• 東幕

【東幕】知追う者、南に向かう街道で

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/01/17 12:00
完成日
2018/01/24 20:59

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●つやつや
 天ノ都の雰囲気は大変よろしくなかった。庶民に直接響くわけでなくとも、中央の雰囲気と言うのは漏れるのが常。噂話は広まり、憶測だけが飛び交う。
 正月をたっぷりと自宅で過ごしていた大江 紅葉には「里に戻る準備をもっと早くしたい」ということが多く寄せられた。
「正直言って勝手に住み着くならいいよという適当さで戻っているに過ぎないのです」
 紅葉はペットのウサギの卯佐美の頭を撫でて言う。
「長は武家……それがメーンに立っている状況で、どうあがいても私ができることは少ないのです」
 卯佐美の前足の下に手を入れぶらーんと持ち上げる。
「なお、うちの一門としては、変な武家が上に立った瞬間、反旗を翻す気はしますねぇ」
 たいてい仲良くしてきているが、爺やたちの話を聞くとどうもその気があるらしい。
「そもそも、御先祖様、武家ぽくありませんでした?」
 以前ライブラリを通して出会った大江 匡平は知識欲は旺盛だが舞刀士であった。公家だろうが武器は持つが、雰囲気的に匡平は武家の印象だ。伝わっている話によると、武芸を良くしていたとはある。
「公家として出仕していますけれど、叔父や従兄弟って……武術していましたね」
 妖怪との交戦状態で武器を手にしないこともあり得ないだろう。妹の若葉も符術より武力の方が重要と考えていた。
「ひょっとして……公家ぽいけど武家!?」
 実は適当な家だと気づいた瞬間だった。
「まあいいですけれど……私が符術師なのには変わりないですし、こだわったところで面白いことないですし」
 卯佐美を床の上に置きひっくり返す。
 独り言も終えたころ、陰陽寮に向かった。建物に使付くにつれてなんとなく重苦しい雰囲気が漂う。
 陰陽寮に入ると、人が少ない。
「師匠、明けましておめでとうございます」
「おう、おめでとう」
 紅葉の師匠かつ上司の吉備 灯世がじっと見ているのに気づく。
「お前、太ったな。色艶いいし」
「セクハラです!」
「反応早い上……」
「師匠は中年太りにはお気を付けください」
「ぐっ」
 痛み分けで終了した。
「ところで、これ読んでおけ」
 紅葉は資料を渡され、目を通し眉を顰める。
「見て来い。武家が動けん状態であり、こっちも動けない」
「師匠……私、行ってはいけない気がします」
 占いのセンスはないと思っている紅葉だが、直感は信じるたちだ。都を離れたくないと感じている。
「俺もいるし、松永殿もいる」
「……」
「その地域に住む人はお前が行くことに安心を得るだろう。里を作り直すのに、結局、お前が動かないとならないんだから」
「師匠……武家じゃないと……」
「手柄立てればいいんだよ、結局は! 松永殿がいるって言っているじゃないか。あいつは武家だし、上司も武家。恩は売るに限る。それに、都にいる方が安全だろ? お前さんのところの家令に闇討ちされそうだし、あまりひどいところに行かせると」
「そんな。爺やは優しいから師匠に怒ったりしませんよ」
 紅葉はニコニコ言う。
「い、いや……本当、お前知らないんだな……お前来て間もないころ、いじめてきた奴いるだろう? あいつらがおとなしくなったの、上のとりなし以前に、お前の家の人間が討ち入りしようとしたからだよ」
「……うふふ、何ですか、その話。師匠、勝手に話を作らないでくださいよ」
 紅葉はにこにこと立ち去った、協力してくれるハンターを募るために。

