廃屋にひそむもの

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/03/24 09:00
完成日
2018/03/27 03:28

みんなの思い出

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オープニング

●ある見張りの手記
 一日目。今日からこの廃屋の見張りをすることになった。町でも処分したいらしいが、予算がなくて壊せないのだそうだ。だけど、廃墟とあっては恰好の遊び場になってしまう。そこで何かまずいことが重なったら、歪虚が湧いてしまうんだそうだ。そういうことで、ここがそんなことに使われないように見張りを募集していたと言うわけ。給金は安いが贅沢は言ってられない。流れ者の俺なんか雇ってくれるんだから! 今日は特になし。少し不気味だが。
 そういえば、どうしてここは廃屋になってしまったんだろう? 少し気になる。明日にでも聞いてみようかな。

 二日目。どうしてここが廃屋になったのか、町の人に聞いてみた。だけど皆言葉を濁すばかりで教えてくれない。教えてくれないなら見張りをやめる、と言うには俺も立場が弱い。一体何があったんだろうか?
 今日は子どもを三人追い返した。

 三日目。家の中で灯りが見えた。ぼんやりとした小さな灯りだ。子どもかと思って探しに行ったが、足跡もなかった。一体なんだったんだろう。
 詰め所に戻るとコーヒーカップが倒れていた。悪戯か? 鍵を掛けることにする。

 四日目。鍵をつけてもらった。今日も家の中で灯りが見えた。それを見て、忍び込もうとした子どもたちが逃げて行った。知り合いではなかったらしい。もう一度俺も見に行ったが、やはり誰もいなかった。
 今日はカップは無事だった。

 五日目。何かがおかしい。どうしてあの光は球形をしているんだ? 燭台や松明とは違うようだ。マテリアルか? 覚醒者なのだろうか? しかしハンターが来ているなら俺にも知らされているはずだ。おかしい。
 今日は誰も来なかった。

 六日目。役場に聞いてみたが、ハンターは雇っていないとのことだ。俺は光のことを報告して、もう一度廃屋で何が起きたのかを聞いた。やはり教えてくれなかった。もうこうなったら意地でも突き止めてやる。
 今日はカップルを追い返した。

 七日目。今日は家の中に入って見張ることにした。いつも光が見える時間になると、一階の居間に光る玉が現れた。詰め所に逃げ帰ると、鍵が傷だらけになっていた。もう嫌だ。

 八日目。詰め所の窓が叩かれた。カーテンを開けても誰もいなかった。
 今日は誰か来ただろうか。わからない。それどころじゃなかった。

 九日目。あいつは俺をどうにかしようとしている。きっともとから、ここは歪虚が集まるようなところだったんだ。さっき窓が叩かれて、カーテンを開けたらこちらをにらむ女がいた。俺と目が合うと、すぐに走ってどこかに行った。もうたくさんだ。歪虚だろうがなんだろうが、同じ人間のハンターに倒せるなら俺にだって倒せる筈だ。

 十日目。手斧を調達して来た。いくらなんでも頭を潰されたらどうにもならないだろう。あの女ぶちのめしてやる。

(手記はここで終わっている。この手記は最後に書かれた日から三日後に発見された。事情を悟った町役場の職員はこれを持ってハンターオフィスに通報した)

