• 羽冠

【羽冠】知追う者、結婚話に巻き込まれる

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/04/17 07:30
完成日
2018/04/22 18:12

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●新聞を片手に
 大江 紅葉は刻令術の農具をもう少し借りれるか交渉もしたいし、古都アークエルスの王立図書館にも調べ物で行きたいし、せっかくなら王都イルダーナも見たいという観光欲求もあった。
 すべてをするには時間が足りないため、優先順位をつけた。
 結果、情報収集を兼ねて農具のレンタルに走る。そして、ヘクス・シャルシェレット(kz0015)がどうなっているかも聞く。直接会ったことはないが、紅葉の行動のなかで気になる人物ではある。
 しかし、世間で流れているような噂しかない。そのため、回復を願っているという旨を伝えるのみにとどまった。
「アカシラ殿ともっとマメに文通をしていればよかったです!」
 アカシラ(kz0146)はこの国にいるはずなのだ……と思っている時点で情報を正確に得ていないし、文通どころか一度会って以降何もしていないのが露呈している。
「このまま情報不足で帰路につくのも不満です!」
 町で号外を手にして、とりあえず、知り合いのところに直撃することにした。前もって約束もしていないので、あってもらえない可能性はあるが、それはそれだと考える。
 別件のこともあり、その町の状況は気になっていた。
「転移門は便利です。とはいえ疲労しているはずですよね。今日は、ここで宿でも取りたいですね……」
 王国で一泊することは織り込み済みなのでかまわない。
 丘が背後にあり、川も流れる町。
「川には精霊がいると聞きました! 拝見ではなく、お会いしたいですね」
 領主の屋敷に向かって歩いていく。
 それにしても、街の雰囲気がよろしくない。
 この町の懸念事項は解決しているはずだ。前領主の子息ニコラス・クリシスが災厄の十三魔の一人レチタティーヴォによって歪虚にされたというもの。大本のレチタティーヴォはすでにいなかったし、歪虚となりプエル(kz0127)として行動していたニコラスもハンターに討伐された。
 先日、祭りもあってにぎわったと聞いているのに、なぜか雰囲気がよろしくない。
 いや、グラズヘイム王国に来てから、どうも雰囲気が良くない。
 明るいのによくない。
 歪虚が絡んでいるという雰囲気の悪さではなく、紅葉の中でこうもやもやするよくなさだ。
 この町ではよく耳を澄ます。
「……えー、王女様? 結婚?」
 道の隅っこに移動して、手にした号外を見た。
「……あー、これはこれで……どこでもある話ですよね……」
 エトファリカ連邦国陰陽寮で万年下っ端役人の予定の紅葉にもちらりほらり耳に入ることもある。
「国の運命を決めることですし、本人の運命にも至ります。政略を考慮したとしても感情はあるのです……」
 この国に来てそわそわしていることがすべてこれで理解できた。
 異端審問には王家関係者に騎士それとエクラ教が関わり、システィーナ・グラハム(kz0020)王女の進退も含めれば、貴族だけでなく民の運命も絡む。
「嫌ですね」
 紅葉は自分の気楽さをかみしめたが、そういう立場でないのは重々承知している。ただ、紅葉の大江家はすでに親族もおらず、紅葉のみという状況。
 紅葉は号外を荷物にしっかりしまって歩き始めた。

