• 反影

【反影】DEADLOCK~隊長奪還~

マスター:鮎川 渓

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/02/22 22:00
完成日
2018/03/22 17:33

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●新たな『異界』へ
「これは」
 黒く発光するドーム。その外膜を潜った途端一変した景色に、シャンカラ(kz0226)は目を瞬いた。同行したハンター達もあまりの変化に周囲を見回す。
 たった今まで、確かに荒涼とした大地に立っていた。
 けれど今現在目の前にあるのは、煉瓦作りの街並みと賑やかな人々。北側に見える高台には、見るからに堅牢な城塞が聳えていた。

 ここは『虚無』と呼ばれる邪神の支配域。その内側に広がる『異界』だ。

 紅界にあって紅界でない場所、邪神によってすげ替えられた異空間。それが『虚無』。
 これまでの調査で、『虚無』の内側には必ず『異界』が広がっている事が分かっている。それは紅・蒼・緑のどこの世界にも属さない全くの異世界であったり、あるいはそれら三界のどこかであったりと様々だった。

 シャンカラは軽く頭を振り、ハンター達に向き直る。
「早速調査を始めましょうか」
 虚無を除くためには、異界の中核となる歪虚を討伐する必要があるらしい。それに先立ち異界探索に来たというわけだ。続いて彼は通信機でダルマ(kz0251)に呼びかける。
「こちらA班、北西に城塞のような建物が見えています。そちらはどうです?」
『B班からは城塞が北東に見えてるぜ』
 ダルマの声が応じた。今回、ここにいるシャンカラとハンターで構成されたA班と、ダルマとハンター達B班とが別方向から同時に異界へ踏み込み、広く調査する手筈となっている。
 すると、通りの向こうから管楽器の音と、人々の歓声が聞こえてきた。
「何だろ?」
「お祭り?」
 言い交わしていると、今度はダルマから通信が入る。どこぞで騎士達の凱旋パレードが行われているらしく、B班はそれを見に行ってみると。それを聞きひとりのハンターが首を捻る。
「パレード? ここ邪神の支配域でしょ? おまけに、異界は邪神の記憶なんじゃないかって言われてるのに、随分賑やかね?」
 その通りだった。A班がいるのは小さな工房が立ち並ぶ工業区域のようで、槌の音や機を織る音などが絶えず流れており、この街の活気が感じられた。こっそり中を覗くと、黒い髪に白い肌の人々が忙しなく働いている。工房の設備や人々の身なりを見るに、西方と同程度の文化水準であるらしかった。
「私達も行く?」
「そうだね」
 ハンター達が頷き合うと、次々に工房を覗き込んでいたシャンカラが待ったをかけた。
「見た限り、この街の住民は皆『人間』のようです。『人間』以外の方は、念のため種族の特徴的な部分を隠したほうが良いかもしれません」
 そう言って、ドラグーンの彼自身も外套を口許まで引き上げ、下ろした前髪で額を隠す。鱗を見せないようにだ。全員の支度が整うのを待って、パレードが行われているらしい賑やかな方へ向かった。

●竜人《ドライダート》
 やって来た大通りの沿道には、この街の黒髪白肌の人々に加え、異国人らしい様々な髪と肌の色をした大勢の人々が集まっていた。厚い人垣ができていて、このままではパレードの様子を臨めそうにない。
 そこでシャンカラのおのぼりさん根性と、端正な顔立ちから繰り出す微笑が効力を発揮した。
「すみません、そこ空いてます? え、良いんですか? どうもすみません。皆さん、ここ入れますよー」
 人好きのする笑みでぐいぐい分け入っていく。ハンター達は顔を見合わせたが、これも調査の一環。多分、一環。彼に続き人混みへ分け入っていった。
 そして目にした騎士の隊列に、誰もが息を飲んだ。
 丁度、パレードの先頭が目の前を過ぎていく。軍馬を駆り、豪奢な鎧に身を包んだ騎士達。その背には龍に似た翼が生え、鱗に覆われた長い尾を持っていた。翼や尾の色は様々だが、彼らはこの街の人々と同じ黒髪と白い肌をしている。そんな彼らへ人々は喝采を浴びせた。
「ドライダートの騎士様方、ご無事で何より!」
 シャンカラは『ドライダート』と呼ばれた龍翼の騎士達を見つめる。
「まるで龍と人の調和を体現したような姿……何て美しい」
 ドラグーンは、かつて青龍と直接血の契約を交わした者達の末裔だ。ドラグーンの鱗は龍と人とが古くから共にあった証とも言える。少なくともシャンカラはそう思っているし、自らの碧い鱗を誇りに思っている。だからこそ、鱗ばかりか翼や尾までを持つ彼らに羨望を抱いたのだ。
 その内、一際立派な白馬に跨る青年が現れた。彫刻のように整った顔立ちの彼もまた、碧い龍翼と龍尾をそなえている。その碧は、シャンカラの鱗の色と良く似ていた。
 青年の姿に、群衆は更に声を大きくした。
「皇子様!」
「偉業を成された皇子に万歳!」
 そして辺りは皇子様万歳、ドライダート様万歳と、彼らを寿ぐ唱和で溢れた。それは凱旋を祝うと言うよりどこか熱狂的な信仰に似て、人々は異様な熱気に包まれる。皇子は人々へ鷹揚に頷き返していたが、熱心に見つめるシャンカラに気付くと、視線を合わせ微笑んだ。
「皇子様ーッ!」
 その時、シャンカラの後ろにいた女性が、興奮のあまり彼を押しのけようとした。はずみで外套がはだけ、顔の鱗があらわになる。途端、皇子の顔が激しい怒りに歪んだ。
「半可者め、この佳き日によくも顔を出せたものだな! あの者を捕らえよ、他国の者の目に触れぬよう牢へ閉じ込めておけ!」
 何を言っているかは分からないが、既に皇子の周りの騎士達は闘志を剥き出している。マズいと感じた次の瞬間、シャンカラの身体が崩折れる。一瞬の内にどう移動したのか、シャンカラの背後に龍翼の騎士が立っていた。驚いていると、今度は別の騎士がシャンカラの横に現れ、気絶した彼を悠々と担ぎ上げる。かと思うと次の瞬間には、彼を抱えたままもう馬上に戻っているのだった。
「何が起きたの?」
 呆気にとられるハンター達をよそに、隊列は再び進み始める。群衆もまるで何もなかったかのように喝采、喝采。
 我に返ったひとりがダルマへ連絡し、A班はこのままシャンカラ奪還へ向かう事になった。

