消えた雑魔の謎を追え

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/03/27 09:00
完成日
2018/04/03 08:08

みんなの思い出

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オープニング

●お礼息子
 グラズヘイム王国のとある地域にある町、領主の息子リシャール・べリンガーは菓子と手紙を入れた包を配送する手続きをしてきた。
 手が腰に下げている刀に当たった。思わず嬉しくて口元が動く。
 腰に佩いている刀は遅くなったという詫び上付きで大江 紅葉(kz0163)が誕生日にくれたものだった。これまで使っていた刀よりも、刃が薄く軽い。その上、刀が芸術品でもあると言われることを理解できた。刃のありかた、拵えの作り方の違いを十分感じられた。
 さて、町の中でリシャールが感じたのは歪虚がいる可能性の怯えであった。情報は的確に伝えてあるとはいえ、噂は封じ込めることは難しい。
 むしろ嘘をついたほうが良かったのかもしれないが、それはそれで嘘が知られたとき問題が生じる。
 先日ハンターが対峙した歪虚がどこにいるかわからない。その状況になるまで、直接的な被害はなかった。姿を見られたことでどういう行動に出るかがわからない。それが問題であり、どう対処するか手腕が問われる。
 しかし、逃げた後、町の中、領内でそれらしい問題は起こっていない。外に出て行ったのか、それとも、再び姿を隠しているのかと推測するしかなかった。
 リシャールが視線を感じた。そちらを見ると、日向ぼっこしている老人たちが安堵している雰囲気で彼を見ていた。
「こんにちは」
 リシャールはそちらに行き挨拶をした。
「おお、坊ちゃん、こんにちは」
「見回りですか? 歪虚がいるというから」
「坊ちゃんがいると安心しますよ」
 ニコニコしながら、お菓子を勧めてくる。
「あ、いえ……見つけて討伐しないといけないのです。だから、まだ……」
 安全安心を確保できていないことを後ろめたく思うリシャール。しかし、老人たちは首を横に振る。
「何かいる可能性はどこでもありますが、そこで安心を見出せるかは領主様のおかげです」
「そうそう、図書館に隠れていたというのに、誰も気づかなかったですし」
「探すつもりがなければ見つからないです」
「こっそり見つけるならわしらでもできよう」
 老人たちは楽し気に笑う。
「そう思えるのも坊ちゃんたちがいるからですよ」
「見つけたら、ハンターに教えますし」
 リシャールは丁寧にお礼を言って、大量に持たされた菓子にも礼を言い、家に帰った。

●溜息領主
 領主のシャールズ・べリンガーはため息を漏らした。
 手元の封筒の紋章を見て一回、内容を見て二回、しまい込んで一回。
「全く……王国の行く末は私だって気になる。しかし、これを素直に飲み込んだらどうなるか」
 そして、またため息を漏らした。
「それよりも、こちらが先だな……図書館の歪虚は見つからないが、外れの林に雑魔がいるらしい」
 そこはよく雑魔が来る。
 この領内には街道がいくつか走っている。中を通るものから、近くを掠るのまで。それで潤うかと言えば、素通り領地なためあまりよくはない。ただ、交通の便がいいということで住む人はいる。
 人の行き来あるせいか、色々なものも移動してくるようだった。
 結果、時々雑魔やら亜人やら出る。
 町外れにある林でとりあえずとどまってくれるので、ひとまずそこで対処すればいいので良い。
「人手が……なー、歪虚探しもあって、見回りに人使っているし。俺が行くのはさすがに……」
「父上、ただいま戻りました」
「うん、お帰り」
 リシャールが戻ってきて、執務室に顔を出した。
「今、暇?」
「……唐突ですね」
「私と違って、ハンターとして飛び回るということもリシャールはしない」
 家出まがいなこと二度したよな、と言う言葉が飲み込まれる。
「せっかくだから、修業もかねて行って来ないか、雑魔退治。あと兵も幾人かつけるし、あー、マーナさんに頼んで、ルゥルちゃんも連れて行けば、ちょうどいい修業になるな」
「は、はい!」
 リシャールが顔をパッと輝かせて返事をした。

