• 虚動

【虚動】海上輸送の黒い罠

マスター:村井朋靖

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/12/01 15:00
完成日
2014/12/10 00:07

みんなの思い出

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オープニング


 5年前に起こった王国を襲う災厄、その再来たるイスルダ島の歪虚の襲来は、クリムゾンウェストの世界を駆け巡り、震撼させた。
 異界より到来したラッツィオ島での戦い、そして帝国に再び姿を現した剣機の歪虚。
 世界を覆ういくつもの邪悪の影は、各国、各地域の首脳陣をリゼリオへと呼び集める。
 人類の明日を、如何に守るべきか。
 異世界リアルブルーの人々も交えた会合により、人類の希望は二つの兵器に託される。

 一つは、蒼き世界の機械の巨人、サルヴァトーレ・ロッソに眠る戦闘装甲機「CAM」。
 だがそれは、必要な燃料の入手に苦慮し、動くことはあたわなかった。
 一つは、帝国の練魔院にて研究されてきた魔導アーマー。
 長年の研究の結果、稼働実験にまで漕ぎ着けた、新たなる力。

 そして世界は、二つの力を合わせることを選択する。
 魔導アーマーの動力をCAMに搭載する実験が提唱され、世界はそれに向けて動き出した。
 仮に実験が成功すれば、人類は歪虚に対抗する大きな手段を得るだろう。
 だが……


 その一方の力「CAM」を辺境地域へ携えるべく、同盟領・港湾都市ポルトワールに駐屯地を構える同盟海軍が動き出した。
 CAMの輸送はポルトワールを出て、冒険都市リゼリオに停泊中のサルヴァトーレ・ロッソで実験に提供される機体を積み込み、その後は辺境のマギア砦南岸を目指す。
 旗艦は白熊号、指揮官はモデスト・サンテ海軍少将。この艦を含め、輸送船と護衛艦らが任務に就き、大船団として出発した。

 今回、白熊号には、同盟陸軍で新規に編成された特殊部隊の面々も帯同している。
 今後、積極的にCAM操縦や運用を行う目的で準備された「特殊機体操縦部隊」、通称「特機隊(とっきたい)」。彼らの担うべきものは、同盟陸軍にとって非常に重い。
 長きに渡って、同盟軍内のパワーバランスは海軍に偏っており、出資者である商人から「陸軍の底上げを」という注文を受けていた。前・同盟軍元帥のイザイア・バッシの時代から、陸軍のエリート育成のための私塾的教育機関「黒狐塾(こっこじゅく)」を立ち上げ、問題の解決に取り組んでいたが、数年前に右脚の負傷を理由に退官。自ら後継者として任命した若き元帥、ブルーノ・ジェンマの後見人として、また軍からも「同盟陸軍のアドバイザー」として慰留され、現在も黒狐塾を主宰している。
 この度、首脳会談でCAMや魔導アーマーが議題に上るや、ブルーノとイザイアは「陸軍強化の決定打になり得る」と判断。ブルーノは黒狐塾を中心とした新規部隊の編成を打診し、イザイアもそれに呼応して人選を行った。
 その際、特機隊の隊長として据えられたのが、黒狐塾出身のダニエル・コレッティ陸軍中佐である。とはいえ、船に乗り込む前から今に至るまで、まったく役に立ちそうな雰囲気を微塵も感じさせないあたり、海軍の兵士たちは眉を顰めていた。
「まったく、あれが特機隊の隊長かよ……ニワトリ小屋はあんな奴ばっか育ててんのか?」
 ダニエルは私物として持ち込んだ干物をかじりながら、進行方向をボケーっと見つめる。
「あの、先輩。ニワトリってどういうことですか?」
「なんだお前、知らないのか。あいつら黒狐塾っつーだろ? こっこ、コッコ、コケコッコーが転じて、連中のことをニワトリって呼ぶワケ」
 なお、ニワトリ小屋とは「黒狐塾」、ニワトリ野郎とは「黒狐塾の出身者」を指す蔑称として、同盟軍内部で広まっている。
「だいたいCAMも動かせねぇうちから部隊を組むとか、勇み足もいいとこだろ……」
「まぁまぁ、CAMの輸送を手伝ったりしてくれるんですから」
「そういや正式に発足するまではニワトリ小屋の連中が手伝うらしいから、お前は気安くニワトリとか口にすんなよ。後で大変な目に遭うぞ」
 暗に「俺から聞いたとか言うなよ」と念押しし、ふたりは持ち場へと戻った。

