蜥蜴にて潜入 ~騎士アーリア~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/09/18 15:00
完成日
2017/09/29 02:07

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国の南部に伯爵地【ニュー・ウォルター】は存在する。
 領主が住まう城塞都市の名は『マール』。自然の川を整備した十kmに渡る運河のおかげで内陸部にも関わらず帆船で『ニュー港』へ直接乗りつけることができた。
 升の目のように造成された都市内の水上航路は多くのゴンドラが行き来していて、とても賑やかだ。
 この地を治めるのはアーリア・エルブン伯爵。オリナニア騎士団長を兼任する十七歳になったばかりの銀髪の青年である。
 前領主ダリーア・エルブン伯爵が次男である彼に家督を譲ったのは十四歳のとき。すでに闘病の日々を送っていた前領主は、それからわずかな期間で亡くなっていた。
 妹のミリア・エルブンは幼い頃から政において秀才ぶりを発揮している。
 事故と発表された長男ドネア・エルブンの死因だが、実は謀反に失敗して命を落としていた。そのドネアが歪虚軍長アスタロトとして復活。謀反に関与していた元親衛隊の女性ロランナ・ベヒも歪虚の身となって現れた。
 兵器輸送のゴンドラの沈没事件、領地巡回アーリア一行襲撃事件、穀倉地帯における蝗雑魔大量発生等、アスタロト側が企んだ陰謀は、ことごとくハンター達の力添えによって打ち砕かれる。だがこれらの陰謀には搦め手が存在し、ネビロスは運河の湧水個所を狙っていた。歪虚アイテルカイトの尊厳をかなぐり捨てたネビロスだったが、騎士団とハンター達の前に敗北して最後の時を迎える。
 勝利に沸く城塞都市マールの民。アーリアが喜んでいたのも事実だが、振り払ったはずの兄への気持ちは心の奥底でかすかに残った。
 マール城にアスタロトから晩餐への招待状が届き、アーリアはその場へと赴く。そこでのアスタロトの発言はわずかな同情も引いたものの、傲慢に満ちあふれていた。
 不意に転移してきたTNT爆薬の処分についても、ハンター達の尽力によって解決へと導かれる。


 ある日、伯爵地ニュー・ウォルターの北東部に突如として大量の水が溢れだす。ハンター達の協力によって周辺住民の避難は完了。そして湖と化した大地の中央に、突如として城が浮きあがった。
 湖中央に聳える城の上空では、常に歪虚、雑魔が舞っていた。確証こそないものの、兵や民といった誰もが口々に噂する。あの城の主は歪虚軍長アスタロト。アスタロト城だと。
 湖出現からこれまで、領主アーリアは手をこまねいていただけではなかった。三度の戦端がひらかれたものの、一進一退の状況でアスタロト側の防御は厚い。
 陸路で船を湖へと持ち込んだものの、敵城の小島まで辿り着くことは叶わなかった。すべて湖に沈められてしまう。
 湖は歪ながら直径三km円といった広さ。水深は一番深いところで十メートル前後といったところ。アスタロト城は直径六百m円の小島に建てられていた。
 ハンターに協力してもらい、湖の調査が行われる。その結果、様々な事実が判明した。
 湖の底に沈んだ施設を休憩所として、数多くの水棲雑魔が哨戒任務をこなしていた。組織だっており、アスタロト城への連絡網が敷かれているとハンターが提出した報告書には記されている。上空も鳥雑魔によって見張られていた。
 艦隊の島上陸を妨害する投石機破壊計画が持ちあがる。ハンター達は任務を完遂。それによってアーリア率いる騎士と兵士の領地混合軍は、城聳える小島に上陸を果たしたのだった。

