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【節V】節分&ヴァレンタイン アカシラの義理(人情)チョコレート作戦


更新情報(2月24日)
節分の『節』、ヴァレンタインの『V』。文字通り合せて開催されたイベント【節V】!
カカオ豆の危機を乗り越えて再開されたヴァレンタインも無事終了となりました!
ハンターの皆様、お疲れ様でした!
2月24日、エピローグノベルを公開!
そしてイベント終了記念として、アイテム「【節V】アカシラの義理人情チョコレート」を全PC宛に配付致しました!
また、皆様が所持していたカカオ豆の種類と数に応じたAC(アクティビティポイント)は、2月25日17時に付与予定です!
(カカオ豆での付与ポイントは24日14時時点での所持状況を元としております)
シナリオのリリースは終了しましたが、近日にも結果反映が行われる依頼がございます。
結果と報告書は引き続きお楽しみに!
カカオ豆の危機を乗り越えて再開されたヴァレンタインも無事終了となりました!
ハンターの皆様、お疲れ様でした!
2月24日、エピローグノベルを公開!
そしてイベント終了記念として、アイテム「【節V】アカシラの義理人情チョコレート」を全PC宛に配付致しました!
また、皆様が所持していたカカオ豆の種類と数に応じたAC(アクティビティポイント)は、2月25日17時に付与予定です!
(カカオ豆での付与ポイントは24日14時時点での所持状況を元としております)
シナリオのリリースは終了しましたが、近日にも結果反映が行われる依頼がございます。
結果と報告書は引き続きお楽しみに!
【節V】エピローグ(2月24日更新)
●
「「「「雄々々々々々々々々々々々々々々ッ!!」」」」
鬼、であった。数多の戦場を駆け抜け、先般は北方を生き抜いた鬼の猛者達が、今、擂り鉢に向かい、濾し出し、練り直しては、慌ただしく駆けつけた鬼が湯煎の為のお湯を補給して回る――広い筈の揺籃館の厨房が、この時ばかりは狭く見えた。
なお、あんまりな状況にメイド達は近くには控えていない。
「ぐぅぅ、アカシラ姐ェ……俺ぁもうっ……!」
「「「シシドォォォォォォ!?」」」
一人の鬼が苦悶の声を挙げて倒れ込むと、周りの鬼が一斉にその名を呼んだ。右上腕を左手で押さえたシシドという鬼は、「すまねぇ……あとは……頼……」と宣うて意識を失った。
「……よくやったよ、アンタは……」
アカシラはその上腕を力強く揉み解しながら、「次!」と声を張る。すると、どこかで待機していた女子供がシシドをよそへ運び出していき、別の鬼がシシドが使っていた擂り鉢と擂粉木を手に座り込んだ。
「いいかいアンタたち! 此処が正念場だよ!!」
「野郎ども! 辛いか!!」
「「「「雄々々々々々々々々々々々々々々ッ!!」」」」
「いいねェいいねェ! 野郎ども! 楽しいか!!」
「「「「雄々々々々々々々々々々々々々々ッ!!」」」」
「じゃあ笑いなァ!」
「「「「ガハハハハハハハハハハハハハハッ!!」」」」
狂笑しながら、鬼達はひたすらに手を動かし続けている。異様な光景だが、彼らは真剣そのものだった。何せ、彼らに取って譲れないものが、そこにある。
義理人情チョコ。
ひょんな事で始まったそれは、ハンター達の「どこから作る?」という言葉により、製造に5日かかる素敵レシピとなったのだ。そして、あの日。菓子作りにおいて手抜きは赦されぬとアカシラは骨身に沁みた。
故に、鬼達の汗と筋肉の響宴は、昼夜問わず続けられる事となったのである。
一切の抜かりなく。鍛え抜かれた精鋭達と共に。
しっかりきっかり5日かけて、チョコレートを作ったのであった。
●
出来上がったチョコは、ハンターが用意した型を元に焼成された。鬼達があちらこちらで飾り付けに取りかかる中、アカシラはその中の一つ、鬼の角を燃したチョコレートを手に取った。
「……」