 彼を抱えた騎士の後を付けていくと、やがて騎士は隊列を離れ、円形闘技場と思しき建物の地下へ入っていった。
「こんな場所に牢が?」
「とにかく行ってみましょう」
 ハンター達は件の騎士が出て来るのを待って、地下牢へ潜入する事にした。

●邂逅
 シャンカラが意識を取り戻すと、そこは薄暗い牢の中だった。当然剣は取り上げられている。太い鉄格子を見、何がどうしてと頭を抱えた。……と、
『気付いたか』
 嗄れた声が響いた。振り返ると、同じ牢の中に5人の人間がいた。いや、よく見れば彼らは『人間』ではない。片翼の者や、四肢の一部に鱗がある者――『人間』でも、龍翼龍尾の『ドライダート』でもない者達だった。しかし彼らは虚ろな目で横たわるばかりで、声をかけてきた様子はない。
 薄闇に目を凝らすと、果たして声の主は向かいの牢にいた。――それは見上げる程大きな、年老いた一頭の『龍』だった。

リプレイ本文

●Count start
 シャンカラ(kz0226)を捕らえたドライダートの騎士を追う内、A班は巨大な円形の建造物へ辿り着いた。切り出した赤茶色の石を整然と積み上げて建てられたそれは、見上げる程大きく、屋根のない作りだった。メインゲートの上部には、剣と剣が交差する意匠が掲げられており、ここが競技場ではなく闘技場であると告げている。
「大きいですねぇ、1万人くらいは入りそうですー……一体どんな催しがされるのかしらぁ?」
 その途方もない規模に、氷雨 柊(ka6302)は思わずため息混じりに漏らす。小柄な柊と比べると、闘技場の大きさが際立って感じる。では一体、誰と誰が闘うのを見物するために、1万もの人々が集まると言うのだろう。柊がそんな事を考えていると、
「……入っていったね」
 油断なくドライダートの騎士を目で追っていたユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が呟いた。騎士が入っていったのは、建物側面にある関係者通用口と思しき簡素な扉だ。
「まさかのスニーキングミッションかぁ。でも、情報を得る丁度良い機会と思えば、多少は気が楽……」
 になればいいなぁ、とユーリは唇の内で付け足す。元々この異界調査をしに来たはずだったのに、思わぬ事になったものだ。そんな彼女の思いを汲み、トリエステ・ウェスタ(ka6908)は自らの身体を両腕で抱きしめる。
「本当よね。いやはや、シャンカラさんをあっさり捕らえるんだから、私じゃ手も足も出ないわね。捕まって“あんなこと”や“こんなこと”されないように、こっそり救出しなくちゃ」
 でもって意味ありげにくねくねと身を捩らせるものだから、豊満なお胸がゆさりと揺れて、
「は、はにゃ……」
 同性の柊でさえ目のやり場に困ったり。
 一番動揺してもよさそうな唯一の男性、アーク・フォーサイス(ka6568)はと言えば、シャンカラが運ばれていった通用口をひたと見据えて動かない。
(シャンカラのことは心配だけれど、焦っては駄目だ)
 アークとシャンカラは龍園開放以来の友人。そんな友人の危機に際し、逸りそうな心を宥めるのに集中していて、全く気付いていなかった。そんなアークをあらまぁと横目で見つつ、トリエステはグローブをしっかり嵌め腕の鱗を隠す。
「ドラグーンは私だけね? シャンカラさんが捕らえられた時の様子を見るに、鱗見つかると面倒そうだし、しっかり隠しておくわ」
「その方が無難ね」
 ユーリは、シャンカラに対してドライダートの皇子が見せた、あからさまな敵意を思い出し頷く。あの排他的で蔑むような冷たい眼差し。何か根深い差別意識、あるいは選民思想のようなものがあるのではと、ユーリには感じられてならないのだ。何が起きても不思議ではない異界だ、トリエステの慎重な判断は正しい。
 4人は物陰に身を潜め、シャンカラを運んだ騎士と鉢合わせぬよう、騎士の退出を待って潜入する事にした。