 そこへ背の低い赤毛の少女が、新品の陸軍支給の黒い制服に身を包んで登場。ダニエル隊長に敬礼する。
「隊長! ジーナ・サルトリオ、ただいま戻りましたっ!」
 特機隊の第1号隊員にして、たったひとりの隊員、ジーナ・サルトリオ陸軍曹長。クリムゾンウェスト出身者ながら、先のラッツィオ島での戦いでCAMの出撃シーンを目撃して感動し、それからずっとCAMのパイロットになることを夢見てきた。そんな彼女はさっきまで、船上の関係者にCAMの話を根掘り葉掘り聞いていたらしい。
「好奇心旺盛だねぇ。オジサンもその意欲、見習いたいよ」
「隊長だって、黒狐塾の講義でCAMの話とか聞いてるんでしょ? いいなぁ、私も聞きたいなぁ~」
 ジーナが実に楽しそうに話していると、警報が甲高い音で鳴り響く。
「敵襲! 3時の方向から足の速い小型船が3隻接近! 海賊船と思われます!」
 それを聞いたモデストが「白熊」とあだ名される巨体を揺らしながら、ダニエルらのいる甲板に出てきた。
「我が船団はリゼリオ行きを優先する! 海賊はハンターを乗せた護衛船に対応させろ! 大砲は敵を後退させないための牽制として撃て! ハンターが乗り込んだら砲撃を止め、船足を速めてさっさと離脱だ!」
 これを聞いたダニエルは「さすがは少将、見事な指揮ですな」と賛辞を送ると、モデストは「お前もこれくらいするだろう」と笑った。どうやら旧知の仲らしい。
「しかし少将、旗艦が天下の白熊号と知って攻めてくるとは、マヌケな敵もいたもんですなぁ」
「こんなこと仕掛ける海賊は、よほどのバカか、それとも……」
 その間、ジーナは頭の上にでっかい疑問符を浮かべていたが、ふたりはお構いなしで話す。
「何か別の目的があって動いてる、か。いや、何かに動かされてるのかも」
「あんなバカ正直にまっすぐ進んでくる海賊、なかなか見ないぞ。バカの線もあり得ないか?」
「確かに連中は騙しやすいかもしれないけど、騙した方を侮っちゃいけない気はするねぇ……」
 ジーナは話を理解できず、ついに「ああ、もう!」と怒った。
「隊長! つまり、どういうことですかっ?!」
「あの海賊はたぶんバカだけど、黒幕は絶対にバカじゃないってこと。あれを退けるだけなら特に問題ないと思うけどさ。少将、ヴァリオスに応援の護衛艦を頼んだ方がいいかもね」
「ひとまず、今は目の前の敵を退けることに専念しよう。せっかくだから、特機隊の手も借りるぞ」
 ダニエルは「やれやれ、面倒はやだねぇ」とボヤキながらも、黒狐塾の面々を招集した。

「ヒャッハー! あの船団を足止めすれば、遊んで暮らせるだけの金が手に入るぜ~!」
「一攫千金のチャンスだ~! こんな惨めな生活とはおさらばだぜ~!!」
 ハンターを乗せた3隻の船がそれぞれに接近しているというのに、海賊たちは随分とお気楽な思考で戦いに挑む。

 陰謀渦巻く同盟領の海で、戦いの火蓋が切って落とされた。

リプレイ本文


 いくら威嚇射撃とはいえ、着弾すれば強く海面を叩く。それによって勢いよく水柱が立ち昇り、しばらくすると飛沫となって弾ける。その中を突っ切る船の甲板で、ハンターたちは戦闘の準備を整えた。海賊船との接触は目前である。

●1番船の戦い
 その中でも、1番船はもっとも早い開戦となった。両者の思惑が一致している。接舷した上で移乗攻撃に転じようというのだ。お互いに渡し板を架け、ここからは敵船の制圧に挑む。
 ハンター船に乗る海兵は接舷した側に並び、軍支給の魔導銃を構えた。彼らは牧 渉(ka0033)の申し出を受け、自船の防衛に専念する段取りだ。
 しかし鳴神 真吾(ka2626)は敵に主導権を握らせる気はなく、火属性を纏わせたヴァトラボウで帆や積荷を狙い、あわよくば発火による混乱を招かんとする。
「お前達の意思で仕掛けてきた以上は容赦するつもりはない!」
 これによる動揺が走ったのを指揮官が確認すると、部下に銃撃を命じる。白兵戦の開始だ。その間を縫うようにしてお互いに乗船のタイミングを図るが、石橋 パメラ(ka1296)は瞬脚を使い、さっさと海賊船に乗り込んだ。
「おわっ?! 姉ちゃん、ええ度胸してんなぁ!」
 招かれざる客を迎えた賊のひとりがナイフ片手に粋がっていると、パメラは容赦なくクファンジャルでその首を切り裂く。
「ブバッ!」
「……あまり人とは戦いたくないですが、いいでしょう……」
 突然の無礼にいきり立った賊が迫ってきたが、それは拳銃で往なす。
「本気で来るなら、こちらも全力です」
 彼女の微笑は不敵の笑みか。これを合図に海賊船が大賑わいとなるが、そこはリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)が割って入る。
「っとまあ、随分ワラワラと。敵は質より量ってところか。接近戦の肩慣らしとしちゃ上等だな」
 敵の接近を利する形でその身を預け、至近距離でリボルバーを撃ち鳴らす。海賊の体が揺れると同時に腹部を蹴飛ばし、今度は頭を撃ち抜いて止めを刺した。その背後から安物のロングソードを構えて迫る新手に対しては、体の向きを替えて再び射撃を行う。海賊の「銃は遠くの敵を狙い撃つものだ」という思い込みもあって、戦況はリカルドに有利に働いた。
 その後もハンターは続々と乗船してくる。榎本 かなえ(ka3567)は海兵と共に自船から魔導銃で雑魚を狙っていたが、隙ができたと見るやすかさず乗船。乱戦の中を駆け抜け、一気に砲撃手へと迫る。
「人を撃つのは抵抗ありますけど……死んでも恨まないでくださいね」
 戦いは得意ではないというかなえだが、射撃の腕はなかなかのもの。一門しかない大砲の射手の脚を撃ち抜く。そこから船尾の方を向くと、操舵手らしき者の姿を発見。再び照準を定めるが、今度は距離があった。直接は狙えないが、そこはハンター同士の連携が活きる。
「後ろの敵を狙ってください! 操舵手ですっ!」
 その声に気づいたルスティロ・イストワール(ka0252)はレイピアを持ち直し、かなえの狙う敵を見据える。
「ね、君たちじゃ勝てないと思うんだけど……止めない?」
 笑顔のブロウビートは、操舵手を存分に動揺させた。
「ふ、ふざけんじゃねぇ! これでも俺はこの船を任されてる男なんだぞっ!」
 ナイフを抜いたその瞬間、敵の肩口を銃弾が抉る。注意を引くために放ったかなえの攻撃は、見事に命中した。
 操舵手はジワリとした熱さを感じているはずだが、それでも武器を放さない。この精神の強さ、どうやら覚醒者のようだ。しかし隙を見せた以上、ルスティロが優位に違いない。彼はクラッシュブロウを乗せた鋭い一撃を放ち、一気に勝負を決めんとする。
「カーバンクル、力を貸して!」
 このルスティロの攻撃は、もし万全であっても受け止めれただろうか。必殺の一撃をかなえの弾丸と同じ箇所に食らわせ、操舵手はよろよろと船の縁にまで下がる。そこにはすでに、ルスティロが笑顔で立っていた。
「頭も傷も冷やすといいよ」
 彼は両手でドンと敵の胸を突き、そのまま冬の海へと叩き落した。

