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【幻導】プロローグ

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ここでは【幻導】のプロローグを公開中だよ!
プロローグでは、大幻獣をめぐるストーリーの始まりを描いてるんだ。

ファリフ・スコール(kz0009

更新情報(7月6日更新)

TOPにて掲載しておりましたプロローグを本ページに移動しました。
 
 

【幻導】プロローグ

 ファリフ・スコール(kz0009)の腹にある刺青が光り出した原因は、『大精霊に呼ばれた為だ』と大霊堂の大巫女は言う。
 腹の光が強くなる方向へ従って探索を行ったファリフスコールは、ビャスラグ山にあるナルガンド塔を発見する。

 ――ナルガンド塔。
 いつ誰が何の為に建設したのか。
 それは分からない。
 はっきりしている事は、刺青がこの塔に強く反応していた事。
 この塔に――何かある。
 ファリフは直感的にそう感じた。

ファリフ・スコール

「そうかい。あの塔を見つけたのかい」
 ビャスラグ山の探索で謎の塔を発見したファリフ・スコールは、大霊堂へと帰還していた。
 目撃した事象を大巫女へ報告する為だ。
「大巫女はあの塔を知っているの?」
「ああ、ナルガンド塔と呼ばれている塔だ。発見されたものの、誰が何の為に作ったのかも分からない建造物だよ。
 でも、そこからファリフへ呼び掛けたとすればただの幻獣じゃないね。『大幻獣』かもしれないねぇ」
「大幻獣? 幻獣じゃないの?」
 大巫女は軽い笑みを浮かべた後、簡単に幻獣の説明を始める。
 精霊とはこのクリムゾンウェストに住む存在で、意志を持つマテリアル体の中で生命体ではない物だ。祖霊や英霊、自然霊などがそれに該当する。本来、高位の大精霊は人間と意志疎通を行う事もしないとされている。
 一方、幻獣は肉体を保持した生物だ。
 リアルブルーではファンタジー世界の住人とされるモンスターも、このクリムゾンウェストでは幻獣というカテゴリーで呼称されている。その中でも強力なマテリアルを秘めた存在を大幻獣と呼んで別枠の扱いをしているのだ。
「もし、大精霊がファリフに接触するような事態があれば世界的な危機が発生している状態だろうからねぇ。塔で待つなんてまどろっこしい事をする暇なんてないはずだよ。
 それに白龍の消失を感じ取ったのは大幻獣だったとすれば、納得できる面もある。でも、大幻獣からファリフに接触を図るとは無茶するよ。大幻獣は歪虚から狙われやすいんだ」
「え、そうなの?」
「ああ。マテリアルが安定した地域を好む上、大幻獣は豊富なマテリアルを体に貯えているからね。歪虚からすれば恰好の獲物だよ。幻獣でさえ狙われやすいのに、大幻獣ってだけで歪虚が見逃すはずはないからね」
 怠惰の侵攻で幻獣の多くは歪虚に呑まれていった、と見られている。
 生息地を奪われ、歪虚に追い回される幻獣を想像するだけで、ファリフの胸に痛みが走る。
「……あ、思い出した。幻獣って昔はいっぱい居たって聞いたよ。ボクは見た事ないけど」
「ああ。昔は辺境の大地を多くの幻獣は走り回ってたもんさ。歪虚の連中が来てからめっきり減ってしまったけどね。この大霊堂にも住んでた幻獣もいるんだよ。小さくて生意気な奴がね」
「へぇ?」
 ファリフは、驚いた。
 今の辺境では想像できない光景が、かつて広がっていた事を。
 その時、人間は幻獣とどういう関係を築いていたのだろうか。ファリフの中に好奇心が大きくなり始める。
「大巫女。ボク、幻獣の事をもっと知りたいよ」
「うーん。幻獣って奴は、まだまだ分からない事が多いんだ。この大霊堂にも伝承を書き留めた資料も多数あるから調べてみるとするかね」
 大巫女も幻獣のすべてを知っている訳ではない。
 それだけ幻獣は人と離れて暮らしてきた。
 幻獣の事が分かってくれば、ファリフが幻獣と接しやすくなるはずだ。大巫女は大霊堂の資料を漁ってくれるようだ。夜煌祭の最中でも多くの巫女が慌ただしく働いているにも関わらず、大巫女は何とか調べてくれるようだ。
「ファリフ、幻獣はおそらく危険を承知で呼び掛けたんだ。何か重要な事を伝えるつもりだよ」
 大巫女は、ファリフにそう言葉をかけた。
 幻獣がファリフに何かを伝えようとしている。
 それが何なのかは未だ分からない。
 ただ、それだけの危険を承知で呼び掛けたという事は余程重要な事なのだろう。
「ボク、もう一度あの塔へ行ってみるよ。絶対に行かないとダメだって思うんだ」
「それがいい。でも、できれば塔の周りにいた雑魔は退治しておいた方が良いだろうね。幻獣が接触しやすい環境を作ってやるんだ」
 力強く頷くファリフ。
 再びハンターと共にナルガンド塔へ赴く決意を固めるのであった。


 歪虚支配地域――アルナス湖北の古城。
 小型のキリンに近い姿の歪虚が一匹、石造りの廊下を小走りで走り抜ける。
 目指す先は、玉座の間にいるであろう一人の老人だ。
「……散歩からご帰還か、キキ」
 外から戻った麒麟の歪虚『キキ』を満足そうに見つめる老人。
 辺境において怠惰として周辺部族を潰し回った『BADDAS』を名乗る歪虚だ。
「ヤクシーの奴がやられたって聞いた時はぁ、胸が疼いたな。
 人間の中にもロックな奴がいるようだな」
 他の歪虚と一線を画して単独行動を好むBADDASは、ヤクシーの怠惰侵攻軍に手を貸さなかった。当初、ヤクシーが大規模に軍を動かして南下した段階で歪虚側の圧倒的勝利は約束されていた。そんな圧倒的で簡単な勝利にBADDASは何の興味もない。もっと血が滾り、心臓の鼓動が早くなる熱い物を感じ取れるものでなければ動く気が起きないのだ。
「その様子じゃ、またあの塔へ行っていたな。
 確かにあそこには何かいる。俺のハートにもビンビンに痺れさせる何かが、な。
 ……行ってみるとするか。ハードロッカーBADDAS、行動開始だ」
 杖を手に立ち上がるBADDAS。
 目指す場所はキキが教えてくれる。人間の中にいるロックンローラーに出会える事を期待しながら、ゆっくりと歩み出した。

(執筆:近藤豊
(文責:フロンティアワークス)