• 反影

【反影】ターミネイトマシンワールドエンド

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
5~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/03/13 19:00
完成日
2018/03/21 06:52

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 グラウンド・ゼロには内部に様々な異界を内包する『虚無』という黒いドーム状の空間が幾つも存在している。
 その内の一つに、歪虚に寄生された機械群が人を襲っている異界がある。
 仮に『機界』と呼んでいるその異界は町の中心部にいる高位歪虚を倒せば消滅させられると判明している。
 しかし機界では覚醒者や幻獣は能力が半減し、あらゆるスキルが使えなくなった。
 CAMや魔導アーマー、武器や道具に付随したスキルなら使用可能であったが、その特異な環境性と機界内に存在する歪虚の数が多大である事から、真正面から挑んだのでは高位歪虚の討伐は困難であると考えられた。
 作戦の立案を任されたハンターズソサイエティのメンバー達は、異界は一定の期間を過ぎると時間が巻き戻るという性質に着目した。
 時間が巻き戻れば町の各所に配備されている敵の配置も元に戻る。
 つまり敵の配置は同じ時間であれば常に同じなのである。
 そのため、高位歪虚の元まで極力戦闘を避けて辿り着けるルートも絞りこめるはずだと考えた。
 そして極力戦闘を避けられるルートで高位歪虚の元まで到り、多数の歪虚に包囲される前に高位歪虚を強襲して一気に倒してしまう作戦が考案される。

 そのルートを探るためのスニークミッションがまず行われた。
 しかし残念ながら町の中心地手前の川までのルートしか調査しきれなかった。
 更なる調査を行う事も検討されたが、1つの懸案事項のため行われない事となった。
 その懸案事項とは、最初の調査で機界内に1人残ったため虚無に取り込まれてしまったハンター『アズマ』の存在だ。

 アズマは現在、機界内の他の住人と同じように歪虚化して存在している。
 しかし通常の歪虚とは違い、正のマテリアルを持った生物にも敵対しない異質な存在であり、高位歪虚によって歪虚化させられた『堕落者』に近い状態である可能性があった。
 堕落者は歪虚化させた高位歪虚を倒せば元に戻せる可能性がある。
 しかし時が経てば経つほど歪虚化は進み、元に戻せる可能性は低くなる。
 アズマにはまだ救える可能性があると考えられていたため、再調査に時間を掛ける訳にはいかなかったのだ。

 ハンターズソサイエティは現在判明しているルートを使っての強襲作戦を考案し、ハンターを募集した。
 多くのハンターが志願し、その中に『ハマー』もいた。
 ハマーは機界を最初に調査したメンバーの隊長で、アズマが機界内に1人で残る事を許可した人物だ。
 その事に自責の念を感じているハマーは、何としてもアズマを救うという覚悟で作戦に望んでいた。
 アズマとはクリムゾンウェストに転移してくる前から上司部下の関係で、付き合いも長い。
 2人はリアルブルーでは軍の航空機パイロットで、ハマーが操縦士、アズマが副操縦士だった。
 そして航空機ごと2人一緒に転移してきたのである。
 転移後、2人には覚醒者としての素質がある事が分かり、共にハンターとなった。
 軍を抜けた事になるため、ハマーはもうアズマの隊長ではなくなっていたのだが、アズマは以前と変わらずハマーを隊長と呼んで慕い、共に戦ってくれた。
 そんな固い絆で結ばれた戦友をハマーは見捨てる事などできる訳がなかった。
「待ってろアズマ。今助けてやるぞ」

