タングラムの休日

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/19 07:30
完成日
2014/06/22 03:26

みんなの思い出

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オープニング

●どこいくの?
 帝国ユニオンAPV。そこはクリムゾンウェスト各地から集められたヘンテコなガラクタが山を成す混沌とした世界だ。
 ただでさえ混沌とした内装なのだが、先の大規模転移後にやってきた新人ハンター達が更にカオスを増長させいる。
 やれ、その辺で寝出すやつ。やれ、その辺に落ちてるもん食い出すやつ。握手会が始まった時は流石に焦ったタングラム(kz0016)だが、今となってはいい思い出だ。
 ユニオンリーダーとしてこのAPVに居着いてから五年と少し。これほどまでに一気にハンターが増えるのは初めての事だったが、彼らの旅立ちは間違いなくこの世界に良い影響を齎す筈。
「ふいー、こんなもんですかねぇ。フクカンの奴、ちゃんと仕事をしてくると良いのですが……まあ、ここの連中のノリの良さは天下一品ですから、物好きが手伝ってくれる事でしょう」
 ユニオン内の掲示板に張り紙をくっつけると、一仕事終えた様子でユニオン内を振り返る。そこには今日も賑やかなハンター達の姿があった。
「依頼の斡旋も再開されて、いよいよ彼らも実戦ですか……」
 ハンターは、覚醒者は歪虚と戦う為の貴重な戦力だ。彼らは望む望まざるを関係なく、この世界を歪虚から救う希望を背負っている。
 今、彼らには無限の可能性がある。帝国を変え、そしてこの世界を変えていくだけの未来を秘めている。だからこそユニオンリーダーとして彼らを支え、一流の戦士に仕立て上げねばならないのだが……。
「……二律背反、ですね」
 武器を手に戦えば必ず危険を引き寄せてしまう。折角APVに足を運んでくれた彼らが傷つく事になるかもしれない。それが仮面のエルフにとっては心苦しかった。
 小さな溜息を一つ、頭を振って歩き出す。ハンター達に背を向け、裏口からこっそりと建屋を後にするつもりだった。
 可愛い小物や酒瓶が詰め込んである鞄を肩にかけ、ベルトに剣を差す。その辺に転がっていたものだが、まあ使えない事はないだろう。得物を吟味するタングラム、そこへ一人のハンターが声をかけた。
「えっ? ああ、これですか? これからちょっと出てくるので、少し借りていくだけですね」
 質問に答えるタングラム。ハンターは更に声をかける。
「どこへ行くって……いや、仕事をサボってるわけではないのですね! 失敬な! 今日は休日なので、個人的な用で出かけるだけなのですよ!」
 いつも通り大げさなツッコミを入れ、それから首を傾げる。
「え? ヒマだからついてくる? いや、私のやってる事なんて面白くもなんともないのですよ。それよりフクカンを助けてやってほしいのですが……」
 しかしハンターが引き下がらないとタングラムも考えを変えたらしい。腕を組み、神妙な面持ちで頷いた。
「仕方ないですね、まったく。せっかくですからその辺でヒマそうにしてる奴も声をかけて一緒に行ってみるですか。確かに丁度いいと言えば丁度良かったのです」
 再びハンターは問う。どこへいくのか、と。タングラムは悪戯っぽく笑った後、「ひみつ」と唇に手を当てた。

●誰の為でもなく
 転移装置を利用してやってきたのは帝国領にあるとある田舎町であった。辿り着くだけで半日を費やしてしまったので、帰る頃にはすっかり深夜だろう。
 ここに至るまでタングラムはどこを目指しているのか教えてくれなかった。そんな疑問を浮かべたままのハンター達の前に現れたのは、既に放棄されてかなりの年数が経過しているであろう、とある研究施設であった。
 森の木々から頭を覗かせている廃墟を指さし、タングラムは振り返る。
「これからあそこに向かうですね。あれは随分と前に人がいなくなった錬魔院の支部なのです。付近には環境汚染の影響で、定期的に雑魔が出現するのですね」
 ハンター達の顔を一人一人眺め、少女は頷く。
「私と一緒にその雑魔を倒して欲しいのですね。それと帰りはかなり遅くなるでしょうから、付近の森で野宿するですよ。心配せずとも私がよく使っている場所があるので、安全に寝泊り出来るですね」
 帰る頃には深夜と言ったな。あれは嘘だ。
 まさか休日だというタングラムになんとなくついてきたらこんな事になるなんて。各々違った表情を浮かべるハンター達より先にタングラムは森へ歩き出した。
「ま、戦いの基礎訓練だと思って気楽に行くですね。危なくなったら助けてあげるですが、出来るだけ自分の力で乗り切るのですよ? ちゃんとお仕事が出来たら、私が報酬を支払ってあげるですからね!」
 置いて行かれても困るので追いかけるハンター達だが、その脳裏には疑問が過っていた。
 そもそもどうしてタングラムはこんな所に来たのだろう? そして誰に頼まれたわけでもなく、雑魔を倒そうという理由は?
 木々の陰で揺れる小さな背中は、いつもより少しだけミステリアスに見えた。