   *

 一方、北の城塞内。
 パレードを終え、ドライダートの皇子が自室へ戻ったところだった。待ち受けていた従者達に、旅装を解くのも後回しに尋ねる。
「戻った。国内の様子は変わりないかい?」
「日に日に難民が増え、南側は飽和状態です。難民による窃盗事件なども相次いでおり……」
「この部屋の物は皆処分して構わない、その分で炊き出しや救済小屋の設置を。いい機会だ、後宮の肥やしも整理してしまいなよ。父上のお加減は?」
「陛下はここ数日顔色もよろしく、明後日の式典へのご出席は問題ないかと」
「それは何より」
 喜びを口にしながらも、皇子の顔は晴れない。従者達にされるがまま鎧を解かれながら、赤金色の龍尾の先を小刻みに動かし、じっと何かを考え込んでいる。
「如何されました?」
「……近衛兵長を呼んで欲しい」
 それから1分もかからず、大柄な兵長が現れた。壮年の彼は深い藍色の翼と尾を持っている。
「お呼びですか」
 皇子は従者達を下げると、気心知れた彼に対し不安げな表情を見せた。先程までの皇族らしい威厳は消え、二十歳前後の若者らしい顔になる。
「お前、さっき捕らえた半可者を覚えているかい?」
「あの白髪の者ですか」
「訊き方が悪かった、“あの半可者の顔に覚えがあるかい”? これまでドライダートに“する”のは我が国の騎士、中でも腕の立つ優秀な者に限って来た。ドライダートの翼や尾の色は、力の源となった竜のものを引き継ぐが、稀に髪や目の色にまで影響を受ける者もいる……あの者もそういった者だろうか」
 この国の人間ならば黒髪が普通で、白髪なのは老人ばかりだ。兵長は顎に手を当て思案する。
「他国が独自にドライダートを作ろうとしているという話は聞いた事がありませんし、まずそんな余力はないでしょう。我が国の元騎士と考えるのが妥当かと」
「おかしくないかい? お前も私も顔を覚えていない『優秀な元騎士』なんて」
 兵長は皇子の言わんとするところを察すると、
「記録簿を調べて参ります」
「私も直接確認したい。持ってきておくれ」
 最敬礼で応え、急ぎ部屋を辞した。


●15 min. elapsed
 A班の4人が見つめる中、通用口から例の竜翼の騎士が出てきた。見送りに出て来たふたりの男は人間で、武装などはしておらず闘技場の用務員と言った風だ。
「やっと出て行ったわ。シャンカラさん、もう起きてると良いんだけど」
 トリエステは紡いだマテリアルを艷やかな唇に乗せ、ここにいないシャンカラへ語りかける。
「……シャンカラさん。シャンカラさん、聞こえるかしら?」
 エレメンタルコールは、語りかける側は言葉を声に出さなければならない。誰かに見咎められても怪しまれぬよう、3人は相槌を打つ素振りをしつつ、辺りの警戒に当たった。

   *

『気付いたか』
 ちょうどその頃。牢の中で目を覚ましたシャンカラは、向かいの牢に巨大な老龍がいる事に気付いた所だった。
「あなたは……今の声、もしかしてあなたが?」
 老龍は答えず、驚いたように彼を見下ろしている。一方同じ牢の男達は、この新入り気でもおかしくなったかと顔を見合わせていた。構わず、シャンカラは鉄格子に取り縋る。
「ここは一体……あなたはどうして、」
『――シャンカラさん、聞こえるかしら?』
「どうして僕の名前を……って、この声はトリエステさん?」
 頭の中に直接響く聞き慣れた声に、彼は思わず辺りを見回す。
『シャンカラさんの事だから、「この声はトリエステさん?」とか言っちゃってるんでしょうけれど、生憎こっちには聞こえないの。怪しまれたら困るから、黙って聞いて頂戴』
「あ、はい」
 図星をさされた上に思わず返事までしてしまい、シャンカラは真っ赤になった顔を覆った。そのまま口を塞いで彼女の言葉を待つ。
『今から助けに行くわ。もし他に捕まっている人がいれば、今のうちに一緒に脱出したい人はいるか聞いておいて欲しいの。それに……気付いたか分からないけれど、シャンカラさんが今いるのは闘技場の中よ。何だってこんな所にって感じよね。見張りに見つからない程度に、ここがどういう場所なのか聞き取りをしておいて貰えるかしら』
「分かりました、皆さんもお気をつけて」
 また声にしてしまって自分の馬鹿さ加減に頭を抱えたシャンカラだったが、馴染みのトリエステの声が聞けて、動揺していた気持ちがすっかり落ち着いた。ひとつ息を吐き振り返れば、同じ牢の中には彼自身と似て、肌の一部に龍鱗を持っていたり、片翼しかない男達が、訝しむように見返していた。