●束の間
 街に出て見回りの武家の集団に会う。
「お……紅葉殿」
「あ、光頼殿」
 松永 光頼と部下の四人と出会い、紅葉も挨拶をする。
「どこか出かけるんですか」
「顔に書いてあります?」
「ええ、まあ」
「ちょっと、里近辺の道を見に行きます。あそこ、南方からのルートがあるようですし。そうなると、何か発生してもおかしくない状況と思います」
 街道としてはメーンではないとはいえ、もしそこを妖怪が通れば、里の復興であれこれしている里人と周囲の里の人に影響が出かねない。最終的には都にも影響は出る。
「御供したいですが」
「いえいえ。私が離れるのはちょっと不安と言ったら、うちのことは師匠と光頼殿が見てくれるから心配するなって言われました」
「そうですか。では、紅葉殿が帰る場所は守りましょう」
「はい、お願いします」
 二人はニコニコする。
 光頼の部下たちは後ろを見てにやにやしている。
「皆さんもお気をつけて。あ、これ、たくさんあるので飲んでください」
 炭酸飲料を人数分手渡した。
「珍しい物を……ありがとうございます」
 部下たちも口々に礼を述べる。
「では」
 紅葉が頭を下げて立ち去った。
 光頼はその背を見送る。
「で、松永様はいつ大江様と結婚するんです」
 部下の一人がぶっちゃけた。
「はっ!?」
 光頼が素っ頓狂な声をあげた。相当珍しいことで、部下たちの表情が変わる。
「ひょっとして、本人たちだけですか知らないんですかね?」
「松永様、長男ですよね……跡取りですよね、もめますね」
 部下たち口々に的確なことを言う。上司たちの話から妙な方向に進んでいるらしい噂話は。
 光頼からすれば距離が縮まっているのか不明だ。そもそも、互いの気持ちと言うのが謎である。
「松永様が公家に入って、次男の頼寧さまが松永家の跡取りになるんですかね」
「……」
 的を外していない言い方だ。紅葉は陰陽寮で下っ端と言い張っているが、公家の一員であり、人数的には消えかかっている大江家の宗家の長であるのだから。

●見えるものは
 里の近くでは雑魔が出現するようになっているというのは前回ハンターからの情報で得ている。
 里人は陸地側にある拠点の回りには防御用の柵の建設をしていた。それを見て回り、紅葉はハンターとともに南下する。
 かつての砦の先に向かう。その先は時間を考えると足を踏み入れていないため、何があるのかよくはわかっていない。
「荒涼とした大地というのは分かっています」
 遠くに山が見える。谷があり南方に続いている道があるのだろう、険しいかもしれないが。
 今彼女がいる所とその間の荒野には妙な静けさが漂う。動くものはある、遠くに雑魔の群だ。
「……皆さん……」
 紅葉の声が固い。雑魔が群れているのは嫌なもであり、それだけで済むとは限らない。
「あの灌木の回りは要注意ですね。あとは……あの木の当たりです」
 それらと接敵するのは時間の問題であり、止めないと敵は押し寄せ民を傷つけ殺す。
「調べるすべはありません……でも、何かいる気もします……」
 ハンターはうなずき、用心する旨を告げ、戦闘の準備をしたのだった。

リプレイ本文

●道の先に
 大江家が住んでいた里があるところから南へ道なき道を進むと荒野の先に妖怪の姿があった。ハンターたちは大江 紅葉(kz0163)が指摘した高木と灌木あたりに注意をしつつも、先に見える敵の数を減らすほうを意識した。
 高木と灌木に関しては、どちらも大きかったり、元々の茂り方は立派だったに違いないと想像できる。現在は枯れ木であることが油断につながるかもしれない。
 ルベーノ・バルバライン(ka6752)は紅葉の状況を見て助言を出す。
「【加護符】は前に飛び出す奴とお前自身に掛けろ。大江家の惣領お前が倒されては里が復興しても何にもならん」
 紅葉はうなずき、符を取り出した。ハンターたちはここまでにおおよその行動を決めていたため、紅葉がもたもたしている間に敵を討つために行動を速めた。
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は移動に使っていた馬から下りる。
「やれやれ……歪虚ってのはいつでもどこでも湧き出てくるな。慎重なのも重要だけど、接敵を遅らせる為に全力で行かせてもらう」
 アルトは覚醒状態になると一気に駆け抜ける。
 星野 ハナ(ka5852)はアルトに続くように馬を走らせていた。
「あははは、ここを抜かせませんよぅ! 歪虚は全ブッコロですぅ!」
 怖いことを言い、馬を走らせた。
 メイム(ka2290)はモフロウのきらりを飛ばし【ファミリアズアイズ】を使おうとしたが、途中で手を止めた。
「どれだけいるのかな……ってみんな、動くが早すぎる! ルベーノさん、くれはさんのことよろしくね」
 メイムは紅葉の側にいるルベーノに声をかけてから馬を走らせた。
 ハンス・ラインフェルト(ka6750)は灌木の方に馬を向ける。
「紅葉さんがそうおっしゃるなら、灌木周りを先に確認してきましょう。全員で不意打ちされることもないでしょう?」
 ここからは見えないが、小さくて隠れている可能性は否定できない。
 杢(ka6890)はソリに乗って遠くを見る。
「おら妖怪好きだんず、けんど悪り童はまいねだんずよ」
 こくこくとうなずきながら、弓と矢を手にする。
「リアルブルーの言葉の妖怪ですよね、杢さんが好きなのは? 私たちは妖怪と言っていますが、憤怒の歪虚のことですよ?」
 紅葉が首をかしげて告げると杢は「えっ」と悲しい顔になったが、理解してうなずいた。
 シガレット=ウナギパイ(ka2884)は高木の方に向かって馬を向ける。
「戦線が広がって微妙にやりづらい嫌な予感がするんだよな」
 多くいる雑魔を止める為に前に出ざるを得ない状況である。その上、隠れるもしくは遮蔽物として使えるものが点在している。