 集まったハンター達は2つの部隊に分けられた。
 片方は高位歪虚までのルートを確保する先行部隊。
 もう片方は高位歪虚を討伐する本隊だ。

 作戦決行日になり、ハンター達が機界に入ると、何時ものようにプラヴァーに乗ったアズマが側にいる。
「遅かったなアズマ」
 ハマーはアズマにそう話しかけた。
「は? 何がっすか隊長?」
「実はお前が虚無に入ってからもう1ヶ月が経っているんだ」
「……へ?」
 アズマが訳が分からないという顔をする。
「専門家が言うには、お前は現実と虚無の間の異空間に引っかかってしまい、抜けるのに1ヶ月も掛かったらしい」
 これは嘘だ。
 アズマの記憶は時間の巻戻りのせいで常に機界の調査にきた初日に戻るため、周囲の状況との差異で混乱させないための方便である。
「マジっすか?」
「マジだ」
 続けて、今から高位歪虚を討伐して虚無を消滅させる最終作戦を行う事を告げた。
「もうそんな事になってるんすか? 俺本当に1ヶ月遅れで到着しちゃったんすね。役立たずですみません隊長」
 本当は役立たずどころか、アズマは見知らぬ異界の土地の人のためでも最後まで命がけで戦い抜いて戦死する。
 そして機界のループに巻き込まれたのだ。
 そんなアズマに役立たずだと思わせてしまった事にハマーは胸が痛んだ。
「気にするな。それよりお前にも作戦に参加してもらうぞ」
「もちろんっすよ。汚名返上させてもらうっす」
「あぁ、頼りにしている。だから……死ぬなよ」
 ハマーは万感の思いで告げた。
「何時も通り隊長が指揮してくれるなら大丈夫っすよ。俺、隊長信じてるっすから」
 アズマが昔から全く変わる事のない信頼をハマーに向けてくる。
 自分の判断ミスでアズマを死なせてしまったハマーに。
「……そう、だな」
 ハマーは言い知れぬ罪悪感で顔が歪みそうになるのを苦い何かを飲み込むようにして堪えた。
「生きて帰るぞ。2人で……」
 ハマーはアズマを先行部隊に参加させ、作戦が開始された。

 事前の調査で敵の配置は分かっているため、常に先手を取って動く事ができ、道中の敵を確実に駆逐しながら進む事ができた。
 しかしそれも川の手前までで、それ以上の配置は分からない。
 そこからは索敵を厳にして慎重に進んだのだが、こちらは大きくて目立つCAMも含めた大所帯だ。
 すぐに敵に発見され、遭遇戦が始まった。
 その戦闘の最中、敵に増援を呼ぶ信号弾を打ち上げられてしまう。
「仕方ない。強行突破するぞ。なんとしてでも本隊を無傷で高位歪虚のいる中心部まで送り届けるんだ!」
「了解っす」
 先行部隊は敵を倒す事よりも一早く町の中心部へ到る事を目的し、敵中突破を開始した。
 自らを盾として本隊を守りつつ、前方の敵を蹴散らして進む事に全力を注ぐ。
 砲火が鳴り響き、鋼と鋼がぶつかり合う音を響かせながら、ハンター達が町を猛進する。
 やがて前方に目的の中央広場が見えてきた。
 先行部隊の活躍のお陰で本隊は無傷だ。
「本隊! 後は頼んだぞ。絶対に高位歪虚をぶっ潰してくれ!! アズマを救ってくれ!」
 先行部隊は追ってきた残敵と、照明弾で集まってきた増援に対応するため周囲に展開しつつ、本隊を町の中央広場へ送り出したのだった。

リプレイ本文

「スキルが使えぬ時空とは面妖な」
 ミグ・ロマイヤー(ka0665)は訝しんだが、愛機の魔導型ドミニオン『ハリケーン・バウ・USC』の操縦には何の影響もなく、鉄壁の装甲を持って前衛の一角を占める腹づもりだった。
「はい、スキルが使えないのがこんなに不便だったなんて知らなかったです……」
 穂積 智里(ka6819)はスキルの使えない異常な空間に戸惑い、目をグルグルと回していた。
 しかし異界に囚われたハンターを救ってあげたいという思いで参戦したのだ。
「機体の力しか思うように使えないというのは興味深くはあるが厄介なものだよ」
 この異界に来るのは2度目となる久我・御言(ka4137)が魔導型デュミナス『月光』のコクピットからアドバイスを送る。
「大精霊は人々の信仰から力を得る。人々の祈りなくして存在し続けられないと聞いた覚えがあります。ならば、邪神もまた、存在を保つためには負の感情という祈りが必要だと考えられませんか? 世界を滅ぼしてなお存在し続けるための持続的な祈りの供給源、虚無の世界はそのためにあるのかもしれません」
 保・はじめ(ka5800)は今まで異界に足を踏み入れた経験と知識から推測した考察を皆に語った。
「なるほど。この異界を消滅させればアズマさんの命を救えると同時に、邪神の力も削げるというわけですね」
 アズマを救う目的でやってきたセレスティア(ka2691)は更にやる気を漲らせた。
「それに随分と念の入ったお出迎えしてくれてるじゃねぇか……おもしれぇ!」
 ガルガリン『ザガン・ベルム』に乗るアニス・テスタロッサ(ka0141)は広間に布陣する8体の敵との戦闘を前に高揚していた。
「増援が集まってくる以上、じっくりと事を構えている時間も無いな。最短最速の強襲で行くしかあるまい」
 ロニ・カルディス(ka0551)には中央広間の周囲から響く戦闘音が断続的に聞こえている。
 ここまで自分達を率いてくれた先行部隊が今も続々と集まってくる敵と戦闘中だという証拠だ。
「そしてこの遮蔽物のない地形では、まさに正面からの力勝負。そういう訳だね」
 久我が敵の布陣を読み解いた戦術を述べる。
 ハンター達は前線班は全力で接近して敵を抑え、後方班は砲台型に攻撃を集中という作戦を立て、戦闘を開始した。

