が驚いている。
「ハンスさん、妙に慣れてますね」
「きっと、タスカービレの東方茶屋とかカジノでお客さん対応もしてたからなんだよ」
 一緒の依頼になることもある小鳥の説明。見た目剣客そのものだが意外と接客業経験は多かったりする。
 そんな中、初華が客の雑談に反応した。
「こっちには古書店に地球の本とかないだろうなぁ」
「リアルブルーの二次創作を売ってることもあるって聞いたぜ?」
 初華、この会話に反応。父親のことを聞く。
「小説家の瀬川潮? いたような気はするけど……でもどうして?」
「お父さんだから。生きてれば新刊、出るはずだし」
「ああ、それは心配だね。気を付けておくよ。もし新刊を見つけたら君に郵送しよう」
「ホントですか? ありがとうございます」
 喜びクレープのジャムをこっそり大盛りサービスする初華。
「良かったね~」
 小鳥もその笑顔に思わずにっこり。
 そして真顔になる。
「初華さん、そういえばリアルブルー出身だったんだね? こっちに慣れすぎてて忘れてたけどっ」
「あれ? そういえば小鳥さんてこっちの出身だっけ? 仲良くしてるからすっかり忘れてたけど」
 二人でそんなこと言って、くすくす。
 そしてガンジも今のやり取りを聞いていた。
「そーかー。みなみなのご両親は締切に追い掛けられてるかな?」
「あは。無事でいてくれると嬉しいけど、もしそうなら大変ね。……ええと、ガンジさんもこっちじゃないよね?」
 ん、と初華を改めて見返すガンジ。まさか自分の話題になるとは思わなかった。
 が、すぐに笑顔。
「転移前のことはよく覚えてない。考えてもしょーがない!」
 きっぱりと言う。
「乗組員さんが戦いのことを忘れてゆっくり楽しめるように、全力をつくすぜ。今日一日を笑ってすごし心から楽しむ。俺だけじゃない、他の皆の、大勢の笑顔を見ること」
 ガンジは気付かない。周りから注目されていることに。
「……そうすることで俺は…失くした故郷を懐かしむことができる気がするんだ」
 言い切ったところで、客や初華たち大勢から拍手がわいた。
「あ、ええと……俺はクルミンと一緒に広場にいるよ」
 照れ隠しに持ち場に逃げるガンジだったり。
「じゃあな、初華。テーブル出したから俺も行くぜ」
 カインも手を挙げ背を向ける。ぴょんぴょんわふわふとブルーメやフラウ、フルールがついて行く。
 一方、ジーナ。
「あんた、案内さん?」
 案内係の旗を持っていたのでテーブルを拭いてても乗組員から声が掛かった。
「ああ、そうだ」
「夕方から飲むんだが、ちょぃといい酒場知らねぇか? キレーなおねぇちゃんがいるようなとこ」
 ここで連れの乗組員からストップがかかった。
「おい、女性にそういうの聞くのは……」
「構わん。悪いがこちらはドワーフだから酒や酒場の良し悪しにはそれなりに煩いぞ。……女性店員のほうは知らんがな」
「気に入った!」
 乗組員グループの後方から大きな声。
「いい酒を置いてるとこはいい雰囲気の酒場と相場は決まってんだ。このネェちゃんに任せるぞ」
 酒の好きそうな大男の声でほかの乗組員も納得したようだ。
「じゃ、いくつか案内しよう」
 ジーナも出発する。
「では私も」
 ハンスもPクレープを後にする。
「あ。待ってください、ハンスさん!」
 それに目ざとく気付いた智里、店内から呼び止める。
「サーターアンダギーを作ったので持ってきました。おやつに持って行ってください!」
「こんなに?」
 丸い揚げ菓子入りの紙袋を見て困ったように返すハンス。
「ユニット広場に行きますよね? ほかの人のと……ユキウサギさんの分も!」
「ああ、それなら」
 にこりと受け取り背を向けるハンス。
「喜んでた……のかな?」
「意外と可愛いもの好きなのかもねー」
「とにかく良かったです」
 小鳥と初華と智里がそんな話で盛り上がったり。
「あの~」
「あ。はい、クレープどうぞなんだよ♪ 味わって食べてね♪ 美味しかったら他の人にも宣伝お願いなんだよ♪」
 一瞬客が置き去りになったが、その分小鳥が笑顔当社比二割増しで対応するのだったり。
 もちろん合間に雑談も。
「ほら、ドイツってケーキも紙箱使わないで紙袋で渡すじゃないですか」
「あー、だからさっきのお菓子なのね」
「甘い物、意外と好きかなって……」
「ハンスさん? どうだろね~」
 智里と初華がにこにこきゃいきゃい。
「サーターアンダギー……こんな大きな揚げ菓子がリアルブルーにあるんだね」
 小鳥はリアルブルーの料理に興味津々。接客の合間に裏に下がってぱくっと食べていたり。
「これはクレープの具にしたりは無理、かな?」
「あは。小鳥さん、いつも気にしてくれててありがとね♪」
 初華、抱き着いていつも手伝ってくれたりメニューを気にしてくれるのを感謝感謝♪