 戦況が芳しくないのを悟ったか、海賊のリーダーは手下を引き連れて敵船の掌握を狙うが、渉の進言でハンター船の防衛は海軍がガチガチに固めていた。季節は冬だが、これでは飛んで火に入るなんとやら。魔術師でオネエの沢城 葵(ka3114)は、ワンドを振りかざして溜息をつく。
「白熊さんのエスコートで気楽な船旅、だと思ってたのにねぇ」
 働くことに抵抗はないが、眼前に迫るのは無粋で化粧と縁のない不細工なオッサンばかり。雑魚に用はないとばかりに、まずはアースバレットを放つ。
「ピギュッ!!」
 渡し板の上に立った手下は股間を岩弾で狙われ、そのまま海へダイブ……いくら練度の高い海兵とはいえ、この光景を見て「うわぁ」と顔をしかめた。
 このふざけた攻撃を見たリーダーが激怒し、他の手下に「続けぇ~!」と指示。一気に橋を渡ろうとする。
 当然、これを葵や海兵が狙わないはずがない。しかしリーダーが覚醒者であるので、撃破は容易ではなかった。だから、葵は大仰にワンドを振りかざすフリをして、隠し持っていたデリンジャーにすかさず持ち替え、無慈悲な射撃を見舞う。
「おいたはダメよぉ」
 銃弾で膝を撃ち抜き、先頭のリーダーを慌てさせた。さらには渉がその奥に向かって投網を投げ、仕上げは海兵が渡し板を乱暴に取っ払い、全員を海へ叩き落した。
「残りは任せろ!」
 ここで真吾と渉が敵船に乗り込む。ライエル・ブラック(ka1450)も追随し、彼らにプロテクションをかけて援護。少年は周囲を見渡し、戦況を確認する。
「大勢は決したようですから、諦めてくれませんかね?」
 聡明なライエルは一目で状況が読めるだろうが、海賊にその判断を求めるのはいささか厳しい。侵入したハンターよりも数が減れば、降伏も望めるのかもしれないが、それにはもう少し倒す必要があった。
 パメラはフェイントを織り交ぜたナイフ格闘で敵を追い詰め、残る覚醒者の居場所を吐かせる。
「船首に立つ斧使いがそうなんですね?」
 彼女は周囲に聞こえる声で復唱すると、真吾が目標に向かって一気に駆け寄る。
「……こうも踊らされていると哀れでもあるが、容赦はしない!」
 真吾は光の力を帯びたサーベルの刃を煌かせ、その鋭さで敵を圧倒。そして船尾を背に立たせた瞬間、敵は異様なほど背筋を伸ばした。リカルドが右の至近距離から、かなえが左の遠距離から狙撃し、命中させたのだ。
「ま、久々としちゃ上出来か」
「逃げ場はありませんよ!」
 敵は真吾のマスク越しの表情を想像したのか、全力で反撃に出る。大斧による豪快な振り下ろしは、なかなかの威力を誇った。傷を負ったリアルヒーローは「敵ながらあっぱれ」と舌を巻く。
「その才、他に役立てる術などいくらでもあったろうに」
「そいつが今だってことがわかんねぇとは……お前さんは海賊にはなれねぇよ!」
 斧を構え直し、止めの一撃を……と考えていた敵だが、真吾の体が柔らかい光に包まれるのを見て唖然とする。そう、ライエルのヒールが飛んだのだ。何度でも立ち上がるのがヒーロー、そして皆と共に戦うのがハンター。真吾の目の前にいる男は、そのどちらでもなかった。
「覚悟しろ!」
 雷撃を帯びた一閃は覚醒者の胸を焼き切る。この瞬間、海賊の数的優位すら失われた。
「さて、彼はロープで捕えるとして……まだやる?」
 ルスティロの呟きは何気ないものだったが、残された者にとっては降伏勧告にしか聞こえなかった。