 後方班の穂積はR7エクスシアに装備させた[SW]量産型フライトパックの『フライトブースト』で上空に舞い上がる。
 そしてスナイパーライフル「オブジェクティフMC-051」の最大射程で敵を捉えられる位置まで移動すると、砲型に狙いを定めた。
 だが、CAMがフライトパックで飛行すると機動性が半減すつため、不安定な機体と比例して照準器もフラフラと揺れて安定しない。
 それでも何とか狙いを定めてトリガーを引く。
 しかし放たれた弾丸は砲型から反れてしまい、命中しなかった。
「飛びながらの狙撃がこんなに難しいなんて……」
 穂積は距離を詰めつつ再び狙いを定めた。
 そこで照準器に映る砲型の砲身が自分に向けられている事に気づいた。
 砲口が火を吹き、大口径の砲弾が飛来してくる。
「っ!」
 回避しようとしたが、飛行中のR7の機動は鈍く、間に合わない。
 咄嗟に『マテリアルカーテン』を発動させて、マント状マテリアル帯をR7の表面に展開する。
 だが砲弾は『マテリアルカーテン』越しでもR7の装甲をひしゃげさせ、続く爆発の衝撃で機体が吹っ飛ばされる。
「キャー!!」
 機体が空中でグルグルと錐揉みし、コクピットが激しく振動して体が何度もシートを打つ。
 それでも半自動的に脳波コントロールによって各部のスラスターが噴射され、機体は安定した。
 しかし次の瞬間、砲型に続いて光型の撃ってきた大型エネルギー砲の光が迫ってくる。
 回避は当然間に合わず、再度『マテリアルカーテン』を展開。
 エネルギー光がR7の左胸あたりを貫通し、左腕が吹っ飛んだ。
 機体内部も焼かれ、ディスプレイに機体の異常を知らせる警告表示が幾つも点灯する。
 しかしまだ戦闘の継続は可能な範囲だ。
 スナイパーライフルで狙いを定めて撃つ。
 だが当たらない。
 飛行しながら命中させるには距離が遠すぎるのだ。
 砲型と光型が再び穂積を狙ってくる。
 今の穂積は謂わば味方から1人離れて空で孤立しているような状態で、敵にとっては格好の的だったからだ。
 他のハンター達の武器はまだ射程外なので支援すらできない。
 放たれた砲弾が再度R7を直撃。
 『マテリアルカーテン』ごと前面装甲が吹っ飛んでコクピット内が剥き出しになり、穂積の身が飛行中の強風に晒された。
 更にエネルギー砲も来る。
 『マテリアルカーテン』を展開しつつ右腕でコクピットを庇う。
 穂積に直撃はしなかったが、コクピット内は焼かれて火が着いた。
 ディスプレイは警告表示だらけで、機体は損傷してない箇所を探す方が難しいくらいボロボロだ。
「智里君! それ以上空にいては危険だ。退がれ!」
 同じ後方班の久我が警告する。
「はいぃ~!」
 穂積は警告に従って降下を始めたが、時既に遅かった。
 降下中を狙い撃たれたR7は更に激しく損傷し、機体の機能が完全に停止する。
 飛行を保てなくなったR7は墜落。
 その衝撃で穂積は重傷を負い、そのまま気を失った。

