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【CF】それはクリスマス?

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2014/12/14 09:00
完成日
2014/12/18 20:02

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 12月、リアルブルーでは多くの街がどこもかしこもクリスマスに染まるこの時期、クリムゾンウェストでもまた同じようにクリスマスムードに包まれる。
 それはここ、崖上都市「ピースホライズン」でも変わらない。
 むしろどこもかしこも華やかに、賑やかにクリスマス準備が進められていて。

 リアルブルーの街に輝くという電飾の代わりに、ピースホライズンを彩るのは魔導仕掛けのクリスマス・イルミネーション。
 立ち並ぶ家や街の飾りつけも、あちらこちらが少しずつクリスマスの色に染まっていく。
 特に今年は、去年の秋に漂着したサルヴァトーレ・ロッソによって今までになく大量に訪れたリアルブルーからの転移者たちが、落ち着いて迎えられる初めてのクリスマス。
 ハンターとして活躍している者も多い彼らを目当てにしてるのか、少しばかり変わった趣向を凝らす人々もいるようで。

 果たして今年はどんなクリスマスになるのか、楽しみにしている人々も多いようだった。

●クリスマスの街にやってきた
「ピースホライズンですぅ! 憧れの街っでぇすぅ!」
 毛糸の帽子で耳も隠した小さい少女ルゥルは、クリスマス一色になってきている街に魅了されている。祭りが盛り上がるまでにはまだ日数があるが、やっと来たと大興奮で頭も胸もいっぱいだった。
 帽子の上に載っているペットであるパルムも、ルゥルと同じようにきょろきょろしている。
 一人で来たわけではなく、保護者であるエクラ教の司祭マークが一緒である。はしゃぐルゥルと手をつないで、はぐれないよう努力している。腕は何度もぴんと張った状態になり、引き戻すまで時間がかかる。目的地にはいつ着くのか全く予想がつかなかった。
 手伝いがほしいと知人に呼ばれたマークが、ピースホライズンに行きたがっていた近所の子ルゥルを連れてきたのが今回の状況。
 まずの目的地は宿代わりにもなる知人の家である。
 そこの場所をルゥルに教えてから、別行動する予定であった。

●信頼と不安の狭間で
「マークさん、お利口にしています!」
 知人宅の家政婦マーサにあいさつした後荷物を置き、入口でマークはルゥルと別れることにする。クリスマスの飾りつけをしてもいいと知人は言っているので、ルゥルは大興奮中だ。
 楽しみと喜びと、大興奮でルゥルは、ビュンと空に飛んでいきそうなくらい跳ね回る。
 楽しみなことはいいことだ、連れてきて良かったとマークは思う一方、この子が問題を起こしはしないかと不安もある。
 いや、信じないといけない。見た目は小さいけれど、年齢を考えれば、それなりに大人に近いのだ。信用しないといけないのだ、と何度もマークは自分に言い聞かせる。
 彼女が事件を起こさなくても、巻き込まれるかもしれない。十人中十人可愛いというだろうし、小さいし、好奇心旺盛でどこか行ってしまうから誘拐されやすいかもしれない。パルムを連れていても防犯上大した効果はない。
 マークは信用しないといけないという気持ちと、不安材料で胸が一杯になる。
「お財布も持ちました!」
 マークの心配をよそに、ルゥルは元気よく指さし確認をしている。ガマ口財布に紐を通し、貯めた小遣いを入れて首にかけている。掏られるかもしれない!
「ところで、ルゥルちゃんはどこに行くんです?」
 予定を聞けば少しは安心するはずだ。
「お買い物です! カボチャとロウソクと円板と……あればユズって植物に炭です」
「……え?」
 カボチャ? ハロウィンという祭りの? 祭りが話題になったのはちょっと前だ、探せば飾りもどこかに残っているかもしれない。
 今はクリスマス一色であり、探すなら星やトナカイのぬいぐるみとかクリスマスグッズではないのか?
 マークの頭の中に疑問が生じ、かつ、嫌な予感が湧き上がる。
「カボチャで何をするんですか?」
 しゃがんで視線を合わせて問うと無邪気な笑顔で元気な答えが返ってきた。
「お風呂に入れるんです」
「……!」
「円板に火を付け転がします」
 マーク司祭は冷や汗が滝のように流れ始めるのを感じ取る。
「百本のロウソクに火を付けて、踊りながら怖い話を一つする毎に消すんです、夜に」
 リアルブルーの日本に伝わる百物語という遊びではないかと司祭は推測した。ただし、踊らない。
「い、今はしなくていいのではないですか?」
「え? リアルブルーではトージにはそれをするそうですよ? それと、クリスマスはもともとトージの祭りがあって、それと合体したって、マークさんのおうちに来たリアルブルーから来た人から話を聞いたという人から話を聞いたという人に聞きました」
 教会にはいろんな人がやってくるので、どこの誰か分からない。リアルブルーに詳しい人や出身者がやってくることもあるが、ルゥルに話した人物はどこでそこまで情報を捻じ曲げたのか。
「……ルゥルちゃん、うん、そうですね。冬至とクリスマスの関係は合っていますね。それで……炭はどうするのですか?」
「真っ赤な服を着たサンタという人が来たら、投げつけます! そして、『お前のお鼻まっかっか』ってはやし立てるそうです」
 絶対に違う! いや、多分違う! リアルブルーに関して詳しく知らないが、そん暴力的なことはないはずだ。
「ユズという植物は煮物にします」
「ユズですか? オレンジやレモンなら手に入るかもしれませんが……」
 マーク司祭はまともに答えて、そんな問題じゃないと改めて首を横に振る。
 この街で行われるクリスマスの趣旨を思い浮かべ、自分の知識を再確認する。もっと重厚もしくは楽しい物だ。ルゥルが言うような混沌とした行事ではない。
「マークさん、待ち合わせの時間が迫ってきてますよ?」
 首を傾げ心配そうに見てくるルゥルとパルム。
 この子を放っておいたら何をしでかすか分からない! マーク自身には予定があり、一から教え直す時間はない。
 おっとりとして品のいい老婦人である知人宅家政婦のマーサに、はじけ飛びそうなルゥルを預けるのはひどい仕打ちである。人間として司祭としてやってはならないとマークは思う。
 緊急事態であり、多少の出費は致し方がない。
 決心したマーク司祭はハンターオフィスに駆け込んだ、小脇にルゥルを抱え。
「すみません、お手すきの方がありましたら、半日この子の面倒見てください。そして、クリスマスについて教えていただければ……寸志は出します」

