• 郷祭1017

【郷祭】だれもねてはならぬ

マスター:龍河流

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~16人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/11/04 19:00
完成日
2017/11/21 01:39

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ジェオルジというところでは、春と秋にお祭りがあります。
 いやいや、それより大事な会議がある?
 そんなこと、庶民にはどうでも良いのです。
 お祭りが大事。
 やっほーい、楽しみだーっ!

 なんて言っていられるのは、まあお客さんだけです。
 お祭りには、準備ってものが必要なのですよ。
 ここにも、お祭り合わせのお仕事のために、一生懸命働いている人達がいますよ。
 なんのお仕事か?
 えーと。

「いーそーげー!」

 ここは印刷工房です。
 魔導装置付きの印刷機械が、ごうんごうんと色々な物を刷っている最中です。
 なんだか量がたくさんありますね。

「うぅ、これ間に合わないよ~」
「弱音を吐く暇があったら、手を動かせ!」

 今のお仕事は、郷祭の催しのお知らせや案内図、同人誌という色んなご本、それと歪虚事件の注意や対策の小冊子、そういうのの印刷から製本まで。
 機械も人もすごい勢いで働いていますが、残ったお仕事はまだまだある様子です。
 今のままだと、ずーっと徹夜しても間に合わない感じ……

「こんにちはー。ハンターオフィスから、うわ、なにこれ」

 わーい、いけに……応援が来てくれましたよ。

リプレイ本文

●それも印刷しています
 とっても忙しい工房のお手伝い。
 そんなお仕事を受けて、ウキウキワクワクとスキップしながらやって来た星野 ハナ(ka5852)さんは、ただいまなぜだか最敬礼状態です。
「こ、こんなに刷ってるのに、薄い本じゃないなんて……」
 この姿勢、本当は失意体前屈と言うらしいです。ハナさんの背中が、そう語っています。
 ついでに、出来ることならしばらく動きたくないとも語っていました。
 でも、それは困ります。
「そうでしょうか? これなど、いわゆる薄い本だと思うのですが」
「……どう見ても薄いが、わざわざいわゆると断るのはどうしてだ?」
 これから箱詰めされるのを待っている印刷済みの本の山の一角を見て、エルバッハ・リオン(ka2434)さんが『これは好みと違うのか?』と首を傾げています。
 その隣では、ウルミラ(ka6896)さんも『いわゆるって何だ?』とものすごく不思議そうです。
 ここで、ハナさんとエルさんが言う『薄い本』の意味をウルミラさんに、残る二人のハンターさん、ロニ・カルディス(ka0551)さんと穂積 智里(ka6819)さんが教えてくれる……ことはありませんでした。
「印刷済みがこれだけ積みっぱなしとは、相当あちこちが回っていないな」
「やっぱり工程確認からですね。まずは責任者の方に、ご挨拶しなくては」
 ロニさんが、とにもかくにもと印刷された本に、埃除けの布を被せました。ちゃんと埃除けと書いてありましたし、掛けても大丈夫です。ウルミラさんもお手伝い。
 その間に、智里さんとエルさんが工房の偉い人を見付けて、引っ張ってきましたよ。
 そして、ハナさんも魚屋さんで売れ残ったお魚のような目で、ふらふらと皆さんの方にやって来たのでした。
 さあ、お仕事を始めましょう!