 一方、前線班はほぼ足並みを揃えて全速で移動していたが、ロニだけはR7エクスシア『清廉号』の『アクティブスラスター』で1人先行していた。
 敵も人型と水晶型が前進を始め、弾型は機体上面に設置されたミサイル発射口を全門開放し、突出していたロニに向けて次々と発射した。
「熱烈な歓迎だな。だが俺に攻撃が集中すればする程仲間は安全に前進できる」
 頭上から飛来してくる数十発ものミサイルが着弾する寸前にロニは『アクティブスラスター』を噴射。
 着弾予想地点を高速で駆け抜けると、機体の後方で次々とミサイルが落ちて炸裂していった。
 爆発音が連続的に鳴り響き、砕けた瓦礫や土が飛び散ってR7の背に当たるが、機体は無傷だ。
 ミサイル弾幕を抜けたロニは敵をビームライフル「ベウストロース」の射程に捉えると速度を落とし、人型の1体の脚を狙ってビームを放つ。
 人型は盾で受け止めたがビームは貫通して脚をも貫いた。
 脚を損傷した人型は足並みが遅れる事になり、横一列だった敵の隊列に乱れが生じる。
 ロニは『アクティブスラスター』で遅れた人型と水晶型と砲型が直線上に並ぶ位置へ移動。
「良い立ち位置だ。そのまま動かないでくれよ」
 ビームライフルを発動体として『マテリアルライフル』を放たれ、閃光が走り抜ける。
 水晶型には回避されたが、マテリアルの光は人型と砲型を貫いた。
 だが攻撃で足を止めたロニに、水晶型がレーザーを、人型がビームマシンガンを、弾型がミサイルを一斉掃射してきた。
 咄嗟に[SW]フライトシールド「プリドゥエン」で機体を庇う。
 ビームマシンガンはほぼ防げたが、レーザーは貫通して左腕を損傷する。
 ミサイルは直撃は避けたものの、爆発の衝撃で脚部をやや損傷した。
 しかしロニは再び『アクティブスラスター』を発動させ、敵の集中砲火をくぐり抜けながら人型の1体に集中攻撃を続けた。

 ロニが敵を引きつけてくれている間に他のハンター達も敵を攻撃できる位置まで到着。
「中央に見える水晶の塊のようなのが敵の首魁であろうか?」
 確証はないがそう見て取ったが久我は光属性で攻撃できる『プラズマシューター』を発動させ、[SW]試作波動銃「アマテラス」でマテリアル波動を帯びた弾丸を水晶型に撃ち放つ。
 だが水晶型は真横にスライドしたかのような機動で避けた。
「避けられたか、手ごたえから属性を測るつもりだったのだが」
「ミグがどいつが首魁か見極めてやろう」
 ミグはまず人型機は除外した。
 盾持ちである以上、ミグらと同じく壁機と推測したからだ。
 最も遠方にいる弾型は狙いにくいため当座は無視し、まずパッと見で一番怪しい水晶型に重機関銃「ラワーユリッヒNG5」を撃ち込んだ。
 もし水晶型が高位歪虚であるなら、随伴している人型がカバーに動くだろうと考えていたが、人型は特に動きを見せず、水晶型も滑るような動きで銃弾を回避した。
 続けて光型、砲型の順に重機関銃を撃ったが、やはり人型は目立った動きを見せず、銃弾は各機に命中した。
「むぅ……ならば正解は消去法でミサイル型かのぅ?」
 現時点では確かめる事ができないため、結局どれが高位歪虚かは特定できなかった。

 その頃、アニスはロニが攻撃し続けている人型に迫っていた。
 アニスに気づいた人型がビームマシンガンを放ってきたが、ダメージは軽微で進行を阻めない。
「ったく、バカスカ撃ちまくりやがって……鬱陶しいんだよ!!」
 アニスは一気に人型に肉薄してパイルバンカー「エンハンブレス」を叩き込む。
 人型は盾で受けたが構わずトリガーを引く。
 炸薬が弾けて射出されたパイルが盾を貫通。そのまま腕をえぐって胴体にも突き刺さる。
 元々損傷の深かった人型はその一撃で機能停止した。
「次はデカブツ共だ」
 アニスは後方の砲型系に標的を定めるとローラー「ゾーオン」で走り出した。
 