●2番船の戦い
 こちらは接舷と同時にハンターが先手を打つ形で敵船へと乗り移り、海兵はフォローを終えると同時に追随。その後に渡し板をいったん外し、海賊船を舞台に乱戦が繰り広げられた。

 さっさと敵船へ飛び乗った侍ソウルの伝道者・Jyu=Bee(ka1681)は火縄銃よろしくアサルトライフルを構え、銃弾を適当にばら撒いていく。
「いや~~~、やっぱり巨大ロボットのパイロットは乙女の夢よね!!」
 そんな浪漫を語りつつも、その狙いは実に正確。次々と賊を射抜いていくが、特に狙いは定めていない。また、彼女の周囲には援護する味方もいない。そう、これは陽動だ。自らに守りの構えを施し、敵の注目を浴びるのが目的なのだ。
 当然、彼女を狙う奴がいないわけがない。それをフォローするのが赤毛の闘狩人、レム・K・モメンタム(ka0149)である。
「レミュエール・K・モメンタム、カチ込むわよ! 突撃ィ!」
 彼女もまた派手な名乗りで、ジュウベエちゃんの呼び寄せた雑魚にデリンジャーによる投げキッスを浴びせ、距離を詰めればユナイテッド・ドライブ・ソードをうまく使い分け、弱った敵は強打を浴びせた後に海へ蹴り落とす。
「ぶふぁ! あばばばば……」
「私に人殺しなんてさせるんじゃないわよ! ちょっとそこでアタマ冷やしてなさい!」
 そう説教している最中にも、背後から敵は迫る。しかし、その様子を支柱の影から見つめる影があった。ネイハム・乾風(ka2961)、その人である。彼はライフルで敵の背を撃ち、本人の悲鳴でもってレムに敵の存在を知らせた。
「後ろから攻撃するのは、卑怯者のすることッ!!」
 レムはそう言いながら、踏込と渾身撃を駆使した強力な一撃を放ち、また賊を海へと放り捨てる。ネイハムは戦闘の騒がしさに乗じて移動し、また狙いやすい敵を探した。
「ま、必要とあらば後ろから撃つよ。誰に何と言われようともね」
 そう、彼にとって銃を撃つことは喜び。今日はたくさん撃てそうだから、なかなかに幸せな気持ちになれるだろう。
 そんなネイハムの視界に、海兵と共に行動するアイシュリング(ka2787)の姿が飛び込んできた。彼女の狙いは、砲撃要員と操舵手。まずは砲台の元へ走り、そこにいる敵との戦闘が始まる。
「同盟海軍を舐めるな! 進めー!」
 隊長の指揮で、海兵はパイクを使って勇ましく雑魚と応戦する。練度の高さが売りの海軍は数的優位に立つ海賊に一歩も譲らぬ戦いを披露。この展開を武器片手に注視する男がいた。その人物が砲撃手であることは、誰の目にも明らかだ。
「我が友たる風よ。かの者を切り刻みたまえ」
 アイシュリングが掲げるマギスタッフに導かれし魔法の風は、覚醒者である砲撃手の身を存分に痛めつける。手下で海兵を食い止めさせているのが災いし、砲撃手は逃げることができずにいた。そこにネイハムの威嚇射撃が決まれば、もはや勝負あり。敵は座して死を待つのみの状況となった。動かない的を射るなど、ハンターにとっては造作もない。
「あなた、命まで切り刻んでほしいの?」
 真実という鋭い刃を喉元に突きつけ、アイシュリングは覚醒者の捕縛に成功。続いて操舵手を狙わんと動き出した。

