• 天誓

【天誓】End of Calamity2

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/10/24 12:00
完成日
2017/11/05 03:00

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「ハルトは元々精霊だったのよねぇ。私は生身から直接歪虚になったけど……精霊になるのってどんな感じ?」
 正直なところ、ソレとは水と油だった。
 ナイトハルト・モンドシャッテの伝承が征服者であるのならば、生まれた時代は異なれど、彼女との関係性は劣悪を極める。
 片や、森の精霊とエルフの橋渡し役。神の代弁者、精霊の声を聞くもの。
 片や、征服の騎士。敵対するすべてを殲滅し、唯一光の神を除き、すべての神を屠るもの。
 歪虚になったからと言って、正反対のイキモノが共存できるはずもない。
 なのに何故か、拒絶しても向こうから絡んでくるのだ。
「語るに及ばんほどに、最悪だ」
「アハハ。でしょうねぇ。あなたは出来損ないの“正義の味方”だもの。いや……“弱者の味方”かしら?」
 あの女の言う通りだった。
 自分は腐っても“正義の味方”だ。皆がそう望み、そう願った英霊だったから。
 例え歪んでいても、間違っても弱者に拳など上げたくなかったし、正義と信じる行いをしたかった。
 それは人間の基準とはまるで違う正義ではあったが……。
「ニンゲンは“悪”だと思う?」
「下らぬ。我らは歪虚、負なる者。正なる者に仇為すのは本能よ」
 正義になりたかったわけじゃない。
 自分の行いを――正しいと思っていたわけじゃない。
 誰かを助けたつもりもない。強さを誇示したつもりもない。
 ましてや、国を興すつもりもなかった。
「戦いこそ、歪虚が求めるもの。敵を屠り喰らってこそ暴食。道理も理屈も関係ないわ」
 フンと鼻を鳴らし、腕を組む。
 何故かは知らない。ただ、その女はフードを脱いで、風に髪を揺らしながら笑う。
「いつか見つかるといいわねぇ。あなたが剣を振るうに相応しい戦いが――」



『まさか……貴方がナイトハルト・モンドシャッテだと言うのか?』
 帝国領西部に存在する山岳地帯。そこに広がる鬱蒼と生い茂る森に、絶火の騎士「クルヴェナル」がいるという。
 クルヴェナルはオズワルドの親類にあたる人物。故に彼の家には絶火槍の伝承が伝わっていた。
 帝都で発見された絶火騎士「アレクサンダー」は、勇者ナイトハルトと共に世界を旅して仲間を集めた伝承を持つ。そんな彼にとって、残りの絶火騎士の居場所を感知することは難しくなかった。
 そしてそれは――不破の剣豪ナイトハルトも同じこと。
 骨の馬に跨ったナイトハルトと、ハンターと行動を共にするアレクサンダーが遭遇したのは、当然の道理と言えた。
「貴様は……アレクサンダーか」
『如何にも。しかし、貴方に気安く呼ばれる筋合いはない』
 大盾を身構えたアレクサンダーは仮面の奥に潜む眼光をギラリと輝かせる。
『確信した。貴方は……勇者モンドシャッテではないのだと』
 アレクサンダーの記憶にある勇者は、黒鎧など纏わなかった。
 歪虚になったから変わったわけではない。そもそも性格も気配も何もかもが違う。
『本物の勇者は……そうだな。帝都で見かけた、あの男に似ている……。シ……シグル……?』
 名前を思い出せなかったのか、アレクサンダーは頭を振る。
『貴方は……一体、“誰”だ?』
『別に誰でもよかろうよ。ニンゲンというのは細かい事を気にする……いや、貴様は英霊であったかな』
 突然、ナイトハルトが跨っていた馬が声を発した。
 騎士が大地に降り立つと、骨で作られた馬はギシギシとその姿形を変え、ついには暴食王ハヴァマールへと姿を変えた。
『貴様も絶火騎士だというのならば話は早い。ナイトハルトの糧となってもらおうかのう?』
 そのすさまじい負のマテリアルの圧力を前に、アレクサンダーですら一歩後退する。
 始祖たる七の一体。不死の剣王とも呼ばれる、最強の不死者。
 たった一体でリグ・サンガマの王都アルシャンクを滅ぼした怪物だ。
『この聖盾のアレクサンダー、容易には消化できぬものと知れ。私の守りは鉄壁、闇を払う聖なる力』
 手にした大盾を大地に叩きつけると、光の結界が周囲に広がっていく。
『クルヴェナルの元へは行かせぬ』
「この程度の結界で我を閉じたつもりか? だが……所詮は順番の問題よ」
 ナイトハルトは腰に下げた剣に手を伸ばす。
 すらりと刀身を抜き放つと同時、青白い炎が刃を包み込む。
「こうしてハンターと対峙するのも久しいな。貴様らは様々な旅を経て強くなったと聞く。その力がどれほどのものか……改めて試させてもらうとしよう!」
 魔剣を手にしたナイトハルトと聖盾を構えたアレクサンダーが激突する。
 正負のマテリアルが激しく明滅し、衝撃となって森の木々を揺らす。その様子を少し離れた場所でハヴァマールは眺めていた。
『いよいよ始まったか。どれ、余もここで見物させてもらうとしよう』
 暴食王はそう言ってドッカリと床に座り込む。どうやら見物を決め込むつもりらしい。
 襲ってくる気配はないが、これでも歪虚王。ただそこにいるだけで想像を絶するプレッシャーを発している……。
 が、今はまずナイトハルトに対処するべきだろう。
 ハンターは武器を手に、アレクサンダーを支援する為に地をを蹴った。