 残る3機の人型はロニ、セレスティア、保に向かってくる。
「難敵を引き受けるのはタンクたるミグの役目じゃな」
 ミグはバズーカ「ロウシュヴァウスト」を水晶型に向けて撃ち放った。
 水晶型には身を捻って避けられたが、ミグの方へ引き寄せる事はできた。
「1体ずつでも確実に減らす。各機可能な限り集中攻撃だ」
 他の者達は久我の指揮で人型の1機に集中砲火を浴びせた。
 そのため保へ向かっていた人型には大ダメージを与えたが、他の人型の接近を許してしまう。
 こうなると目の前の敵に集中せざるを得ない。

 一方ミグは、足の速い水晶型にあっという間にバズーカの有効射程範囲の内側に入り込まれていた。
「そっちから来てくれるならむしろしめたものじゃ。容赦なく叩き潰してやるわ!」
 ミグはドミニオンの手甲部に内蔵されている『ワークスドリル』を発動。
 金切音を立てて網回転するドリルを間近まで迫ってきた水晶型に叩き込む。
 しかし水晶型は軽く身を反らすだけで避け、ソード状の腕を使ってカウンターでドミニオンを斬った。
 金造同士がぶつかり合う甲高い音が鳴り、ソードが装甲で弾かれる。
 水晶型は逆の腕も薙ぎ払って斬ったが、それも弾かれた。
「完全無欠の防護屋ミグ・ロマイヤーのハリケーン・バウUSCは、そんなナマクラでは傷一つ付けられん!」
 ミグは再びワークスドリルで攻撃。
 水晶型は後ろに退がって避けると、両腕に黒いオーラを纏わせる。
 ミグは斬りかかってきたオーラソードを[SA]大壁盾「庇護者の光翼」で受けた。
 重い衝撃が盾を通じてコクピットまで伝わってくるが、ドミニオンにダメージはない。
「どうやら奥の手らしいが、無駄じゃったな」
 ミグは不敵な笑みを浮かべながらドリルで反撃した。
 水晶型はドミニオンの腕を払うようにして側面に回り込みつつ避け、高速機動でミグの視界の範囲外へ消える。
 機体を旋回させて追おうとした直前、ドミニオンの背中に黒いオーラソードが突き入れられた。
 どんなに装甲が厚くても関節部などの急所はどうしても存在してしまう。
 オーラソードはそこに突き入れられていた。
 ダメージは大きい。
 だが戦闘に支障がある程ではない。
「急所をつきおったか。だがこの程度では――」
 セリフの途中でコクピットを光が貫いた。
 水晶型がドミニオンに突き入れたソードの先端部からレーザーを放ったのだ。
 装甲の内側から0距離で放たれたレーザーはドミニオンの内部機構を破壊してコクピットにも到り、ミグをも貫いた。
「ぐふっ……」
 ミグは血を吐いたが自分の身には構わず、ドミニオンを前に飛び出すように動かしてソードを機体から引き抜く。
「ハリケーン・バウにここまでダメージを負わすとは……やりおるわ」
 口元の血を拭っていると、水晶型はすぐにまた突っ込んできた。
 そして接敵する寸前、高速機動でドミニオンの脇を抜けて視界外へ消える。
「また後ろか!」
 相手の位置を予測しつつ振り向きざまにドリルを叩きこんだ。
 しかしドリルは空を切る。
 前にも、後ろにも、何処にもいない。
 水晶型は、ドミニオンの真上に滞空していた。
 直上からオーラソードがドミニオンの頭部に突き入れられた。
 ダメージは大きくはないが、剣先は装甲を貫通している。
 ミグは突き立ったソードにドリルを叩き込んだ。
 激しい擦過音が鳴り響き、ソードが砕けて粉々になったクリスタルが飛び散ってゆく。
 だが水晶型は腕を破壊される前にレーザーを発射。
 光がドミニオンの内部をミグ共々貫いてゆく。
 ドミニオンは完全に機能停止し、その場に擱座する。
「皆……こやつの貫かれたら終わりじゃ……突きに、気を……つけ……」
 レーザーで重傷を負ったミグはトランシーバーに告げる途中で意識を失った。