リプレイ本文

●お出かけ前
 マーク司祭の突然の申し出にも関わらず、快く挙手してくれるハンターがいたので、子守り役はすぐに見つかった。
「任せてください。風はリアルブルー出身なので詳しいです」
 最上 風(ka0891)がにこりとマーク司祭とルゥルを見る。
 ルゥルに年齢が近そうに見え、かつ聖導士である風にマークは安堵した。
 一方、ルゥルは子守り不要と不満な顔をしている。
「ルゥルちゃんの知っているクリスマスってどんなものか聞いてもいいかい?」
 挨拶しながら那月 蛍人(ka1083)は、しゃがんでルゥルを見る。
「カボチャのお風呂に入って、ユズの煮つけを食べて、板を丸く切ったのに火を放って転がすんです。それとロウソク百本に火を付けて、怖い話を踊りながらして、話が終わる毎に火を一本ずつ消すんです。あとサンタクロースという精霊さんに炭を投げつけるんです」
 ルゥルは胸を張っている。
「クリスマスと言うのは、エクラ教にも影響を与えた宗教のお祭りです。神の子の降誕祭ともいわれますが、明確な記録がないのはよく知られていることで、異教徒の冬至の祭りを転用したともいわれます」
 天央 観智(ka0896)が説明をすると、ルゥルは目を丸くして鱗を落としている。
「クリスマス……あぁ! ノエルの事ですね。父の出身ではノエルっていうんです。そして父が私達の部族にノエルを伝えたんですよ」
 ミネット・ベアール(ka3282)は合点がいったとうなずく。ルゥルに挨拶しながら「お近づきのしるしです。可愛いですよ、似合っていますよ」とピンに鈴の付いたアクセサリーを贈り、帽子に付けてあげる。迷子防止の一端だとは口にしない。
 お礼を言うルゥルは鈴を鳴らしてはしゃいでいる。
「ユズ煮たら、ジャムになるよね? それはそれでおいしいからいいけど」
 ジオラ・L・スパーダ(ka2635)の指摘にルゥルは鈴を鳴らすのを止め真面目な顔になる。
「そうです、オレンジに似た植物だと本で見ましたから、ジャムになります!」
「冬至にはユズを風呂に入れたって、俺のバアちゃんが言ってたよ。体が温まるんだって」
 城戸 慶一郎(ka3633)の説明に、ルゥルは目から鱗をまた落としていた。
 マークは一行を見てほっとして、急いで出かけて行った。