●休め! 働くぞ!
「このままじゃ、全員病院送りになっちゃいます!」
 ふーらふらしている人が多いのを見た智里さんが叫んだのと、それともエルさんが責任者さんの頭を抱えてぎゅうっとしたの、どっちが良かったのでしょうか。工房の皆さんは、すぐに集まってくれました。
 そして、半分の人が、椅子に座って寝ています。そういう寝方に、とっても慣れているみたい?
「ほぅらぁ、やっぱり三時間は寝ないと、効率が落ちるばっかりですぅ。どうにかしてぇ、交代で寝られるようにぃしましょうよぉ」
 陸に上がった人魚姫……が干からびちゃったような顔付きのハナさん、言うことはけっこうちゃんとしていました。
 ものすごく元気がなさそうですが、目はしっかり覚めているので、お話合いには参加しているのです。一日五時間は寝たい、お肌にも悪いとぶつぶつ呟いています?
 それを横の席で聞いたウルミラさんは、なるほどと感心していました。
 そう、元は龍騎士隊の一人として体を鍛えているウルミラさんと比べたら、工房の皆さんは普通の人。こんなに疲れていたら二時間睡眠では足りません。細かいところにも気を付けねばと、考えているのです。
 ウルミラさん、あまり話し好きではないので、一人で思っているだけなのですが。
 しかし、全員が交代で五時間眠る余裕はあるのでしょうか。
「最終日まで五時間確保は……少し厳しいかもしれませんが、今日明日はこの工程表でやりましょう。その後の予定は、明日の夜に見直して、必要があれば組み直しです」
 責任者のおばさまに残っているお仕事を白状させたエルさんが、智里さんと相談して、予定表を作ってくれました。
 まず、今寝ている人達は二時間ほど放置。五時間でないのは、その間にご飯を用意するからです。用意が出来たら、起こして食べさせて、ちょっと頑張ってもらいます。
 まだ働ける人達は、二時間頑張ってもらいます。それからご飯にして、休憩交代です。
 ロニさんがしっぶーいお顔なのは、工房の皆さんが椅子で寝るのにとっても慣れているから。会議スペースに毛布完備って、掛けてあげるしかありません。
 でも、そういう仕事の仕方は良くないと、お仕事が落ち着いたら責任者のおばさまに言おうと決意しているところでした。今言ったって、きっと忘れてしまいますからね。
 それと。
「その茶を飲み終えるまでは、立たなくていい。そこから指示してくれ」
 働き過ぎて壊れそうなのは、工房の人達だけではなさそうなので、印刷機械の調子を直すお手伝いを始めたのでした。
 ロニさんが変なところに挟まった紙を引っ張り出して、智里さんがギシギシいうところに油を差します。そこにウルミラさんが、印刷用の紙を運んできました。
 この間に、エルさんがハナさんを引き摺るようにして、大急ぎで買い物にお出掛けです。
 何を買う? そりゃあ、美味しいものと役に立つものに決まっています。
 食べ物で工房が汚れるといけないので、食料はエルさんが厳選します。飲み物と間食と、眠気覚ましのガムとミントスプレーは、ハナさんが買いに走り出しました。
「まだ動くな!」
 工房の皆さんは、ロニさんに怒られて、さっき智里さんが入れてくれた緑茶に蜂蜜をだばだば流し込んで飲んでいます。甘いものは、疲れに良いのですよね。
 なんで緑茶なのにと、訊いてはいけません。

●そして、三日目です
 一日五時間ほど寝るようにしたので、工房の皆さんはまあまあ元気になりました。
 ハンターの皆さんは、一日三時間しか寝ていないので、ちょっとお疲れです。
 代わりに印刷機がちょくちょく止まってしまいますが、印刷は夜中までで終わるはずです。製本機械は動いているから、修理しながらなんとかかんとか。
 けれども、今までにものすごく変になっていたお仕事の整理が出来たので、これからは無理をしなくてもお仕事は進むはず。
 はず、でした。