アカシラ自身が頼んだ『型』だった。見た目はタケノコに似ているが、参考として用いたアカシラの絵心ではそれが限界だったのである。尤も、アカシラにとってはそれははっきりと『角』として見えている。
「……奇縁、だねえ、ホント」
やや太く、独特な模様が入ったそれは――アカシラにとっては想い出に残る『角』である。
「アンタも、そっちで笑ってるかもしれないね」
――アクロ。
そう、呟き、これまたハンター達に指導された通りに種々のチョコレートと共にラッピングするのであった。
アカシラは戦場に生きる鬼である。
数千の、しかし同じレシピの、チョコレートに触れた結果、細やかな装飾やラッピングに関しては、尋常ならぬ速度で出来るようになった。
結果――。
●
アカシラ達にとって、果たすべき義理、ときたら何に付けてもハンターである。
故に、大量のチョコを持参してハンターオフィスを訪れたアカシラは。
「……なんだって?」
冷や汗を垂らして、ようやくの思いで、そう言った。
「いえ、ですから、その……すこし、遅い、ですけど……?」
「今日は何日だったっけ?」
「2月、24日……です……」
「…………ばれんたいん、ってやつは何日だったっけ、ね」
「………………2月14日、です………………」
「………………」
舌が枯れ果てたように乾き、うまく言葉が紡げなかった。ただ、赤い髪をガシガシと掻いて、絞り出す。
「いや、まぁ、なんだ、あー……とりあえず、送っておいて貰えるかい」
「それは……はい、承りました」
「頼むよ」
なんとかそれだけを言って、アカシラはとぼとぼとオフィスを後にした。吹きすさぶ冷風が赤髪とその身体を強く揺さぶる。防寒具の襟元を抑えると、固い感触が肌に馴染んだ。すっかり着古してしまったその感触を味わいながら、
――下手打ったねぇ。
口元でのみそう零して、アカシラは。
しかし、笑った。くつくつと。堪えきれぬ、とばかりに。
胸中にはやはり、苦みはある。万全を果たせなかった事に対する後味の悪さが。
けれど、それでも。楽しかった、と。アカシラはそう思うのだ。
嘆きを聞いて、長江へ行くことになり、ハンター達の頼もしさに触れ、そのままとんぼ返りして、チョコレートを作った。
決死の戦場とは違う、とても得難い時間だった。
苦く、それでいて甘い感傷はまるで、精魂こめて作ったこの菓子に似てるじゃないか、と。そう思えたのだった。
●
ハンター達とは別に、バタルトゥ・オイマト(kz0023)にも件のチョコレートが届けられたらしい。
『服の礼。
愛用してる。アリガトよ。 アカシラ』
と、書かれた手紙とともに。
冒険都市リゼリオに在る『揺籃館』アム・シェリタの厨房は今、熱気に包まれていた。 溢れるは熱く湿った呼気。犇めく身体に上がる体温。そして――噎せ返るほどのそれを突き破って響く、女の声。 「声出しなァァァァァッ!」 赤髪を結い上げた、アカシラ(kz0146)である。なお、この髪型についてはハンターに教示されたらしいが――それはさておき。鬼である。それも精鋭からなる傭兵の部隊長を兼ねる女の声は咆哮に似る。大気を震わせたそれは、なるほど、この戦場に相応しいものと言えた。 なればこそ、返る言葉も、また。 |
![]() アカシラ |
「「「「雄々々々々々々々々々々々々々々ッ!!」」」」
鬼、であった。数多の戦場を駆け抜け、先般は北方を生き抜いた鬼の猛者達が、今、擂り鉢に向かい、濾し出し、練り直しては、慌ただしく駆けつけた鬼が湯煎の為のお湯を補給して回る――広い筈の揺籃館の厨房が、この時ばかりは狭く見えた。
なお、あんまりな状況にメイド達は近くには控えていない。
「ぐぅぅ、アカシラ姐ェ……俺ぁもうっ……!」
「「「シシドォォォォォォ!?」」」
一人の鬼が苦悶の声を挙げて倒れ込むと、周りの鬼が一斉にその名を呼んだ。右上腕を左手で押さえたシシドという鬼は、「すまねぇ……あとは……頼……」と宣うて意識を失った。
「……よくやったよ、アンタは……」
アカシラはその上腕を力強く揉み解しながら、「次!」と声を張る。すると、どこかで待機していた女子供がシシドをよそへ運び出していき、別の鬼がシシドが使っていた擂り鉢と擂粉木を手に座り込んだ。