●お買いもの
 買い物をするために商店が軒を連ねるところに向かう。ルゥルはきょろきょろしているだけでおとなしくついてくる、最初のうちは。
「あ、あれはなんですか!」
 ルゥルは気になるものを見つけ人ごみに消えそうになる。
「あんまりはしゃぐと転ぶぞー」
 蛍人の声は聞いているのかいないのか、ルゥルは止まったり走ったり忙しい。普段見ない飾りなどに興味をそそられているジオラがルゥルに付いて行っているが、いつかはぐれてしまいそうだ。
「ルゥルは知ってますか? サンタクロースというのは素敵な人で良い子にプレゼントをくれるのです」
 風の言葉にルゥルはぽかんと口を開けた。
「悪い人だと思ってました」
「そう、サンタクロースは良い子には良い人なのです。プレゼントをもらうには保護者の言うことを聞き、家の手伝いをよく行い、困っている人を助けたり良いことをして良い子でいることです。ルゥルは良い子ですよね? みんなと離れる悪い子ではないですよね?」
 風はにこやかなのにルゥルは怯えて激しくうなずく。
「ちなみに悪い子認定されると、年明け前に『なまはげ』と言う怪物が説教に来るらしいんですよ?」
 風が付け加えたところルゥルとジオラ、ミネットがなまはげという怪物を想像して震えている。
「そいつは歪虚、幻獣?」
「弓は効くんですか?」
「リアルブルーの話だし、それに本当にいるモノじゃない」
 慶一郎は新鮮な反応に驚き笑う。
「そもそも、なまはげはサンタクロースとペアにするものではないですよ。サンタクロースなら魔女や黒サンタですし、悪い子には炭のかけらが贈られるという地域もあるんです」
 観智の説明を聞き、ルゥルが自分の知識と比べる。
「サンタという人に向かって炭を投げつけるんじゃないんですね。『お前のお鼻まっかっか』って言って」
 怖くなくて良かったけれど、ちょっと楽しそうだったので寂しいルゥル。
「そうだな。でも、そのサンタだって、寒い外を来るんだ、鼻くらい真っ赤だろう?」
 ジオラは自分の鼻を指さすとルゥルはうなずいた。
「トナカイが赤い鼻だったはずだ」
「何かで見ましたがかろうじてピンク色でした。一応赤くはなるそうですが」
 慶一郎と観智は沈黙した。ここに現物はいないので正解はない。
「ところで、ルゥルちゃんは何を買うのかな?」
 買い物のことを蛍人が尋ねると、「ロウソクと丸い板とカボチャ」と返ってきた。
「ユズはいいのかい?」
「売っていても高いそうです」
 ルゥルは残念そうだが、現実を受け止めて諦めたようだ。
「ロウソクは百本?」
「小さいのなら買えますか?」
「百物語だよ、ロウソク百本、怖い話をしながら消すのは。クリスマスには全然関係ないって。ルゥルちゃんに教えた人、ロウソクの明かりで語らうってイベントと混ざったんだろうね。ロウソク自体は温かい雰囲気だし、飾るのはいいんじゃないか?」
「忙しい行事ではなかったんですね」
 ルゥルは蛍人の説明にほっとした様子だ。
「いろんなイベントあるんだね、リアルブルー。百本ではなくルゥルの年の数くらい買う?」
「ロウソクは一人ずつ持って、歌うんですよね! 父の言語なので意味までは知りませんが、歌覚えてますよ。プーティーパーパーノーエールって」
 ジオラとミネットの賛同もあり、ロウソクが売っている店に移動する。
 ロウソクはシンプルでどっしりしたものを一ダース買った。

「プレゼントをもらうには靴下が必要です」
 風にサンタクロースからプレゼントをもらうためにはと講義を受け、良い子と思いたいルゥルは大きな靴下が欲しくなった。一行はクリスマスグッズの店に足を運ぶ。
「普通の靴下だと入らないんだよな」
 慶一郎は子供のころを思い出す。ルゥルと風が飾り用の巨大な靴下を広げているのを見て口元が緩んだ。その大きさなら無茶な物でなければ大抵入るだろう。
 蛍人はこっそり、可愛らしいラッピングの菓子を購入した。
 クリスマスのグッズを見ている間に、ルゥルはキラキラした赤いボールのセットが気に入ってしまった。これを買うと買えないものが出てくる。
「円板に火を付けると危ないし、こっちの方がいいんじゃない?」
 ジオラに言われ、ルゥルは揺らぐ。
「ルゥルちゃんはクリスマスするんだろう? 円板に火を付けるのは冬至の祭りだし」
 畳み掛ける蛍人。
「この丸いの買います」
 ついでにツリー用の星や綿なども購入した。