●意識朦朧
 リシャールとルゥル、兵士四人とともに林に向かった。雑魔が一体か複数かわからないが、目撃情報からは一体らしいとなっている。油断しなければ二体くらいなら対応できるだろう。
 リシャールの馬でルゥルも向かう。林の中は馬で動くのは危険だ。道を通るならいいが、雑魔を探すのに道の外も重要だ。
 馬を降りて、リシャールを前に一行は進む。目撃情報や雑魔がいることで起こりうる現象を見逃さないように歩く。
 植物が妙に元気がない場所に来た。
 兵士にも緊張が走る。
「リシャールさん……」
 ルゥルがワンドを握りしめ、周囲を見る。
「雑魔が目撃されたのは最近ですが……」
「本当に雑魔……なのです?」
 リシャールはそれに首肯しそうになる。
「リシャールさん……一旦帰るです」
「ええ、皆さん……」
「おやあ……誰かいるのかのう」
 リシャールは聞いたことがない女性の声がした。
 それを聞いた瞬間、ルゥルが目を見開くのをリシャールは見た。ルゥルの肩を押すように後ろに下がり、兵士に目くばせをした。
「なぜ、黙るのかのう?」
 リシャールは日本刀の柄に手を触れた。
「駄目です」
 ルゥルが首を振る。一緒に逃げないといけない。
 木々の間から、それは出てきた。ドレスを着、頭には布をかぶった女性。
「坊や、そのようなものは持つではない、危ないのう」
 女性が一歩踏み出す。
 ルゥルはリシャールのそでを引っ張り、兵士に手を振って逃げろという。
「隠れるのは上手なのです。だから、リシャールさんが逃げるのです」
 ルゥルがリシャールに言うが、
 女性は逃げる兵士を追い始める。
「させないのです」
「させません」
 リシャールが抜刀すると女性に切りかかる。ルゥルは集中して氷の魔法を放つ。それらは回避されるが、兵士を追うことを止めることはできた。
「おやあ、懐かしや懐かしや……うぬは……あのお方かのう?」
 女性は接敵するとリシャールの日本刀の柄に振れ、動き封じた。
「放せ」
 リシャールが女性をにらみつける。
「おお、おお! これは! 怒り? 怒りじゃのう……妾にもあった、ああ、あのお方は何故……そうそう、のう、童、妾の手と足となり、力を貸してくれぬのかのう?」
 リシャールは言葉を返そうとしたが、失敗した。
「リシャールさん?」
 ルゥルが不安を覚え、後退を始める。
「そっちの童を、殺してくれや?」
 リシャールが振り返る。
「……みぎゃ!?」
 ルゥルは一目散に逃げたのだった。
 林の外で兵士と合流すると、リシャールのポチを説得し、街に急いだ。
「ロビンさん、大変なのですううう。図書館の歪虚が出たのですううう。リシャールさんがおかしくなっちゃのです! あれって【強制】ですか? みぎゃああああああああああああああ」
 ルゥルはありったけの知識を持って説明をしたのだった。

リプレイ本文

●おろおろ
 レオナ(ka6158)はおろおろしているルゥル(kz0210)を見つけると安心させるように笑みを浮かべる。
「ルゥルちゃん、皆で何とかしますから落ち着いて、深呼吸よ」
 ルゥルは素直に深呼吸する。
 カーミン・S・フィールズ(ka1559)は依頼の状況から傲慢勢との戦いを思い出し、顔をしかめる。
「味方が【強制】受けて、全員が向かってくる様は壮観よ?」
 想像するだけでも嫌なことだ。
 ディーナ・フェルミ(ka5843)はルゥルと視線を合わすようにしゃがむ。
「ルゥルちゃん、一緒に行く? ルゥルちゃんを置いていくと隠れてついてくると思うの違うかな?」
 ルゥルの目が泳ぐが、彼女のペットのパルムが肯定している。
「林で目撃したものが図書館の歪虚と同じかも確認されていないの。ついてくるなら、他の術者さんの言うことをきちんと聞けるかな?」
「はいです」
 ディーナの提案にルゥルは力強くうなずいた。
 エルバッハ・リオン(ka2434)はルゥルを守ることを告げる。
「……図書館の歪虚の目的がいまいちわかりませんが、今はリシャールさんの救助が最優先ですね」
 ぽつりつぶやいていた。
 トリプルJ(ka6653)は図書館にいた歪虚を見ている。
「図書館ではさほど人に迷惑を掛けなかったから、もう少し分かり合えるんじゃないかと思ったが……」
 メイム(ka2290)は状況の整理が終わったところで出発の声をかけた。
「ルゥル、現場へ案内お願いね」
「はいです」
 メイムは気づいていた、ルゥルは役割があるとそれを果たすために有能になることに。