●差はある
 アルトはスライム状態の雑魔たちの位置を把握すると西に足を向ける。
「まずはどの程度の相手か見てみるか……雑魔だろうけれど違ったら問題だ」
 アルトの持つ刀は全長180センチあり、振う彼女より大きな刃を軽々と扱う。移動に用いていたため、攻撃にスキルを用いてはいなかったが、それでも逃げられなかった雑魔は触れた瞬間霧散した。
「数が多いことも力だからな」
 用心は怠らない。スライム状のそれらが酸攻撃してきた場合、武具に影響が出ないとは限らない。
 ハナとメイムはアルトの接敵を見て、どこに向かうか自然と位置が決める。
「ハナさん! あたしは【ソウルトーチ】で東から中央に向かうよ!」
「分かりましたぁ。【五色光符陣】で一気にやるですぅ」
 ハナは場所を固定後に符をリロードして術を撃ち続けるつもりだ。敵が誘導できるならばこれほど効率的なことはない。
 ハナは中央の当たりに陣取るが、敵の歩みは遅かった。
「おっそいですぅ!」
 あまり先に進むと、後方に戻るのに時間がかかるため、これ以上進むのは避けたかった。
 メイムは東側の雑魔たちをうまい具合に引き付けられたようで、じわじわとやってくる。素早く移動するとそれらを放置してくる可能性もあるため、スピードは遅い。
「誘導できるけど、アルトさんが片づけそう……それはそれでいいのかも」
 メイムの視界の中でアルトが西側から中央にいる雑魔たちを討伐していっている。運よく逃れるものがあっても次はなかった。
 アルトは敵を葬り「少し体がなまっているとは思ったが、これでは肩慣らしにはならないか」とつぶやく。北を見ると、骨がある敵と戦っているのが見える。
「かといってここを放置はできない……反撃してくるか、こいつら」
 それらは攻撃は届かないと読んだのか、すれ違いざまに酸を吐いてきている。装備を調えているアルトたちにとって多少ならば脅威にならない。
 中央に集まった敵に対して、ハナの符が舞い散る。
「全ブッコロです」
「抜ける奴がいるんだよねー」
 メイムは取りこぼしを確実に葬るために武器は構えて力いっぱい振った。手ごたえはあまりよくなかった。

 シガレットは不意打ちを用心しつつ高木の横を通った。【ディヴァインウィル】を効果的に放つならば、敵を見つけることは必要だ。
 高木の幹には隠れられるかもしれない。注視しながら、ハンターたちの中ほどの位置に立とうとした。
 シガレットは用心をしていたため、風を感じたときとっさに回避行動をとれた。しかし、腕に鋭い痛みを感じた。
 高木には一本歯の下駄をはき山伏のような恰好の、赤い顔に天に伸びる鼻が特徴の妖怪がいた。
「クク……行かせてもらうことにするよ」
 それは言葉を発し、悠然と背の羽を使い北に向かい始めた。
「行かせるわけねぇーだろ!」
 シガレットは追い、魔法を放とうとした。それより早くテングが八つ手の扇を仰ぐように魔法を放つ。シガレットはそれを回避後、【ブルガトリオ】を放った。テングは鼻で笑い、紅葉たちがいる方向に飛んでいく。
「っ! おい」
 シガレットはルベーノたちに注意を促すため声をあげた。

 ハンスは枯れた灌木に近づく。枯れ木で隠れる所はないようだで、ハンスの目には何もいないと映る。
 パキリ。
 自分で踏んだ枝の音にハッとなった。その直後、何かによる不意打ちを受ける。反射的に回避したおかげで、一部は避けられたようだった。
「ちっ!」
 ハンスの前には前足が鎌になっている三匹のイタチがいた。
「小さいですねぇ」
 姿を現したイタチににんまりと笑う。
「まあ、まとめて狙ってしまえばいいですね」
 イタチたちはフォーメーションを調え、一匹だけが攻撃をしてくる。
「誘われていますか……とはいえ、攻撃をしないとはじまりませんよね」
 構えを調えたときに、一匹が突撃をかけてきたのだった。それをはじき飛ばすと【次元斬】を放った。

