ゲスト
(ka0000)
使ってミント
マスター:奈華里
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/03/07 19:00
- 完成日
- 2018/03/17 01:03
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「あちゃー…これは……やってしまったわ」
ここはとある村のハーブ菜園。その管理人である村娘が苦笑いを浮かべる。
彼女の目の前に広がる光景は一般的に言えば悪いものではない。
しかし、度が過ぎていれば話は違う。彼女の畑が、今まさにその状態だった。
「……と言う訳なのよ。お願い、何とか出来ないかな?」
どさりと机に置いたのは収穫して来たばかりのペパーミントの山。
彼女の話によれば区画整理を行ってはいたものの、一時期畑に手を入れる事が出来なかった時期があったこと。一部踏み荒らされた事もあり、成長優先で栽培を続けた結果予想外の大繁殖を遂げてしまったらしい。
「何とかって言っても、フレッシュミントティーにするには多過ぎるし」
「料理の付け合わせとしてもこの葉っぱ大き過ぎだよぉ」
摘まれてきたミントの葉はなんと一枚がマグカップ位。
もしパンケーキの上に飾ったならば、クリームが隠れてしまう事だろう。
「だよねぇー…困ったなぁ。出荷するにしてもこんなに沢山、一度には断られちゃうかも」
机一杯に積まれたそれからは爽やかな香りが漂う。
がその爽やかさとは裏腹に、村娘達の気分はどんより気味だ。
「うぅ~どうしよう。折角の大収穫、捨てるには勿体なさ過ぎるよ」
そこまで手を掛けずに出来るペパーミントであるが、それでもできたものを粗末にするのは気がひける。そこで思いつく限りの使用方法を上げてみる。
「アイスにするにしてもこの時期だからね。あまり売れるとは思えないし」
「お手上げってやつかな?」
しかし、今は三月――清涼感のあるミントは、まだ肌寒いこの時期には余り向かないかもしれない。
「ちょっと諦めないでよ。まだまだ畑には出来てるんだからね! 何としても売らないと!」
摘んで来た一人が必死に訴える。
「そうだよね。よし、わかったわ。今は緊急事態! あの方達から知恵を貰いましょ」
がたりと音を立てて立ち上がり、リーダーっぽい村娘が言い切る。
「でも、依頼料は?」
「ふふーん、それは大丈夫よ。いいアイデアが出てこれが売れれば、ね」
パチリとウインクして彼女が言う。
「だね。折角だから名物になる位のいいアイデア出して貰って、あの畑で一攫千金なんてのもいいかも」
もう一人も乗り気になったようで、袖を巻き上げやる気を見せる。
「二人共…ホント、大好きだよっ!」
二人の反応が嬉しくて、彼女は勢いそのままに二人に抱き付いた。
ここはとある村のハーブ菜園。その管理人である村娘が苦笑いを浮かべる。
彼女の目の前に広がる光景は一般的に言えば悪いものではない。
しかし、度が過ぎていれば話は違う。彼女の畑が、今まさにその状態だった。
「……と言う訳なのよ。お願い、何とか出来ないかな?」
どさりと机に置いたのは収穫して来たばかりのペパーミントの山。
彼女の話によれば区画整理を行ってはいたものの、一時期畑に手を入れる事が出来なかった時期があったこと。一部踏み荒らされた事もあり、成長優先で栽培を続けた結果予想外の大繁殖を遂げてしまったらしい。
「何とかって言っても、フレッシュミントティーにするには多過ぎるし」
「料理の付け合わせとしてもこの葉っぱ大き過ぎだよぉ」
摘まれてきたミントの葉はなんと一枚がマグカップ位。
もしパンケーキの上に飾ったならば、クリームが隠れてしまう事だろう。
「だよねぇー…困ったなぁ。出荷するにしてもこんなに沢山、一度には断られちゃうかも」
机一杯に積まれたそれからは爽やかな香りが漂う。
がその爽やかさとは裏腹に、村娘達の気分はどんより気味だ。
「うぅ~どうしよう。折角の大収穫、捨てるには勿体なさ過ぎるよ」
そこまで手を掛けずに出来るペパーミントであるが、それでもできたものを粗末にするのは気がひける。そこで思いつく限りの使用方法を上げてみる。
「アイスにするにしてもこの時期だからね。あまり売れるとは思えないし」
「お手上げってやつかな?」