リプレイ本文

「未知の場所、襲い来る雑魔、集う仲間、そして報酬という名の宝物……これはもう、ザ・冒険と見なしてオッケーですよね!」
 薄気味悪い森の中を楽しそうに進むマーヤ・クランツ(ka1132)。文月 弥勒(ka0300)は研究所を遠巻きに眺める。
「あの建物の中に眠ってるお宝が目的、とかじゃないんだな」
「使えそうな物はとっくに持ち出されてるですよ」
「それは残念ですけど、まあ冒険出来るだけでもよしとします!」
 タングラムの返答に笑うマーヤ。謎の突発依頼に対する反応はそれぞれで、ブリス・レインフォード(ka0445)は遠い目で歩いている。
「なんか、ついてったら……変な事になった……」
「APVでタングラムは得物を吟味していた。戦闘はあると分かっていたがな」
「まあ、最近動けてなかったし? 久々に大暴れするのもいいよねっ!」
 静かに頷く飛竜(ka0918)。七星・絵里(ka0730)は体の良いストレス解消だと割り切っているようだ。
「しかし、ここの雑魔は錬魔院の影響なのではないか?」
「その通り。昔ここで事故があったのですよ。それから雑魔が沸くようになってしまったのです」
「……魔法公害か。過剰に軍事に偏った政策による弊害の一つ。誇りと理想を謳った華々しい世界の裏側ってわけだ」
 ザレム・アズール(ka0878)の質問の答えにウィンス・デイランダール(ka0039)は肩を竦める。
「そういえば、毒を持ってる奴もいるんだよねー?」
「さほど強力な毒を使う奴はいないので、覚醒者なら時間経過で回復するですがね。危なそうなら助けてあげるですよ」
「それなら安心かなー……って、おぉっ? タングラムがいない?」
 質問しながら振り返ったニーナ・アンフィスバエナ(ka1682)の声に全員が足を止めた。つい先ほどまで後ろに居た筈のタングラムの姿がないのだ。
「心配せずともちゃんと見守ってるですよ。傍にずっといると皆の為にならないですからね。なーっはっは!」
「なんの気配もなく姿を消すとは……」
「あの野郎……上等じゃねーか!」
 興味深そうな飛竜の隣でウィンスは森に響く声を指さして言う。ザレムは少し思案した後、納得したように頷いた。
「タングラムにも何か考えがあるんだ。今はとりあえずやるべき事をやってしまおう」
 こうしてハンター達は何の為にかもわからぬまま、雑魔退治を始めるのであった。