 紅葉は口を結び、符を握る。雑魔は問題はなさそうだが、テングの方がこちらに来るのは確実だった。
「前に出るようなことはしないと思うが。……状況を見て指示を出す必要があるなら出さないとならない。惣領である以上、お前自身が家臣団を引き連れて戦わねばならない時は切っとき売る。その時の予行演習だ、どっしりと構えていろ」
 ルベーノは一番厄介なテングを視界から外さず、紅葉に告げる。
「分かっています……が」
 本来なら巫子であり、浄化などで動くことはあっても戦は多いわけではない。ただ、現在の状況は不穏すぎる。ルベーノの言葉は紅葉にとって重要な助言であるとともに外れてほしい予感であった。
「お、おお! 妖怪らしい妖怪だんずよ! あれはなんという妖怪だんず?」
 杢は感激のあまり震えつつ、のんびりとした子供らしい声をあげた。
「テングですね。あっちは……小さくて見えづらいですが……かまいたちでしょうか?」
「おー」
 紅葉の解説に杢が大きな目をもっと大きくし、キラキラさせる。
「妖怪白饅頭みたいにええ子だったらええんだんずね……。はっ!? 倒したら仲間にできるだんず?」
 紅葉は杢の可愛らしい発想に微笑んだ。白饅頭が何かわからないが、きっと可愛らしいのだろうと想像して。
「倒した時点で消えますので、歪虚なので」
「そうだんず。はっ……倒すだんず。けっぱるだんずよ」
「はい、けっぱってくださいね。私もけっぱります」
 杢はソリを動かし、かまいたちかテングを狙いやすい位置に移動していった。
「緊張はほぐれた感じだな」
 ルベーノは苦笑したが、目の前の状況は変わらない。
 テングはこちらに向かってくる。

●戦況
 アルトはテングに向かって走り出す。
「この集団の中で一番できる奴だろう。それに、ハナさんに任せれば問題ない……それにあいつが一番ここを抜ける可能性が高い」
 実際、ハナが符を放ち【五色光符陣】を使うと残っていた雑魔がほぼ片付いている。
「逃れるなんてとはいい度胸ですぅ」
「とはいってもこれで終わるかな」
 メイムがハンマーをやはり振るうが当たり方はかんばしくない。
「適材適所。ハナさん、ここを任せていいよね」
「問題ないですぅ。あっちの方が大変そうですから、ここは任されますぅ」
 メイムはかまいたちの方に向けて移動した。
「戦場が広がりすぎ」
 メイムはキュと唇を結んだ。

 シガレットが追いつく直前、テングは魔法を放つ。
 それを中心に風が動き、一瞬竜巻のような物となった。
 ルベーノが【金剛不壊】を用いて紅葉の前に出ているが、盾になっても彼の後ろも巻き込まれる。範囲を考えると、紅葉を移動させるしかない。
「これで止める!」
「この程度で我を足止めできると思うな!」
 シガレットの魔法が再び回避されるが、その先にはルベーノがいる。
「下がれ」
「はいっ」
 ルベーノに指摘される間もなく紅葉は離れる。離れるが符を放つ距離を保ちたかった。
「テングだろうが何だろうが、先に行けると思うな」
 ルベーノは歪虚に対して、拳を固め立ちふさがる。

 かまいたちの攻撃に、ハンスは苦戦していた。相手は小さいが当てられると痛い。その上、当てにくい。
「回復していますよねぇ」
 まずは回復を担当している物を倒してしまいたいが、【次元斬】で逃げられる。
「すべてではないのですよね……一匹でも倒せば体制は崩れますね」
 それぞれ得意なことがあるらしく、連携をとっているのだから。
 ハンスの助っ人として杢が入る。【威嚇射撃】の矢がかまいたちに叩き込まれた。
「まんず、こっちを足止めだんず。悪いもふもふは倒だんず」
「モクさーん、あっちをお願いー」
 メイムの叫び声がする。杢はテングの方を見て「分かっただんず」と答え向きを変えた。行ったり来たりするが、射撃できる分攻撃の幅があり臨機応変な行動が可能だ。その代わりにメイムがかまいたちへの攻撃に加わる。
 一方、ハナは雑魔の数を見て魔法を選んだ。一体二体ならば、符を控えても構わないだろう。
「【火炎符】」
 雑魔にはあっさり当たる。
「あっちのためにもこっちは完全にブッコロですぅ。かまいたちやテングなら、鎌とうちわくらい落としてほしいのですぅ」
 雑魔の攻撃は回避し、再び符を放つ。雑魔が見えないことを確認後、北の方に馬を向けた。