 ベリンガー家の兵たちは領主への報告や街道へ行く人への対応などに移った。

●移動
 一行は移動中、情報のやり取りをする。ルゥルには現状を、前回いた歪虚を知っている者からはその情報を聞く。
「何かしらの魔術にたけている可能性はありますね」
 レオナの意見に否定の声は上がらない。
「前回、【黒曜封印符】を使ってしまったため、どのような能力があるか未確認なのですよね」
「あの状況で最善だっただろう」
 トリプルJがレオナに言う。
 今回は確定ではないが能力の一端はわかっている。
「【傲慢】でない可能性はありますが、精神に関する魔法が関わっているのは事実です」
「そうそう、【傲慢】がどうのもあるけど、精神への影響は大きいのよ」
 カーミンが眉間にしわを寄せ、その言葉にエルバッハはうなずく。
「それに他に雑魔がいるかもしれませんし、注意は怠れませんね」
「ルゥルたちが見つけていないのか、そもそもいないのかがわからないんだよね。歪虚の出現タイミングが良すぎるよ」
 エルバッハの言葉からメイムが告げる。
「歪虚がいて無事に逃げられたのは良かったの。これから私たちと探して、リシャール君助けてから雑魔もどうにかするの」
 ディーナがルゥルに笑みを向けた。
 カーミンは情報も出尽くしたと思うあたりで情報をまとめ対策を考えていく。
「歪虚もだけど……リシャールがあちらについた状態で、スキルが使われると面倒なのね」
 舞刀士には先手を取りやすくする技能がある。
「雑魔調査のために全力を尽くそうとしていたことが裏目に出る……なんて考えないもの、普通」
 カーミンはため息をついた。

●捜索
 林に到着するが、生き物が全くいないのではと思えるほど静かである。
「リシャールの匂いを覚えて探すのー」
 ディーナは連れている犬ダックスフンドにリシャールの荷物の匂いを嗅がせた。
 ルゥルは走り出しそうになるが、エルバッハとディーナの視線で動きを止めた。
「ルゥル、遭遇したところまでの案内よろしくね。もし、歪虚を見つけた場合は【アイスボルト】を使うんだよ」
 メイムに指示されてルゥルはうなずく。
 一行は進んでいく。
「歪虚の被害は今のところ……これだけか? とはいえ、兵を手を掛けようとして、リシャールに推定【強制】を掛けた」
 トリプルJは考える。歪虚でも話ができる奴がいれば戦いたくはないが、今回のことであの歪虚は共存の難しさを示し、倒すしかないことが明確になった。

 カーミンは植物の枯れ具合を見る。季節のために元気がないのとマテリアルを奪われることで元気をなくすもの違いをとらえたかった。町から来た林の入り口は異常を感じにくいが、中に行くにつれて違和感は浮かび上がる。
「あっちの広場でリシャールさんと別れたのです」
 ルゥルが指す方向にディーナの犬も走り込もうとしているため、おとなしくするように指示を出す。
「雑魔に気をつけないと駄目ですね」
 ここに来るまではあらゆるものに気を配っているからよかったが、これからは歪虚とリシャールに集中してしまう。後衛であるエルバッハはそばにいるルゥルを守ることも視野に入れないとならない。他の者も気にはしているが、位置として近くにいるのは彼女だった。
「そうだね、気にしないといけない……ルゥルちゃんもいるし」
 レオナも自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
 メイムは【超聴覚】を使用する。
「歪虚と人かな……いるっぽいよ」
「なら、偵察したほうがいいわね」
 先にカーミンが進む。そのあと、音を立てないように慎重に残りのメンバーは進む。

 カーミンが先行し、広場となっている場所を覗く。ドレスを着て、頭には大きなストールのような物をかぶる女性がいる。リシャール自身は特に何かするわけではなく立っている。
(女性の服装……ここからだとまだわからないけれど、品はよさそう。ストールはやけにしっかりした布よね?)
 観察をし、いつでも攻撃できる状況にはする。頭から布を掛けることがあっても、あまり見かけないタイプのかぶり方だ。
「そろそろ、離れることにしようのう……。それにしても、妾はどこに向かうとよいのかのう」
 女のつぶやきがかすかに聞こえる。
 カーミンは歪虚に立ち去られるとまずいと考え、仲間に手招きと回り込むように指示を出す。
 メイムは様子を見て、カーミンの方につく。全員で同じ方向に行く意義はないだろうし、確認する意味もあった。実際見ると、歪虚へはここからでも対応はしやすそうだ。
 エルバッハとルゥル、レオナが同じ当たりで足を止める。トリプルJとディーナがさらに進む。