 ごつっ

 工房の中は、印刷機が動いているから騒がしいのです。
 が、その音はとっても響きました。なんでか分かりませんが、みぃんな振り返ってしまったのです。
 すると、ウルミラさんがしゃがみこんでいるのが見えました。どうしたのでしょう?
「ウルミラさん? あ~」
 近くにいた智里さんが様子を見に行って、とっても痛そうなお顔になりました。
 足の小指。角にぶつけると痛いですよね。見ただけでも、痛いのが移ってきそうです。
 あまりに痛さに声も出ないらしいウルミラさんの代わりに、智里さんから説明された皆さんも、皆で仲良く痛そうなお顔です。
 それからロニさんが、ウルミラさんが運んでいた本の包みを、代わりに運んであげようとやってきました。力仕事はロニさんとウルミラさんが頑張っていたのです。
 すると。
「すまない、混ざった」
「……これは」
 未だにウルミラさんが内容のわからない薄い本が、厚紙に包まれて、後は発送手続き担当のエルさんに渡されるだけだったのですが、あの歪虚対策小冊子の包みと混ざってしまいました。
 見た目はどちらも紙包み、大きさも似たような感じで、どっちがどっちか分かりません。
 運が悪いことに、薄い本の包みが五つ、小冊子の包みの山が崩れた中に紛れてしまったのです。
 見ただけでは区別がつかないので、ロニさんとウルミラさんは諦めて包みを開けてみることにしました。ちょっと時間は掛かりますが、違う本を依頼主に届けるわけにもいきません。
「ここの調整が済んだら、手伝いに行きますね~」
 智里さんも、印刷機のベルトを工房の人と一緒に締め直しながら、声を掛けてくれました。三人でやれば、五つくらい、きっとすぐに見付かりますとも!
「わ た し が」
 さあ頑張らねばと、痛い小指を庇いつつ、ウルスラさんが包みの山に手を掛けた時、後ろから低い声がしました。
 振り返ると、ハナさんです。声は全然違って聞こえましたが、ともかくハナさん。
「きみは、確か昼食を」
「そんなの、これの後でも間に合います! 薄い本を助けますよぉ!」
 皆さんのお昼を作っていたはずのハナさんが、目をランランと輝かせているのです。覚醒しちゃったのかと思うような感じに見えますけれど、そう言うわけでもないようで……
「お任せしてください」
 そして、なぜかスーッと近付いて来たエルさんが、『なにも聞くな』というお顔で、ウルスラさんに言いました。ロニさんは、何か悟るものがあったらしく、元のお仕事に戻っていきます。
「あの人、貴腐人なんじゃね?」
 工房のどなたかが何か言いましたが、ウルスラさんには意味が分かりません。
 貴婦人だと、透視でも出来るのでしょうか。謎です。
 まあ、お仕事が優先なのですよ。さあ、紙や出来た本を運んだり、包んだりいたしましょう。

 印刷機は、工房の人達と一緒に働きっぱなしです。
 その後に製本をしてくれる機械もありますが、なんといっても印刷機が一番の働きもの。工房の担当の人と一緒に、智里さんがよく動くようにと、お休みの時以外は付きっきりでお世話していました。
 なぜって、つまり働き過ぎで壊れる寸前だからです。これが止まったら、それはものすごい大変なことです。
 どのくらい大変かというと、
「これ発行後に倒れたり死んだ人が出たら……どんなにいい本でも、縁起が悪いって噂になって誰にも手に取って貰えなくなります!」
 智里さんがこんな心配をするくらい。
 でも、そんな時に限って、悪いことは起きるのです。

