• 調査

マスター:白藤

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
プレイング締切
2018/05/10 19:00
リプレイ完成予定
2018/05/19 19:00

オープニング

●害虫問題
 その日、ハンターズ・ソサエティの受付嬢は依頼内容を確認するために山中に建てられた広大な屋敷を訪れていた。
「まあ、とりあえず見てくれよ」
 依頼主の強面な金持ち中年男性に導かれて閉ざされた豪華な門を潜り、内部の様子が全く分からない作りの小屋――貯蔵庫だろうか――を通り過ぎれば、黒いドーム状の“何か”が見えてきた。明らかに異質なそれは、よく見ると微かに蠢いている。
「え……あれ、何ですか?」
「酷いだろう!? あれは自慢の畑なんだ! 今は“蛾”に覆われてしまっているがな!!」

 蛾。
 あれ、全部――蛾!

「ひいぃっ!?」
 受付嬢は衝撃の事実に仰け反り、それでも頭を振るい、畑に近付く。
 もぞもぞ蠢くのは、男の言う通り、蛾。その数は十や百といった可愛らしいレベルの話ではない。
 数多の蛾達は何故か畑を覆うように、それこそドームを形成するかのように重なり合い、畑に植えられているであろう作物を完全に隠してしまっていた。
「コイツら、ひと月前に突然やってきて畑を覆うようになっちまった! 追っ払ってもすぐに戻ってくるから無駄、殺しても次々新しい蛾がやってきて振り出しだ! このままじゃ花がお天道様に当たらねぇ、大事な商品が台無しになっちまう! ハンターさんの力で何とかしてくれぃ!!」
 酷くイラついた様子で、男は小屋からマッチと長い枝を持ってきた。彼は枝に火をつけ、躊躇う様子もなく蛾達を焼き殺し始める。それでも何故か、蛾は逃げようとはしない。
「う……」
 無抵抗のまま、複数の蛾が焼き殺されていく。陽光を阻む害虫とはいえ、あまりにも無残な光景に受付嬢は嗚咽を堪えるように口元を覆った。
「嬢ちゃん、気持ち悪いか? 女は虫嫌いだもんな、仕方ねぇか……ほら、あれだ。綺麗な花だろう? 蛾のせいでかなり弱っちまってるがな」
 男が蛾を焼いたことにより、ドームに僅かながら穴が開いた。淡い紫色の可愛らしい花々が、弱々しく葉を広げて咲いているのが見える。
「珍しい花ですね。あれが、商品……?」
 男の強面な容姿からは結び付かない、優美で可愛らしい花。受付嬢が考えていることを察したのか、男は「ガハハ」と豪快に笑い、屋敷から顔を出していた屈強な男に向かって手を上げた。こちらに駆け寄ってくる屈強な男――恐らく使用人だろう――は、淡い紫の液体の入った瓶を握っている。
「アレの蜜を水で薄めたら上質な“酒”になるんだよ。一口飲むだけで天国に行けるぜ?」
「へぇ……綺麗なお酒ですね」
 瓶の中で揺れる、淡い紫の液体。日の光を浴びたそれは、キラキラと宝石のように輝いている。
 珍しい色のお酒があるものだなと受付嬢が瓶を眺めていると、コップに注がれた液体が差し出された。
「どうだい嬢ちゃん? 一口飲んでいかねぇか?」
「!?」
 コップから香るのは芳醇な香り。大変魅力的なお誘い――しかし、今は仕事中だ!
「い、いえ、結構です。仕事中ですので」
「んな固いこと言うんじゃんぇよ、勿体ねぇ」
「ええと、ええと、あ、そうだ! 蛾、一匹捕まえますね! 蛾も見たことのない蛾なので、持ち帰って調べてみます!!」
 断るのが難しそうな雰囲気だったこともあり、受付嬢は逃げるように畑へと走る。そんな彼女の傍に、ひらりと一匹の蛾が群れから離れてやってきた。
(……あら?)
 その時、背後の男達が発する、蔑むような下品な笑い声が気にならない程に、不思議なことが起こった。

●不思議な蛾
「ああ、『がっくん』ですか? 白くてもふもふで、うさぎみたいでしょう?」
 どこか嬉しそうに虫カゴを覗き込んでいた受付嬢は、近付いてきたハンター達ににこやかに微笑む。
 うさぎとかどうでも良い。どうして蛾を眺めているんだと問い質され、受付嬢はハンター達にカゴを手渡した後に事情を語った。