リプレイ本文

「これも縁ってヤツかね。こんな所でまた会うとはな」
 ソフィア =リリィホルム(ka2383)が呟く。
 一部のハンターにとっては、彼の剣豪との闘いは久方ぶり。ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)もその一人で、特にうずうずした様子だ。
「奴は英霊の影っす。生前とは戦法も剣筋も違うから気を付けろっす。最初は経験者の俺が行くっす。やばくなったら合図を出すんで交代っす」
 ナイトハルトの強烈な負のマテリアルを前に、神楽(ka2032)は自身が騎乗していた馬を遠くに逃がし、前に出る。
「アレクどんはまず後方から魔法で皆を援護して欲しいのじゃ。いかに強大といえども敵は一人、チームプレーで倒すのじゃ」
 カナタ・ハテナ(ka2130)の言う通り。相手はあくまでも人型サイズの歪虚。
 大人数で一気に包囲するより、入れ替わり立ち代わりで継続的な攻撃を仕掛けた方がローリスクハイリターンと言える。
「いい剣すね。銘は何っすか?」
『銘などない。だが、武器なければ使えぬ技もあるのでな』
「へ……今更お前がどんな技を放ってきても驚かないっすよ!」
『フ……そう期待しよう。それよりも早く準備をしたらどうだ?』
「こちらの戦闘準備を待ってくれる、か……。お優しい、な」
「んじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかねぇ……!」
 ソフィアは前衛となるハンターに加護符を使用し、オウカ・レンヴォルト(ka0301)はマーキス・ソングを歌いあげる。
 ハンターの戦闘には立ち上がりの速さというものがある。ユーリは二刀の刃を交差させるように構え、それを擦り合わすようにして雷光を宿す。
「行くよナイトハルト。都合五度目となるこの戦い、私の祈りと思い……その“形”を以て挑ませて貰うよ」
『宣言などせずともかかって来ればよかろう』
「それ、貴方が言う?」
 ユーリは思わず苦笑する。剣豪は強敵だとわかっているが、今一つ緊張しきれない。
 交える度に剣を伝えてきた。奇妙な絆……見る者が見れば、子弟関係を連想するかもしれない。
「……行くよ、紅薔薇!」
「うむ。不破の剣豪ナイトハルト……本気で斬らせてもらう!」