 森の中、研究所を目指して進む一行。その前に四体のスライムが出現した。
「研究所までまだ距離があるのに、もうこんなに出るんですか!」
 マーヤはロッドを構えながら苦笑する。どうやら先は長そうだ。
「皆、あんまり出過ぎるなよ。集中攻撃で一匹ずつ撃破すれば反撃を受けずに済む」
「わかってる……。皆と離れないようにする。姉様達に、心配かけたくないから……」
 ザレムの呼びかけに頷くブリス。ザレムは瞳を紅く輝かせ、タクトにマテリアルを収束させる。
「引き付けて遠距離攻撃で削るぞ!」
「うん……敵の頭、押さえる……!」
 ザレムは機導砲、ブリスはマジックアローでそれぞれ別のスライムを攻撃する。スライムを貫く光を追うようにウィンスとニーナが駆け寄り、それぞれスライムへ止めを刺した。
「成程な。反撃される前に接近と同時に倒しちまえばいいってわけだ!」
「ガンガン肩慣らしして、ドンドンウォームアップしてくよー!」
 弥勒は矢を放ち遠くからスライムを攻撃。体力を減らし、絵里が飛び込んで剣を叩き付ける。
「出し惜しみはなし! 最初っからクライマックスだ!」
 また一匹スライムが消滅する。最後の一体には飛竜が素早く駆け込みトンファーを叩き込む。うねるスライムは毒液を吐き出すが、飛竜はそれをバック転気味に回避。
「止めは任せる」
「任されます! 全長45cmのロッドでぇ……殴りますとも!」
 入れ違いに飛び込んだマーヤがロッドを叩き付けると衝撃でスライムが飛び散った。あっさり敵を倒し、ハンターは無傷、お互いに顔を見合わせ健闘を讃えた。
「やれそうだな」
「いいねいいね! もしかして楽勝かも!」
 ふっと一息つきながら笑う弥勒。絵里は楽しそうに先へ進んでいくが、その歩みはまた直ぐに止まった。
 今度はスライムが六体。それに見るからに怪しい植物が見える。ハンター達は再び得物を構えた。
「随分いるじゃねーか。こりゃ大掃除になりそうだな」
「他にも、周囲に敵が潜んでるかも……注意して……」
 スピアで肩を叩きながら苦笑するウィンス。ブリスの言う通り、どこから敵が来るかわからない。常に警戒が必要だ。
「あの植物って雑魔なんでしょうか?」
 足元の石を拾って投げてみるマーヤ。すると植物は急にウネウネと気持ち悪く動き出し、マーヤは小刻みに震える。
「すっごい動いてます!」
「スライムと、触手植物……」
 じっと見つめるブリス。隣のマーヤを見ると、服に先のスライムの残骸が染みついて透けていた。
「スライム……触手……」
「どうしました? あ……これですか。お洗濯しないとですね。ブリスさんの服は白いから、どろどろがついたら大変そうですね」
「どろどろ……」
 首を傾げるマーヤ。ブリスは見る見る顔が赤くなっていく。
「フロー姉様……ネフィ姉様……。ブリスは無事に帰れるかな……?」
「だ、大丈夫か?」
「あの植物は何かヤバそうだな。俺に任せとけ。ザレム、手を貸してくれ」
「あ、ああ」
 ブリスを気にかけていたザレムだが弥勒の要請に応え攻性強化を発動する。弥勒は弓で植物を攻撃。ここは射程外なのか、植物は暴れるだけで反撃してこない。
「ここから一方的に倒せそうだ」
「なら文月、そいつは任せたんだねー! あたしらは前に出てスライムをやるよー!」
 大地を蹴り、一気に距離を詰めるニーナ。右の拳に無数の光を纏い、拳を叩き付ける。続き、飛竜も距離を詰めトンファーを打ち込む。
「いい感じ! 流石同じ疾影士、仲良くやろっか!」
「連携して攻撃すれば、丁度倒しきれる、か」