「……というわけで、蛾の駆除を依頼されたのです。がっくんには参考資料として着いて来て貰いました。勿論、この後開放するつもりですけどね」
 がっくんはドームを形成していた蛾の一匹であるため、勿論元は真っ黒だ。
 しかしこの蛾、何故か受付嬢の手に乗った途端に色が白く変わったのだという。しかも恐らく現在の白い姿が本来のものであると考えられるらしい。
「どうして真っ黒になっていたのか、どうしてあの紫の花を覆っていたのか、どうして仲間が殺されても逃げなかったのか……妙なことは多いのですが、まあ、依頼は依頼ですので。申し訳ありませんが、あまり時間的猶予を頂けなかったので皆さんにはこの後すぐに向かって頂くこととなります」
 受付嬢曰く、『大至急何とかしてくれ』という無茶ぶりが付いたためか依頼金はそれなりの額らしく、いかに中年男が儲けているかを思い知らされたのだとか……とはいえ、色々と『きな臭い』ので何かしら掴めそうならそちらを優先して欲しい、との事だった。
「蛾の駆除以外のことをする場合はちゃんと証拠掴んでからにして下さいね。確かに色々怪しかったのですが、きな臭いからと言っていきなり依頼主の方々に危害を加えたんじゃ、こっちが悪者になっちゃいますし」
 仮に依頼以外のことをしようと考えている場合は『その行為が必要と判断した証拠』を提示しなければ話にならない、と受付嬢は語る。口頭証拠では弱いので物品を確保した上で行動に移って欲しいとの事だった。

「ああ、そうそう。もしかしたら、お酒を勧められるかもしれません。仕事中の飲酒はどうかとは思いますが、状況が状況なので自己責任で飲酒も認めます。ただ、あれ本当にお酒なんですかね? 万が一の事態に備えて、色々と用意しておいた方が良いかもしれません……あ、飲む場合は、ですよ?」
 受付嬢は苦笑しつつ、少し名残惜しそうにしながらもがっくんを窓の外に逃がしてやった。依頼の説明が終了し、彼を虫カゴに閉じ込めておく必要が無くなったためだ。
「がっくん、バイバイ……って、あれ? どうしたんでしょう……?」
 しかし白い不思議な蛾はすぐには逃げ出さず、受付嬢やハンター達の周りをくるくると回る。
 その後がっくんは何事も無かったかのように大空へ飛び立っていったが、不思議な行動を目の当たりにした受付嬢はしばらく首を傾げたまま固まってしまっていた。

解説

【依頼】
・蛾を完全に退け、中年男の花を守る。
……ですが、この件に『何か思う所』がある場合は、別の行動を取ることも可能です。

【前提】
・原則屋敷内の描写のみを行いますが、それ以外のシーンも必要に応じて描写致します。
(ただし、文字数の関係上、ある程度の方向性は定めておいて下さいね)
・戦闘が発生した場合もPC様が推理をする様子や男達との会話等を重視して描写します。
・受付嬢も言っていますが、依頼とは異なる行動を取る場合は『そうした理由』および『その証拠』をきっちり確保しておいて下さい。(場合によっては大失敗判定に繋がりかねませんので……)

【PL情報(PCの皆様は知りえない情報です)】
・蛾は普通の虫と変わりません。燃やしたり強く叩いたりすれば、あっさりと死にます。
・蛾に攻撃性はありません。毒性もありません。殺そうと思えば無抵抗に殺されてくれます。
・ハンターの皆様が蛾に触れた場合、蛾は何故か白くなります。何故でしょうね。
・戦闘発生の可能性も無きにしも非ず。ですが、何が相手になるにしろ大した強敵ではありません。

マスターより

こんにちは、白藤です。

皆様はお酒は飲まれるのでしょうか。
白藤は元々激弱な上に薬を服用しているために飲酒不可なのですが、一度くらいはベロベロに酔っ払ってみたい気もします。
それはさておき、今回のシナリオは強いて言えば『推理系』のシナリオです。
真相を導き出せるかどうかで結果は大きく変わります。よく話し合われた上で、シナリオに挑んでみてください。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/05/21 04:02

参加者一覧


  • ルカ(ka0962
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥(ka5484
    人間(紅)|12才|女性|舞刀士
  • 優しき孤高の騎士
    無道(ka7139
    鬼|23才|男性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/10 12:50:10
アイコン 農園を守れ
エメラルド・シルフィユ(ka4678
人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/05/10 18:32:55