「いいかいアンタたち! 此処が正念場だよ!!」
「野郎ども! 辛いか!!」
「「「「雄々々々々々々々々々々々々々々ッ!!」」」」
「いいねェいいねェ! 野郎ども! 楽しいか!!」
「「「「雄々々々々々々々々々々々々々々ッ!!」」」」
「じゃあ笑いなァ!」
「「「「ガハハハハハハハハハハハハハハッ!!」」」」
狂笑しながら、鬼達はひたすらに手を動かし続けている。異様な光景だが、彼らは真剣そのものだった。何せ、彼らに取って譲れないものが、そこにある。
義理人情チョコ。
ひょんな事で始まったそれは、ハンター達の「どこから作る?」という言葉により、製造に5日かかる素敵レシピとなったのだ。そして、あの日。菓子作りにおいて手抜きは赦されぬとアカシラは骨身に沁みた。
故に、鬼達の汗と筋肉の響宴は、昼夜問わず続けられる事となったのである。
一切の抜かりなく。鍛え抜かれた精鋭達と共に。
しっかりきっかり5日かけて、チョコレートを作ったのであった。
●
出来上がったチョコは、ハンターが用意した型を元に焼成された。鬼達があちらこちらで飾り付けに取りかかる中、アカシラはその中の一つ、鬼の角を燃したチョコレートを手に取った。
「……」
アカシラ自身が頼んだ『型』だった。見た目はタケノコに似ているが、参考として用いたアカシラの絵心ではそれが限界だったのである。尤も、アカシラにとってはそれははっきりと『角』として見えている。
「……奇縁、だねえ、ホント」
やや太く、独特な模様が入ったそれは――アカシラにとっては想い出に残る『角』である。
「アンタも、そっちで笑ってるかもしれないね」
――アクロ。
そう、呟き、これまたハンター達に指導された通りに種々のチョコレートと共にラッピングするのであった。
アカシラは戦場に生きる鬼である。
数千の、しかし同じレシピの、チョコレートに触れた結果、細やかな装飾やラッピングに関しては、尋常ならぬ速度で出来るようになった。
結果――。
●
アカシラ達にとって、果たすべき義理、ときたら何に付けてもハンターである。
故に、大量のチョコを持参してハンターオフィスを訪れたアカシラは。
「……なんだって?」
冷や汗を垂らして、ようやくの思いで、そう言った。
「いえ、ですから、その……すこし、遅い、ですけど……?」
「今日は何日だったっけ?」
「2月、24日……です……」
「…………ばれんたいん、ってやつは何日だったっけ、ね」
「………………2月14日、です………………」
「………………」
舌が枯れ果てたように乾き、うまく言葉が紡げなかった。ただ、赤い髪をガシガシと掻いて、絞り出す。
「いや、まぁ、なんだ、あー……とりあえず、送っておいて貰えるかい」
「それは……はい、承りました」
「頼むよ」
なんとかそれだけを言って、アカシラはとぼとぼとオフィスを後にした。吹きすさぶ冷風が赤髪とその身体を強く揺さぶる。防寒具の襟元を抑えると、固い感触が肌に馴染んだ。すっかり着古してしまったその感触を味わいながら、
――下手打ったねぇ。
口元でのみそう零して、アカシラは。
しかし、笑った。くつくつと。堪えきれぬ、とばかりに。
胸中にはやはり、苦みはある。万全を果たせなかった事に対する後味の悪さが。
けれど、それでも。楽しかった、と。アカシラはそう思うのだ。
嘆きを聞いて、長江へ行くことになり、ハンター達の頼もしさに触れ、そのままとんぼ返りして、チョコレートを作った。
決死の戦場とは違う、とても得難い時間だった。
苦く、それでいて甘い感傷はまるで、精魂こめて作ったこの菓子に似てるじゃないか、と。そう思えたのだった。
●
ハンター達とは別に、バタルトゥ・オイマト(kz0023)にも件のチョコレートが届けられたらしい。
『服の礼。
愛用してる。アリガトよ。 アカシラ』
と、書かれた手紙とともに。
(執筆:ムジカ・トラス)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)