 小島中央のアスタロト城には、取り囲むようにして二重の城壁が存在する。それを打ち崩すべく攻勢の一週間が経過した。
 湖上に浮かぶ指揮艦内の一室にて、アーリアを中心とした作戦会議が行われる。
「ご存じの通り、城壁の東西南北に門が一つずつ存在します。一番手薄の東門に攻撃を集中させていますが、二、三日のうちに突破は可能でしょう」
 精悍な騎士は報告を続ける。敵側からの主な攻撃は城壁上からの矢と銃撃だ。厄介なのは時折、歪虚や雑魔が行う炎や風を巻き起こす範囲攻撃である。
「あからさま……というほどではないが、東門は罠ではないのか? わざと隙を作って、そこへと相手をおびき寄せる戦法は充分にあり得る」
 一番奥の椅子に座っていたアーリアは指摘した。
「その点は危惧しております。上空からの突入は現戦力を持ってしては不可能。東門でなければ他の三門ということになりますが、だとすれば同じ策が講じられていると考えるべきで、それならばやはり東門に活路を、というのが採った選択肢です」
 騎士は答える。兵は西南北の門の前にも待機させていたが、実質的に見張り役に過ぎない。三門とも範囲攻撃が主体になっているためで、突破が厳しいからであった。
 アーリアは椅子から立ちあがって窓の外を眺める。
「それならば本気、と見せかけた戦いを東門に仕掛けよう。その機に乗じて味方の何人かを潜入させ、敵がどのような罠を張っているのか調べさせるのはどうだ?」
 アーリアの案は多くの賛成を得たものの、潜入班の選抜に手間取った。アーリア自ら乗り込む気概もあったのだが、それは臣下から引き留められる。
(誰にでも任せられる作戦ではない……)
 数日後、アーリアは応援としてやってきたハンター達に潜入作戦を伝えた。用意した蜥蜴雑魔のキグルミを披露しながら、引き受けてはもらえないかと。

リプレイ本文


 湖に浮かぶアスタロト城を取り囲む形で、小島外縁の海岸には領地混合軍の橋頭堡がいくつも築かれていた。
「残念ながら城上空の守りはかたく、得られた情報はほとんどない。しかしAとBの城壁の間には罠が仕掛けられているはずだ」
 会議用テント内にて、アーリア自らが現状を説明する。耳を傾けるハンター達の側には、蜥蜴雑魔のキグルミが人数分用意されていた。こちらを着込み、戦闘の混乱に乗じてA城壁の向こう側へと潜入。六時間の偵察後、帰還するのが今回の任務である。
 A城塞攻めの開始二十分前になり、ハンター達はキグルミを身につけ始めた。
「無線機はうまく隠れているし、着ていてもちゃんと手が届く。問題なさそうだな」
「戦闘のどさくさと簡単にいっているが、騎士たちの損耗も馬鹿にならない……なんとしても有力な情報を持ち帰らないとだな」
 A班のロニ・カルディス(ka0551)とヴァイス(ka0364)は、互いの着込みを確かめ合う。本人からは死角になるので、首と胴の接続部分は特に念入りに。
「蜥蜴の雑魔、左右に少し揺れながらの、こんな歩き方だったでしょうか」
「歩幅がもうちょっとだけ広かったと思いますの」
 B班のミオレスカ(ka3496)とディーナ・フェルミ(ka5843)も、互いの着込みをチェックした。
 ディーナがアーリアへと近づき、下から覗きこむように見あげて「……もしかしてかなりお疲れなの?」と問いかける。
「いくら覚醒してても着ぐるみ六時間はかなり拷問な気がするの……」
 ディーナは作戦の強引さを感じていた。
「無理な作戦ですまない」
 アーリアの返答を聞いてからディーナは頭部を被る。そして「い、逝ってくるの~」と返答したのだった。
 C班も準備に余念がない。
「きぐるみで潜入って聞いて、一瞬聞き間違えかと思ったけど……ダンボールとか何かを被るのは、潜入調査の基本だもんね」
 着替え終わっていた時音 ざくろ(ka1250)は、長い舌を「シャーッ」と出してギミックを確認する。
 同班の弓月 幸子(ka1749)と鳳凰院ひりょ(ka3744)もキグルミの着心地を確かめていた。
(むうう……ボクがこんな格好可愛くないんだよ………)
 不満げな弓月幸子だが、鳳凰院とおそろいきペアルックである点については気に入っている。
「通信は必要最低限がよいだろうね。敵にこちらの正体ばれる危険性は事前に防がないと」
 鳳凰院は冷静に無線を点検。A班、B班の者と調整を行う。