 保は向かってくる人型に魔銃を向けて狙いを定めた。
 だが重い飛来音を耳にして攻撃を中断。
 『スペルスラスター』を発動させて回避機動をとった直後、脇の地面に大砲が着弾した。
 砲型の砲撃だ。
 更に弾型の放ったミサイル群が頭上から飛来してくる。
 踵部のローラーの猛回転をさせ、最大速度で着弾地点から離脱する。
 だが走るプラヴァーを狙って光型がエネルギー砲を放ってくる。
 さすがに3機同時攻撃の全てを避けきれない。
 最も装甲の厚い腕部を交差させ、コクピットを守るようにガードを固める。
 プラヴァーは直撃を受けて損傷したが保自身は無事だ。
「まさか3機から同時に狙われるとは……」 
 後方班の穂積は撃墜され、久我は主に人型を攻撃し、アニスはまだ辿り着いていないため、現時点では砲型系を抑えている者が誰もいなかったのだ。
 更に人型もビームマシンガンを撃ってくる。
 だが保はそこに勝機を見出した。
「射線上に味方が居れば撃てないはず」
 『スペルスラスター』でマシンガンを避けつつ加速して人型に接近する。
 人型は保の意図を見抜いたのか、接近されないよう引き撃ちでマシンガンを撃ってくる。
 保はマシンガンを避けると『イカロスブレイカー』も発動。
 ローラーから翼状のオーラが溢れ出し、プラヴァーが更に加速。
 一気に人型に肉薄してミラージュグレイブで胴を斬り裂き、脇を抜ける。
 そこから反転して再び人型に迫り、グレイブを背に突き立てた。
 その時、視界の端で水晶型が砲型の方に顔を向け、腕を振り下ろすのが見えた。
 すると光型がエネルギー砲を発射。放たれた光は人型ごとプラヴァーを呑み込みんだ。
 高熱が関節部や内部機構や焼き潰してゆく。
 余波で保の身も焼かれ、激痛が走った。
(味方ごと撃つなんて……)
 だが確信できた事があった。
「水晶型が指揮を取っています。水晶型が高位歪虚です」
 痛みをこらえてトランシーバーで仲間に告げる保の頭上から弾型と砲型の放ったミサイル群が降り注ぐ。
 連続する爆発に呑み込まれたプラヴァーは大破し、傍らにいた人型もミサイルを受けて爆散した。

 ロニは人型と近接戦を行っていた。
 Mハルバード「ウンヴェッター」は人型の盾越しでもダメージを与える程の高威力を発揮したが、相手の黒いオーラを纏ったソードもフライトシールドを貫通してR7にダメージを与えてきた。
 『アクティブスラスター』で機動性を上げれば相手もスラスターを吹かして機動性を上げ、今度は相手の攻撃を避け合いながら隙を伺う攻防になる。
 そんな攻防の最中、水晶型が強襲してきた。
 辛うじてシールドで受け止めたが、その隙を突いて人型も斬りかかってくる。
 そちらはMハルバードで受けたが防ぎきれず、胴体部に刃が深く喰い込んだ。
「2対1か……不利な局面だが戦いようはある」
 ロニは胴体に喰い込んだソードを掴んで旋回し、人型を強引に水晶型と並ぶ位置まで動かすと[SW]クイックライフル「ウッドペッカー」を稼働させて『マテリアルビーム』を発射。
 マテリアルのビームは人型の胸部を貫通し、その後ろにいた水晶型も撃ち抜いた。
 人型はソードを放してロニから距離を取り、マシンガンを撃ってくる。
 ロニはシールドで受け止めながら人型の陰から出た水晶型にMハルバードを叩き込んだ。
 水晶型は腕で受け止めた。
 だがその腕はミグが損傷させていたため、Mハルバードの威力に耐えきれず砕け散った。
 しかし水晶型は逆の腕をカウンターで突き出し、R7の胴体を貫く。
 その刃はコクピットにも達し、ロニをも斬り裂いた。
 それが致命傷となり、R7もロニも戦闘不能になったのだった。