 その頃、船尾では金髪の凛々しき女騎士、ユナイテル・キングスコート(ka3458)が正々堂々と名乗る。
「我が名は、ユナイテル・キングスコ……」
「うるせぇ、ガキのお遊戯なら家でやってろ! ここは漢の海だー!」
「……推して参る!」
 子供扱いされた悲しみを盾の影に隠し、宝剣「カーテナ」を胸元でかざして、そのまま戦いに挑む。
 さすがは騎士、まっすぐな太刀筋で海賊を攻め立てる。初撃こそ挨拶代わりだが、その後の展開は剣の呼び名にふさわしい無慈悲で強力な斬撃が続いた。それは言うまでもなく、海賊ごときを寄せ付けない強さだ。
「うわっと! や、やるな、このガ……」
「隙あり!」
 二度、それも同じ侮辱を聞くつもりはない。ユナイテルは踏込を駆使して切り上げ、敵のバランスを崩して縁から海に落とした。どうやら先ほどの罵倒を気にしていたらしい。
 ところが彼女が横を向けば、その子供らしさを武器にして戦う……というか、さっきから逃げ惑っている少年がいた。それは三日月 壱(ka0244)で、海賊どもは下卑た笑いを浮かべながらさっきから追い掛け回している。
「さっさとそんなガキ捕まえて、海に沈めちまえ!」
「ひぃぃ! だ、誰か助けて……!」
 指示を出しているのは、リーダーで覚醒者らしき手練だ。周囲は「壱がうまくターゲットを釣った」と思っているが、ユナイテルは知ってか知らずか、彼を追う海賊の首根っこを引っ掴んで「やめなさい!」と制止し、あくまで騎士道に則って排除する。
「なんか、すげーマジメな人が混じってるなー。ま、いっか。逆に敵が俺の演技を信じ込むだろうし」
 そんなことを呟きながら移動し続け、壱はついに縁を背に囲まれてしまう。
「クソガキが、手間かけさせやがって……!」
「リーダーも俺たちも、ガキが大嫌いなんだ。思いっきり痛めつけてやる!」
 徐々に輪を縮めていく手下を見て、リーダーはくつくつと笑ってご満悦の表情を浮かべる。その隣に、ひとりの女性が立った。
「ご機嫌だな。何かいいことでもあったのか?」
 隣に立ったのは、ハンターのフラヴィ・ボー(ka0698)。彼女は抜き身の銃を構え、それに雷撃を纏わせて放つ。これだけの至近距離であれば、狙わずとも当たろうというもの。リーダーはなんとか立ったままで耐えたが、ジュウベエとネイハムにも狙われては堪らない。
「あ! リーダーさんこんにちは!」
「あれは覚醒者ですから、何度撃ってもよさそうですね」
 いろんな意味で無邪気なふたりが呟けば、壱もついにその本性を見せる。殺到した3人の手下を身を屈めて避けると、今度はジャンプしてその背中にハリセンをぶつけて海に叩き落した!
「ひゃははは! ざまぁ!!」
 壱はマヌケな姿で落ちていく連中を見て笑いながら後ろへ振り向こうと足を踏み出した瞬間、不意にその場で躓いてしまう。やはり子供は子供か。残った連中は「バカめ!」と叫びながら短剣を振り上げるも、少年は大きく開いた股の下を潜り抜けて背後に回った。
「なーんちゃって! なんで俺が逃げ惑ってるのに捕まらないのか、不思議に思わなかったのか? ったく、おめでたいな!」
 その後は壱の独壇場となった。ここに海兵が援護に駆けつけ、よいしょよいしょと手下を海に落としていく。
 まんまと一杯食わされたリーダーだが、これだけの銃口に狙われたのでは命がいくつあっても足らない。フラヴィは「降伏しな」と言うと、相手も勝ち目なしと踏んで武器を捨てた。
 これを見たジュウベエが、声高らかに叫ぶ。
「はーーーい。リーダーが降伏したんだから、みんなも素直に降伏してよね。イヤなら海の中に叩き込んでそのまま見捨てるのと、ロープで船の端から吊るして鮫の餌にする案のふたつがあるんだけど、どっちがいい?」
 この時点でかろうじて海賊側に数的優位があったのだが、ジュウベエの勧告はそれをもひっくり返した。敵は戦意を喪失し、全員が素直に捕縛される。2番船の戦闘は、予想以上のスピード解決と相成った。

●3番船の戦い
 こちらは接舷の前から、戦いが始まった。
 ジーナ(ka1643)が鋭敏視覚で船尾付近から敵船を見据え、その数をざっと計る。
「なるほど、飛び道具を持ってる敵が少ないのはやりやすいな」
 彼女がそう呟くと、水中銃を手にしたKurt 月見里(ka0737)が隣に立ち、まずはレディにご挨拶。
「俺の名前はKurtって言うんだ。よろしくね、お姉さん♪」
「なるほど、敵を引き付ける必要があるか。では、私も拳銃を使おうか」
 ご挨拶もそこそこに、ジーナはリボルバー「ヴァールハイト」を抜く。先制攻撃でランデブーというもなかなかのものだ。しかしそこへ珍妙な横槍が入る。
「くぉらぁ~! そこの気取ったイケメン! てめぇの端正なその顔、ぐちゃぐちゃにしてやるからな! そこで首洗って待ってろ!」
 Kurtは荒くれ海賊の口汚いセリフを黙らせる意味合いも込めて、運動強化を付与した上で確実な射撃を見舞う。
「ぐへっ!」
「女の子になんて言葉聞かせるのさ。ホントなってないね」
 銃弾一発で一触即発ムードとなった3番船同士の戦いは、いよいよ渡し板が架けられて白兵戦に突入……するかに思われたが、そこはメトロノーム・ソングライト(ka1267)の魔法によって制せられる。Kurtが敵の注目を船尾側に集めたのも、海兵がここに渡し板を架けたのも、すべては彼女の策を成就させるためだ。
「歌姫、後はよろしく」
「あの方々にも、私の歌が届くといいのですが……」
 彼女は歌うように詠唱を始めると、いきり立つ海賊の集まった箇所に青白い雲状のガスが広がる。それは眠りへと誘う危険な雲。皮肉にも、最後までこの歌を聞き遂げた者はひとりとしていなかった。
「特等席で居眠りとは感心しないな」
 ジーナは風のレイピアを抜き、一気に渡し板を駆け抜け敵陣へ。惰眠を貪る敵を起こさせまいと、あえて奥へと進んだ。そのサポートは、Kurtの水中銃とメトロノームの魔法が担う。歌姫は風を呼び起こす歌を奏で、越境を阻む敵を片付けていく。