しかし、今は三月――清涼感のあるミントは、まだ肌寒いこの時期には余り向かないかもしれない。
「ちょっと諦めないでよ。まだまだ畑には出来てるんだからね! 何としても売らないと!」
摘んで来た一人が必死に訴える。
「そうだよね。よし、わかったわ。今は緊急事態! あの方達から知恵を貰いましょ」
がたりと音を立てて立ち上がり、リーダーっぽい村娘が言い切る。
「でも、依頼料は?」
「ふふーん、それは大丈夫よ。いいアイデアが出てこれが売れれば、ね」
パチリとウインクして彼女が言う。
「だね。折角だから名物になる位のいいアイデア出して貰って、あの畑で一攫千金なんてのもいいかも」
もう一人も乗り気になったようで、袖を巻き上げやる気を見せる。
「二人共…ホント、大好きだよっ!」
二人の反応が嬉しくて、彼女は勢いそのままに二人に抱き付いた。
リプレイ本文
●収穫
とある村のとある畑に群生するペパーミント。
その異常な繁殖力を知らぬ者は驚き目を丸くする事だろう。
しかし、勝手知った者にはよくある光景…初心者向けでも知られるこの植物のいつもの姿か。
「私の菜園のミントも、こうなっているのはよく見るわ」
エーミ・エーテルクラフト(ka2225)が徐に村娘の育てたミントの葉を一枚摘み取る。摘み取ると同時に香るのは言わずと知れたメンソールの風。ここまで葉が大きくなると、千切って摘むとには茎が大きくしなり手間がかかる。
「うひゃ…マジで半端ねぇ生命力…」
その様を目の当たりにして道元 ガンジ(ka6005)はびっくり。
彼の想像を越えていたと見える。開いた口が塞がらないとはこの事だ。
「でも、これがまさかの一攫千金になったらミントさまさまニャスね」
偶然できてしまったものであるが、利用しない手はない。その言葉に瞳をきらりと輝かせる村娘ズ。これまでもハンターの助けを借りてヒット商品を生み出してきた彼女達だ。転んでもタダでは起きない精神で今回も華麗に切り抜けたい所である。
「普通のものじゃ駄目よ! どうせやるならヒットを狙わないとっ」
自分の管理ミスでこんな状態になってしまった訳であるが、それを気にしている暇はない。
目の前に広がるミントをひたすら摘みにかかる。
「あー…遅れてすんまへん。ミントの使い道に困っとる聞いて、知り合い連れて手伝いに来たでー」
そこへひらひらと手を振りながらやってきたのは埜月 宗人(ka6994)だった。
お隣には紫髪の少女と快活そうな女子を連れて、両手に花であるが悪い印象はない。
「ふわぁぁ、綺麗な人…こんにちは、宜しくお願いします」
村娘が人形の様な紫髪の少女の姿をみて素直な感想を述べる。
すると少女・ルエラ・ラングフォード(ka7017)は小さくお辞儀をしてから丁寧にご挨拶。
「あり、がとう。ミント、たくさんって聞いた。私は、知識もまだ少ない…けど、少しでも力になれたら嬉しい」
片言に近い口調の彼女はオートマトン。
記憶が少ない故か、はたまたもともとかは定かではないが、見た目で言えば人間とほぼ変わらない。
「さってと、それじゃあ早速だけど手分けして収穫。その後選別といきましょうか?」
早くに来て作業を始めていたエーミの言葉に皆が頷く。
「取り方は色々ありますが、とりあえず下二節位を残してガンガン切って下さいねー」
とこれは管理人の村娘から。
ハンターらには作業用の軍手とはさみが配られ、一定数摘んだら搬送用の荷車に乗せてゆく。
「二節というと…」
「ここら辺やな。少しずつでいいから宜しく頼むわ」
確認するルエラに場所を的確に教えて宗人が隣りを摘み進む。
「これが全部食べられると思うと断然やる気が出るよな~」
その向こうではそう言って猛烈に作業を頑張るガンジの姿があった。
●選別
取り終えた次は勿論選別。無駄に大きく育ってしまっている為、この作業は案外重要だったり。
「フレッシュで比較的小さめのはこっちで。大き過ぎるのはこの籠にお願いします」
食用だけがミントの使い道ではない。ハンターから出されている用途別に選別を行う。
そのチョイスについては慣れているようなのでエーミに一任。今出ている使い道は大きく分けると四つであるから、それに合わせてミントの葉をより分けていく。
「あ、私サシェにしてもって思ってるんだけど、こっちの世界にあるのかな?」
リアルブルーから来ている為その辺の事情が判からず、天王寺茜(ka4080)が質問する。