 最後にカボチャ購入のために市場に向かった。ちょうど昼食時間帯にかかっており、方々から腹の虫を刺激する匂いが漂ってくる。
「クリスマスなら鳥?」
 蛍人の言葉に、人混みに疲れてきたミネットの脳裏に懐かしいほら貝の音が鳴り響く。
「違いますよ! 七面鳥です! 私の所では、一週間前から遥か遠くの七面鳥を部族総出で狩りに行ったものです」
 ルゥルは目を丸くする。世界は広い、知らないことがたくさんだとパルムと共に感心している。
「料理直前に絞めるのが一番ですが、ここでは新鮮な物を探しましょう」
「食べたことないんだ、七面鳥」
 うきうきと蛍人は店を見る。
「これから焼けば夕食には食べられますよ」
 意見の一致で絞められた七面鳥が購入される。
 昼食とカボチャを入手し、マーク司祭の知人の家に向かった。

●歌う、踊る
 家政婦のマーサは大人数に驚くが、事情を聴いて楽しそうに「何かあったら声をかけてね」と自分の仕事に戻った。
「お鼻まっかっか、ジオラさんが言うとおりです」
 玄関の姿見の鏡を見て笑うルゥルは毛糸の帽子を外した。勢いよく外したために、パルムは吹き飛ばされ床に転がった。
「ごめんです」
 ルゥルは怒っているパルムを拾うと頭の定位置に乗せた。

 マーサが淹れてくれたお茶と共に昼食を摂る。
 食後、七面鳥を焼く準備と並行して居間を占領しているモミの木に飾りつけを行う。モミの木は頂点に星を乗せると、天井に着きそうな高さがある。
 飾りが手際よく木に載せられていく。ルゥルが椅子に乗って飾るために手が届く範囲にまとまってしまうので、背丈がある者が適度に動かしていく。
「この紙に欲しい物を書くんだよね? そして、ツリーにつるすの」
 横五センチ、縦十五センチほどの紙を手にしてジオラが言う。
「欲しい物は手紙じゃないかな? 短冊っていえば願い事だったけど……七夕?」
 蛍人の疑問に対し観智が同意する。
「はい七夕です、短冊に願い事書くのは」
「メモに欲しい物を書いて、靴下の中に入れるんですよ」
 風が言った後、全員が首をかしげた。少しずつ食い違う方法に。
「ローカルで違うんじゃないか? ルゥルはどうしたい?」
 慶一郎に尋ねられ、ルゥルは「面白いから短冊にお願い書く」とペンを執った。
「欲しいプレゼントはあるんですか?」
 風に尋ねられて、ルゥルは首をかしげる。
「街にあるおいしいクッキー屋さんのクッキー」
 今一度考えるとルゥルは「幻のキノコを食べたいです」と言った。
 その瞬間、頭の上のパルムが硬直した後震える。パルムの態度を言葉にするなら「私を食べるの」だろう。
「パルム食べられるんですか?」
 観智がしげしげとここにいるパルムを見る。パルムの幼生は通称キノコだし、リアルブルーから見れば動く珍しいキノコだ。
「食べませんよ?」
 ルゥルは首をかしげると、パルムがほっと息をついている。
「ペットだしな、パルム」
 慶一郎は笑った。
 願いを書いた短冊をツリーに提げる。
「できました~」
 ちょっと変わっているが、賑やかで楽しそうなツリーができた。頂点の星が灯りに当たりきらりと光る。

 冬至にも興味があり、せっかく買ったカボチャなので煮つけを作ってみることになった。
「で、レシピは?」
 ジオラは腕まくりをする。リアルブルー出身者が断片的にレシピを思い出すが、調味料がない。家政婦のマーサに尋ねても入手できるか怪しいと答える。
 厚さ五ミリくらいで切る、とルゥルが主張する。
「焼くです」
 油を敷いたフライパンでカボチャに火を通し、適度な焼き色が着いたころ皿に移動する。皿を持ってルゥルは小躍りしつつテーブルに移動する。
「みなさんも食べるです」
 フォークを持った風とルゥルが熱々のカボチャを頬張り始めた。シンプルでカボチャの甘みが生きているおやつだ。

