• 日常

とある農村の異種族訪問

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在4人 / 3~4人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
プレイング締切
2018/04/23 09:00
リプレイ完成予定
2018/05/02 09:00

オープニング

 辺境には農耕ができる場所が少ない。
 それは辺境が歪虚の支配地域と近いため歪虚汚染された土地も多く、雑魔の出現頻度や歪虚の襲撃が他の地域に比べて多いためである。
 そのため辺境に住む者の多くは食料を輸入に頼っている。
 しかし昨年、アルナス湖から南に流れるアルナス川の下流域の一角で、新しく農村が作られた。
 ただ、その村は少し変わった環境にある。
 人間の村なのだが、近くにはリザードマンの集落があり、近くの森にはコボルドが住み、川には精霊までいる。
 精霊は争い事がない限りは他種族には不干渉で、水を媒介にした大蛇の如き姿を見る事すら稀である。
 コボルドは最初は人間を警戒していたものの、自分達を襲う事もなく、食べ物をくれる優しい存在だと認知してからは人間との融和ができていた。
 リザードマンは他種族と諍いは起こしていないものの、不干渉な態度を取り続けていた。

 農地の開拓は昨年の秋頃から始められた。
 リアルブルーと違い重機などないクリムゾンウェストでの開墾はほぼ手作業であるため、開拓は過酷な重労働を極めた。
 それでも冬までには農地を作り上げる事ができた。
 厳しい冬は残り僅かな資金で買い集めた食料を村人全員で分け合って乗り越えた。
 そして待ちに待った春が訪れたのである。

 人間の村の近くの川岸には川の精霊を祀った小さな祠が作られていて、農民達は毎朝祈りを捧げる事が日課になっていた。
(精霊様、今日も我らをお守りください……)
 祈りを終えて川の対岸に目を向けると、2体のリザードマンが歩いているが見える。
「トカゲさーん。おはよー」
 村長の女房で村のまとめ役的な女性(通称、女将)が挨拶をする。
 リザードマンはチラッとこちらを見たが、すぐに去っていった。
「なかなか打ち解けてくれないねぇ。どうすりゃもっと仲良くできるのか……」
 女将が一抹の寂しさを感じながらも畑に向かった。
 今日から本格的に農作を始める。
 とは言え、農耕が盛んではない辺境では農作経験者は少なく、村では村長と女将ぐらいで他はほぼ素人だ。
 そのため経験者を中心にして農作業は行われた。
 コボルドも群れのリーダーのロブを中心にして拙い手つきで農作業をしてくれていた。

 皆が汗水を垂らして働き、日が頂点を差し掛かろうとした頃。
『逃げよ人の子』
 不意に村人達の脳に意味だけが直接流れ込んでくるような【声】が響いた。
「え?」
「なに、これ?」
「誰の声なの?」
『川より悪しきものが来る。逃げよ』
 皆が戸惑う中、2度目の【声】が響く。
「もしかして……精霊様かい?」
 川の精霊がどんな姿でどんな話し方をするか聞いて知っていた女将が気づく。
「これが精霊様の声?」
「精霊様って本当にいたんだ!」
 不安そうにしていた村人達の表情が少し和らぐ。
「でも逃げろって」
 しかしその表情はすぐにまた曇った。
「悪しきものって何だ?」
「やっぱり歪虚じゃ……」
 村人達が話していると、不意に川の水が大きく盛り上がった。
「精霊様?」
 てっきり川の精霊が水に宿って大蛇の姿を現してくれたのだと思った。
 しかし違った。
 小山の如き巨体のそれは不定形にぶよぶよとした形のまま川から陸に上がってくる。
「……スライム」
「スライムだぁー!!」
 村人達が一斉に逃げ出すとスライムは体を波打たせながら追ってくる。
 その時、村人とスライムの間に割って入る者がいた。
 長い尾と鱗に覆われた体を持つ者。
「リザードマン!?」
 驚く村人を尻目にリザードマンを槍を一閃させてスライムの体表を断ち切り、進行を止める。
「トカゲさん……助けてくれるのかい?」
 尋ねる女将に答えず、2体のリザードマンは槍を振るってスライムを切り刻んでゆく。
 長い戦いの果に雌雄は決し、粉々に切り分けされたスライムは黒い塵と化して消えた。
 どうやら雑魔と化したスライムだったらしい。
 しかしリザードマンの1体は戦闘の最中にスライムに取り込まれ、溶解液で半身が焼けただれる大怪我を負っていた。
「誰か救急箱持ってきておくれ! 今手当するよトカゲさん」
 女将は人を呼ぶとリザードマンの傷を診ようとしたが、手を軽く跳ね除けられる。
「え? どうして……」
『……』
 リザードマンは何も言わず、仲間の肩を借りて自分達の集落へ戻っていった。