「えっと、サシェって匂い袋の事ですよね? ある事はありますけど…」
「けど、何か問題なの?」
歯切れの悪さを感じ、再び尋ねる。
「えっと…私達基本的にお裁縫が苦手なので、巾着とかの袋を作るとなると…」
「時間がかかっちゃうかなー…って」
苦笑いを浮かべながら二人の村娘が申し訳なさそうに呟く。
「そんなのハンカチでもいいよ。包んでリボンで結んだりして…後はどうとでもなるから」
家事はそこそこできる茜であるが、袋を一から作るとなると時間がかかる。既製品といっても丁度いいサイズがあるとも限らない。そこで提案したのがハンカチなのだが、ここにも些か落とし穴。
「でも、そうすると大量にハンカチがいりますよね…費用がかかっちゃうかなー」
発想はいいのだが、確かにこれは費用が加算してしまいそうだ。
「だったら…そうだ、お風呂。お風呂はどうだろう…?」
二人のやり取りを聞いていたルエラがぼそりと言う。
「あぁ、それ。いいよね、私も考えてたわ」
その意見にエーミが賛同する。
「けどさ、それって寒くないか。ミントって爽快感あるんだろ?」
がここで待ったをかけたのはガンジだった。村娘達も依頼提示の折に気にしていた事だ。
「そんなに凄い、の?」
感じた事がないのかルエラが首を傾げる。
「あー…そうやなぁ。量にもよるけど、そこそこ清涼感を感じるかもしれんなぁ」
宗人が思い出すように空を見つめて答える。
「あら、一応冷え性にもいいんだけど」
そこでそう食下がるエーミだったが、
「時期がもう少し後だったらいいんですけどね…イメージで避けられそうかなぁ」
と村娘から言われてしまうと引き下がらざる負えない。同じ理由でミントティーも些か難しいか。
だが、ある者は偶然にもその清涼感を緩和する策を講じている。
そのある者とは今ご機嫌で湯を沸かし始めているミア(ka7035)――その人であった。
●洗浄
「あー、ちべてぇ~」
汲んできた川の水はまだ冷たい。けれど、それは我慢。
エーミのピュアウォーターのスキルで水を浄化し、その水で一枚一枚丁寧に洗う。
ドライにするものはこの後乾燥に入る訳だが、料理に使うものはそのまま調理へ。人の口に入るものだから、ゴミや虫がついていないかここで念入りにチェックする。
「本当にデカいミントニャスねー。一枚で十分かもしれないニャス」
ふんふふーんと鼻歌交じりに、沸かしたお湯をポットに入れて、後はフレッシュミントを一枚ドボン。じっくり待てば徐々にミントのエキスと香りが注ぎ口から漂ってくる。
「うん、いい香りね♪ でも、そのままじゃあ普通の」
「大丈夫ニャ。これからがお楽しみニャよ」
そう言う茜に無問題といった顔のミア。どうするのかと見ていれば、抽出した後の葉っぱを取り出したその後に、なんとベリーを投入。ブルーベリーにラズベリー、葡萄まで惜しみなく入れてゆく。
「へえ、フルーツハーブティーとはなぁ。やるやん」
宗人が感心する。
そんな彼もフレッシュハーブを利用して何やら練り練り。
彼の持つボールの中には刻んだミントとバターが入っているようだ。
「そう言う宗人ちゃんはハーブバターかニャ? だったら、ミアももう一品」
とショートパンツについた尻尾を揺らして新たな料理作りへ。
終始明るく進める彼女を見ていると、周りも元気が出てくる。
「私も負けてられないよ」
茜がそう言い、テキパキと川魚を捌き始める。
「それ、どうする?」
その様子を宗人の隣りで興味深げに見つめて、少し暇が出来たルエラが問う。
「ああ、これな。宗人さんがパンにつけるバターを、ミアさんはどうやら前菜っぽいものに取り掛かり始めたみたいだから、私は主食をと思って」
「主食…」
よく見れば調理台の隅には宗人同様に刻んだミントとニンニク。そしてパン粉が用意されている。
「何か、手伝いいる? 簡単な事しか、出来ないけど…」
いつもは無口な彼女であるが、一応仕事という事もあり手伝えることを探しているようだ。
「んー、こっちは大じょ…」
「だったら、ラングフォードちゃん。こっちこっち~こっちきて欲しいニャ」
パタパタ手を振って、呼ぶのはミアだ。何かの生地作りを始めたらしい。
「これ、どうしたらいい?」
「こねこねするニャ★ 心を込めてやると美味しくなるニャスよ~♪」
笑顔いっぱいにミアが教える。