 ウィンクするニーナに微笑を返す飛竜。同時にその場で身体を捻り、放った蹴りがスライムを粉砕した。
「ヴォイドは殲滅だーっ! 世に平穏のあらんことをっ」
 剣を片手に駆ける絵里をブリスの放った光の矢が追い抜きスライムを貫く。すかさず絵里は跳躍、空中からスライムを両断した。
「てめーらのクソっぷりはそんなもんかよ。あ?」
 スピアでスライムを貫きながら笑うウィンス。そこへマーヤの声が響いた。
「右から別のスライムが二体来てます!」
「左からもだ! 数は三体!」
 植物を撃破した弥勒も叫ぶ。スライムが飛ばした液体を剣を抜いて払い、一度背後へ飛んで仲間と背中合わせに構えた。
「なんかぞろぞろ出て来たんだけど!?」
「へっ、出てくるなら丁度いい。かくれんぼは趣味じゃねーんだ」
 慌てる絵里。ウィンスは槍をくるりと回して構え直した。続々と現れる雑魔に囲まれたハンター達。後衛と前衛に分かれ円形に陣を組む。
 スライムはそれぞれ身体を鋭利に変化させたり毒液を飛ばしたりしてハンター達へ一斉に襲い掛かる。数で圧倒されている以上、無傷ではやり過ごせない。
「どんどんかかってくるのはいいけど、サンドバッグは勘弁なんだね……っと!」
 拳で触手を弾いくニーナ。ウィンスは液体を槍を回して弾くが、飛び散った一部を浴びてしまう。
「ちっ、この程度の傷……!」
「無理は禁物ですよ! 今回復します!」
 マーヤのヒールを受け傷が癒えていく。ウィンスは少し照れくさそうに頬を掻いた後、お返しは攻撃でと言わんばかりに低く槍を構える。
「足りねーな……! もっと鋭く、何物をも貫ける程に……ッ!!」
 槍のリーチを最大限に生かす。前に飛び出すと同時、側面に回り込みありったけの力を込めて繰り出す一撃。
「食らい……やがれぇッ!!」
 並んでいた二体のスライムを纏めて槍は貫く。強烈な一撃はそれだけでスライムを粉々に吹き飛ばした。
「……やるな。俺も負けてはいられん」
 毒液をかわし跳躍する飛竜。空中で回転し、スライムへ蹴りを叩き込んだ。
「トンファーキック!」
「そのまませーので……とりゃあ!」
 続いてロングソードをねじ込み振り払う絵里。ザレムとブリスはそれぞれ魔法を放ち、怯んだスライムへニーナと弥勒が走る。
「行くよ文月! そっちはよろしくー!」
 二人はそれぞれ魔法で弱ったスライムを撃破。そこへ新手のスライムが硬化した触手を放つが、弥勒は剣でそれを弾き飛ばす。
「おっと、そっちにも?」
「数だけは多いからよ。気を付けたところで後ろに目が付くわけでもなし……それにしても」
 すぐさまダーツの矢を投げつける弥勒。怯んだところへニーナが飛び込み、拳を叩き込む。
「レディの背中を狙うとは、見下げた軟体生物だぜ」
 ハンター達はお互いの隙をカバーしながら上手く立ち回り、この敵集団も撃破。その頃にはすっかり日も暮れ始めていた。
「すっかり暗くなってきましたね……。視界が悪くなると更に苦戦しそうです」
 LEDライトをつけながら小さく息を吐くマーヤ。一通り回復も終えたが、疲れが見え始めている。
「もう十体以上の雑魔を倒してる……こんなに大量に現れるとはな」
「どのぐらい倒せばいいのかな? わかりやすくボスとかいない?」
 小さく息を吐く飛竜。絵里は終わりの見えない殲滅戦に辟易した様子だ。
「限界を感じたら引き返そう。このペースじゃ研究所まで持たない」
 ザレムの提案に全員同意する。なにせこうして先に進もうとしている間には、既に新手が視界に入っていたのだから……。