 翌日、女将は御礼の品を持ってリザードマンの集落を訪れた。
 しかし見張りのリザードマンに行く手を阻まれてしまう。
「昨日のお礼に言いに来たんだよ。怪我したトカゲさんは無事かい?」
 身振り手振りと絵まで使って用件を話し、相手の事情も聞いた。
 すると怪我をしたリザードマンは重篤な状態だと分かる。
「そんな……」
 そして年寄りの何人かが人間などのために同胞が死に瀕している事を憤っているらしい。
 ここのリザードマンは30年前、土地を奪おうとしてきた人間に何人もの同胞を殺された事があるため、年配の中には人間をよく思っていない者も多いのである。
 だから人間は通せないと言うのだった。
「なら、せめて御礼の品を……」
 川魚の入った籠を差し出したが、それも受け取って貰えなかった。
「女将さん、今日の所は戻ろう」
 護衛についてきた男衆に促され、その日はそのまま村に戻った。

 しかし翌日も、その翌日も通ったが、やはり通してもらえない。
 その夜、女将は自宅で頭を抱えた。
「どうすりゃいいのかねぇ……」
「思わず受け取りたくなるような物、例えば海の魚など贈ってみてはどうだ」
 普段は寡黙な夫である村長が告げる。
「彼らは小さな川魚しか知らない。海の大魚を見せればきっと驚くだろう」
「いいかもしれないけど、海の魚を買う程の金が何処に」
 村長が黙って金を差し出す。
「どうしたんだいコレ?」
「村の衆から募った。村に残る全財産だ」
「そんな大事な金使えないよ!」
「いいんだ。この地で暮らすという事はリザードマンと共に暮らすという事だ。彼らとの友好は不可欠だよ。気にせず使いなさい。無一文になってしまうが、村の皆も分かってくれている」
 村長は女将の手に金を握らせた。
 口下手な村長が一軒一軒回って説明し、頭を下げてきただろう苦労が容易に想像できた。
 感謝の念で胸が思わず熱くなる。
「ありがとう! あんたは最高の旦那だよ」
 女将は感激のあまり村長に抱きついた。
「あたしゃ幸せもんだ。村のみんなにも御礼を言わなきゃいけないねぇ」

 翌朝、女将は商人を通じて大魚を注文した。
 そして届いたのは体長80cmもある立派なブリだった。
「これなら驚くこと間違いなし! きっと受け取ってくれるわ」
 女将は満足顔だが、まだ不十分だった。
 御礼の品を受け取ってもらうだけではなく、ちゃんと直接御礼を言いたいのである。
 そのため女将は注文した際、ハンターにブリの輸送と共にリザードマンへ御礼をするための手助けもして貰えるよう依頼していたのだった。

解説

●目的
女将とリザードマンの集落を訪問し、人間と友好を築くのに協力する。

●リザードマン
昔から川に集落を作って暮らしていて数は30体程。
30年前にハンターに襲われた事で遺恨があったが、今はもう和解している。
自給自足ができているので、基本的に他種族には興味がない。
知能は人間並みに高いが言葉は通じない。

●女将の目的
・スライムから村を救ってくれた事への御礼を言う
・御礼の品のブリを受け取ってもらう
・怪我をしたリザードマンを御見舞する(できれば治療もしてあげたい)

●問題点
・見張りのリザードマンが通してくれない
30年前、土地を奪いにきた人間に同胞を何人も殺された事があるため、年配のリザードマンの中には人間をよく思っていない者もいる。
彼らは今回また人間のために同胞が傷つき死に瀕した事が許せず、今人間が集落に入れば誹謗中傷される可能性が高いため止めている。

・ブリを贈られたリザードマン達は驚き、興味津々な様子になるが、食べ方が分からない
彼らは普段、川魚を頭から丸かじりにしている。

・スライムに半身を焼かれたリザードマンの容態は良くない
火傷に薬草を練り込んで寝かせているが回復していない。

・リザードマン達は30年前の人間との争いからハンターは高い戦闘力を有した危険な存在だと認知している
多くの者は年配者のように敵視はしていないが警戒はしている。
ヘタに刺激すると更なる警戒心や敵愾心を煽る可能性がある。

●PL情報
集落に入る事ができれば、粘土板を介して文字で通訳してくれるリザードマンが付いてくれる。
実は人間と友好を持つ方がいいと考える者もいて、彼女はその筆頭。

怪我をしたリザードマンから聞ける村を守った理由。
「人間は好きでも嫌いでもない。
 だが人間が自分達と友好を結びたがっている事は知っている。
 好意を向けてくる者の危機を見過ごす事は恥であるため助けた」

何か質問がある場合はNPCのハナ・カリハにお尋ねください。

マスターより

今回のシナリオは『【血盟】四者四様の思い』と『とある農村の異種族事情』の続編です。
どちらも知らなくても当シナリオの進行に問題はありませんが、知っている方が村が抱える他種族事情や、リザードマンの人間への遺恨などがより分かるかと思います。

それでは皆様のご参加お待ちしております。

関連NPC

  • ハンターオフィス職員
    ハナ・カリハ(kz0194
    人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/04/27 18:03

参加者一覧

  • 曙光とともに煌めく白花
    白樺(ka4596
    人間(紅)|18才|男性|聖導士
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめ(ka5800
    鬼|23才|男性|符術師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎(ka6016
    人間(蒼)|22才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/04/21 08:30:29
アイコン 質問卓
大伴 鈴太郎(ka6016
人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2018/04/22 17:43:12
アイコン 相談卓
大伴 鈴太郎(ka6016
人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2018/04/23 00:10:57