●ハンターオフィスにて
 集まったハンターたちが、資料に添付された手記のコピーを読み終えると、剣呑な表情でおさげのハンターオフィス職員は言った。
「見張りの彼には言ってなかったんですよねぇ」
 何をだろう? ハンターたちが首を傾げたところで、彼女は
「そこがなんで廃屋かって? 心中事件があったからなんですよってぇ! 既にまずいことは起きてたんですう! 歪虚が集まる可能性は十分あったんですよぉ!」
 彼女が言うにはこうだ。見張り番が消えてしまったその廃屋は、かつて夫婦が住んでいた。しかし妻の借金、夫の不実、その他諸々。悪いことは重なるものだ。夫婦は刺し違えて死んだ。当然買い手が付くはずもない。行政は取り壊すつもりでいるが、予算がなかったらしい。しかし、悪戯をしたい年頃の子ども、好奇心旺盛な子どもは曰くつきの廃墟を反抗期の遊び場とて選んでしまう。見張りを付けたいが町の人間は誰も引き受けない。
「そんなこんなで、事情を知らない流れ者の彼に見張りを押しつけたってわけです。可哀想に。彼はもう生きてないでしょう」
 深いため息を吐きながら、彼女は手記の写しを眺めて首を横に振った。
「今まで侵入した子どもたちはみーんな運が良かったんですねぇ。見張りの彼が……ジュストが最初の犠牲者です。だから、女の幽霊が出るって言うのもジュストの手記で初めて知れました。子どもたちは光しか見なかったんですねぇ」
 彼女はジュストのノートをハンターたちに差し出した。
「原本です。持って行ってください。ところで、おかしいと思いませんか? 光が見えたから家に入ったのに、戻ったら詰め所にちょっかいかけられてるんですよ? 目撃されているのは女だけですが、男もいると思いますね。挟み撃ちにされます。気をつけて」

リプレイ本文

●打ち合わせ:オフィス
 オフィス職員はジュスト死亡の可能性を示唆してはいたが、遺体が見つかっていない以上は死んでいると決めつけるわけにもいかない。
 一行はまずジュストの特徴を確認した。身長180センチ、体重75キロ。標準的な体格で、髪の毛は短くそり込み、右二の腕にタトゥーが入っているらしい。最後に目撃されたのは、手記の最後の日と推定される日で、手斧を持って持ち場に向かうところが目撃されている。軽装にブーツだったそうだ。
「変なことが起こったらすぐ教えてくれればお手伝いできたのん……」
 ミィナ・アレグトーリア(ka0317)がしょんぼりしたように言う。確かに、ジュストが自分の力ではなく、ハンターオフィスに通報していれば、こんなことにはならなかっただろう。
「そうね。でも、彼が翻意して廃屋内に隠れたなら、条件次第でまだ生きている可能性がある。だから彼の発見を優先しましょう」
 マリィア・バルデス(ka5848)がそう提案した。
「そうですね。どんな形であれ見付けたいですから」
 冷泉 緋百合(ka6936)も頷いた。エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)も同感のようだ。
「サイドカーつきのバイクで行きます。生きていればそれで運搬しましょう」
「私は犬を連れて行く。手記もあるから匂いをたどれると思うわ。歪虚とはその過程で必ず会うと思う」
 マリィアは思案しながら言った。
「他の歪虚とも遭遇しそうですね。歪虚が発生するような状況に寄ってくる可能性は否定できません」
「このまま放っておいたら、近隣住民に被害が出るに違いないですね……正義のニンジャとしては放っておけませんっ!」
 ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)はカードをそろえながらやる気満々だ。
「おう! ジュストも見付けて歪虚もぶっ潰す!」
 宣言したのは姫之宮 アテナ(ka7145)。彼女は陽動を担当するために、全身を鎧に包んでいる。
「では、行きましょうか。分散することになるでしょうから、何かあったら連絡を取りましょう」
 エラが言った。全員は互いの顔を見て、頷いた。

●捜索:詰所
 現場の周りは閑散としていた。ジュストが行方不明になったことは町中に知れ渡っているらしく、子どもですら近寄らないようだ。ハンターたちとしては好都合である。
「γ、この匂いを辿りなさい……行けっ」
 マリィアが連れてきた犬の鼻先に手記を差し出した。γはくんくんと鼻を鳴らしていたが、やがて走り出した。行き先は詰め所であった。
「一番匂いが残ってるんだろうなー」
 アテナが納得したように呟く。γは主人を見上げた。
「偉いぞ、γ」
「廃屋の見取り図は確か町役場にもないって言ってましたよね」
 緋百合が詰め所の鍵を見つめながら言った。手記にあったように、それは傷だらけになっている。
「この中にあるかもしれません」
 ルンルンがそう言って、詰め所のドアを開けた。役場の人間すらここには近づいていないようで、おそらくは手記を見付けた時が最後だろう。生活用品はそのままになっている。ベッドはおざなりに整えてあった。あまりまめな人物ではなかったのだろう。
 緋百合は詰め所内をしばらく探していたが、やがて何もないと判断して仲間たちに向かって首を横に振った。
「どうやら本当にジュストさんが寝るだけの場所みたいです」
「そのようね。手記の内容からしても、彼がこの家について詳しく知っていたとは考えづらい。図面も渡されていないでしょう」
 マリィアは再びγに匂いを嗅がせた。γはやがて廃屋の方を見て、そちらの方に歩いて行った。