●20 min. elapsed
 超聴覚を発動した柊は、尖った耳と、銀髪の間から生やした猫耳をどちらも扉に押し当てて、中の様子を探る。
「……近くに人がいる気配はありませんねぇ。入ってすぐ地下へ下る階段になっているみたいですー、吹き上げてくる風が扉にぶつかる音がしますよぅ」
「そんな事まで分かるんだね」
 アークは法術脚甲に布を巻きつけながら、感心して頷く。トリエステはマッピングセットを取り出し準備万端。ユーリは万が一の接敵に備え、己が身より長大な蒼姫刀の柄に片手を添えた。
「なるべく声を出さなくて済むよう、身振りで合図するわね」
「はーい、それじゃあ行きましょうー……」
 柊は古びた真鍮のドアノブをゆっくり回す。微かにキィッと音を立て、扉は難なく開いた。そうっと中を窺うと柊の見立て通り、中は地下へ続く階段になっていた。
 周囲の物音を敏感に察知できる柊を先頭に、足音を殺すため靴に布を巻いて用心したアーク、マッピングセット片手のトリエステが続き、最後に殿のユーリが詰める。
 階段を降りきった先は長い廊下が伸びていた。半地下らしく、壁の上部に明かり取りの小窓が並び、思いのほか明るい。緩やかに湾曲した廊下を進んでいくと、柊が猫耳をぴくぴくと動かした。右手の壁に身体をぴたりと寄せ、
「この壁の向こうから人の声がしますよぅ」
 ほとんど吐息だけで告げる。行く手を見れば、右側の壁に扉があった。
「さっきの用務員達の詰所?」
「トリエステ、頼んだよ」
「任せて」
 更に慎重に扉まで進み、もう一度柊が中を探る。話し声からして中にはふたり。正面にひとり、左側にもうひとりいると指差しで告げると、トリエステは扉を僅かに開き銀霊剣を差し込んだ。流石に気付かれてしまい、驚き振り向いた男達へ、蠱惑的な笑みで手を振る。
「お疲れ様、ちょっと休んだらどうかしら?」
 そう言った時にはもう、 銀霊剣の宝玉が妖しく煌めき、眠りを誘う青白い靄が室内に充満していく。非覚醒者の男達はひとたまりもなく床へ倒れ込みそうになる。すかさず息を止めたアークが飛び込み、ふたりの身体を支えると、静かに床へ横たえた。他の3人も靄が四散するのを待って入室する。ユーリは廊下にひと気がない事を確認してから、元通りに扉を閉じた。
「やだ、完全に用務員の詰所って感じ。牢の鍵や闘技場の見取り図があればと思ったんだけど」
 掃除用具から施設の修繕道具までが雑然と置かれている小汚い部屋を見回し、トリエステは肩を落とした。
 アークは男達の懐を念入りに探り、諦めたように首を横に振る。
「鍵は持っていないね」
 そうしてロープを取り出すと、男達の手足をきっちりと結わえた。起き出しても騒がれないようにするためだ。トリエステもロープを手にし、
「別にそういう趣味ってわけじゃないのよ?」
 誰にともなく言い訳しつつ、猿轡までしっかり噛ませる。これで目を覚まされてもしばらく時間が稼げるはずだ。
「見て、これ」
 室内を物色していたユーリは、様々な紙が貼られたコルクボードを指さした。そこには闘技場で行われるのであろう、催しの日程表が書かれている。『7の月』までの日付はすべて×印がされていた。
「今日は『8の月』の朔日って事みたい。……今日の予定は何もなし。明日は『選考試合』、明後日は『討伐・授与式』……?」
「試合に討伐、ですかぁ」
 柊は柳眉を寄せて小首を傾げる。闘技場の予定として組み込まれているのだから、討伐対象は既に確保されていると見て間違いないだろう。
「あんまり考えたくはないですがー、闘技場という事を考えると……捕まっている方が戦わされるのでしょうかぁ」
「『試合』の方ならならまだしも、捕まっている者達が『討伐』されるって事はないだろうね」
 不安を口にしたアークに、ユーリは小さく肩を竦めただけだった。あの異常とも思える皇子の敵愾心を思えば、なきにしもあらずに思われて。
「あら、こっちは闘技場の俯瞰図ね」
 トリエステが書架の脇に掛けられた精密画を見つけた。内部の構造まではわからないが、闘技場の外観を知るには十分だ。通用口から入って、大体今はこのあたり……と、自らがマッピングしてきたメモと照らし合わせる。
「本当に、随分大きい施設ですねぇ。廊下はまだ先へ続いていましたしー、そろそろ先へ進んでみましょうかぁ」
 トリエステが大まかに俯瞰図を写し取るのを待って、4人は詰所を後にした。