(連れてきて正解やったな。まあ、ミアさんはもともと知り合いやけど)
一人でいても苦にならないかもしれない。けれど、仲間がいれば楽しいという事も知って欲しい。
お節介だと判っていても世話を焼いてしまう彼である。
「はぁあ、美味い料理ができそうで楽しみ楽しみ♪」
ガンジはその横で想像だけで涎が出そうになるのを必死で堪える。
(フフッ、手並み拝見ね)
そんな彼らをエーミはまったりと観察中。
といっても彼女は彼女でさぼっている訳でなく、これでもれっきとして作業の真っ最中なのだ。
ごりごりと大きなすり鉢でただひたすらにミントの葉を擦り続けていたのが数時間前の事。それをある程度終えた彼女は今、それをとろ火にかけて煮出し中。
「あの…何を作っているんですか?」
村娘の一人が疑問に思い、蓋の閉まった鍋を見つめ尋ねる。
「これは精油よ。凄く時間がかかるけど、美容やリラックスにいいのよね」
隙間から僅かに香ってくる香りを堪能しながら彼女が言う。
「精油……ってこんな簡単にできるんですか!」
「んー…ちゃんとした機材じゃないからうまくいくかは判らないんだけどね。やってみる価値はあるかと思って」
エーミはそんな知識も持ち合わせているようだ。一般的にいえば水蒸気蒸留法というやつだろうか。ただ、この方法をとるならばやはり専門の鍋やら瓶が必要となってくるらしく、普通の鍋と鍋蓋だけではうまくいかず。残念な結果に終わったので割愛。
●試食
そうこうするうちに料理が出来て、後に待つのは試作品と称したミント料理の試食会。
朝からの作業を癒す楽しい時間になりそうだ。
「まずは…このバターから」
宗人が作ったハーブバターはシンプルであるが故に素材の味がもろに出る。
焼き立てのパンを前に皆がそれぞれの好みの量をバターナイフからパン生地へ。するとパンの温もりが新鮮なバターを溶かして艶やかに。香る風味が新しい。サクッと音を立ててパンを齧れば、濃厚なバターにアクセント。好みはあるかもしれないが、くどくはなり過ぎずなかなか。
「このバターに葉もそのまま挟んで具も入れて、サンドイッチとかもありかもだ」
あっという間に三個目のバケットに手を伸ばしながらガンジが提案する。
彼自身調理する事はなかったが、料理のアイデアは複数メモしてきていたし、大食らいで『美味しいごはんは世界を救う』と信じている所があり、美味しいものには目がない性分。このバターもパン三個目に突入させているとなれば、その味の良さは彼のお墨付きと言っていいだろう。
「だったらこっちはどうかな? このバターも使ってるんだけど」
茜がそう言って、川魚のバター焼きを差し出す。
「ふおぉぉ、これはおいしそうニャ」
それに食いついたのはミアだった。猫っぽい所もあってか魚と聞いてフードの猫耳が揺れる。
「ほな、頂いてみよか?」
ナイフを入れるとサクッと衣の軽い音。白身の魚からはふんわりと湯気が上がり、口に近付けると同時にさっきとは違う焦がしバターの香りが鼻腔を擽る。そして、舌に乗せ咀嚼するとふんわり身が解けると同時に、ほのかに香るミントとバターの味わいが絶妙だ。
「幸せ幸せ~♪ これならいくらでもいけそうニャス!」
さくふわの触感に至福を感じ、自然と顔がほころぶ。
「じゃあ次はこれだな」
後になってしまったが、ミアの料理は全部で三品。
フルーツミントティーはさておいて、後の二つはスープと定番に一工夫したクッキーである。
「こっちが桃とミントのスープニャス。そんでこっちはチョコミントクッキーニャね」
スープはほんのり緑色。クッキーは抹茶を思わせる程の緑が目をひく。
「すっげー、なんかこれ超爽やかだ!」
「ん……確かに。これがミントのスープ」
ガンジの言葉に続いて、ルエラも静かに言葉する。
「これはねー、フレッシュミントとレモン汁、ヨーグルトに桃と砂糖を入れて混ぜるだけニャ。とっても簡単でいて、具合が悪い時とかもオススメニャス」
えっへんと自慢げにミアが説明する。
「こっちのクッキーもしゃれてるわね。けどこの色って」
エーミが不思議そうにクッキーを見つめる。
「フッフッフ、私は見いてましたよ、ミアさん。ずばり色付けしましたね?」
村娘の一人がしてやったりな表情で問い質す。
「ウニャ~~、ばれたニャかぁ。見た目が大事かと思ったんで、緑のお野菜の力を少し借りたニャ」