●足跡:屋外
 エラは水晶球で辺りを照らしながら、ミィナとともに足跡を調べていた。屋内の幽霊を退治するために必ず通る箇所はある。その一つが詰め所入り口から廃屋までの間だ。案の定、足跡は残っていた。玄関から、かなり大股で廃屋に向かう足跡だ。
「歩幅は身長の0.4~0.5倍と言われているんです」
 エラはその足跡を指して解説した。
「もっとも、感情が昂ぶってるともう少し歩幅は大きくなってしまうんですけど。この足跡の人はかなりカッカしていたんでしょう」
「じゃあこれはジュストさんの足跡なのん?」
「その可能性が高いです」
 ジュストとおぼしき足跡は、まっすぐと廃屋に向かっている。その後を、別の足跡が追い掛けているように見えた。挟み撃ちに遭う。オフィス職員の言葉を思い出す。足のサイズからして、追い掛けているのは男性だろう。
 2人がかがみ込んでいるところに、ルンルンが駆け寄ってきた。
「詰め所にめぼしいものはありませんでした」
「やっぱり寝起きするだけの小屋だったのん?」
「そうみたいです。こちらはどうですか?」
「ジュストの足跡は見付けました。かなり頭に血が上っていたようですね。大股です。それを追うように別の、男性らしい足跡があります」
「こちらも、詰め所の窓周辺に女性らしい足跡を見付けましたよ。廃屋と何往復かしていますね。少なくとも2体はいるということでしょう」
「彼が書いた手記の通りです」
 エラが首を横に振る。無事だった時のために水とチョコレートを持参したが、果たしてどうだろうか。
「ルンルン」
 アテナがやる気に満ちた表情でやって来た。
「γが廃屋の前で立ち止まってんだ。式符で偵察頼んでもいいか?」
「お任せください! 忍法分身の術! 今行きますね」
「私たちはもう少し屋外を探します。何かあったら連絡します」
「おう、あたしたちもなんかあったら連絡するぜー!」