 まもなく戦端が開き、領地混合軍によるA城塞攻めが行われた。
 弓や銃による遠隔攻撃が互いに飛び交う。アーリア指揮の元、門破りの攻城兵器による突進が仕掛けられる。
 それを阻止しようとしたのか、雑魔の兵団が滑り台式でA城塞側から投入された。
 予定通り、雑魔の一般兵の多くは蜥蜴雑魔が占めていた。十数分後、領地混合軍は攻城兵器を放棄して撤退。戦闘が一段落したところで、A城塞の東門がわずかに開かれる。A城塞の内部へと潜り込む蜥蜴雑魔に化けたハンター達であった。


 蜥蜴雑魔のキグルミ姿のハンター達は、三つの班に分かれて偵察を開始した。

「このような場所とは」
 先頭を歩いていたロニが天井を見あげながら呟く。
 A城壁とB城壁の狭間はただの空き地ではなかった。通路幅が広くとられた、連結する建築物内の複雑な立体迷路が構成されていた。
「外部からの侵入者が迷うような仕組みか。城にはよくあるが、城壁の狭間までこうなっているとは」
 ヴァイスは階段をのぼりながらロニへと振り返る。考え方によっては、すでに城の内部といえる空間だ。
 敵である雑魔を見かけたときには、欺くために特徴的な歩き方に気をつけながらすれ違う。状況がわかりにくいので一旦A城塞へと戻る。二人は高みから狭間を見下ろすために、最上階の一段下まで階段をのぼった。
「天井のない広場があるな」
「必ず通る順路になっているのではないだろうか」
 B城塞の方面を眺めると、連結している建築物の途中に広場が覗えた。周囲には城塞の高さ程の塔が四基も聳えている。進攻中の兵団に攻撃を仕掛けるには、恰好な高所の位置関係になっていた。

 敵とすれ違う際には、最低でも二、三mの距離を空けておく。
 B班のディーナとミオレスカは「どの個体も同じ顔に見える」と思いながら、すでに十数体の蜥蜴雑魔とすれ違っていた。
 キグルミ内部に溜まる熱気と緊張感のせいで、精神と体力が削り取られる。使われていない小部屋を見つけて一時退避。扉に鍵を閉めてから頭部を外し、二人同時に大きなため息をついた。
「次の門までのルート状に落とし穴や逆茂木や空堀なんかがあったりするのかなぁって思ったの。後は……狭間や石落とし?」
「通路の状態ですが、石工の人達が建てたかのように普通でしたね」
 ディーナとミオレスカは汗を拭いながら、これまで見聞きした状況を話し合う。
 突如、湖から出現した城なので不可思議な仕掛けに満ちているかと想像していたが、そうではなかった。
 これまで確認しただけでも落とし穴に空堀といった罠は仕掛けられていた。だがどれも小規模で、兵団をまとめて屠るための細工とは考えにくい。
「私達が引っ掛からないよう罠に注意するの」
「そうですね。ではあらためて……何でしょう。このにおい」
 においの正体が気になった二人は再び通路へとでた。しばらくして辿り着いたのは、場違いな果樹園。手袋をはめた蜥蜴雑魔によって収穫が行われている真っ最中であった。

(こういう時びくびくしてたら逆に不自然だもんね)
 弓月幸子は角を曲がる前に覗き見をしてから先へと進んだ。
 一緒に行動するC班の鳳凰院と時音も槍を手にしたまま蜥蜴雑魔歩きで奥を目指す。長い舌を伸ばすといった蜥蜴雑魔の仕草を時折しながら。
「崩したいところの側に火薬樽とか。地面が液状化現象してるかもだよ。大人数で踏み込んだら地面がどぱどぱに~とか」
「それはあり得るね。あ、また雑魔がたむろっている。もしものときは全速力で逃げるから、そのつもりでいて欲しいな。ざくろもね」
 弓月幸子と鳳凰院が小声で話す。
 彷徨い始めて三時間が経過。A城塞からB城塞への狭間は複雑な迷路状で、行っては戻るを繰り返す。そうこうするうちに疲れが溜まってくる。
「もう少しだけ大人しくしててね」
 時音が小声で話しかけた相手は、胸元に隠している鈴蘭型の妖精ララベルだ。キグルミの隙間にすっぽりと収まっていた。
 無人の倉庫を見つけて小休憩をとる。
「どこもかしも迷路のようだね。AもBも苦労しているみたい」
 鳳凰院は他の班との連絡が終わって、トランシーバーを仕舞う。
「冒険家としてはマッピングして調べたいところだけど、その余裕はないよね。どうしようかな?」
「それなら案内を探せばいいんだよ」
 時音と弓月幸子がそれぞれに案をだす。雑魔の集団にも新米兵はいるはずなので、直感的に理解しやすい経路図がどこかにあるはずだと推測を立てる。
 三人は危険を承知で蜥蜴雑魔の控え室を探すことにした。