●領主の屋敷
 入口に立派な馬車が止まっている。紋章を見るとこの町にいる領主のものではないし、王国主要貴族の物でもないと読み取った。まあ、隣近所の人だろうとは目星をつける。
 横目に見つつ、紅葉は門番に声をかける。
 門番は領主親子の知り合いだと理解し、歓待して中の者に取り次いだ。取次ぎを待っている間に、中から立派な格好をした男性が出てくる。
「ぜひとも当家の……」
 紅葉の存在に気づいて挨拶に切り替え去っていった。彼は馬車に乗り込む。
(どうやらどこかの人の使者ですね)
 紅葉はその男の人相等を見ておく。
「大江様!」
 ジョージ・モースが目を丸くするが、非常にうれしそうな表情に変わる。青年の騎士で、領主のイノア・クリシスに仕えている。
「すみません、取込み中ですよね」
「いえ、むしろ、迷惑をかけるかもしれませんが、大江様に会うとイノアさまもほっとすると思います」
 イノアは紅葉を命の恩人と感じかつ姉のように慕っているのは事実だ。
 紅葉は嫌な予感がするが、妹のようなイノアを放置できなかった。
 部屋に通された直後、深刻そうな表情のイノアと父親のウィリアムはぱあと顔を明るくし、近況報告から入って問題を切り出した。
 先ほどの使者は川を挟んだ隣の領地の領主の者で、イノアと縁談を持ってきたというのだ。
 それもそれとなくこれまでも縁談を持ちかけてきていたのだが、今回システィーナ王女にかこつけて話を持ってきたというのだ。
「養子でいいと言ってきていますが、長男を選ぼうが次男を選ぼうが乗っ取られるのは必至です」
 派閥等を考えればよい話ということもありうる。しかし、近すぎて魂胆が見え見えでクリシス家にとって一切いいことはない。
「それは大変なことです」
「実際、結婚するにはどういう相手を選ぶべきか、同じ派閥から選ぶ方が良いようですが、違う派閥を考えるべきでもあります」
 イノアは眉を寄せる。
「しかしな……ニコラスがいるということもあって、あちらは同じ考えを持つ者から選び、イノアは……ということを考えていた」
 ウィリアムはバランスの取れた政略結婚を検討していたという。彼自身、結婚相手はそうであるが、互いに好きであったためあまり政略という気持ちは少なかった。
「政略結婚は必須ですか?」
 紅葉が一応と言うと、二人は顔を見合わせる。
「正直言うと、何も考えていません」
「ニコラスが死んだあと、時間が止まったというか……」
 二人は困惑する。
「例えば、婚約者、実はいるんです、というのはどうでしょうか?」
「ある程度距離が離れていて協力してくれそうなのはベリンガーのところだが……」
「それか、相手のあらを探すとか……まあ、これはあったとしても……」
 クリシス家の方が痛手を被るためありえないとウィリアムが横に首を振り、イノアが父を冷たい目で見た。
「建設的に言えば、情報は集めるだけ集めればいいですし、イノアさんの相談もかねてハンターに協力を仰ぐというのも一つですよ」
 紅葉の提案にイノアとウィリアムは首肯したのだった。

リプレイ本文

●そこ?
 ミオレスカ(ka3496)は大江 紅葉(kz0163)との付き合いも長く、彼女の置かれた状況等把握していた。
「紅葉さん、あの方とついにご結婚ですか、おめでとうございます」
 紅葉がきょとんとなり「あの方?」と首を傾げた。
 部屋に満ちる沈黙。
「……いえ、当家の問題です……紅葉様にはそういう仲の方がいらっしゃるのですか?」
 イノア・クリシスが興味津々で問う。ミオレスカがうっかりしていたと紅葉を見たところ、本人は頭の上に疑問符を複数載せている。
 ミオレスカはイノアの話に集中することにした。
「ケッコンかー、あたしもそのうち親からせっつかれるのかなぁ」
 ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)はやって来て早々ため息を漏らす。
「イノアさんには協力するよ。情報収集はして、乗り越えよう。それに、リオちゃんがいるし、仲良くないと困るよね」
 川に住む水の精霊リオ、あだ名はいっぱいはこちらの町側に住んでいる。人間のすることに対し怒りを覚えて行動をとった結果、人間に精霊がいると認知された経緯がある。
「情報収集に行ってきますね。イノアさんはお若いですが、ウィリアムさんが元気なうちにということも考えないといけないのですね」
「行って来よう! 紅葉さんはリオちゃんのところに行くんだよね? 一緒に行こう」
 ミオレスカとピアレーチェが出発を告げる。その前に、ミオレスカが「魔導短伝話」がつながる状態にしてほしいと頼んだため紅葉が役に立てると笑顔で応じた。

●突撃する人
 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は入れ違いに執務室にやってきた。
「王女の結婚にかこつけてるか、町の雰囲気を見ると領民の反発がすごそうだな」
 レイオスはこの町のクリシス家への評価を知っているため、変な噂が流れると良好ではある隣町とも険悪になりそうに感じた。王女のことですら話題に上がるのだから、身近な領主の場合の想像はしやすい。
 クリシス家が強く出られない理由にプエル(kz0127)のことがあった。討伐こそしているが、その間にウィリアム・クリシスの不穏な発言や態度があるのは知っている。対べリアルの際のプエルとの共闘も下手すれば異端ととられかねない。
(あれは俺もいたからな)
 責任を感じるが、あの時点の最善ではあった。それも含め、イノアの心配もあり助言のために来たのだった。