●突入:廃屋
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法分身の術!」
 符の一枚がふわりと落ちるや、人形に姿を変えた。壊れて半開きになったドアの隙間から入って行く。ルンルンは式神を通して中の様子を窺った。
 埃の積もったホールだった。恐らく、何かいたずらする前に光が出るのだろう。特段荒れた様子はなかった。
 式神がしばらく様子を窺っていると、やがてぼんやりとホールの中ほどに光が浮かび上がった。足音が奥から聞こえる。ワンピースを着た女の形をした歪虚が、ゆっくりとこちらに歩いて来るのが見えた。式神と目が合う。ルンルンは即座に、式神を呼び戻した。
 ドアから式神が戻ってくるのを見て、緋百合がルンルンを見る。
「どうでしたか?」
「いました。女の人です。手記にあった人だと思います」
「アテナ、先頭を頼む」
「おう!」
 マリィアの言葉に、アテナは頷いた。彼女はソウルトーチを発動させる。白い薔薇が舞い始めた。緋百合も手甲を軽く動かし、問題なく動きそうなことを確認すると、トランシーバーでエラたちに連絡を取る。
「こちら冷泉。これから廃屋に入ります」
「こちらベル。了解しました、気をつけて。こちらは今のところ異常なしです」
「了解。そちらも気をつけて」
 通信を追えると、緋百合はアテナとマリィアの後を追って廃屋に入った。ルンルンは挟み撃ちに遭わないようにと玄関に地縛符を仕掛けている。屋内は、埃っぽく、ひんやりとしていた。
 目当ての歪虚はすぐに見つかった。ナイフを持った女が、アテナの薔薇と、女性の幻影に気を取られて彼女をじっと注視している。
「かかってこい!」
「ジュストさん! 救助にきました! 歪虚討伐が済むまでもう暫く隠れていて下さい! 私達は必ず貴方を連れて帰ります」
 マリィアが、いるかもしれないジュストに呼びかける。犬は歪虚に向かって吠え立てた。歪虚はソウルトーチを燃やしているアテナの方にまっすぐ向かって行く。アテナは盾を構えて、振り上げられたナイフを受けた。甲高い金属音がする。
「こちらバルデス。女歪虚と遭遇した! これより戦闘に入る」
「こちらベル。了解しました気をつけて。こちらも歪虚を3体発見しました。1体そちらに向かっています。迎撃できますか?」
「了解。玄関にルンルンの地縛符がある」
「了解しました。では後ほど」
 通信を追えると、マリィアはライフルを構えて全員に聞こえるように声を張り上げた。
「外でも歪虚が3体出現! 内1体がこちらに向かっている! ルンルン、地縛符にかかったのを頼む」
「了解しました!」
 マリィアはその返事を聞いてから撃った。弾丸は女の背中に命中する。緋百合の髪の毛が白くなった。白銀のオーラをまとった仲間を見て、アテナは盾をしっかりと構えなおす。
「やっちまえ緋百合!」
「任せろ!」
 独特の足取りで、緋百合は歪虚に迫った。背後の爆発的なマテリアルに気付いて、歪虚が振り返る。彼女が見たのは、白い炎をまとい、拳に槍を添えた緋百合の姿だった。
「アテナ、下がれ!」
 いくら防御を固めていても、この拳が貫通しては後ろのアテナも巻き込まれる。アテナは急いで待避した。それを確認してから、緋百合は女の胸にマテリアルの槍を叩き込んだ。
「ルンルン忍法三雷神の術!」
 玄関付近で稲妻が光った。ルンルンの風雷陣が炸裂したらしい。どうやら、先ほどマリィアが言っていた歪虚らしい。そのマリィアがライフルを持って玄関に向かうのが見えた。アテナは目の前の歪虚が消滅したことを確認すると、緋百合と目配せして玄関に走った。

●迎撃:屋外
 一方、屋外でジュストや、他の犠牲者の痕跡がないか調べていたエラとミィナは攻撃態勢を整えていた。屋敷の裏手から、歪虚が3体やって来たのだ。
「この歪虚さんたちは足跡の中にはいなさそうなのね」
「同感です」
 おそらくは負のマテリアルに惹かれてやって来たのだろう。土塊に手足が生えたような歪虚だった。
「1体は地縛符にかかってくれるでしょう」
「それなら良かったの! エラさん、うち、2体くらいならライトニングボルトで巻き込めるのねん」
「わかりました。陽動しますね」
「ありがとうなの!」
 エラは立ち上がると、三散を発動した。光のトライアングルがエラの前に浮かび上がる。その頂点から、光線が放たれた。長期戦のために効率を重視し、威力にはそこまで気を回していないが、エラのハンターとしての力は決して弱くない。陽動とは言ったが、それなりにダメージが期待できる。光線に串刺しにされて、雑魔はその場で苦痛にのたうった。
 ミィナは、エラが歪虚2体の直線上にいないことを確認すると、ライトニングボルトを発動させる。上から照らされていた地面が、もっと低い位置からの光源で明るくなる。時を同じくして、廃屋の方でも稲光が見えた。
 やがて、光源が水晶球と月だけになる。歪虚2体の殲滅を確認すると、エラは水晶球で周辺を照らした。
 ここまでの捜索では、門の周辺から始まる足跡がいくつかあることはわかっている。全て同じ靴底だ。その足跡が、詰め所から出たジュストを追い掛けていることは明白である。
 一方、廃屋から飛び出した足跡は、小さいもので、恐らく子どもだろう。歩幅は大きい。走って逃げ出したことを示唆している。だが、詰め所から廃屋に向かうのと同じ形の足跡で、逃げ出したようなものは残っていなかった。
 走って逃げられない状態だったら? そう思って、よろけた様な足跡、血痕、その他負傷者がいたことを示唆するような痕跡も探したが、こちらもやはりめぼしいものは残っていない。ミィナも、自然音以外の何か……たとえば人のうめき声とかそう言うものに気を配って聞き耳を立てていたようだが、何も聞こえていないようだった。
 あまり愉快でない可能性が頭に浮かんだ。
「ジュストは外に出ていないのかもしれませんね」
 それが何を意味するかは、ミィナにもわかった。
「生きてる可能性……あると思ってたのねん……」
 その時、エラのイヤリングが通信を受けた。
「こちらバルデス。ジュストが見つかったわ」