普通のミントだけではここまで緑には色付かない。ドライミントをすりつぶして入れた所で限度がある。そこで彼女はミントだとよく判るように工夫したとみえる。
「甘いチョコと爽やかなミント生地…不思議な味わいよね、コレ」
茜が少しずつ味わいながら感想を述べる。
「凄くうまいとまではいかんけど、注目を集めるにはある意味おもろいんとちゃうかな」
宗人も一齧りして、ミアのクッキーを冷静に評価する。
「んー、ってことは販売しやすさだけでいけばバターとクッキー。店舗を借りたりするなら川魚のバター焼きサンドでいったら面白そうですねぇ~」
もともと店を持つ事を夢にしている村娘がいるから、自ずとそんな考えに纏まり始める。
「そうね。お店を借りれるなら、サシェとかでお店を飾ってミント専門店感を前面に出していってもいいかもよ」
茜がふと思いついたのかそんな事を言葉にする。
「だったら、今作ってるドライミントも瓶に詰めて販売したらどうかな? ハンバーグの時に一緒に入れるといいとか、サラダに振りかけるとかの簡単な使用例も添えて売れば買ってもらいやすくなると思うだけど」
使い方さえわかれば買う人も増える筈と、ガンジが更に提案する。
「お店かぁ…けど、春郷祭まではまだ時間あるし、費用もそこまである訳じゃないし…」
「ねぇ。あなた達は、ミントで一攫千金狙うつもりじゃなかったのかしら?」
考え渋る村娘ズにエーミが尋ねる。
「そうだよ。こんなに美味いんだ。売れない筈ないって! 費用がそんなにないなら期間限定で街に出店したらどうかな?」
ガンジが言う。
「せやな、それがええかもしれへん。逆に言えばこんなでかいミントここにしかないんや。それをウリにして街の住民を驚かせたったらどないや?」
「いいと、思う」
そこまで言われると村娘達も背中を押されて、
「わかったわ。もうこうなったらやれるとこまでやっちゃいましょう」
ぐっと拳を握って、彼女達は動き出す。
「そうニャス。やっちゃうといいニャー!」
「まあ、頑張ってよ」
メニューは少ない。けれど、前例がないだけにお客は珍しがってくれるだろう。後は売込み戦略か。
不安はあれど、ハンター達を信じて…彼女達は準備を始めるのであった。
とある村のとある畑に群生するペパーミント。
その異常な繁殖力を知らぬ者は驚き目を丸くする事だろう。
しかし、勝手知った者にはよくある光景…初心者向けでも知られるこの植物のいつもの姿か。
「私の菜園のミントも、こうなっているのはよく見るわ」
エーミ・エーテルクラフト(ka2225)が徐に村娘の育てたミントの葉を一枚摘み取る。摘み取ると同時に香るのは言わずと知れたメンソールの風。ここまで葉が大きくなると、千切って摘むとには茎が大きくしなり手間がかかる。
「うひゃ…マジで半端ねぇ生命力…」
その様を目の当たりにして道元 ガンジ(ka6005)はびっくり。
彼の想像を越えていたと見える。開いた口が塞がらないとはこの事だ。
「でも、これがまさかの一攫千金になったらミントさまさまニャスね」
偶然できてしまったものであるが、利用しない手はない。その言葉に瞳をきらりと輝かせる村娘ズ。これまでもハンターの助けを借りてヒット商品を生み出してきた彼女達だ。転んでもタダでは起きない精神で今回も華麗に切り抜けたい所である。
「普通のものじゃ駄目よ! どうせやるならヒットを狙わないとっ」
自分の管理ミスでこんな状態になってしまった訳であるが、それを気にしている暇はない。
目の前に広がるミントをひたすら摘みにかかる。
「あー…遅れてすんまへん。ミントの使い道に困っとる聞いて、知り合い連れて手伝いに来たでー」
そこへひらひらと手を振りながらやってきたのは埜月 宗人(ka6994)だった。
お隣には紫髪の少女と快活そうな女子を連れて、両手に花であるが悪い印象はない。
「ふわぁぁ、綺麗な人…こんにちは、宜しくお願いします」
村娘が人形の様な紫髪の少女の姿をみて素直な感想を述べる。
すると少女・ルエラ・ラングフォード(ka7017)は小さくお辞儀をしてから丁寧にご挨拶。
「あり、がとう。ミント、たくさんって聞いた。私は、知識もまだ少ない…けど、少しでも力になれたら嬉しい」
片言に近い口調の彼女はオートマトン。
記憶が少ない故か、はたまたもともとかは定かではないが、見た目で言えば人間とほぼ変わらない。