 船首側からは、渡し板が架かると同時に時音 ざくろ(ka1250)とアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)が移動。敵陣に踏み入ると、ざくろは不意に肩へ止まったカモメに声をかける。
「そうか鳥よ。君も悲しいんだね……行くよ、アデリシア!」
「わかった」
 シスターはおもむろに閉じた瞳を開き、髪を銀に染める。そしてお互いにプロテクションを施した。ざくろはカモメが空へ舞い戻るのを見届け、サーベルと盾を構えて手下との戦いに挑む。背後からは海兵も援護に駆けつけ、しばし混戦模様となった。
 序盤こそ数の上で劣勢のハンター側だったが、ざくろとアデリシアの戦闘力と巧みなコンビネーションに加え、劣勢に陥っても気持ちを切らない海軍魂が敵をじわりと圧倒する。
「移り気なのは感心しないよ!」
 ざくろは自分との手合わせで「分が悪い」と判断した敵を逃がさず、できるだけ自分で仕留めるようにするが、いかんせん数が多くて処理し切れない。そこをアデリシアが埋めていく。
「甲斐性がないところは、何とも海賊らしいというべきか」
 そんなおいたが過ぎる連中には、チェーンウィップでお仕置きだ。揺らめく銀髪に鈍色の武具。そして「この先は通さない」と雄弁に語るまっすぐな瞳……ここを進む者が前線にいようか。いや、いない。
 このコンビに負けじと奮い立つのは、後ろに控えし海兵。多少の傷も我慢し、とにかく前へ出る。その勇気を評するがごとく、彼の体は柔らかい光に包まれた。シスターのヒールが飛んだのだ。
「数的劣勢を補うには、各個撃破が一番いいが……無理は禁物だ」
 彼女の言葉に「おう!」と返し、海兵はまた賊の退治へと進む。

 船尾では踏込を駆使して突入した葵(ka2143)が、居眠りしていた海賊の目覚ましも兼ねて、海兵と協力してせっせと海に落としていた。
「おーおー、落ちた後に暴れる様も映画で見たまんまだぜ。やっぱこうなるもんなのかー」
 妙に感心している彼の隣で、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)もその様子を覗き見る。彼もまた葵と同じで、リアルブルーの出身者だ。
「眠らされていたとはいえ、珍しいものを見た気がするな。だが、もう少し楽しませてほしいところだ」
 レイオスはハンドサポーターで構え、そのまま手下の中に突撃。彼に気づいた敵に対しては、そのまま腹に飛び蹴りを仕掛ける。
「んぼあっ!」
「オレの打撃はこんなもんじゃないぜ」
 その後、がら空きになった胴に向けて強打を付与したパンチを放つ。それが鳩尾に入ると、敵は泡を吹いてうずくまるのみ。そいつの背中に足を乗せ、周囲を挑発し続ける。
「もっと強いヤツはいないのか!」
 しかし群れるのが当たり前で、面の皮の厚い海賊は、今度は数で押そうとする。
 これには葵が加勢し、鞭を操って敵の肌を何度も打った。
「海賊ってわりには、顔に威圧感が足りねぇな。修羅場を潜ってきたのを証明する傷とかあるといいと思うぜ。でも俺の攻撃じゃ、ミミズ腫れがせいぜいだけどな」
「じゃあ、このくらいの方が箔が付くってかい? 若いの、よくわかってんじゃねぇか」
 そう歩み出てきたのは、明らかに手下と雰囲気の違う敵……間違いなく覚醒者だ。これを見つけた瞬間、葵は「いたー!」と叫ぶ。
「いい声だ。それを待っていた」
 ジーナは猛然とダッシュし、強敵の目の前へ。レイピアの刺突で挑むが、敵もこれを往なしつつ反撃に出る。
「なかなかいい筋をしてるが、まだまだだ!」
 彼女はこれを避け損ね、右腕に傷を負った。
 しかしこれを契機に、味方船から恐ろしいほどの援護が飛ぶ。歌姫はジーナに安らぎの歌と共に風の加護を授け、Kurtは銃弾でのフォローを入れる。ただ、命中までに二度ほど手下に命中させてしまったが、それもご愛嬌。
「俺の射線を邪魔してたんだ。仕方ないよね……さ、遊びの時間だよ?」
 この声に背中を押されるように、ジーナはレイピアを構え直す。狙いを脚に変えて攻め立てるが、なかなか命中しない。
「ははは、どうした? さっきまでの勢いは……」
「ないってか。そりゃそうだ、俺に止めを譲ったんだからな!」
 レイオスの声に、賊は驚く。彼は敗北の原因を永遠に知ることはないだろう。手下を目くらましにして潜んでいたレイオスは直剣と化したユナイテッド・ドライブ・ソードを振りかざし、猛然と迫る。
 これは敵にとって完全に予想外だった。なんとか防ごうと獲物で防御の構えを取るが、容易に接近を許したのは揺るがし難い事実。そう、そこに隙は生じる、必ず。
「さすがに手加減できないな。骨折くらいは覚悟しろよ」
 レイオスは踏込から渾身撃へと繋げ、直剣の腹で思い切り殴りつけた。その勢いを殺せるほどの構えなど、今の彼にできるはずもない。予告通り、骨がイカれる妙な音を響かせ、敵は甲板の上に伏した。
 仕掛けた本人が敵の状況を把握しようと振り向くが、そこには怒りに満ちた手下のひとりが棍棒を振り上げているではないか。
「てんめぇ、やりやがったな!」
 敵は彼が仕掛けたことを真似したつもりなのだろう。レイオスはゆっくりと剣を構え、防御の姿勢を取るが……倒した敵と同じで明らかに間に合っていない。
 しかし、その脇から葵がウィップで敵の足を引っ掛け、その場にすっ転ばせた。
「あ、悪りぃ。もしかして今、すげー盛り上がってた?」
 そこへジーナが手下の頭をレイピアの柄で殴り、いとも簡単に気絶させる。
「コイツはどう感じてるかは知らないが、あまり盛り上がってないから大丈夫だ」
 そう言いながら、ジーナは「そうだろ?」と残った手下を冷たい視線で睨みつけた。