●50 min. elapsed
 途中、廊下は二手に分かれていた。トリエステのマッピングと、柊の方向感覚を駆使して、片方は闘技場内の舞台(あるいはリンク)に出る通路、もう一方は更に奥へ続く通路と見当をつけ、時間をロスする事なく階下への階段に辿り着いた。
 地下二階は、明かり取りの窓に代わって燭台が並ぶ程度の変化しかなく、単調な道のりが続いた。慎重に進むあまり、途中後方から見回りの者に接近されそうになったが、いち早く気付いたユーリが落ち着いて柱の陰に潜むよう促し、待ち伏せて再び眠らせて拘束という手順で難なくやり過ごした。平常心を保つ事に長けたユーリが殿についていた事が功を奏し、連携がうまく機能したのだ。
「また階段ですよぅ」
 拘束した男達を脇に寄せていると、柊が更に地下へ続く階段を見つけた。
「今度こそ当たりだと良いんだけど」
 緊張の連続では身が持たない。気を引き締め直し、再び階段を降りていく――と、
(止まってくださいー)
 先頭の柊が身振りで告げた。柊が指す先を見れば、階段を降りきった場所は今までになく煌々と明るく照っている。そうっと身を乗り出して見れば、降りきったすぐ左手に大きく間口が開かれ、かつ扉のない部屋がある。そこから漏れた明かりで、廊下までが明るく照らされているのだ。
 耳を澄ますと、柊以外の者にも若い男の声が聞こえてきた。
「……ったく、同じ空間に竜がいるなんざぞっとしないぜ」
「でも今回の個体は酷く大人しいから」
「それが余計に不気味っつーかよ。捕獲する時もほとんど抵抗しなかったそうじゃねーか」
「もうこの世で最後の竜、それも竜族の王だって話だからね。抵抗した所でって観念したんじゃないか?」
「竜族もいよいよ終わりか。おれらもこれで晴れてドライダートの仲間入りってわけだ」
「くれぐれも牢の中の連中の仲間入りようにしないとね」
 話し声の合間に、衣擦れではなく微かな金属音が聞こえてくる。どうやら相手は鎧を身に着けた騎士であるらしい。
(話の内容からして、相手はドライダートではないみたいだけど……)
 漏れ聞こえた不穏な言葉に、ユーリは眉を顰めた。アークはシャンカラが捕らえられた時の光景を思い出し、奥歯を噛む。
(やっぱり『ドライダート』っていうのは先天的な種族じゃなく、人為的に作られた種族……? だとしたら『半可者』っていうのは……)
 ドラグーンであるトリエステは、グローブの上から自らの鱗をそっと撫でた。
「竜だか龍だか分からないけど、あんまりいい気持ちしないわね。……行くわ。また速攻でスリープクラウドかけるから、フォローお願い」
 間口が大きく扉もないのなら、身を隠す術はない。速攻を仕掛ける他ないと踏み、トリエステは滑るように残りの階段を駆け下りると、男達を射程に収めるや即座に術を発動する。
「何だお前たち、は」
 言うが早いか膝から崩れ落ちる男達へ、再びアークが駆ける。だがしかし小柄なアークが、甲冑を着込んだ体格のいい男をふたりも同時に支えるのは困難だった。片方の男は我が身を滑り込ませるようにして支えたものの、もうひとりはあえなく床に倒れ込んでしまう。鉄の甲冑が床と強か接触し、乾いた金属音が響いた。
「しまった!」
 耳障りな音が廊下に反響し、どこまでも鳴り響いていくかに思われた。全員の心臓が早鐘のように鳴る。柊は懸命にそれ以外の音を拾うべく聴覚を研ぎ澄ます。しばらく固唾を飲んで動きを止めていたものの、
「……大丈夫です、近づいてくる足音などはありません」
 ややあって柊が真剣な口調で告げると、全員大きく息を吐いた。
「なら鍵を探しましょう。まだ油断はできないから、なるべく急いで」
 いち早く我に返ったユーリの声を機に、全員で手分けして男達の懐や机の上を探る。鍵の代わりに机の一箇所、鍵の掛かった抽斗が見つかった。
「多分鍵はこの中ね」
「なら開ける手間が惜しいですねぇ、先へ行きましょうかー」
「待って、これシャンカラの剣だ。もしかしたら鎧もどこかにあるんじゃないかな」
 出て行きかけた柊に、アークが奥から特徴的な形の大剣を引っぱり出して見せる。更に探すと、果たしてアークの読み通り鎧や外套が出てきた。
「これは持っていってあげないとね」
 嵩張るし重いが、アークは鎧や手甲を外套で包み、ひとまとめにして抱え込んだ。ユーリが剣を引き受け、今度こそ部屋を出る。するとすぐに、通路の両脇に鉄格子が見えてきた。