●A班
「何の変哲も無いな」
「想像していたよりも、塔からの圧迫感は少なく感じられるな」
 ロニとヴァイスは迷路のような通路に迷いながらも城塞狭間の広場へと辿り着く。
 現場に立ってみると当初の想像からは外れていた。四基の塔から遠隔攻撃されたとしても、集団に対して大きな効果は望めそうもない。
 肩すかしを食らった二人だが、その考えは即座に拭い去られる。広場の秘密に気づいたからだ。
「二十段もの階段を下りて、また数十m先の建物へ入るにはまた階段をあがらなくてはならないとは。まるで貯水池のような構造をしているのだな」
「あの壁面にある口を見てみろ。ここに水が流れ込むようになっているようだ。水はけを考えれば、排水に力を入れてもよさそうなのだが」
 広場を確かめていくうちにロニとヴァイスは気づいた。わざと水が溜まるようになっているだと。
「……おそらくは水攻めか」
「そうだと俺も思う。しかし、だとすれば浅いようにも思える。もっと深くなければ意味はないような」
 蜥蜴雑魔の集団が遠くから近づいてきて、さりげなくその場から離れる。新たな疑問が浮かんだ二人だが、撤退の時刻は迫っていた。別班が得ているであろう新情報に期待して、A城塞の東門へと急いだのだった。

●B班
 ミオレスカとディーナは収穫されたばかりの真っ赤な果実が運ばれる先を確かめることにした。
 息を潜めて物影に隠れて、果実を満載にしたトロッコを蜥蜴雑魔等が押して運ぶのを追いかける。辿り着いた建物には圧搾機が設置されていた。その中へと果実がまとめて放り込まれていく。絞られたばかりのジュースは、黒色の石材で造られたプールへと溜められていた。見方によってはワイン造りのようである。
「蜥蜴雑魔の恰好、妙な感じなの。ものすごく重装備なの。まるで危険物を扱っているみたいな」
「先程の収穫時も違和感がありましたが、ここではさらに分厚いベストまで着込んでいますね。それにマスクまで。やけに厳重ですね」
 作業する蜥蜴雑魔等の様子に首を傾げていると、一匹の蜻蛉が視界に入る。やがてプールに溜まるジュースへと蜻蛉が触れたとき、瞬く間に溶けてしまう。ミオレスカとディーナはキグルミ越しに顔を見合わせて驚く。
「た、大変なの。このジュースをかけられたら、きっと人間も溶けちゃうんだと思うの」
「どうやって使うんでしょうか。煮え立った油を使うときのように頭上からかけるのか、それとも水鉄砲みたいなもので……」
 具体的な使用方法まではわからなかったものの、危険性については明白である。帰還の時刻まで一時間を切ったところで撤退を開始。東門近くまで移動するミオレスカとディーナであった。