 セレスティアは接近された人型とグレートソード「エッケザックス」で近接戦を行っていたが、敵に盾で防がれるとダメージが通らなかった。
 敵の攻撃もFシールド「ハイラハドム」で防げていたが、そのため互いに攻め手に欠ける攻防になっている。
 久我はセレスティアを支援しようと立ち回っていたが、人型はスラスターを巧みに使って常にセレスティアのR7を遮蔽にできる位置取りをしていた。
 しかしセレスティアはある戦術を思いつき、それをトランシーバーで久我に伝えた。
「了解した。何時でもいいぞ」
「ではいきます。3 2 1」
 タイミングに合わせて久我はセレスティアのR7の背に向けて『マテリアルビーム』を放った。
 セレスティアはタイミング通りに『アクティブスラスター』で真横に避ける。
 すると『マテリアルビーム』はセレスティアの正面にいた人型を直撃。
 その機を逃さずセレスティアも『マテリアルライフル』を発射。
 2方向から直撃を喰らった人型は満身創痍になる。
 セレスティアはグレートソードで一気に攻勢を掛けた。
 人型は盾で防いだが、そのままグレートソードで盾を抑え込む。
「今です御言さん」
 久我は盾を抑え込まれて露わになった人型の胸を撃ち抜いてトドメを刺した。
 人型を倒した2人が水晶型に目を向けると、アニスの方へ向かっているところだった。
「アニス君! 水晶型がそっちへ行った」
 久我がトランシーバーでアニスに警告しながら狙い撃とうとする。
 だがそこに弾型の放ったミサイル群が殺到してきた。
 久我は攻撃を中断して回避機動を行う。
 セレスティアも回避機動を行ったが、その動きに合わせてロニが戦っていた人型が横合いからマシンガンを撃ってきた。
 反射的に『アクティブスラスター』を発動させ、間一髪避ける。
 久我は人型に可変機銃「ポレモスSGS」を向けたが、先に光型にエネルギー砲で狙い撃たれる。
 回避しつつ撃ったが、体勢が崩れたためか人型には避けられた。
 その後も久我は弾型と光型に狙われ、セレスティアへの援護を阻害され続けた。
 一方、セレスティアは人型に黒いオーラを纏ったソードで斬りかかられていた。
 Fシールドを眼前に浮遊させて防ぐ。
 だが人型は力任せにオーラソードを叩きつけ、Fシールドを眼前から弾き飛ばした。
 人型がシールドのなくなったR7に向けてオーラソードを振り上げる。
 しかしセレスティアはFシールドを脳波コントロールし、人型の背中に突き立てた。
 人型の体がグラリと揺らいた隙に、正面からもグレートソードを突き刺す。
 だが人型を倒しきる事はできず、オーラソードが振り下ろされる。
 『マテリアルカーテン』を発動させたがR7は縦に斬り裂かれた。
 セレスティアは刺さったままのグレートソードを斬り下ろして人型を両断し、ようやく息の根を止めた。