「あっ、皆さん! 良かった、ご無事でしたか」
 鉄格子に額をくっつけていたシャンカラが、腕を突き出して手を振る。案外元気そうというか、緊張感に掛けた声音に、一同どっと疲れが出た。トリエステは深々と息を吐き、薄闇に凝らし続けて疲れた目許を揉む。
「ご無事でーって、それはこっちの台詞よ。“あんなこと”や“こんなこと”されなかった?」
「? とりあえず元気です」
「お怪我などなくて良かったですよぅ」
「……ドラグーンって、皆こうマイペースなの?」
「さあ、それは分からないけど」
 真顔になるユーリに苦笑して、アークは荷物を置き、鉄格子の扉にかけられた錠前を手に取った。
「見た事がない形の鍵穴だ……でも、やるだけやるしかないね」
 シーブスツールを取り出し、ピッキングのスキルを使用し鍵開けに挑む。細い針金状の道具を鍵穴に差し込み、指先に全神経を集中させ、僅かな手応えを頼りに内部の構造を探っていく。シャンカラは鉄格子越しにその手許を覗き込みながら、
「すみませんアークさん。鎧、重かったでしょう? ユーリさんもありがとうございます」
 頭を下げたが、アークは黙って人差し指を唇に当ててみせた。集中したいという事らしい。
「ごめんなさい」
 しょぼんと肩を落とすシャンカラへ、代わりにユーリが応じる。
「気にしないで。……それはそうと。私、向かいの牢が気になって仕方ないんだけど」
 ユーリが後ろを振り仰ぐと、足許まで豊かに伸びた白銀の髪が波打つ。薄暗い地下牢の中に、銀光の粒子が振りまかれるかのようだった。落ち着き払った藍玉の双眸が見据える先――通路を挟んだ向かいの牢の中、凝った薄闇に身を沈めるようにして、一頭の年老いた巨龍が座していた。牢の中には見るからに頑丈そうな鉄の檻があり、龍はその中に入れられている。
「お、大きいですねー……」
 柊は思わず目を瞬く。元龍騎士として青龍に仕えていたトリエステは、
「青龍様ほどではないけれど……こんなに大きな龍は、龍園にいても滅多にお目にかかれなかったわ」
 龍園で暮らしていた頃を思い出し呟く。すると、その呟きが聞こえたのか、巨龍は金色の瞳で静かにトリエステを見下ろした。
『……先程彼に話しかけていたのは君か』
「え?」
 一瞬誰が喋ったのかと一同は顔を見合わせた。紅界でも人と会話ができる龍は、余程高位の龍に限られている。
「話ができるの?」
 尋ねたユーリに視線を移し、龍は不思議そうに首を捻る。その仕草はどこか人間じみていて、人の良い老父を思わせた。
『君達は私の言葉が分かるのだね? 随分長い事生きてきたが、人間と話すのは初めてだ。先程彼に話しかけた奇妙な術といい……ああ、君達は大いなる魂の加護を得ているのだね。けれどこの星のものとは違うようだ』
「『大いなる魂』……大精霊さんの事でしょうかぁ」
 かくりと小首を傾げる柊。アークは会話に耳を傾けながらも、鍵開けに集中していた。見たことも聞いたこともない様式の錠に苦戦を強いられているのだ。柊は絶えず周囲の物音に気を配りながらも、巨龍を仰ぎ尋ねた。
「折角お話できるのですし、質問しても良いでしょうかぁ? ここは闘技場、ですよねぇ。来る途中で、『試合』や『討伐』と書かれた予定表を見てきたのですがー……捕まっている方が戦わされているのですかぁ?」
 ユーリも口を添える。
「この場所は何の為にあるのか知りたいの。周囲の街の規模に対して、不自然なくらいに大きいでしょう?」
 すると巨龍は可笑しそうに目を細めた。
『人間から人間の建物について尋ねられるとは思わなんだ。さあて……いつ建てられたのか、何の目的で建てられたのかは分からないが。ひとつ確かな事は、『討伐』されるのは私だと言う事だよ』
「何故です!?」
 声を荒げたのはシャンカラだった。
「僕にはあなたが悪しき『竜』には感じられません。僕達が信仰している、星の守護者たる青龍様に近しいような……良き『龍』に思えてならないのですが。何故あなたが討伐されなければならないんですか!?」
『…………』
「……それは、多分」
 口を噤んだ巨龍に代わり、アークがぽつりと呟いた。次の瞬間、彼の手の中で錠がカチャリと音をたてて外れる。幼馴染の祈りが、虚無の壁を越えて届いたのだ。
「君と同じ牢にいる彼らと、関係があるんじゃないのかな」