「さってと、それじゃあ早速だけど手分けして収穫。その後選別といきましょうか?」
早くに来て作業を始めていたエーミの言葉に皆が頷く。
「取り方は色々ありますが、とりあえず下二節位を残してガンガン切って下さいねー」
とこれは管理人の村娘から。
ハンターらには作業用の軍手とはさみが配られ、一定数摘んだら搬送用の荷車に乗せてゆく。
「二節というと…」
「ここら辺やな。少しずつでいいから宜しく頼むわ」
確認するルエラに場所を的確に教えて宗人が隣りを摘み進む。
「これが全部食べられると思うと断然やる気が出るよな~」
その向こうではそう言って猛烈に作業を頑張るガンジの姿があった。
●選別
取り終えた次は勿論選別。無駄に大きく育ってしまっている為、この作業は案外重要だったり。
「フレッシュで比較的小さめのはこっちで。大き過ぎるのはこの籠にお願いします」
食用だけがミントの使い道ではない。ハンターから出されている用途別に選別を行う。
そのチョイスについては慣れているようなのでエーミに一任。今出ている使い道は大きく分けると四つであるから、それに合わせてミントの葉をより分けていく。
「あ、私サシェにしてもって思ってるんだけど、こっちの世界にあるのかな?」
リアルブルーから来ている為その辺の事情が判からず、天王寺茜(ka4080)が質問する。
「えっと、サシェって匂い袋の事ですよね? ある事はありますけど…」
「けど、何か問題なの?」
歯切れの悪さを感じ、再び尋ねる。
「えっと…私達基本的にお裁縫が苦手なので、巾着とかの袋を作るとなると…」
「時間がかかっちゃうかなー…って」
苦笑いを浮かべながら二人の村娘が申し訳なさそうに呟く。
「そんなのハンカチでもいいよ。包んでリボンで結んだりして…後はどうとでもなるから」
家事はそこそこできる茜であるが、袋を一から作るとなると時間がかかる。既製品といっても丁度いいサイズがあるとも限らない。そこで提案したのがハンカチなのだが、ここにも些か落とし穴。
「でも、そうすると大量にハンカチがいりますよね…費用がかかっちゃうかなー」
発想はいいのだが、確かにこれは費用が加算してしまいそうだ。
「だったら…そうだ、お風呂。お風呂はどうだろう…?」
二人のやり取りを聞いていたルエラがぼそりと言う。
「あぁ、それ。いいよね、私も考えてたわ」
その意見にエーミが賛同する。
「けどさ、それって寒くないか。ミントって爽快感あるんだろ?」
がここで待ったをかけたのはガンジだった。村娘達も依頼提示の折に気にしていた事だ。
「そんなに凄い、の?」
感じた事がないのかルエラが首を傾げる。
「あー…そうやなぁ。量にもよるけど、そこそこ清涼感を感じるかもしれんなぁ」
宗人が思い出すように空を見つめて答える。
「あら、一応冷え性にもいいんだけど」
そこでそう食下がるエーミだったが、
「時期がもう少し後だったらいいんですけどね…イメージで避けられそうかなぁ」
と村娘から言われてしまうと引き下がらざる負えない。同じ理由でミントティーも些か難しいか。
だが、ある者は偶然にもその清涼感を緩和する策を講じている。
そのある者とは今ご機嫌で湯を沸かし始めているミア(ka7035)――その人であった。
●洗浄
「あー、ちべてぇ~」
汲んできた川の水はまだ冷たい。けれど、それは我慢。
エーミのピュアウォーターのスキルで水を浄化し、その水で一枚一枚丁寧に洗う。
ドライにするものはこの後乾燥に入る訳だが、料理に使うものはそのまま調理へ。人の口に入るものだから、ゴミや虫がついていないかここで念入りにチェックする。
「本当にデカいミントニャスねー。一枚で十分かもしれないニャス」
ふんふふーんと鼻歌交じりに、沸かしたお湯をポットに入れて、後はフレッシュミントを一枚ドボン。じっくり待てば徐々にミントのエキスと香りが注ぎ口から漂ってくる。
「うん、いい香りね♪ でも、そのままじゃあ普通の」
「大丈夫ニャ。これからがお楽しみニャよ」
そう言う茜に無問題といった顔のミア。どうするのかと見ていれば、抽出した後の葉っぱを取り出したその後に、なんとベリーを投入。ブルーベリーにラズベリー、葡萄まで惜しみなく入れてゆく。
「へえ、フルーツハーブティーとはなぁ。やるやん」
宗人が感心する。
そんな彼もフレッシュハーブを利用して何やら練り練り。