 こちら、ジーナ。
 街に繰り出すため会場を出ようと移動しているところだ。
「へえー。あんたとも一緒に戦ってたんだなぁ」
「クラスタ関係とかな。まあこちらでの歓待だ。世話にもなっているし、たまにはこういう形で返すのもいいだろう」
 乗組員からの話にそう返す。
「だったら飲みに行かねぇか? ねぇちゃんみたいな美人と一緒に飲むのもいいんだがなぁ」
 この言葉にきょとんとするジーナ。そして微笑して背後を親指で示す。
「私か? 美人の言葉に感謝するが、酒を飲んでアレに乗るわけにはいかないだろう?」
 指差した先はちょうどユニット広場。
 そこに彼女の乗機、タロン(魔導アーマー「プラヴァー」)(ka1643unit002) が佇んでいた。
「あれに乗るのか?」
「そうだ。こちら特有の戦闘技術や生物に理解を深めてもらう目的であのコーナーがある」
「いや……そのフリルの礼服でか?」
 瞬間、少し赤くなるジーナ。プラヴァーは基本、オープンコクピットタイプ。衣装を着たままの雄姿を見ることができる。
「着替える暇はないしな」
「よし、美人パイロットがいるなら酒飲む前にちょいと見学して行こうじゃねぇか!」
 おお、と盛り上がる乗組員たち。
 どうもジーナ、気に入られたようで。

 ユニット展示広場ではすでにカインが活動していた。
「いいか、フラウとフルールは希望者いたら、負傷兵の心の癒しになってやれ」
 膝を付いて虎猫と柴犬に説明する。
 が、少し理解してないようで周りを見たり集中力がない。
「しっかりな。……お前らの可愛さは尊い」
 仕方ない、と二匹を撫でてやり言い聞かせ……。
 ――げしっ!
「おわっ……って、ブルーメ、蹴るな!」
 背後から背中に猫キックを食らってつんのめる。振り返るとブルーメが怒っているような?
「ブルーメは会場で軽くすりむいたり怪我した人がいたら癒してやれ。……お前もちゃんと可愛くて尊いから安心しろ」
 ぴこん、と猫ひげを立てるブルーメ。どうやら通じたようで。
「やれやれ……女って、どの種族でも解んねぇな…って、ちょっと待った!」
 ふー、と一息ついた隙にとてとてどこかに行くブルーメ。そちらを見ると早速女性乗組員の集団がブルーメに目をつけているではないか!
「一応、ブルーメは女なんでいきなり抱きつくとかは驚くから勘弁な? 握手とか頭撫でるのはいい……よな?」
 クルーに説明しつつブルーメの顔をうかがう。
 ブルーメ、ふんす、と偉そうに頷く。
「きゃーっ。んじゃ、抱っこいい?」
「やれやれ……あっ!」
 落ち着いた、と思って背後を見ると、今度はフラウとフルールが似たようなことに!
「ちょい、こいつら女なんで優しくな?」
 慌てて近寄り説明する。
「あ、すいませーん。撮影してもらえるんですよね?」
 今度はさっきのクルーたちが呼ぶ。交渉成立したようでブルーメを抱っこしている。
「……はい、チーズ」
「すいませーん、こっちも」
 そんな感じで右左。
「なんだ、この忙しさは……」
 ぜーは、と息を整える。ブルーメ、ぽむと主人の肩を叩き慰めていたり。

 一方、同会場にいるハンス。
「シュネーハーゼ、子供には優しくするのですよ? 無遠慮な輩は手痛い目に合わせても構いませんが」
 ウィングアーマー「ホークネスト」を着込み、精悍な顔つきをしたシュネーハーゼ(ユキウサギ)(ka6750unit001) に言って聞かせる。シュネーハーゼ、こくと頷く。
「へえっ。武装したウサギだぜ?」
「珍しいな」
 早速、乗組員たちが寄って来た。
「これがユキウサギという幻獣です。勇敢でとても仲間想いな戦士なのですよ。愛玩動物のように撫でるのではなく、敬意をもって握手してあげて下さい」
「おお……おっ? 礼儀正しいな」
「まるで軍隊仕込みのようだ」
 ハンスの説明を聞いて握手した男性乗組員たちの受けはとてもいい。
 これに気をよくしたシュネーハーゼ、手にした剣を振ってみたり。
「おおー、筋がいい」
「一匹欲しいな」
「シュネーハーゼはあげませんよ?」
 ハンス、褒められてまんざらでもない。
「本当に生きているのか?」
 別の乗組員からの質問。
「仕方ありません。おやつにしましょうか」
 智里からもらったサーターアンダギーを食べさせる。ウサギの前歯でサクサク小気味良く食べる姿に「お~」と歓声が。食べでのある菓子だがあっという間だったり。