 ぷっ

 気の抜ける音がして、印刷機がおとまりになりました。時間は夜中の二時。
 その時に機械を動かしていた人の悲鳴が轟いて、工房の中で寝ていた人が皆さん飛び起きてきます。
 なんでお泊りしているのか? そんなの、通勤時間と体力がもったいないからです。帰るのも大変なほど疲れていた訳では……ありませんよ、たぶん。
「うーん、本格的に修理するとしたら、部品があっても……間に合いません」
 智里さんが機械に張り付いて、色々調べましたが、もういけません。疲れ果てた印刷機は、簡単には直らないのです。
 直らないけれど、印刷は出来なくもありません。印刷するところは壊れていなくて、紙をあっちからとりこんで、こっちに出す動きをする部分がぷちっと逝ってしまっただけだからです。
「人力で、ここの歯車を回せば……動かせなくもないのですが」
「よし、やろう。あと百枚だろう? 機械で一時間なら、人力でもなんとかなる」
 本当になんとかなるのか分かりませんが、様子を見ていたロニさんが、当たり前のように言いました。
 機械が印刷できないなら、もうどうにもしようはありませんが、印刷できるなら動かせばよいのです。ロニさんは、力仕事には結構自信がありました。
 よしと、ロニさんが腕まくりして、智里さんが紙送りの準備をし始めたところで、やっぱり起きて来ていたエルさんが、他の人達に言いました。
「こういう事態なので、製本が遅れます。朝一番の作業を配送の手続きに振り替えて、その後に製本をしましょう。という訳で、はい、作業しない人は寝る!」
 時間になったら、嫌でも叩き起こして差し上げますと、声も高らかに言い放った女王様もといエルさんや、慌てて跳ね起きた智里さんの頭に寝癖があったのは、見なかったことにするのがいいでしょう。
 二時間後、高らかにアラームを鳴らしたハナさんのサポートロボットのおかげで、皆さん、びっくりして目が覚めたのでした。
 この時には、機械を動かすのはウルミラさんが交代して、紙差しはエルさんがやっていました。次は工房の人達が頑張ってくれます。
 残りは四十枚。でも、機械がいよいよ危なそう?
「ここで動かなくなったら、最終手段です」
 バールのような物を片手に、智里さんが『斜め上から、こう』とかなんとか呟いているのが聞こえたのか、機械はのろのろだけど、なんとか頑張っています。
「はい、一寝入りしてらっしゃい」
 機械の隣に座り込んでいた智里さん、エルさんに毛布包みにされてしまいました。
「さぁて、今日の夕方がリミットですぅ。発送、次々片付けますよぉ」
 朝ご飯は、目が覚めるようにめっちゃ濃いミントのハーブティー淹れました。うっかりエプロンにも零しちゃった、とすがすがしいを通り越して、目が痛くなりそうな香りを振りまいたハナさんが、起きた人達を順々に食事場所に追いやります。
 可愛いエプロンのポケットに、なぜだか製本がずれてしまった除けてあった薄い本を押し込んでありますが、何かに役立つのでしょうか。昨日から、ハナさんはなんだか元気です。
 そして食事場所では、食べ物片手に作業場所に向かおうとする人を、ロニさんがせっせと止めていました。うっかりお茶を零したら、大変な事になるのです。
「その足取りで作業に戻るな。そこで三十分寝てからにしろ」
 時々、足元が危ない人を捕まえて、椅子に押し込んだりもしていました。
 その後、自分もご飯を食べ始めましたが、ミントティーで盛大にむせています。
 あとからやって来たエルさんは、そんなミントティーを顔色一つ変えずに飲み干し、ウルミラさんは当たり前のようにお湯で薄めて飲んでいきました。
 もちろんご飯もしっかり食べます。
 工房からは、『あとさんじゅーまーい』と声が聞こえてきます。
 頑張れ、もう少し。それはみんなの合言葉。

●戦い済んで?
 日暮れ前、最後の『歪虚対策小冊子』を郷祭会場まで届けてもらうように運送業者さんにお願いして、皆でお見送りをしました。
「ええと、壊れた部品の手配と修理の人を……」
 どこが壊れているのか、書いておけば便利と呪文のように呟きながら、智里さんがよろよろと工房の中を歩いていきます。
 機械にぶつかって、そのまま抱き付いていますが、大丈夫でしょうか。
「昔々、あるところに」
 そうかと思えばウルスラさんが、その場に座り込んで、突然昔話を始めています。工房の梁の辺りに、何か見えているらしいですが、もちろん誰もいやしません。よく見ると、瞼が変な風にぴくぴくしています。
「ひゃー、塗り過ぎた! 本が、本が読めないぃ」
 ハナさんは、すごく眠そうだったのに、どうしても本を読みたかったらしくて、ミントスプレーの中身を目の下に塗っていました。塗り過ぎて、泣いてます。
 他は、まあ……死屍累々ってこういう感じ?
「あぁ、肩が痛いな」
「もう一仕事、大丈夫ですか?」
 ペース配分というものをひたすらに心に留めていたエルさん、ちゃんと動いている数少ない同士のロニさんに、智里さんを指しました。ロニさんも、うんと頷いて、気絶している智里さんを抱えて運んでいきました。
「そうして二人は、暗い森から帰ってこなかったのです」
 エルさんは、なにやら終わり方が暗いお話をあっという間に語り終えたウルミラさんの背中を押して、やっぱり休憩場所に誘導します。
「私も、これが終わったら、目が覚めるまで寝るの」
 眠くて、ついエルさんが口にした言葉に、誰も反対などしませんでした。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 焔は絶えず
    ウルミラ(ka6896
    ドラグーン|22才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
エルバッハ・リオン(ka2434
エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/11/04 10:04:20
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/04 12:49:37