 ディーナ・フェルミ(ka5843)は目をキラキラ輝かせて入ってきた。
「おめでとうございますなの、イノアさま! 相手はさておき結婚のご意志を固められたと聞いたの、とっても喜ばしいことなの!」
 握手を交わすと両手で両手を握りしめぶんぶんと振る。
 彼女の意見言葉の真意はこの後語られる。

 ステラ・フォーク(ka0808)はイノアから話を聞いた後、メトーポン家のことを知るため、直接話や噂を聞いたほうがいいと考えた。人柄は何を選ぶとしても重要と考えている。
「クリシス家の代理の者ですわ! お取次ぎお願いできるかしら?」
 メトーポン家に緊張が走るが、ハンターによる情報収集だと知り、ほっとした。

●町へ繰り出そう
 まず目的が一緒だったミオレスカとピアレーチェが紅葉とともに社に向かった。そこで手を合わせ、現れたリオにあいさつをし、ミオレスカはメトーポン領に向かった。
 ミオレスカは馬の手綱を引いて馬の散歩というついでの様子。
 メトーポン側ではプエルが殺人事件を起こしていたため、恐怖におびえていた。現在の町は穏やかそうに見えるが、どこかそわそわしてはいる。
「紅葉さんが言う良くない雰囲気はこれでしょうか? どこか噂話を聞けそうなところありませんでしょうか」
 王女周辺の話題が耳に届く。ミオレスカは広場に出ると屋台などがあった。そこで昼食を取りながら噂話に耳を傾けることにした。
「……意外と、自分の住む町のことは話さないのでしょうか?」
 言論統制しているという話もないため、単純に問題がないから噂にすらならないのかもしれない。

 ミオレスカと別れた後、リオと少し会話をするピアレーチェ。
「お久しぶり、リオちゃん」
「久しぶりなのー」
 リオは見慣れぬ紅葉を見ているため、ピアレーチェが紹介した。
「こうしてお目にかかれるのも何かの縁ですね。私の住むところは海に面しており――」
 紅葉が長い挨拶を始めた。
「おじさん、最近面白い話ない? 東方から来た人に何か面白い話ないかなって」
 その間にピアレーチェは港に向かう男性を捕まえて話を聞いてみる。
「うーん……面白いねぇ……」
 話しかけられた男性は思案顔になる。
「政治のことは面白くないしね」
「あ」
「隣町のことだけどな、若い子に人気に菓子屋ができたとか。お嬢ちゃんも行ってみると話題の一つになるんじゃないか」
 川の向こうを指しているためメトーポン側の町の話だと分かりピアレーチェの期待は上がったが、すぐにしぼんだ。
「ありがとう」
 リオと会話を終えた紅葉に頼んで、情報収集に同行してもらうことにした。

「領民にとって、領主家の安泰は生活の安泰なの」
 ディーナがドンとテーブルに手を付き演説を開始した。同席しているレイオスが「そうだな」と相槌を打つ。
「領主様が結婚しておうちの存続を図るということは、領民にこれからの平穏と繁栄を期待させるの。クリシス領の未来は明るいって思えてみんなが幸せになるの、とってもいいことなの」
「それはそうだな。領民からしたら損得……イノアが幸せになれる結婚が一番じゃないか?」
「損得もあると思うの」
「あー、まー。でもさ……そうだな」
 レイオスの脳裏にあるのは、プエル絡みの事件の数々。領主家と領民に降りかかった問題ではあったが、乗り越えられている。
「領民のことももちろん考えています……。他の貴族との結束もありますし」
 イノアが言うと、同席しているウィリアムがうなずく。
「……? イノア様は結婚について勘違いしていると思うの」
「え?」
 ディーナの言葉にイノアに困惑を与えたのだった。

 ステラの応対をした執事はほっとした。
「リアンさんやレオンさんの人柄をお伺いしたいのですわ」
「それはそれは嬉しゅうございますな。どちらも当家の優秀な若君。本来ならリアン様がここをお継ぎになりますが、イノア様のご希望でしたら、どちらもかまいません」
 政略結婚は分かり切っていたことだが、あからさまな言動にステラは内心むっとする。
「突然の訪問で申し訳ありませんし、お手すきのお方にでも話を聞けるだけでも構いませんわ」
「いえいえ、せっかくでしたら若君たちにも会ってください」
 執事はにこやかに立ち去った。
 ひとまず、使用人と話をさせてくれる。
 いいことしか言わないが、どこかわざとらしいのがわかる。
(これは……本当のことを言うとまずいという状況ですね?)
 使用人は雇われている人であるため、察した。