 アニスはパイルバンカーと『錬機剣「YUKIMURA」』を併用して砲型の脚を1本ずつ潰していた。
 しかし久我から警告を受けたため攻撃を中断する。
「ちぃ! デカブツがまだ片付いてないってのに」
 アニスは接近してくる水晶型にマシンガン「ラディーレン」を放った。
 水晶型はジグザクに動いて避け、一気に肉薄してくる。
 動きに合わせて錬機剣で薙ぎ払うが屈んで避けられ、懐に入り込んだ水晶型がコクピットを狙ってオーラソードで突いてくる。
「突きはマズイ!」
 咄嗟に左足をローラーのピックで固定し、右足のローラーを逆回転。
 機体を旋回させて突き入れられるのは避けたが、刀身で胴体部を斬り裂かれた。
 左足のピックを抜いてローラー正回転。その場で機体を360度旋回させ、その勢いでパイルバンカーを叩き込む。
 だが水晶型は高速機動で後ろに退がって避ける。
「今のでも当たらねぇとは……。動きを止めなきゃダメか」
 アニスは機体正面をパイルバンカーで庇いつつ炸薬を交換した。
 すると水晶型はその隙を突いて迫ってくる。
 アニスは錬機剣を下から上へ振り上げるようにして迎え討った。
 水晶型は避け、錬機剣を振り上げてガラ空きになった脇腹をオーラソードで薙ぎ払う。
 刀身が装甲を断って機体の半ばまで喰い込み、コクピットの側面がへこんだが、アニスにまでは達していない。
 アニスは喰い込んだソードが腕で抱えて固定した。
 このためにワザと隙を作って攻撃を誘ったのだ。
「いくら速かろうがなぁ……掴んじまえばタダのサンドバッグなんだよ!」
 『アグレッシブ・ファング』も発動させて腕を振りかぶり、水晶型にパイルバンカーを叩き込む。
 射出されたパイルが胴体を穿ち、破砕音と共にクリスタルが飛び散る。
「もう一発!」
 だが、パイルバンカーのリロード中を狙って水晶型はソード状の脚にオーラを纏わせ、ガルガリンの片脚を斬った。
 脛から下を切断されたガルガリンが膝をつく。
「脚グセ悪いぞ!」
 パイルバンカーを脚に叩き込んで破砕する。
 だがその間に水晶型はガルガリンの腕を裂きながらソードを一気に引き抜いて拘束から逃れた。
「マズイ!」
 距離を取られては脚を損傷したガルガリンに勝機はない。
「逃さん!」
 しかし久我が水晶型の進路上に『マテリアルビーム』を放って逃走を阻止する。
 アニスは片足のローラーだけで何とか水晶型に追いすがり、タックルで引き倒してマウントをとる。
 水晶型は組み伏せられながらもオーラソードを突き上げてきた。
 損傷した腕を防いで反らす。
 腕は断たれたが、その間にリロードを済ませたパイルバンカーを構えた。
「これで終わりだガラス野郎!」
 炸薬の炸裂音を響かせながら射出されたパイルが水晶型の胸を穿ち、粉々に打ち砕く。
 胴体を完全に砕かれた水晶型はその身が黒色の塵へと変貌していった。
 それに合わせて周囲の景気の輪郭が徐々に薄まってゆく。
 機界が消滅し始めたのだ。


 機界が消滅してきた事にハマーも気づいた。
「やったぞアズマ!」
 喜色を浮かべてアズマを見たが、その姿も薄れてきていた。
「そんな……」
 理由は時間。
 異界は外より時間の流れが早いため、その分アズマの歪虚化も進んでいたのだ。
「ずまん、アズマ……」
 今のアズマに言っても分からないだろうが、ハマーには謝罪する他なかった。
「俺、きっと1人で転移してたらとっくに野垂れ死んでたっす」
「え?」
「隊長が俺を引っ張ってくれたから生きてこられたんすよ」
 アズマが照れくさそうに笑う。
「だから隊長には感謝してるっす」
 それが、アズマの最後の言葉となった。
「……馬鹿野郎。俺なんかに感謝するなよ……」
 ハマーの目から今までずっと堪えてきた涙が溢れる。
 それは止めようとしても叶わず、何時までも流れ続けた。

 こうして虚無の1つが消滅した。
 尊い1人の犠牲と共に。

依頼結果

依頼成功度成功
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MVP一覧

重体一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディスka0551
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤーka0665
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめka5800
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里ka6819

参加者一覧

  • 赤黒の雷鳴
    アニス・テスタロッサ(ka0141
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ガルガリン
    ザガン・ベルム(ka0141unit006
    ユニット|CAM
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    セイレンゴウ
    清廉号(ka0551unit003
    ユニット|CAM
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ハリケーンバウユーエスエフシー
    ハリケーン・バウ・USFC(ka0665unit002
    ユニット|CAM
  • 淡光の戦乙女
    セレスティア(ka2691
    人間(紅)|19才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    アールセブンエクスシア
    R7エクスシア(ka2691unit002
    ユニット|CAM
  • ゴージャス・ゴスペル
    久我・御言(ka4137
    人間(蒼)|21才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ゲッコウ
    月光(ka4137unit004
    ユニット|CAM
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめ(ka5800
    鬼|23才|男性|符術師
  • ユニットアイコン
    プラヴァートクベツシヨウ
    特別仕様「三毛丸といっしょ」(ka5800unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    アールセブンエクスシア
    R7エクスシア(ka6819unit004
    ユニット|CAM

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/03/11 18:53:38
アイコン 質問卓
保・はじめ(ka5800
鬼|23才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
アイコン 相談卓
保・はじめ(ka5800
鬼|23才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2018/03/12 23:34:50