 四度目の戦闘で限界と見たザレムの合図でハンター達は引き返した。槍を杖代わりに歩くウィンスの隣、ふらふらしたブリスに弥勒が手を差し伸べる。
「さっさと帰ろう、道も見えなくなる。レディは俺の腕を取っていいぜ」
「俺、この中で一番殴られてるんだが?」
「ピンピンしてるじゃねぇか。野郎は自分で歩け」
 笑みを浮かべたまま至近距離で睨みあうウィンスと弥勒。ザレムは二人の間に入り肩を叩く。
「ま、まあ皆無事だったんだし……ほら、明かりが見えて来たぞ。多分あそこだ」
 見れば森の入り口付近、汚染されていない場所に灯りが見えた。予想通りそこではタングラムがキャンプの準備を終えて待っていた。
「おー、立派なキャンプだ。ところで、キャンプはいいけどご飯は出るの? もうくたくたではらぺこだーね……」
「料理なら俺に任せてくれ。すぐ準備するからな」
「それはよかった。あたし大雑把だから」
 焚火に当たるニーナ。ザレムは食事の準備を始める。タングラムはその様子を眺めつつにこりと笑った。
「皆お疲れ様だったですね。私の予想より良く動いていたですよ。連携がうまくなければ、あそこまで戦えなかったでしょう」
「上手くやれた……そうか」
 自らの掌を見つめる弥勒。散々歪虚を倒したが、彼の胸は満たされていなかった。
 リアルブルーからやってきてハンターになった。この依頼がその常識とは思えないが、これからもこんな戦いが続くのだろう。
「ところで、なんでこんな所に来たのか気になるね」
「あ、私も気になってたんです。途中の村はなんだったんですか?」
 ニーナの質問に乗じて身を乗り出すマーヤ。
「つまらない話ですよ。昔あの研究所で事故があって、汚染が起きた。あの村の住人はそれで故郷を離れなければならなかったのです。その時私は帝国にいて、事件の事後処理に立ち会ったのです」
 そこで一人の少年と約束したのだ。いつか故郷に帰ってこられるようにすると。
「……気に入らねえな。村の連中には何も罪はないだろ。誇りって奴は、理想って奴は、何時から護るべき奴の血まで啜るようになったんだ」
 ウィンスは思う。今の帝国はまるで振り上げられた剣だ。その力は時に無力な人々を傷つけてしまう。
「だがあんたは気に入ったよ、タングラム。こいつはあんたなりの、ケジメのつけ方なんだろ」
 曖昧に笑みを返すタングラム。ウィンスはそこで肩を竦める。
「ちゃらんぽらんな奴だと思ったが……いやちゃらんぽらんな奴なのは事実か」
「いやいや、ユニオンリーダーには色々と深い事情が……おっ?」
 見ればいつの間にか眠ってしまったブリスがタングラムに寄りかかっていた。余程疲れたのだろう、起きる気配がない。
「……んぅ……姉様ぁ」
「私を姉と勘違いして……」
「……にしては……胸がない……」
 ずーんと肩を落とすタングラム。そこへザレムが料理を終えて声をかけた。
「出来たぞ。パンをひとかけ添えて……さ、皆もどうぞ」
「待ってました! さっきから良い匂いがしてたんだよね!」
「なにこれうまっ!? ザレムのシチューうまっ!? 何がどうなってんの!?」
 大喜びで飛びつく絵里とニーナ。ザレムは配膳しつつ笑顔で語る。
「野草を下湯でして、干し肉とミルクで煮込んで、調味料で……」
「ごめん、多分覚えらんない! それよりおかわり欲しいんだねー!」
「あ……ああ。ブリスは寝てしまったか。まあ、明日温め直そう」
「残ってたらね!」
 空になった皿を差し出す絵里。ザレムはそれに応じながら話し出す。
「汚染の根源をなんとか断つ方法はないのか?」
「直ぐには無理でしょうね。長い時間をかけ、誰かが地道にやっていくしかないのです」
「そうか……。だが、腕に自信が有るとしても水臭い。こんな時には俺達を頼るか手伝わさせりゃいいんだよ」
「そうですよ。これもきっと何かの縁です。それに、冒険だったらいつでも望む所ですから!」
 にっこりと微笑むマーヤ。その時ふと飛竜が立ち上がった。
「腕に自信と言えば……タングラム、少しいいか?」
「な、なんですか改まって?」
「折角の機会なんでな、上というものを知りたい。一手願おう」
 構えを取る飛竜。タングラムはポカンとした後、膝の上に頭を置いたブリスを指差す。
「残念ですが、この状態ですから」
「……むう」
「それにあまり意味のない事です」
「今の俺では相手にならないと言うのか」
「世の中には本当に強い奴がいるものですから。私よりも師団長や皇帝に挑むべきですよ」
 暫し考え、構えを解く飛竜。残念そうな横顔にタングラムは笑いかける。
「ふん……。次は相手をしてもらおう」
 こうして一行は夜明けを待ち休む事にした。見張りは自分がすると言って立ち上がったタングラムにウィンスは声をかける。
「俺は、帝国を変えたい。今はまだ何の力もねーガキだが、何時か必ず、この国を『もっとクソじゃなく』してみせる」
 立ち止まり振り返る仮面の少女。ウィンスは頬を掻き。
「……お前には無理だって言うんだろ」
 首を横に振り、少女は少年の頭をそっと撫でる。
「きっと出来るですよ、君なら」
 星空の下、楽しそうに闇を歩くタングラム。その背中を見送り、ハンター達は休息についた。

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MVP一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズールka0878

重体一覧

参加者一覧

  • 魂の反逆
    ウィンス・デイランダール(ka0039
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 壁掛けの狐面
    文月 弥勒(ka0300
    人間(蒼)|16才|男性|闘狩人
  • ヤンデレ☆ブリス
    ブリス・レインフォード(ka0445
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • ストレスブレイカー
    七星・絵里(ka0730
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 力の求道者
    飛竜(ka0918
    エルフ|28才|男性|疾影士

  • マーヤ・クランツ(ka1132
    人間(紅)|16才|女性|聖導士
  • ウォークライ
    ニーナ・アンフィスバエナ(ka1682
    人間(紅)|18才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【タングラムの休日】相談掲示板
ザレム・アズール(ka0878
人間(クリムゾンウェスト)|19才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/06/19 02:40:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/14 06:05:56