彼の持つボールの中には刻んだミントとバターが入っているようだ。
「そう言う宗人ちゃんはハーブバターかニャ? だったら、ミアももう一品」
とショートパンツについた尻尾を揺らして新たな料理作りへ。
終始明るく進める彼女を見ていると、周りも元気が出てくる。
「私も負けてられないよ」
茜がそう言い、テキパキと川魚を捌き始める。
「それ、どうする?」
その様子を宗人の隣りで興味深げに見つめて、少し暇が出来たルエラが問う。
「ああ、これな。宗人さんがパンにつけるバターを、ミアさんはどうやら前菜っぽいものに取り掛かり始めたみたいだから、私は主食をと思って」
「主食…」
よく見れば調理台の隅には宗人同様に刻んだミントとニンニク。そしてパン粉が用意されている。
「何か、手伝いいる? 簡単な事しか、出来ないけど…」
いつもは無口な彼女であるが、一応仕事という事もあり手伝えることを探しているようだ。
「んー、こっちは大じょ…」
「だったら、ラングフォードちゃん。こっちこっち~こっちきて欲しいニャ」
パタパタ手を振って、呼ぶのはミアだ。何かの生地作りを始めたらしい。
「これ、どうしたらいい?」
「こねこねするニャ★ 心を込めてやると美味しくなるニャスよ~♪」
笑顔いっぱいにミアが教える。
(連れてきて正解やったな。まあ、ミアさんはもともと知り合いやけど)
一人でいても苦にならないかもしれない。けれど、仲間がいれば楽しいという事も知って欲しい。
お節介だと判っていても世話を焼いてしまう彼である。
「はぁあ、美味い料理ができそうで楽しみ楽しみ♪」
ガンジはその横で想像だけで涎が出そうになるのを必死で堪える。
(フフッ、手並み拝見ね)
そんな彼らをエーミはまったりと観察中。
といっても彼女は彼女でさぼっている訳でなく、これでもれっきとして作業の真っ最中なのだ。
ごりごりと大きなすり鉢でただひたすらにミントの葉を擦り続けていたのが数時間前の事。それをある程度終えた彼女は今、それをとろ火にかけて煮出し中。
「あの…何を作っているんですか?」
村娘の一人が疑問に思い、蓋の閉まった鍋を見つめ尋ねる。
「これは精油よ。凄く時間がかかるけど、美容やリラックスにいいのよね」
隙間から僅かに香ってくる香りを堪能しながら彼女が言う。
「精油……ってこんな簡単にできるんですか!」
「んー…ちゃんとした機材じゃないからうまくいくかは判らないんだけどね。やってみる価値はあるかと思って」
エーミはそんな知識も持ち合わせているようだ。一般的にいえば水蒸気蒸留法というやつだろうか。ただ、この方法をとるならばやはり専門の鍋やら瓶が必要となってくるらしく、普通の鍋と鍋蓋だけではうまくいかず。残念な結果に終わったので割愛。
●試食
そうこうするうちに料理が出来て、後に待つのは試作品と称したミント料理の試食会。
朝からの作業を癒す楽しい時間になりそうだ。
「まずは…このバターから」
宗人が作ったハーブバターはシンプルであるが故に素材の味がもろに出る。
焼き立てのパンを前に皆がそれぞれの好みの量をバターナイフからパン生地へ。するとパンの温もりが新鮮なバターを溶かして艶やかに。香る風味が新しい。サクッと音を立ててパンを齧れば、濃厚なバターにアクセント。好みはあるかもしれないが、くどくはなり過ぎずなかなか。
「このバターに葉もそのまま挟んで具も入れて、サンドイッチとかもありかもだ」
あっという間に三個目のバケットに手を伸ばしながらガンジが提案する。
彼自身調理する事はなかったが、料理のアイデアは複数メモしてきていたし、大食らいで『美味しいごはんは世界を救う』と信じている所があり、美味しいものには目がない性分。このバターもパン三個目に突入させているとなれば、その味の良さは彼のお墨付きと言っていいだろう。
「だったらこっちはどうかな? このバターも使ってるんだけど」
茜がそう言って、川魚のバター焼きを差し出す。
「ふおぉぉ、これはおいしそうニャ」
それに食いついたのはミアだった。猫っぽい所もあってか魚と聞いてフードの猫耳が揺れる。
「ほな、頂いてみよか?」
ナイフを入れるとサクッと衣の軽い音。白身の魚からはふんわりと湯気が上がり、口に近付けると同時にさっきとは違う焦がしバターの香りが鼻腔を擽る。そして、舌に乗せ咀嚼するとふんわり身が解けると同時に、ほのかに香るミントとバターの味わいが絶妙だ。