 もろちん大きなユニットも目を引いている。
 足元の無限軌道で超信地旋回をかましてしているのは、ゴーレムさん(刻令ゴーレム「Gnome」)(ka6819unit001) だ。
「これが刻令ゴーレムの「ゴーレムさん」ですっ」
 説明したのは、智里。Pクレープが落ち着いたのでこちらでユニット紹介をしているのだ。
 その場でターンをして目を引いたところまでは良かったが。
「ゴーレムさんは…武器も防具もアクセサリーも制限が多くてっ…そ、そういうのを見ていただくのもユニットに馴染む一助になるのかな、と思います…ぐすっ」
 確かにゴーレムさんにあまり装備品はない。
 手にしたソーブレード「レギオ・レプカ」は武骨で良し!
 追加装甲板もミリタリー色抜群!
 でも、後は以下略。
 ブルーメはリボンとかブーツが可愛かった。
 シュネーハーゼはホークウイングに針刀など勇ましかった。
 なのにっ!
「おいおい、泣くなよ」
「な、泣いてませんよぅ」
 大きくて目を引く分、たくさんの乗組員が見物に来ていた。
 ゴーレムのあまりの不遇さに涙したが、ぐっと飲み込み説明、頑張る!



「おおー、すげぇ。グリフォンか?」
 こちらも負傷兵などが見上げ注目を集めている。
「名前はクルミンってーんだぜー」
 ガンジがクルミン(グリフォン)(ka6005unit002)を紹介。白に赤茶色の羽毛きらめく姿は雄々しく凛々……ああっ、ツンってそっぽ向いた!
「……気難しそうだな」
「その分戦闘では頼りになりそうだ」
 さすが軍人たち。質実剛健な見方をする。この評が気に入ったか、そっぽを向いたクルミンも再び周りに視線を戻しうんうん頷いている。
「そうそう。いざ戦闘になったら俺と息を合わせ勇猛果敢に戦うんだぜ。あと、幻獣は珍しいし本当は仲良くしたいんだよー、な?」
 ガンジ、クルミンをもふもふ。協力してくれ、と言わんばかり。
 これにこくこくと頷くクルミン。ほっ。主人の面子をつぶすようなことはしなかった。
「うおっ。高ぇな」
「クローズコクピットに慣れてるからさすがに……」
 試乗体験も大人気。
「飛行許可は出てないから歩くだけだぜ? お、松葉杖の人も寄っといでー。一緒に戦ってくれてありがとなー」
 にぎやかになってガンジの口も良く回りだす。
「じゃ、ちょっとこのまま会場を回るぜー。乗る人は途中で交代な」
 というわけで、出発。
 途中でプラヴァーを発見する。
 ジーナだ。

「行くぞ、タロン」
 胴体部がオープンになったプラヴァーに燕尾服姿のジーナが収まっている。
 まずはぎゃん、とローラー機動。その場で一回転し最小旋回範囲を示してみる。
「こりゃ面白ぇな」
「二足歩行より振動が少ない。負担が軽くていいな」
 ふむぅ、と唸る乗組員たち。目の付け所からしてパイロットのようで。
「プラヴァーは人型の汎用性、作業能力と車両の機動性を併せ持った機体だ」
 手にした螺旋槍「骨喰」を回して構える演武をして説明するジーナ。
「ただ、耐久力には少々不安もある。扱いには丁寧さが必要な時もある……ああ、これは追加フレームを施している。個人のカスタム機で申し訳ない」
「なるほど。カスタム前提って感じにも見えるな」
 いいなぁ、と軍人たち。
「ま、どこかの戦場で見掛けたらよろしくな」
 ジーナ、クールに言ったところでガンジたちを発見。
「行進か?」
 それも面白い、とタロンでついて行く。見物客もぞろぞろ。