●C班
 空き部屋の時音が妖精のララベルを前にして「ララベル、今ざくろ達の絆は結ばれた!」と呟く。
「がんばるんだよ」
 ファミリアズアイによって視覚が共有されたララベルは弓月幸子が開け放った窓から飛び立つ。隣室である控え室の窓へとそっと近づいた。
(誰も気づいた様子はない。うまく忍び込んだようだね)
 隣室との壁に耳をあてていた鳳凰院が手振りで成功を示す。
 控え室には蜥蜴雑魔五体がくつろいでいた。それらの個体の目を盗んで、ララベルが机へと近づく。こっそりとのぼると、天板の中央には一枚の紙が広げられていた。
「あったんだよ。経路図」
 視覚共有中の時音が呟く。それはまさしく東門周辺の通路が詳しく記された経路図であった。
 鳳凰院は身動きできない時音を護衛するために空き部屋へと残る。弓月幸子は一人、廊下へでて別の空き部屋へ。木製家具に火を放ってボヤを起こす。
 しばらくして鳳凰院が廊下を確かめると煙が流れてきていた。控え室の扉をノックしてから身を隠す。
 控え室にいた蜥蜴雑魔等もボヤに気づいて飛びだしていく。中には木桶に水を汲んで走る蜥蜴雑魔までいた。
 騒動に紛れて、鳳凰院がこっそりとララベルだけがいる控え室へと忍び込む。そして経路図を失敬する。
 領地混合軍が帰還のための騒ぎを起こすまで、すでに二十分を切っていた。経路図を手に入れた三人はボヤに背を向けて東門へと向かう。
 その過程でA班、B班と合流。倉庫の片隅で息を潜めて好機を待つ。出撃の銅鑼が鳴らされたとき、蜥蜴雑魔の集団に紛れて城外へと脱出するハンター達であった。


 島外縁の橋頭堡に戻ったハンター達は、アーリアを交えて相談の席に着いた。細かい点も含めて、互いに得られた情報を突き合わせる。
「塔が広場近くに四基あったのだが、どうも上から攻撃する場ではないらしい。あくまで監視のためのもの。怪しい点は他にもあったのだ。まるでプールのような」
「まるで水攻めを意図したかのような、妙な構造をしていた。溜まり水を流すための排水溝も見つけたが、それは閉じられていたな」
 ロニとヴァイスからの情報にアーリアが興味を示す。
「真っ赤な果実を集めて、それをジュースにしていたの」
「それがとても危ないジュースで、蜻蛉が一瞬で消えるのをこの目で見ました。生物を簡単に融かしてしまうようなんです」
 ディーナとミオレスカはサンプルとして果実を一つ持ち帰っていた。どのような性質を持つものなのか、博識な騎士へと渡される。
「この経路図、すごいんだよ。通路だけじゃなくて、通風口や排水溝についても描かれているんだから。ララベルも誉めてあげてね」
 時音が卓に広げた経路図へとアーリアが顔を近づける。ふとララベルと目があったアーリアが「よくやってくれたな」と頭を撫でてあげた。
「経路図によれば、圧搾機のある建物から延びている何本もの太い管は、広場へと繋がっているようだ。プールに溜まっている果実のジュースが流れ込むようになっているのではないか?」
 アーリアが経路図の上を人差し指でなぞる。その通り、プールのジュースが広場へと流れ込む構造になっていた。
「つまりは突入してきた敵、つまり俺達を融かしてしまう仕掛けなのかな」
「ボクもそう思ったんだよ! とても強力にとけるのなら、肩まで浸からなくても効果があるんじゃないかな」
 鳳凰院と弓月幸子のやり取りを耳にした誰もが、はっとした表情を浮かべる。脳裏に浮かんだのは領地混合軍壊滅の地獄絵図であった。
「他にも罠は配置されているようだ。しかしすべてはこの広場へ侵入者を誘い込むための布石。呼び水のようなものなのだろう……」
 アーリアはしばらく考え込んでからハンターの一同に礼をいった。「おかげで突入作戦成功の算段がつきそうだ。心から感謝する。ありがとう」と。
 ただ一つ、アーリアが気がかりなのが姿を現さないアスタロトである。
 城塞都市マールの護りは万全で、攻城の隙に襲撃される可能性は非常に低い。それでも心に棘が刺さっているような気分が抜けないアーリアであった。

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参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 質問です
ミオレスカ(ka3496
エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/09/17 16:44:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/17 01:22:43
アイコン 真夏の暑さで正気が心配なの…
ディーナ・フェルミ(ka5843
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2017/09/18 08:22:59