 居間自体にも軽く飾りを置いたりした後、七面鳥が焼きあがるまでクリスマスツリーを囲みながら談笑する。
「ルゥルはリアルブルーに興味があるのか?」
 慶一郎が尋ねるとルゥルはうなずいた。
「行ってみたいですよ。それに、いつか双方に行き来する時代が来るんです。リアルブルーの人達が乗っていたお船、すっごい機械だって聞きましたし」
 帰りたいと願う慶一郎にとっても早く来てほしい時代だ。CAMなんていうのもあるし、ひょっとしたらと思ったりする。
「リアルブルーのクリスマスみたいで懐かしいし楽しかったよ」
 蛍人がつぶやくと、リアルブルーから来た者たちはうなずいた。
「へぇ~、似てるんだ」
 ジオラは見た事のないリアルブルーに親近感がわく。
「人混みはすごかったです。でも、やっぱり街がキラキラしてきれいだから集まるんですね」
「ミネットさん、イルミネーションもあるので夜はもっとキラキラしていますよ」
 観智の言葉に暗いし街に行こうかという雰囲気となってくる。
「やめておいた方がいいですよ。良い子は早く寝ますから、そんなキラキラしたのを見たらルゥルが眠れなくなります」
 風のもっともらしい言葉に納得するが、ルゥルは行きたかったのか頬を少し膨らませる。
「リアルブルーのノエルの歌は? 父が歌っていたのです」
 ミネットはロウソクを一本手にすると歌う。
「クリスマスと言ったらあの歌か……」
 慶一郎は童謡の一節を口ずさむと、観智も別の歌をつぶやくように歌う。特に歌わず、風はタイトルをいくつか並べていく。
「七面鳥の歌もあったよな」
 蛍人が歌い始め、ルゥルが縮んだり手を振ったり踊り始める。パルムと同じような動きなのだが、どっちが先か見ている方は分からない。
「ルゥルさんはロウソク持って……というのは無理ですね」
 ミネットは笑う。
「危険だから。ミネット、もう一度歌うたってくれない?」
 ジオラは苦笑しながら皆が歌う物を聞いて楽しんだ。

●またね
 夕食においしく焼けた七面鳥も食べ、一息ついたころ、マーク司祭が戻ってきた。
「マークさん、楽しかったですぅ」
 居間に入ってきたマークにルゥルは飛びついた。
「みなさん、ありがとうございました……。街は壊したりしていないですね?」
 ルゥルは頬を膨らませて抗議している。マークの心配は本気か冗談か計りかねる。
「良い子でしたよ。ルゥルにもサンタさんが来るはずです! あ、サンタさん気配がしても、目を開けたり話しかけてはダメですよ? サンタさんは恥ずかしがり屋なのです」
 風に忠告を受けたルゥルは真剣な顔でうなずいた。サンタクロースというものが来ると分かったら、興奮して眠れないかも知れないから重要な忠告だ。
「サンタさんはどんな精霊さんか楽しみです」
 マークは短冊を見て「やっぱり最近は作るんですね」とつぶやく。
「ルゥルさん、当日が楽しみですね! 良いノエルを」
 ミネットはルゥルをハグする。
「司祭、これをクリスマスの朝、靴下に入れてくれませんか?」
 この隙を突いて蛍人はマークに可愛らしい包みを手渡した。
「ありがとうございます。こういった物を見つけるのは苦手なので助かりました」
「俺も楽しかった。こっちの子も、リアルブルーの子と変わらないんだって」
 慶一郎に自然と笑みが浮かぶ。
「ルゥルさん、そのサンタクロースにはモデルとなった人物がいるんです。そして、服は赤とは限らない、緑や青もあったんですよ」
 観智の最後の解説にルゥルは「その人が精霊さんになったんですか?」とマーク司祭に質問を始めた。
「ルゥル、そろそろお別れだね」
 と言ったジオラにルゥルはハグをした。名残惜しくてもお別れなのだ。
「またです!」
 ルゥルは見送る。みんなの背中が見えなくなるまで、両手を激しく振っていた。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧


  • 最上 風(ka0891
    人間(蒼)|10才|女性|聖導士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • ガーディアン
    那月 蛍人(ka1083
    人間(蒼)|25才|男性|聖導士
  • ビューティー・ヴィラン
    ジオラ・L・スパーダ(ka2635
    エルフ|24才|女性|霊闘士
  • ♯冷静とは
    ミネット・ベアール(ka3282
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士
  • 充実異世界ライフ
    城戸 慶一郎(ka3633
    人間(蒼)|25才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/09 14:23:41
アイコン 相談卓
最上 風(ka0891
人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/12/10 23:58:40