「今度は吹っ飛ばされないっすよ!」
 しかし神楽は攻撃するかと思いきや、直ぐに足を止め魔法を発動する。
 幻影の触手がナイトハルトに絡みつくと、その身体を自分へを引き寄せる。
 ファントムハンドは回避も防御もできない。出来るのは抵抗のみだが、神楽の幻影触手はかなりの強度を誇る。
「捕らえたっす!」
 移動先目掛け右から紅薔薇、左からユーリが剣を繰り出す。
 ユーリは二刀を交互に、そして紅薔薇(ka4766)は一刀を素早く二度繰り出す事で一瞬で連携した四連撃が繰り出された。
 二人の攻撃は一撃で生半可な歪虚ならば両断する程の威力を誇る。それを剣豪は目線も向けず左右の手にした剣で打ち払う。
 だが――同時攻撃をすべて捌く事は困難だ。二人の刃はそれぞれナイトハルトの鎧に食い込むと、まるでバターを斬るかのように切り裂いた。
『天衣無縫がまるで機能しないとはな……いい得物を手にしたな』
 ユーリの蒼姫刀「魂奏竜胆」と紅薔薇の祈りの剣は二人の為に作られた世界唯一の武器。
 使用者と武器の親和が天衣無縫の突破口とするなら、これ以上に有効な武器はないだろう。
 剣豪の鎧はダメージを受けても再生する。だが、魔法による攻撃は体内の霊体が破壊されるため、鎧の再生も遅くなるのだ。
「まだ未完成だが……悪くはあるまい?」
 そしてその鎧の防御性能をオウカのマーキス・ソングが低下させている。
 対象の防御性能を下げる効果は、全員の攻撃能力を強化するに等しい。
 更に剣豪が前衛を攻撃するなら、オウカとソフィアが障壁を張る準備もできているし、カナタのフルリカバリーも控えている。
 それ以前に紅薔薇とユーリの回避力は既に単独でナイトハルトと拮抗できる実力がある。
 故に後衛もナイトハルトと前衛が打ち合う間に攻撃する余力があった。
「パルム、行くっす!」
「あんまり前に出すぎるなよ! 巻き込まれたら洒落にならねぇ!」
 神楽はファミリアアタックを打ち込み、ソフィアは銃撃で支援。
 オウカは自身に多重性強化を施した上で巨大な祢々切丸でヒット&アウェイを狙う。
「アレクどん、我々も征くのじゃっ!」
 カナタの猫波の波動と共にアレクサンダーが地中から出現させた十字架がナイトハルトを吹き飛ばす。
『ぬぅぅぅ……!』
「おぉ~、押しているのじゃッ!?」
「ハッ! マジかよ……一方的だぜ?」
「ねぇナイトハルト、貴方にとって私はまだ“小娘”のままかしら? それとも、少しは十全をぶつけるに足り得る“敵”に近づけた?」
 僅かな間の戦いでナイトハルトの鎧はボロボロに傷ついていた。
 大地に剣を突いて立ち上がった騎士に表情などあるはずもない。だが、どこか満足そうに。
『まったく、ヒトの成長とは著しい。ほんの僅かな暇で見違えるわ』
『ナイトハルト、まさかこの程度ではあるまいな?』
 すっかり皆忘れていたが、胡坐をかいて傍観する暴食王が両手をメガホンのように顔の前に置き、ヤジを飛ばす。
『無論。彼奴等が本気で闘うに値するか、見定めておりました。……彼奴らは強い。本気を出さねば私が負けます』
 次の瞬間ナイトハルトの身体が蒼く燃え上がり、鎧のダメージがすべて――瞬く間に、完治。
 すうっと、残像すら浮かぶような滑らかな動作で右の長剣と左の短剣を――“構え”た。
『認めよう。貴様らは我が王にすら届き得る刃。天衣無縫梵我一如……武神の妙技をお見せする』
 ぼろぼろの剣が蒼い炎を宿す。その瞬間、刃の持つ力が何段階も引き上がるのを感じた。
「……ヤバイっす!」
 先手を取らせてはいけない。神楽は直感的に理解した。
 幻影触手によりナイトハルトを自らの引き寄せる。これは、敵の注意を自分に向けるという意味でも適切だ。
「攻撃が来るぞ、備えろ!」
「わかって、いる……祓い退く盾、此処に現す事御君に願い奉る」
 ソフィアとオウカが障壁の展開を用意する。
 神楽は盾を構え、防御の姿勢。だが、彼はそもそも前衛として十分な回避能力を持っている。
 だが次の瞬間、繰り出された短剣が神楽の眼前で停止する。
 フェイント、あるいは威圧――。次の瞬間、意識の外側から炎を纏った長剣が神楽の身体を貫いていた。
(ガード……いや、えっ!? マジっすか……見えな……っ!?)
 遅れ、神楽の背後にまで衝撃が貫通し、大地を抉り火炎が爆散する。
「ぬぉぉぉーッ!? なんじゃ、この射程はッ!?」
 先の剣豪の攻撃は、ざっと直進上8スクエア程は貫いている。
 真後ろにいなかったので間一髪、カナタも位置が悪ければ巻き込まれていた。
 吐血し、膝を着く神楽。ソフィアとオウカの障壁は間に合っていた。その上でこれだけのダメージ。