●合流:廃屋
「ジュストが見つかったわ」
 トランシーバーでマリィアがしらせてくれるのを聞いて、エラとミィナは顔を見合わせた。
「彼は無事ですか」
「いいえ」
 余計な言葉はなかった。それだけで充分だった。エラが頷くと、その様子を見て、ミィナもジュストの安否を察したらしい。きゅっと眉根を寄せた。
「そうですか。ひとまず私たちもそちらに合流します」
 2人は廃屋に入った。ルンルンは念のため、と言って再び地縛符を玄関に仕掛ける。そういえば、オフィスでももう1人いるだろうと言う話だった。
 水晶球やLEDライトで照らす屋内は明るく、それ故にエラとミィナはジュストがどうなっているのかひと目でわかった。ホールの奥の方で、彼はうつぶせに倒れている。後頭部に裂傷があった。手斧を奪われたのだろう。アテナの歌う鎮魂歌がホール中に響いていた。
「ニンジャセンサーで感知できないのでもしかしたら、とは思っていたんですが」
 ルンルンがこちらを見て、そう言いながら首を横に振る。
「ひどいのん……」
 ミィナが小さく呟く。酷い。それに尽きた。恐怖の中でだまし討ちに遭い、武器を奪われて殺される。あまりにも不憫な最期であった。
「あなたのおかげで子どもたちは無事だった……ありがとう」
 マリィアが囁く。無謀だったが、彼の残した記録が他の被害を防いだ。月が慰めるように家を照らし、ハンターたちは目を伏せて、その死を悼んだ。
 そのときだった。入り口からうめき声がする。全員が振り返ると、手斧を持った男が、地縛符に引っかかって立ち往生している!
「かかったな!」
 緋百合が吠える。彼女のマテリアルが動くのがわかった。マリィアがライフルを持ち上げる。
「援護する」
 白い髪をたなびかせて、緋百合はあの独特のステップを用いて一瞬で間合いを詰めた。男が振り上げた手斧を、ハウンドバレットがはじき返す。胸がガラ空きになった。緋百合の白い槍がその胸を貫き、男はすぐに塵になって消えた。後には、刃の欠けた手斧ががらん、と音を立てて転がるだけだった。

●後始末:ハンターオフィス
「ジュストは郷里にもう身寄りがないと言うことで、あの町の合同墓地に埋葬されました」
 後日、ハンターオフィスの職員は6人にそう教えてくれた。
「町側も、ジュストに危険性をしらせていなかったってことでかなり反省してるみたいですね……もう少し気軽にハンターオフィスに連絡してほしいもんです」
「あの、そう言えばね」
 ミィナが申し出た。
「うち、町の人が良いよって言ってくれたら、建物を破壊したいんよ」
「ああ、解体ね」
 マリィアが納得したように頷いた。
「どこを破壊すれば崩せるか、私も助言できると思うわよ」
「うーん、そうですね。負のマテリアルって言ってもそこまで酷いわけではないので、普通に町の営みの中で浄化されるでしょうしね。解体は無駄ではないと思いますよ。打診しましょうか?」
「お願いするんよ」
 オフィス職員は町役場に連絡を取ることを約束した。これで解体の許可が下りれば、歪虚の出現も減るだろう。
 こうしてまたひとつ、恐怖の源が消えていく。少しだけ世界に平和が戻った。

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参加者一覧

  • 幸せの魔法
    ミィナ・アレグトーリア(ka0317
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 狂える牙
    冷泉 緋百合(ka6936
    オートマトン|13才|女性|格闘士

  • 姫之宮 アテナ(ka7145
    人間(蒼)|19才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
人間(リアルブルー)|30才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2018/03/24 05:35:25
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/03/22 16:57:33