●90 min. elapsed
 城塞内。
 これまでに討伐してきた竜の種類と、その“力”を得た騎士達を紐づけて記した記録簿。その最後の頁までめくり終えた皇子は、険しい顔つきで頭を振った。
「……やはり、あのような者はいない。碧い鱗を持つ竜を屠った際、その“力”を得たのは全て私の良く知る騎士ばかりだ」
「だとしたら、あの半可者は一体何処から……」
 皇子は記録簿を閉じて立ち上がる。そしておもむろに窓を開けると、竜翼を大きく広げた。
「行こう。捨て置くわけにはいかない」
「はっ」
 そうして竜翼を羽ばたかせ、皇子と兵長は城塞を飛び立つ。東の闘技場へ向けて。

   *

「あの皇子が、シャンカラを見て半可者と指した時から気になっていたんだ。もしドライダートを人為的に作っているのであれば、『半可者』っていうのはそれに満たなかった者なのかなって」
 アークの金色の獣眼が、牢の奥にいる男達を映した。彼らは目の前で牢破りが行われているというのに、騒ぐわけでも逃げ出そうとするでもなく、ただ一行を怪訝そうに眺めるばかりだ。アークはこれといった反応がないのを見、シャンカラに彼の装備を手渡しながら言う。
「途中で聞いた、人間の騎士達の会話……竜族の終わり、つまり“君”を討伐すれば、ドライダートの仲間入りができる……つまり、人間がドライダートに作り変えるには龍が……“君”が必要という事じゃないのかな」
 推測を口にしながら、竜族の――むしろ龍族と表記すべきだろうか――王を振り仰ぐ。歳老いた龍の王は、別の星から来たらしい人間達を目を細めて見つめた。
『君達は賢い。それに勇敢で、君達の星の大いなる魂に愛されている。……左様、“人間”を龍翼龍尾の種族に作り変えるためには、我々龍族の血肉が要るのだよ。それも心の臓が動いている内に口にしなければ』
「何故そんな事をしてまで……龍翼龍尾の騎士とあの皇子は、この世界にとってどういう存在だと言うの?」
「過去に、人と龍の間で何かあったのですかぁ?」
 尋ねるユーリと柊に、
『ふむ。我ら龍族は、この星の大いなる魂の命を元に、世界の秩序を保つ役割にあったのだよ。この星の人間達は星中に版図を広げるにつれ、星に生きるひとつの種としての道から逸脱していってしまった。他の生物を顧みることがなくなってしまったのだよ。よって我らは、時に汚水を河へ垂れ流す鉱山や工場を焼き払い、焼き畑の火が山に及ぼうとすれば大風を起こし、火を街の方へ押しやったりした。たまにやりすぎる事もあったかもしれないがね』
 龍は答えて茶目っ気たっぷりに片目を瞑る。
『人間にとっては害獣であったろう。そんな我らを討ち取り、我らの力を得る龍翼の騎士達は……ことそれを主導する皇子は、人間達にとって英雄であろうよ。そればかりか――今彼らは星を守るため、真の英雄にならんとしている』
「星を守る? 一体何から、」
 再びユーリが口を開いた時、龍はふと宙を仰いだ。
『少々喋りすぎてしまったようだ……もう行きなさい。そうして、もう二度とここへは来てはいけない。ここはいずれ滅びる星だ』
 そう言ったきり、龍は背を丸めてうずくまり、固く目を閉ざしてしまった。
「待って、まだ訊きたい事が……!」
「君は逃げないの? 良ければそっちの牢の鍵も……」
 けれどどんな言葉をかけようと、龍は二度と口を開く事はなかった。黙って話を聞いていたトリエステは、牢の男達に向き直る。
「あなた達は一緒に行く?」
 けれど無反応な男達に代わって、シャンカラが首を振った。彼女の指示で尋ねておいたのだが、芳しい反応はなかったのだ。
 ひとまず、シャンカラを奪還するという目的は果たした。一行は来た通路を引き返していく。ドラグーンであるふたりは振り返り、最後まで龍の王を見つめていたが、やがて仲間に促されるようにしてその場を後にした。
「……どうせこの星のどこへ逃げたって……」
 そんな絶望に満ちた男の呟きが聞こえた気がしたが、もう誰一人足を止めることはなかった。