 だが肉体の再生は既に始まっている。神楽は防御力ではなく再生力で攻撃に耐える戦士だ。
「神楽どん……なんとか回復を……!」
 だが、カナタは接近を躊躇っていた。
 フルリカバリーの回復力なら、神楽を復帰させることは可能だ。
 だが先の剣豪の攻撃は、明確な貫通型直線範囲攻撃。射程1の回復など、まとめて攻撃してくれと言っているようなもの。
「すまぬ、アレクどん! 神楽どんを!」
 全力移動で前進し、神楽の前に盾を置くアレクサンダー。
 ユーリは左側面から構えた刃に雷を載せ突きを放つ。だが剣豪はその一撃からすっと身を躱す。
 そしてその攻撃を避けている時間の中でくるりと身を翻し、短剣をユーリに放った。
「ぐっ……!?」
 刃で受けるが、回避はできなかった。
 おかしい。十分に見切る能力はあるはずで、先ほどまで見えていた刃だ。
 だが、明確にスピードが上がっている。いや、攻撃が回避に合わせて追尾してくるような感覚。
 “スキル”だ。そうとしか考えられない。
 思えば先ほど神楽に放った攻撃は刺突一閃に似ている。であれば、回避中に反撃に転じたのも何らかのカウンタースキル。
 そして攻撃のモーションが変わったのは――。
「ユーリ殿!」
 回避されるのはまずい。紅薔薇は剣豪にウィップを巻き付け、滑り込むように剣を繰り出す。
 回避を阻む事に成功し、剣豪はこれに自らの剣を打ち付けて対応。続けて紅薔薇が振り下ろす斬撃をもう一度剣で受け、衝突するマテリアルか風となって吹き抜ける。
 ナイトハルトの両腕から炎が噴き出す。
 その鎧は肉を覆うものではない。故に変形は自在。関節を外すようにして腕を延長する。
 そうして腰の部分から上、上体だけを回転させるように薙ぎ払う斬撃が放たれた。
 延長された腕にオーラを加算し、射程は目算5程。紅薔薇、ユーリ、神楽、そしてアレクサンダーが巻き込まれる。
『聖なる盾よ……! 我は願う、最後の聖域!』
 次の瞬間アレクサンダーの盾が光り輝いた。そしてアレクサンダーだけが衝撃で背後に滑り込んだ。
 神楽、ユーリ、紅薔薇は無傷。範囲攻撃を吸い込んだのだ。
 この隙に神楽は背後に飛び、その神楽にフルリカバリーを発動する。
「死ぬっす! 交代! 後退っす!」
「ていうかよく生きておったのう」
 防御や回避、生命力に優れたハンターでなければ一撃も耐えられない。
 ……そんなことがあるのか? 自分は三下だが、紅薔薇やユーリは王クラスとも交戦経験のある人類トップクラスの戦士だ。
 先の攻撃、アレクサンダーが無効化しなければ……どうなっていた?
 ユーリ、紅薔薇の同時攻撃にも先ほど以上に完全に対処している。もはや攻撃を命中させること、ダメージを与える事すら困難だ。
「同時連続攻撃を全部回避できるはずが……!」
「いや、あれは……アクセルオーバーか?」
 何度も鳴り響く甲高い金属音とマテリアルの火花の中、二人はナイトハルトを分析する。
 青い炎のオーラと残像。何らかの構え……ケイオスチューン? それに、アクセルオーバー?
 本来あり得ない、複数のスキルが同時に使用されているような感覚。
 一振りの斬撃が空間に何度も瞬き、縦横無尽に切り裂いていく。
 その余波で森の木々は切り裂かれ、次々になぎ倒された。そして紅薔薇とユーリも、攻撃を剣で受けるのが困難になってくる。
 対峙が困難となった一瞬、ナイトハルトは短剣をまっすぐに投げ放った。
 狙いは後方でアレクサンダーの回復に当たっていたカナタだ。
 カナタは慌てて魔道猫盾を構えそれを受ける。弾かれてくるくると空を舞う剣、それを剣豪の腕が掴んだ。
『癒し手は厄介なのでな』
「な……ッ!?」
 移動距離、12スクエア。剣を追って閃光のように移動したナイトハルトは、次の瞬間長剣から炎を纏った薙ぎ払いを放った。
 カナタと神楽を同時に吹き飛ばすが、攻撃に耐えたアレクサンダーが盾を打ち付ける。
『オオオオオオオッ!!』
『フン……英霊の力とはこの程度か!?』
 その盾を受け流し、その場で回転するように連続で竜巻のような斬撃を放つと、アレクサンダーの鎧が砕けていく。
「クソッ、早すぎて庇いに入れねぇ……!」
 カナタを庇うつもりだったが、まさか回復中のカナタをかばうように前に立っていたことが裏目に出るとは思わなかった。
「これがオプションなしのガチの実力かよ……冗談じゃねぇぞ!」
 いや、仮にカナタとぴったり隣接していたとしても、ソフィアも先の薙ぎ払いに巻き込まれていただけだろう。
「テメエの相手はこっちだ!」
 雷撃剣トニトゥルスが光を帯び、膨大な雷撃のマテリアルを刃のように変質させる。
 雷の剣と化したエレクトリックショックを浴びせるが、ナイトハルトはそれを剣で切り払う。