 船尾にリーダーがいないのは明白だった。そこでざくろとアデリシアが手当たり次第に敵を倒し、首魁の登場を待つ。
「もうお前の手下はほとんどやっつけたぞ! さっさと出てこい!」
 その呼びかけに応じ、リーダーが姿を現した。手槍に軽装というスタイルの敵で、身軽さが売りらしい。しかし、アデリシアのホーリーライトなら、それもあまり関係ない。
「貴様らに道義も礼儀もないのは知っている。だから容赦はしない」
 いきなり魔法で顔を叩かれたリーダーだが、ざくろへと向けた視線を絶対に切らない。さすがは群れを率いる長といったところか。
 だが、ざくろも負けてはいない。アルケミックパワーを付与したサーベルを構え、一気に間合いを詰める。武器を肩の上に携えたところを見ると、刺突を狙っているのか。おそらく最短距離で攻めるつもりだ。
「覚悟!」
 ざくろは駆け出すが、敵は動かない。相手の手が動くまでは耐えようと踏ん張った。
 可能性として、ここからサーベルを振り上げ、斬撃への移行もあり得る。そのわずかな動作で今後の攻めを構築しようとした……が、相手の手はまったく動かない。このままサーベルを突き出せば、自分の体に届こうかという距離まで迫っているのに、ざくろはただ猛然と向かってくるだけ。
 さすがにもう待っていられない。リーダーは身を翻し、すれ違い様に槍で突こうと動くが、その時見せたざくろの表情がこの後の全てを物語っていた。
「ざくろは……いつも仲間を信じてる!」
 それは、勝利を確信した人間の顔だ。リーダーは初めてざくろから視線を外し、アデリシアを見る。彼女は器用に鈍色の蛇を操り、それを足に絡ませてきた。
「ハンターは烏合の衆ではない」
「そりゃなんとも、羨ましいねぇ……」
 リーダーは敗北を悟り、無駄な抵抗を止めた。ざくろは急ブレーキをかけて振り返ると、頭上からサーベルを振り下ろす。これが初手だ。二度目はない。
「ぐはっ!」
 敵は背中を斬られ、その場に倒れこんだ。命には別状はないが、大ダメージには違いない。
 こうして3番船の戦いもハンターの勝利で終わった。

●白熊号での警戒
 ハンター船が海賊船との戦闘を繰り広げている最中、白熊号は全速前進で戦域を離れんとしていた。
 しかしあまりにも露骨な陽動にも思えたため、旗艦にも護衛のハンターがついた。浅黄 小夜(ka3062)もそのひとりである。少女は同じ目的で巡回するステラ・ブルマーレ(ka3014)と一緒に警戒に当たった。
「ロボット……動くよぉになったら……あのお船も……動くよぉになるかも……」
「そしたら宇宙船も動くようになる、か。そうだね、筋は通ってるね」
 小夜はコクリと頷くと、お家に帰れるようにがんばるべく、小さな歩幅ながらトコトコと巡回に精を出す。
 それを偶然見かけたダニエルはステラの傍に立ち、「あの子、帰りたいだろうねぇ」と呟いた。
「ダニエル中佐。今回の陸軍強化を嫌がってる人がいるんじゃないかな?」
「そんなんばっかりだよぉー? 黒狐塾中心のメンバー編成なんて、嫌な人にしたらホント堪んないんじゃないかな」
 いともアッサリと内情をバラすダニエルに、ステラは「これが昼行灯か」と少し呆れた目で見る。
「同盟は水面下での利権争いが強烈だから、不利益を被る人間に注意しないと危ないと思うよ」
「でも商人ならビジネスチャンスと受け止めるし、軍人なら配置換えとかの無茶振りで妨害すると思うんだよねー」
 ダニエルはとぼけた顔して頭を掻きながら、最後にこう言い添えた。
「今回の話で一番都合の悪くなる連中って、いったい誰だろうねぇ……」
 ステラがその答えを聞こうとするも、ダニエルは「しーっ」と唇の前に人差し指をかざした。
「その懸念に気づけたんだ。君も今に真実を知ることができる」
 そう呟き、ダニエルはその場を去った。