●助言とともに
「恋愛だろうと政略だろうと、人は幸せになることを目指して相手を選ぶの。当主であれば家の存続を考えて子どもの結婚を差配する、当主として当然の義務なの」
 ディーナがビシリと告げる。
「領民も絡んでくるもんな」
「そうなの」
 レイオスの相槌にディーナはうなずく。
「この領の当主はイノア様なの。あなたがこの人なら生涯ともに暮らせる、天変地異が起ころうと歪虚が攻めてこようが、ともにクリシス領を守っていける、そう思える人を選べばいいの」
「それは一理ある。隣からの申し出に断りを入れるにしても、メトーポン家では足りないと言えばいいというのもある……まー、十三魔レベルになると他の者だとどこでも似たり寄ったりか」
 レイオスが眉間にしわを寄せる。
「ひとまずたとえだからいいの」
「いいのか。必要なら婚約者のふりもするが」
「決意はいいの。で、イノア様のいるここは、イノア様より高位の親を持つ貴族が結婚に口を出してくる要所でもないの。だから、あなたが、あなたの意思で相手を選べばいいの」
 ディーナの言葉にイノアが目を見開く。ウィリアムは複雑な表情になる。
「相手を選んでもいい」
「……恋愛と突然言われてもイメージがわかないだろうけれど、理想の男性像とかあるんじゃないか?」
 レイオスが問う。
 イノアの顔は頬が赤くなる。
「そ、それは……」
 レイオスとディーナはうんうんとうなずきながら先を待つ。
「黒の騎士長さま……お兄様もあの方に憧れていたんですよ。いずれ、あの方みたいなるって」
 イノアが微笑み、ウィリアムが「懐かしい話だ」と笑う。
「歪虚では、あれか」
 レイオスは頭を抱え、ディーナは目を輝かせた。

 ミオレスカはパンを食べる。ある屋台に女の子が集まっているのが見えた。
 気になるため近づくと、可愛らしい菓子が並んでいる。
「可愛らしいのです……」
 女の子に囲まれた青年がいる。
「レオン様」
「買ってくださるの」
「ここのクッキーはすごく話題で」
 女の子たちがきゃぴきゃぴと話をしている。
「知っているさ、私はここの常連だからね」
 ウインクをして店員に菓子を頼み、ここにいる女の子全員にと配ってくれる。
「あら?」
 ついでにもらったミオレスカ。クッキーは可愛らしい動物の顔で、味は厳選された素材を使ってあると分かる。
「おいしいです」
 他の女の子が「大切にとっておく」という中、即刻食べたミオレスカは目立った。
「君はこの辺りの子じゃないね?」
「あ、はい。旅をしておりまして……どさくさ紛れに頂いてしまいました」
「いや、いいんだよ。ここの店の良さを広めてくれれば」
「それはそうですね。えっと、あなたは?」
「レオン・メトーポン。ここの領主の次男なんだ。ああ、かしこまらなくていいからね」
 気さくに話をしてくれる。しぐさは気障な面はあるが、人柄は悪くはない。
「そういえば、ご結婚なさると伺いましたが?」
 女の子が騒いだ。
「待ってくれ、それは……いずれだろうね。今はみんなが恋人さ。兄が結婚するのが先だろうし……私はどこか遠くの町に行きたい」
 近くでの結婚を望んでいないのが明確だった。
「悪い人ではないようですね」
 領主の跡取りとされる長男についてはあまり聞けなかった。

 ステラの待つところにリアンが入ってきた。神経質そうな雰囲気がひしひし伝わってくる。
「あなたが、隣の特使ですか。どのような話を聞きたいのですか」
 丁寧な言葉遣いであり、悪い人ではないというのが伝わる。
「急にうかがってしまったのに大変快く受け入れて下さり感謝しますわ」
 ステラが丁寧にお辞儀をすると、リアンは鼻先で笑う。
「父が出した話で何か粗探しでもしに来たのかな?」
「粗探しではありませんわ」
「父は実力で様々なことを広げることが好きだ。私はここの領地を面倒見る力があればいいと持っている」
 ステラは微笑む。
「いずれ領主になるならばそうです、領民のために行動するのは重要ですわ」
「……跡取りは私だと思っていたが、今回のことで違うとも思い知らされた」
「以前も結婚話はあった伺いましたわ」
 ステラは世間話で済ますつもりだったが、本人から突っ込んだ話をされてしまったら回避はできなかった。世間話と言えば世間話かもしれない。
「今回は明確に言ったそうだ、私か弟か」
「そうなのですか」
「跡取りは私ではなくレオンでもいいということだ」
「ところでレオン様は?」
「どうせ、町にいるだろう」
 リアンは肩をすくめた。
 彼の皮肉さは周囲の状況の動きをとらえた結果だとステラは感じ取った。それと、イノアの結婚問題は別だ。