 アルトはテングの攻撃の範囲を見て、厄介だと感じる。テングが紅葉の方に行くことは避けなくてはならない。一般人が巻き込まれる最後の位置が底であるのだ。アルトは【紅糸】を用いて後方から攻撃をし、近接後刃を振った。
「飛んでないで降りて来い」
 刃は届く位置であるが、狙いにくいことは事実。
「人間後時に何を言うか」
 テングがせせら笑ったとき、闇の刃が三本現れ、貫かれ地面に落ちる。まるで縫い留められているような状況だ。
「と言うわけで、こちらの領域に来てもらったわけだ」
「ありがたく手合わせさせてもらうぜ」
 シガレットの【ブルガトリオ】が叩き込まれたテングは動けなかった。ルベーノが紅葉とテングの間を保ちつつ、【青龍飛咬波】を放つ。回避できないでテングはそれを受ける。
「やるときはやるのです! 【五色光符陣】」
 紅葉がぎりぎりの距離から、符を放った。
「ちっ……」
 テングは魔法も効果から抜け、羽を広げようとした。ワンテンポ遅く、杢の矢が叩き込まれる。
「逃がさねだんずよ」
 この瞬間、アルト、シガレットそしてルベーノの技が叩き込まれる。
「ちっ……まさか人間ご……」
 天狗は霧散した。

 一方、かまいたちの方は一体を倒すと徐々に追い込めて行けた。まず倒れたのは攻撃に対してリアクションをとるタイプだった。
「あとは二体だね」
 メイムはハンマーを構え敵を狙う。
「意外としぶといですねぇ」
「回復するから仕方がないよ」
 ハンスは何度か攻撃を食らっており、傷はあるが、まだ問題はない。攻撃をしてくるのが一体なため、あと少しで追い込めるだろう。
 回避されたり、回復されるのは厄介だ。
 地道に当てるしかないが――。
「まだ符は残っているのですぅ! 【五色光符陣】」
 ハナが攻撃に加わった。かまいたちは怒って「しゃー」と威嚇して攻撃しているが、焼け石に水。霧消するまで大した時間はかからなかった。

●気になること
 紅葉は周囲を見渡した。双眼鏡を取り出すと、南の方を見る。
「無事でしたか、紅葉さん、皆さんも」
「はい、この程度ならば……」
 ハンスの問いかけに紅葉はうなずいたが、さすがに疲労の色は濃かった。
 シガレットは念のため、お守りを用いて【ドリームパレード】を使う。
「ここを抜かれてはいないよな」
 シガレットは確認をとると、仲間は首肯する。
「ささ、浄化するなら手伝いますよー」
 ハナが紅葉の指示を待つが、当の依頼主はきょとんとする。
「念のためならば、その高木と灌木あたりでしょうか? 姿形が整っているあれらはそれなりの力を持っていたとは思いますので」
「ここに砦を再建出来たらぁ、里の復興はもっと進むでしょうか? 楽しみですよねぇ紅葉さん」
 紅葉はハナの問いかけに微笑み「そうですね」と告げた。
「考え事?」
 メイムは紅葉が会話をしていてもどこか何か違うところを見ていると気づいた。
「いろいろあるもんね」
「上に立つ者となれば考えることもあるだろう……手伝えることはする」
 ルベーノの言葉に紅葉は「ありがとうございます」と答える。
「一旦戻りましょう。そして、安全の確保をしないとなりません」
「見てきた方がいいなら見てくるよ?」
 アルトが問いかけると紅葉は首を横に振る。
「無理に行くことはありません。装備も必要になるかもしれませんよ?」
「そうだね。どこに続いているのかな?」
 地図からの推測を紅葉は告げた。南の方に抜けることは可能なはずだ。
「考えるだけでんも、疲れるとよくないだんず。座って、ご飯を食べるとよいだんずよ」
 杢が良き助言をしたと年相応の得意げな顔で言うと、紅葉がにっこりと笑って「そうですね」と答えた。
 そして、里人たちが待つところに戻った。

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  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニka3109
  • 変わらぬ変わり者
    ハンス・ラインフェルトka6750
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバラインka6752

重体一覧

参加者一覧

  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 変わらぬ変わり者
    ハンス・ラインフェルト(ka6750
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • いけ!ぷにっ子スナイパー
    杢(ka6890
    ドラグーン|6才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【質問卓】
メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2018/01/14 14:40:20
アイコン 相談卓
メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2018/01/16 11:39:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/01/16 01:08:47