 一方、白熊号の応接室では、ザレム・アズール(ka0878)がモデスト・サンテ海軍少将と話し合っていた。
「まずはリゼリオの警戒を高めるよう、連絡すべきでしょう」
 彼は「自分が敵なら」と想定し、この先の展開を占う。同盟軍の注意を白熊号に集めて足止めし、その間にリゼリオで積み荷として待っているCAMを強奪する……これがザレムの立てた計画だ。
「ふぅむ……CAMの強奪、か。これが現実になれば、同盟の面子に関わる問題に発展しかねん。君の進言を聞き入れよう。その後、経由地であるヴァリオスからも海軍の増強を行うつもりだ」
「それが賢明でしょうね」
 ザレムがそう話すと、短伝話からハンターらの連絡が入った。どうやら無事に海賊を撃破し、ハンターは1隻の船で白熊号を追っているという。残り2隻は、どうしても海賊船の処理のために残す必要があるという。
「海賊は片付けました。報告は合流後に」
 モデストは勝利を確信していたとはいえ、無事に終わったと聞き、ホッと溜息をついて胸を撫で下ろした。

●報告の時間
 数時間後、ハンターたちが白熊号に乗船し、海賊退治の報告を済ませた。
 ジーナ・サルトリオは小夜と一緒に、皆の無事を喜ぶ。あの後、小夜は艦内でジーナに出会い、パイロットを名乗るおねえはんにも望郷の思いを伝えた。赤毛の少女は「絶対にCAMを動かして、お家への道を作ってあげるからね!」と約束し、今ではすっかり仲良しだ。唯一のパイロットは、CAM搭乗への気持ちを新たにしたという。ジーナも同名で赤毛のジーナという人物が気になっており、この機会に会って、軽く言葉を交わした。

 1番船に乗っていた渉は、海賊に「騙されてたんだよ」と諭すことで情報を得ていた。どうやら謎の人物にそそのかされ、白熊号の足止めを依頼されたらしい。
「並の海賊なら同盟海軍の旗艦にケンカを売るはずがないので、彼らは素人でしょうね」
 それを証拠に、降伏後のライエルの応急処置に涙したほどなので、よほどマヌケな海賊団と評されても仕方ないだろう。
 もっとも戦闘が早く終わった2番船からは、アイシュリングから交渉役についての情報が寄せられた。
「なんでもローブを纏ってフードをした背の低い人物で、表情がまったく変わらず、肌は艶々だったと」
 これを聞いたモデストとダニエル、そしてザレムは「バカに聞いたんじゃ、こんなもんか」と愚痴をこぼし、肩を落とした。
「しかし、先ほどの話と併せると、黒幕は表情ひとつ変えずに軽妙な語り口で海賊を騙したことになります」
 これに加え、フラヴィが「これはゲームだって言われたってさ」と言い添えた。彼女もリーダーから話を聞き出している。
「これは一攫千金のチャンスだともね。こんな言い回し、無表情でするものか?」
 最後に3番船に乗ったざくろも「こっちもローブにフードの人物だったって」と報告した。
「昼行灯、どう思う?」
 モデストはダニエルに尋ねると、彼は困った表情を浮かべながらゆっくりと話す。
「ここで話は終わらないってことでしょうなぁ。こりゃ気を引き締めてかないと」
「そうなるか。やれやれ、今回は長い任務になりそうだな」
 ハンターたちの情報から導き出される未来は、いったいどんなものになるのか。それはまだわからない。

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MVP一覧

  • 探し物屋
    牧 渉ka0033
  • Beeの一族
    Jyu=Beeka1681
  • 未来を想う
    アイシュリングka2787
  • 電脳シューター
    榎本 かなえka3567

重体一覧

参加者一覧

  • 探し物屋
    牧 渉(ka0033
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 運命の反逆者
    レム・K・モメンタム(ka0149
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • あざといショタあざとい
    三日月 壱(ka0244
    人間(蒼)|14才|男性|霊闘士
  • 英雄を語り継ぐもの
    ルスティロ・イストワール(ka0252
    エルフ|20才|男性|霊闘士
  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーン(ka0356
    人間(蒼)|32才|男性|闘狩人

  • フラヴィ・ボー(ka0698
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

  • Kurt 月見里(ka0737
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 穏かなる銃使い
    石橋 パメラ(ka1296
    人間(蒼)|20才|女性|疾影士
  • 仁愛の士
    ライエル・ブラック(ka1450
    人間(紅)|15才|男性|聖導士
  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • Beeの一族
    Jyu=Bee(ka1681
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 新勢力・芋炊の提案者
    葵(ka2143
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • ヒーローを目指す者
    鳴神 真吾(ka2626
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 未来を想う
    アイシュリング(ka2787
    エルフ|16才|女性|魔術師
  • 白狼鬼
    ネイハム・乾風(ka2961
    人間(紅)|28才|男性|猟撃士
  • 海と風の娘
    ステラ・ブルマーレ(ka3014
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜(ka3062
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師
  • 面倒見のいいお兄さん
    沢城 葵(ka3114
    人間(蒼)|28才|男性|魔術師
  • いつも心に盾を
    ユナイテル・キングスコート(ka3458
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 電脳シューター
    榎本 かなえ(ka3567
    人間(蒼)|13才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談所
沢城 葵(ka3114
人間(リアルブルー)|28才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/12/01 10:16:28
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/29 23:24:21