 先手を取れるか、それとも敵に気づかれるのが先か。
 しかし、運は良かった。

 ある程度、自分たちに都合のいい場所についたころ、歪虚がハンターに気づいた。
 その瞬間、カーミンとメイムが飛び出して意識を散らす。
「気づかれたのが先でもやっぱりこうしたほうがいいよね! 【鉄鎖「ドローミ」】! 行って、あんず!」
 メイムは歪虚の足止めと【ファミリアアタック】で攻撃を試みる。
「さーて! 物騒なあいさつでごめんねー、あんた、どこのお姫様?」
 カーミンは歪虚に声を掛けるとともに【茨の檻】を展開せる。歪虚がどこに向かうかわからないが、少し嫌な気分になればリシャールともどもこちらに来るだろう。そうなれば、守りが重要になる。

「ルゥルさんは歪虚に向かって攻撃してくださいね」
 エルバッハは指示を出すと、【集中】を行ってからリシャールに【スリープ】を放つ。リシャールはその場に崩れ落ち、呆然としている。
「……まずは防御ですね……」
 レオナは【ワイルドカード】を用いて意識を強化し、【Eadha】を使う。彼女が符を放った瞬間、ポプラの葉がふわりと舞うように周囲を緑に埋め尽くしたように見えた。仲間の防御をあげるために。
「ってか、効きすぎだろう! リシャール!」
 トリプルJはリシャールを助けるために急いで近づく。他のメンバーの行動を考え、防御など考えずとりあえず抱えて後退する。
 ルゥルの【アイスボルト】は発動し、歪虚に向かって行った。
「大丈夫、リシャール君、すぐに解放するの」
 ディーナは【ピュリフィケーション】を掛ける。【スリープクラウド】が効いて、意識が途絶えて時点で精神に及ぼすものは解除されている可能性はある。しかし、念には念を入れて損はない。リシャールがもしも背後からハンターに攻撃してくる方が問題だから。

●問う
 歪虚は足止めされているのを解除しようと試みている。その手には抜き身の大太刀が握られている。
「なぜ、邪魔をするのかの?」
 歪虚は怒りに満ちた表情を浮かべると、マテリアルのくびきをたたき切る。そして、メイムに向かって大太刀を振るう。
「ちょ」
 メイムは攻撃を食らい、傷を押さえる。かなり深く入ってきた。カーミンは間一髪で回避する。
「ちょっと下がるよ」
 メイムはディーナ達がいる方に移動しつつ、【ヒール】を使う。
 エルバッハは【懲罰】を警戒しているが、足止めは必要だと【アイスボルト】を放つ。
「そもそも、領主の依頼で雑魔討伐に来たんだけど、あんたも?」
 カーミンは【タイム】を用い【二刀流】で攻撃をする。半分は回避されたが、傷つけることはできた。
 その問いかけに歪虚はにらみつけるだけだった。

 レオナは【御霊符】を用いる。式神が生じると生命力を持っていかれ、全身の力が抜けるような感覚があるが、術が成功した証拠であった。
「回り込んで」
 それは歪虚の背後に移動していく。

 トリプルJはディーナにリシャールを任せて前に出る。
「で、林の雑魔って噂になっていたのはあんたか?」
 接敵直前まで来たトリプルJが問うと、歪虚は彼を見て艶然とした。
 ディーナはリシャールを引きずって後ろに下がる。
「エルさん、ルゥルちゃん、リシャール君をよろしくなの」
 預けると歪虚の方に向かった。

 歪虚は艶然としたまま、トリプルJとの一気に間合いを詰めた。
「のう……妾の言うことを聞いてくれるかのう」
 トリプルJは脳裏に浮かぶ彼女の顔に思わず見とれた。しかし、脳内で警鐘が鳴り、己に一喝を入れる。同時にエルバッハが【カウンターマジック】を放っていた。
 トリプルJは嫌な感触から脱した。
 術が効かなかったと分かった瞬間、歪虚はハンターが動くより早く、トリプルJを噛みつこうとした。トリプルJの鎧は固く通らなかったが、完全に不意打ちであった。
 噛みつけなかったところで一歩下がると、彼女は大太刀を振るった。トリプルJは袈裟切りされ、膝をつく。
「雑魔はおらぬかと問うたことに、答えてあげたのだがのう?」
 歪虚は間合を確保すると、ハンターと対峙する。