 続けて反撃。だがソフィアはこれに腕を伸ばし、光の障壁を展開する。
 障壁は触れる者を弾き飛ばし動きを止める。弾ける光に押し返されるようにナイトハルトは背後へ滑ったが、同時にソフィアも袈裟に斬りつけられてしまう。
「ぐっ……一発でこれか」
 血を流しすぎて膝を着く。もう一撃は耐えられそうにない。
「まずいっす……このままだと、全滅っす!」
 カナタは先の一撃で気を失っている。庇おうとした神楽もかなりの深手で血が止まらない。
「アレクサンダー、アンタが吸収されたら終わりなんすよ! 怪我人担いでとっとと逃げろっす!」
 アレクサンダーがカナタを担いで走り出す。一方、ユーリは剣豪と刃を交える。
『確かに貴様は腕を上げたな。最早ただの小娘とは侮るまい。我が剣技を手向けと散れ!』
 剣豪の繰り出す左右の斬撃、それに続き、重ねた二対の刃を同時に振り下ろす。
『秘剣――アスラトゥーリ』
 斬撃を伴った衝撃波がユーリの身体を貫く。
 血まみれになりながら二度大地に身体を打ち付け、木に叩きつけられた。
「そん、な……。この、強さは……」
 ――違和感がある。
 いや、まさか。そんな筈はない。だが……同じなのか?
 ナイトハルトから感じるのは、奇しくもユーリと同じ。
 大切な仲間たちと共に歩むという事……つまり……。
(マテリアル……リンク……?)
 大地に剣を突き立て、立ち上がろうとする。だがユーリはそこで立ったまま意識を失った。
「限界か……クソッ、引くしかない……」
 口の中に溜まった血を吐き出し、ソフィアは銃を撃ちながらじりじりと後退する。
「オウカさん、ユーリさんの回収を!」
 オウカは頷き、気絶したユーリの元へ駆け寄る。
 そんなオウカの前に立ちはだかったのは紅薔薇だった。
 鞘へと納めた刃を手に、再び剣豪へ身を繰り出す。
 目にも止まらぬ速さで連続射出される居合の斬撃を、ナイトハルトは神速の剣で打ち払う。
 そして反撃の炎を纏った刃。だがこれを紅薔薇は鋭く切っ先で打ち払った。
 遅れ、紅薔薇の眼前で割れた炎と衝撃が左右に吹き荒れ、大地を抉った。
「刃に魔を宿したのは失敗じゃったな、ナイトハルト」
 わずかに光を帯びた祈りの剣を手に、紅薔薇の瞳孔がすっと開く。
『……ほう。魔が乱すマテリアルの波動を読み取り打ち払ったか』
「剣妃もそうじゃった……剣豪よ。死してなお未練に捕らわれたお主等は歪なのじゃ。お主等こそ、滅びが安らぎとなるのではないか?」
 再びの剣劇。激しい閃光と刃の鳴り響く音が、嵐のように空間に広がっていく。
 やがて互いの刃が激突すると、同時に二人は背後へと跳んだ。
『一時とは言え、ナイトハルトと互角か……。星が作り出す自浄装置……守護者という奴かの』
 顎に手をやり、暴食王はしきりに頷く。
『こうも騒いでは精霊も姿を隠すだろう。出直すか?』
 立ち上がり、馬の姿に変形するハヴァマール。その上に飛び乗り剣豪は刃を納める。
『貴様らでは我を止める事は出来ん。命が惜しくば二度と姿を見せぬ事だ。才ある、しかし儚き命。使い処は熟考を重ねよ』
 馬のように暴食王が嘶き、そして走り去っていく。
 その姿が暗闇に消えたのを確認し、紅薔薇は汗ばんだ掌から力を解いた。

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MVP一覧

  • 不破の剣聖
    紅薔薇ka4766

重体一覧

  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌスka0239
  • 大悪党
    神楽ka2032

参加者一覧

  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 猫の守り神
    カナタ・ハテナ(ka2130
    人間(蒼)|12才|女性|聖導士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 不破の剣聖
    紅薔薇(ka4766
    人間(紅)|14才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
オウカ・レンヴォルト(ka0301
人間(リアルブルー)|26才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/10/23 21:49:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/10/18 20:56:06