「幸せ幸せ~♪ これならいくらでもいけそうニャス!」
さくふわの触感に至福を感じ、自然と顔がほころぶ。
「じゃあ次はこれだな」
後になってしまったが、ミアの料理は全部で三品。
フルーツミントティーはさておいて、後の二つはスープと定番に一工夫したクッキーである。
「こっちが桃とミントのスープニャス。そんでこっちはチョコミントクッキーニャね」
スープはほんのり緑色。クッキーは抹茶を思わせる程の緑が目をひく。
「すっげー、なんかこれ超爽やかだ!」
「ん……確かに。これがミントのスープ」
ガンジの言葉に続いて、ルエラも静かに言葉する。
「これはねー、フレッシュミントとレモン汁、ヨーグルトに桃と砂糖を入れて混ぜるだけニャ。とっても簡単でいて、具合が悪い時とかもオススメニャス」
えっへんと自慢げにミアが説明する。
「こっちのクッキーもしゃれてるわね。けどこの色って」
エーミが不思議そうにクッキーを見つめる。
「フッフッフ、私は見いてましたよ、ミアさん。ずばり色付けしましたね?」
村娘の一人がしてやったりな表情で問い質す。
「ウニャ~~、ばれたニャかぁ。見た目が大事かと思ったんで、緑のお野菜の力を少し借りたニャ」
普通のミントだけではここまで緑には色付かない。ドライミントをすりつぶして入れた所で限度がある。そこで彼女はミントだとよく判るように工夫したとみえる。
「甘いチョコと爽やかなミント生地…不思議な味わいよね、コレ」
茜が少しずつ味わいながら感想を述べる。
「凄くうまいとまではいかんけど、注目を集めるにはある意味おもろいんとちゃうかな」
宗人も一齧りして、ミアのクッキーを冷静に評価する。
「んー、ってことは販売しやすさだけでいけばバターとクッキー。店舗を借りたりするなら川魚のバター焼きサンドでいったら面白そうですねぇ~」
もともと店を持つ事を夢にしている村娘がいるから、自ずとそんな考えに纏まり始める。
「そうね。お店を借りれるなら、サシェとかでお店を飾ってミント専門店感を前面に出していってもいいかもよ」
茜がふと思いついたのかそんな事を言葉にする。
「だったら、今作ってるドライミントも瓶に詰めて販売したらどうかな? ハンバーグの時に一緒に入れるといいとか、サラダに振りかけるとかの簡単な使用例も添えて売れば買ってもらいやすくなると思うだけど」
使い方さえわかれば買う人も増える筈と、ガンジが更に提案する。
「お店かぁ…けど、春郷祭まではまだ時間あるし、費用もそこまである訳じゃないし…」
「ねぇ。あなた達は、ミントで一攫千金狙うつもりじゃなかったのかしら?」
考え渋る村娘ズにエーミが尋ねる。
「そうだよ。こんなに美味いんだ。売れない筈ないって! 費用がそんなにないなら期間限定で街に出店したらどうかな?」
ガンジが言う。
「せやな、それがええかもしれへん。逆に言えばこんなでかいミントここにしかないんや。それをウリにして街の住民を驚かせたったらどないや?」
「いいと、思う」
そこまで言われると村娘達も背中を押されて、
「わかったわ。もうこうなったらやれるとこまでやっちゃいましょう」
ぐっと拳を握って、彼女達は動き出す。
「そうニャス。やっちゃうといいニャー!」
「まあ、頑張ってよ」
メニューは少ない。けれど、前例がないだけにお客は珍しがってくれるだろう。後は売込み戦略か。
不安はあれど、ハンター達を信じて…彼女達は準備を始めるのであった。
依頼結果
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面白かった! | 4人 |
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エーミ・エーテルクラフト(ka2225)
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/03/04 20:40:38 |
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相談卓 埜月 宗人(ka6994) 人間(リアルブルー)|28才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/03/06 23:58:03 |