 エルバッハはルゥルに魔法を止めるように指示し、敵の様子を見る。
 現在のところ、歪虚にルゥルの魔法も一度は当たっているし、カーミンの攻撃も食らっていた。それでも【懲罰】は来ていない。相手が余裕を見せて何もしてこないだけなのか、それとも【傲慢】でない可能性があるのではないかと考え始める。
「さっきの痛かったよ。【薙ぎ払い】みたいな感じかな?」
「次はこちらからお返しに行こうかしら?」
 メイムとカーミンは武器を構える。ここから一気に畳みかけて倒せる可能性もありそうだ。しかし、【傲慢】でない確証がまだないところに、一気に攻撃することで危険が増すのも事実。
「雑魔と間違われるほどおとなしくしていたのに、どうして突然敵対するの? あなたの思い人はリシャール君に似ていたの?」
 ディーナが声をかけた。返答によっては【セイクリッドフラッシュ】を放ち、仲間の行動をとりやすくしようと考えてはいる。
「さて? 髪の色は似ておろう。妾も問いたい、あのお方と似た香りがついている……なぜじゃ?」
「探してあげれば、おとなしくするの?」
 ディーナの問いかけに歪虚は首をかしげる。
「さて? 嫌なものは嫌だからのう。試しにこの地に来てみたが、なんとまあ、つまらぬ。怒りの情感すらわかぬ。この服のどこが良いか、重ねも色も香もなく……面白みに欠ける」
 歪虚は笑う。
「では、武門の娘らしゅう、貴様らの首をあげて行こうかのう」
 歪虚は大太刀を構えた。
 彼女が背後の式神を見た瞬間に、ハンターが攻撃を開始する。彼女が攻撃を回避・抵抗できたとしてもこのような状況は嬉しくはない。
「ここで貴様らを倒して、そのマテリアルを馳走になるのもよいがのう……が、妾はあのお方へ復讐をしないとならぬのう」
 武器を振るうと、風圧で周囲にいるモノを攻撃する。式神は真っ二つに切れ、トリプルJ、ディーナとメイムが巻き込まれた。
 次の瞬間には、歪虚はすでにその場にいなかった。

●無事、確認
 ディーナはせっせと仲間の傷を癒す。
 意識がはっきりしたリシャールは自分の至らなさに落ち込んでいる。
「無事でよかったわ。そもそも、突然術を掛けられて抵抗できるのは訓練で来た人か、術や技も使って対抗できた場合よ」
 レオナがリシャールを慰める。慰めているが、事実であるため、悔しそうだがリシャールは素直にうなずく。
「あれと二人の時、あいつは何を言っていたんだ? 記憶にあるか?」
 トリプルJに問われ、リシャールは首を横に振る。
「抵抗しないといけないと思うのと、彼女を守らないといけないという考えで一杯でした」
「それはそうだよな……彼女を守らないといけないって気持ちがこう湧いてきたような……リシャールが無事でよかった」
 トリプルJが同意しつつ、力強く笑いかけてから何か考え込む。
「こう、服を頭に掛けるような文化ってあるわよね」
 カーミンが思い出そうと頭を指で突いた。
「小袖を頭にかぶる風習がある地域があったそうですよ」
 リシャールが昔調べたことにあった知識を披露した。
「ああ、それだわ。そうすると服の着こなしが下手な状況も説明付くかもしれないし……」
「コウとかブモンとかいっていなかったけ?」
 メイムが会話を思い出しながら言う。
「つまり……この近辺の……というか王国由来の歪虚ではないってこと」
「歪虚って移動する奴は移動するよね」
 メイムは嫌だという顔になるが、歪虚の様子には納得はした。
「【強制】ではなく、特定な人物に影響が出る精神に関する術ととらえると、【傲慢】以外の可能性が強くなります。二度攻撃をしてきましたよね? これが眷属由来か、個人的な特技かという問題もありますが」
 エルバッハの言葉に異論は出ない。
「そうだよね、【懲罰】もなかったし【強制】を使うつもりなら、近くにいた私に掛けるのは簡単だったはずだし」
 カーミンは眉間にしわを寄せた。
「もう怪我はいいの? リシャール君はさっきのでももういい? みんな大丈夫なの?」
 ディーナが心配するがリシャールは特にけがはなかった。仲間の怪我を治せるだけ治した。
「皆さん心配しているわね」
「なら、帰って安心させるの」
 レオナとディーナが言うと、リシャールはうなずいた。
「術を掛けられそうになった時の感覚は分かった。恋に落ちるような気分だった」
 トリプルJの言葉にリシャールは顔を真っ赤にしたのだった。

 一行は林をくまなく探し、雑魔がいないことを確認した。

依頼結果

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MVP一覧

  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオンka2434
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJka6653

重体一覧

参加者一覧

  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 遊演の銀指
    レオナ(ka6158
    エルフ|20才|女性|符術師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/03/26 06:51:05
アイコン 消えた雑魔の謎を追えシリーズ?
ディーナ・フェルミ(ka5843
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/03/27 08:56:07