 ガンジとジーナの行進は舞台が終点だった。
「ん、せっかくだし私も舞台で踊ってみようかな? もともと踊り子だしね♪」
 そこではちょうど小鳥が前の演奏者と交代したところだった。
 舞台に出た小鳥、とんとんとシューズを気にする。
 足をレの字に上げて指で踵をきにする。着替えたばかりのチャイナドレスはスリット深め。そこから白い太腿が露わになり、その美脚に観客からため息が。
「じゃ、行くんだよ」
 両手に刀を持ち合図。舞台袖の楽団が演奏スタート。
 はじめは緩やかに。
 しゃんしゃん鳴る音に合わせくるくると円舞。長い衣装の袖がひらっと華やかに舞う。
 やがてしゃしゃん、しゃしゃんと拍車がかかる。小鳥、それに合わせて回転や両手持ちした剣の動きが早くなる。目が回らないよう、瞳は回転後方に流し目。白い肌に鮮やかな赤いリップが目立つ。少し開いた隙間から熱い吐息。
 クライマックスはさらに熱く激しく。服の裾を巻き上がるほど。男性負傷兵たちの鼻息が荒くなり目が皿のようになっているのは、白い美脚と見えそうで見えない以下略のもどかしさよ。
 ――じゃ~ん。
 いつの間にか終演。
 一礼する小鳥。
「クレープ屋の美人店員、やるねぇ」
 万雷の拍手が送られた。

「あ、小鳥さんお帰りなさい。踊り、すごかったね~」
 Pクレープに戻ると初華が迎えてくれた。
「ふぅ、久しぶりに人前で思いっきり踊った気がするんだよ。…何か一部の人の視線が変な所見てた気がするけど」
「あー、腹減った」
 汗たら~な小鳥。続いてガンジも戻ってきた。
「ガンジさん、クレープ食べる?」
「おススメの味をヨロシク!」
 というわけで、ラムレーズンクレープを焼く。
 ここで突然、悲鳴が。
「やったな、お前!」
「おどれこそやりおったのォ」
 どうやらロッソ戦闘員と血の気の多い一般客が殴り合いの喧嘩を始めたようだ。
 と、ここで紅水晶が一般客を覆う。
「……話を聞きましょう?」
 ハンスが割って入った。紅水晶はシュネーハーゼが掛けたようで。
 で、話を聞くと。
「こいつのしゃくれた顎が気に入らねぇ」
「こんなぁの生意気な目つきが気に入らねぇ」
 ぴき、とハンスの額に青筋が走る。
 ――どかばきっ!
「おっ」
「ぐっ」
 ゆらっと動いた後、活人剣。
「およそ触れ合いの場にそぐいませんね。ご退場願いましょう」
 おおー、と周囲から拍手がわく中、本部に二人を連行するハンス。
「泥酔してトラブルを起こすと漏れなくロッソに報告が行くのでそのつもりで」
 近くではジーナが別グループに酒場を地図で説明中。しっかり釘をさしておく。
「ちょっと剣呑に雰囲気になりましたね」
 智里も戻ったが、店頭の様子に困ってしまう。
 この時。
 ――どんどん、かかかっ。どん・かかかっ!
「ああ、ブルーメの太鼓が始まったな」
 カインも戻ってステージ鑑賞。ブルーメは主人への愛を太鼓の音に乗せているばかりか時折ばちを大きく回してハートマークを作ったり。これを見たフラウとフルールがふんっ、と鼻息を荒げたりも。
「何か思惑があんのは解ったが……」
 何だろな、でも可愛いとカメラぱしゃ。
「はいはーい。いらっしゃいだよ~」
 この隙に小鳥が着替えて店頭に。
「おお、さっきの良かったよ」
 客が寄って来て賑わいを取り戻す。
「こうありたいもんだ」
「そうですね」
 ジーナと智里、クレープをかじりつつ休憩中。ハンスも戻ってきた。
「そんじゃ、記念に」
 カイン、店頭の写真を記念に一枚収めておくのだった。
 大成功した依頼の記念に。

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重体一覧

参加者一覧

  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    タロン
    タロン(ka1643unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥(ka5484
    人間(紅)|12才|女性|舞刀士
  • 今日を笑顔で全力!
    道元 ガンジ(ka6005
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    クルミン
    クルミン(ka6005unit002
    ユニット|幻獣
  • 変わらぬ変わり者
    ハンス・ラインフェルト(ka6750
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    シュネーハーゼ
    シュネーハーゼ(ka6750unit001
    ユニット|幻獣
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ゴーレムサン
    ゴーレムさん(ka6819unit001
    ユニット|ゴーレム
  • 離苦を越え、連なりし環
    カイン・シュミート(ka6967
    ドラグーン|22才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ブルーメ
    ブルーメ(ka6967unit001
    ユニット|幻獣

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/12 22:14:47