 ピアレーチェは町で噂を聞く。
 漁師仲間での話題に領主一家のこともあるのではと期待していた。
「もしさ、王女様みたいな話がイノア様にあったら俺たちも騒ぐと思うぜ」
「そりゃさ、イノア様を小さいころから知っているからな」
 作業をしながらする話はクリシス家が親しみやすいと一家だと告げていた。
「大体さ、坊ちゃんが殺されただけでもひでー話なのに、歪虚だったしよ」
 話題はあちこち飛ぶ。
「結構、メトーポンのところのせがれの下の方だったらいいんじゃね」
「苦労するだろう、遊び人だし」
 溜息と笑いが起こる。
「遊び人?」
「町でいつも女の子といるらしいぜ?」
「性格はいいみたいだけどな」
 ピアレーチェはそれなりに話を聞けた。
 聞いたのをまとめると、結婚するなら次男が良いだろうということ。ただし、苦労する可能性は高い。
 変な結婚の仕方だと、暴動起きかねないということは明確だった。
 なお、役割を終えた紅葉は「隣町に菓子見に行ってきます」と別れた。

●情報の結果
「レオンさんは会えましたが、イノアさんのことを考えているようではありませんでした」
 ミオレスカは状況を語った。
「本人の意向に沿わないと幸せになれないですね。せめて、どちらかは思っていないと……。イノアさん、ウィリアム様も元気ですし、焦らなくていいのです」
 イノアはうなずいた。
「私の方はリアンさんにはお会いできましたわ。繊細な方ですわね」
 ステラはため息を漏らした。
「今回、どちらでもという話になったため、跡取りは自分ではなかったのかということで悩んでいらっしゃいましたわ」
 結婚以前の問題にぶつかっている。
「イノアさんの道はイノアさんで決めていいと思いますわ」
 ステラの言葉に他のハンターもうなずく。
「噂にならないのは可も不可もないってことだよね」
 ピアレーチェは縁談について直接聞くのはパンドラの箱を開く気持ちだったので慎重になっていた。
「でも、町の様子はよくわかったよ。王女様の縁談みたな図式にしてきたこと、ばれると怖いことになるよ。リオちゃんとの関係もお婿さん選びのカギだと思うの。だから、精霊のご機嫌も重要だって告げればいいの。そうすれば角も立ちにくいかなと」
 ピアレーチェは断るときの助言をする。
「歪虚も単独ではなく軍で来られた場合、他の貴族との連携は非常に重要になる」
 プエルやレチタティーヴォは他の者の力を使っても基本的に単独での行動が多かった。先日の傲慢との戦は「軍」であった。
「ハンターに限らず、傲慢との戦いに加わったやつも多いし、そこも考えていけばいいんじゃないか? 領地を守る中で一番の敵は何か、そこに照準を合わせる。その結果、誰がいいのか、一緒にいて良い人を考えればいい」
 レイオスはイノアが微笑むのを見て安堵する。
「『私はクリシス領を発展させる相手を求めて熟慮を重ねております』って微笑むだけでいいの。会って断るときはそれで充分なの、気にしなくていいの」
 ディーナは微笑む。
「私はイノアさまが努力していることを知っているの。イノア様が幸せになる方がリオさまも喜ぶの。私も協力するの」
 イノアは感激で目を潤ませて、皆に礼を述べた。

 メトーポン家に何度目かの断りを入れる。今回はイノアの直筆で。

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    人間(蒼)|12才|女性|霊闘士
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    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 乙女の護り
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    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 本家・名付け親
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    ドワーフ|17才|女性|聖導士
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    人間(紅)|18才|女性|聖導士

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アイコン 相談卓
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/04/17 01:12:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/04/17 01:09:28