●Limit
「……大丈夫ですー、誰もいません」
 外の様子を確かめてから、柊が通用口を開け放つ。酷く久しぶりな気がする陽光の下へまろび出ると、5人はようやく安堵の息を吐いた。B班へシャンカラ奪還の一報を入れ、またひとつ息を吐く。
「このまま一度異界から離脱しましょう、B班もそろそろ情報収集を終えるはず」
「ええ」
 5人は異界に突入したポイントを目指し、街の端を目指して駆け出した。闘技場の敷地を抜け、宿屋街に差し掛かろうとした時だ。ふいにさっと陽が翳り、一斉に空を見上げる。するとそこには、太陽を背にした皇子と兵長が、龍翼を羽ばたかせ一行を見下ろしていた。
「……!」
 すかさずユーリが抜刀し構える。柊もロザリオを媒体にマテリアルを練り始めた。しかし。
「…………」
 ふたりのドライダートはじっと5人を見下ろしている。探るように、訝るように。アークとトリエステは、たちまちシャンカラが殺気立つのを感じ必死に押し止める。
「ここで騒ぎを起こすのはまずい」
「落ち着いて、隊ちょ……シャンカラさん!」
 そんなシャンカラと視線を交えると、皇子は低い声で言った。
「お前は一体何者だ?」
「龍に剣を捧げる者です」
 龍狩りを主導しているという皇子に、シャンカラは挑むように答えた。
「…………」
 皇子はしばらく黙って一行を見下ろしていたが、ややあって言い放つ。
「どこへなりと行くがいい。逃げおおせられるものならな」
「……行きましょう」
 皇子たちに害意がないことを察したユーリが、皆の背を押すように走り出す。今にも剣の柄に手をかけそうなシャンカラを、アークとトリエステは半ば引きずるようにして街の端まで駆ける。
 そうして気付いた時には、不気味な赤い空の下、グラウンド・ゼロ付近の死に絶えた大地に立っていたのだった。



 無事B班と合流し、龍園ハンターオフィスの一室にてそれぞれ調査結果を報告し合う。
 それぞれが持ち寄った情報を合わせる事で、あの異界の全貌がおおよそ明らかになった。
「……ではあの国、いえ星は、6日後に邪神によって滅ぼされる事が決まっていて……それを皆が予言によって知っている世界って事?」
 愕然とするユーリ。アークは思案気に机の上で腕を組む。
「あの皇子が龍狩りを先導して、ドライダートの騎士達を作っていたのは、邪神に抗うためだったんだね……絶望するあまり自暴自棄になって、自滅してったっていう他の国々よりは、その……抗おうとする意志は、理解できなくもないけれど」
「それにしたって、龍を材料にドライダートを作るなんて。それに闘技場の予定表にあった2日後の『討伐・授与』って、異国の人間をたくさん招いて、その目の前で龍の王の討伐ショーをするって事なんでしょう? ドライダートがあの世界の希望だかなんだか知らないけど、ちょっとどころじゃなくもやもやするわ」
 そうまくしたてるのはトリエステだ。今は龍騎士隊を辞しハンターになったとは言え、元々彼女も青龍に剣を捧げていた。思うところはあるだろう。
「あの『半可者』さん達を捕まえていたのはー、ドライダートの失敗作……って言ったら失礼ですけどぉ……彼らを、民衆の目から隠すためだったんですねぇ。予言をした巫女さん達を害してしまった事といい、なんだか、こう……」
 柊は胸につかえた気持ちを上手く言葉にできず、俯いた。
 シャンカラは全ての報告を聞き終えた後も、硬い表情で押し黙っている。
 龍狩り。
 かつて龍園が外界との交流を断つ要因となった忌まわしい歴史が、彼の脳裏に蘇っていた。
 隊長が進行役を放棄してしまったために、代わりにダルマ(kz0251)が立ち上がる。
「ともあれ、あの異界を知るにゃ十分な情報が得られたな。両班とも感謝するぜェ。で、だ。あの虚無を破壊するためには、中核となる『管理者』を討伐しなきゃなんねェ。他の異界調査隊から挙がってきた報告を見るに、その管理者はその異界にとって重要な時と場所に、外からの侵入者……つまり俺らだな、が居合わせねェと出てこないらしい。
 問題は管理者が現れる“重要な時と場所”ってなァいつ・どこかって事だ」
 柊はかくんと首を傾げる。
「予言されている邪神の到来日でしょうかぁ? 邪神の代わりに、管理者が現れるとかー」
「でも、最後の龍が人間の手で討伐されて、同時に多くのドライダートが誕生するはずの2日後……それが行われる闘技場も、あの世界にとって重要な意味を持つような気がするわね」
 とユーリ。ダルマはがしがしと頭を掻いた。
「あーどっちもありそうだなァ。……どう思うよ、隊長殿?」
「…………」
「シャンカラ、大丈夫?」
 アークがそっと声を掛けたが、シャンカラは碧い瞳をじっと机の一点に据えたまま微動だにせず、口を噤んだままだった。無言の内に、秘めきれぬ怒気を湛えて。


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  • 決意は刃と共に
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参加者一覧

  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 一握の未来へ
    氷雨 柊(ka6302
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 決意は刃と共に
    アーク・フォーサイス(ka6568
    人間(紅)|17才|男性|舞刀士
  • 龍園降臨★ミニスカサンタ
    トリエステ・ウェスタ(ka6908
    ドラグーン|21才|女性|魔術師

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依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
トリエステ・ウェスタ(ka6908
ドラグーン|21才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2018/02/21 12:23:14
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/02/18 00:45:17
アイコン 質問卓
アーク・フォーサイス(ka6568
人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2018/02/20 11:30:58