●白昼の襲撃
　それは、ちょうど昼休みで受付業務を担当するハンターズソサエティ帝国支部の職員たちが順番に昼休憩を取っている時に起きた。
　受付嬢ジェーン・ドゥはその時仕事場近くの喫茶店で優雅にランチタイムを楽しんでいた。
　コーヒーを片手に本を読みながら、サンドウィッチを一口。至福のひと時である。
「全員手を上げろ！」
　覆面を付けた黒ずくめの集団が、大勢武器を持って喫茶店に押し入ってきた。
　まさかの集団強盗である。
「店の金を全部寄越せ！　このバッグに入れろ！　客の財布も全部だ！」
　男たちは客を人質に取り、喫茶店の店員たちに複数のバッグを投げつける。
　人質に取られた客の中にはもちろんジェーンもいた。
　悲壮な表情で、ジェーンは涙ぐんでいる。
(わ、私の優雅な昼休みが台無しに……)
　違う、そうじゃない。
　ジェーンの思考を読める人間がいれば、思わずそう突っ込んでいたかもしれない。
　そう思えるほど、ジェーンが思っていたのは状況にそぐわないものだった。
　男たちに対する恐怖より、昼休みを邪魔されたショックの方が大きいようだ。
　とはいえ、男たちの行為は紛れもなく犯罪行為である。
　見逃すわけにもいかない。
　縛られていたジェーンは、男たちの目が自分から逸れた隙に、いつの間にかするりと縄から抜け出していた。
「実は私、普段は受付嬢として働いておりますが、ハンターとしての資格も持ち合わせておりまして。私の昼休みを台無しにした代償……じゃなかった、街の平和を守るためにも、一肌脱がせていただきましょう」
　瞬間、ジェーンは風となった。

●駆けつけたハンターたち
　ハンターズソサエティのすぐ近くだったので、ハンターたちがすぐに喫茶店に駆けつけた。
　いざ突入したハンターたちが見たのは、どう見ても受付嬢にしか見えない女性が覆面の男を気絶させる場面だった。
　既に床には彼女に無力化されたらしい覆面の男たちが何人か伸びている。
　他の客や店員といった人質たちは、ガタガタと震えている。
　この場合は、いったいどちらに対して恐怖しているのだろうか。
「あら、もしかして、助けに来てくれたハンターの皆様ですか？」
　蕾が花開いたかのような華やかな笑顔を浮かべたジェーンが、ハンターたちに尋ねてくる。
「実は、私昼休み中でして、あと十分で休み時間が終わるのでそれまでに受付業務に戻らなければならないのです。事態の収拾にご協力をお願いいたします」
　それよりも実は戦えたのかとか、人質たちが何故か覆面の男たちだけじゃなくてジェーンまで怖がっているように見えるんだけどとか、ハンターたちには疑問がいっぱいあったのだが、全てジェーンのうさんくさい笑顔に封殺された。
「先制攻撃で数人は気絶させましたが、見ての通り強盗犯はまだまだ店内に残っています。人質に手を出されるのも面倒です。一般人のようですが、奥の手がある可能性もあります。ただの受付嬢には荷が重過ぎる相手です。もちろん、か弱い受付嬢を放っておくなんてことはしませんよね？」
　いいながらもジェーンの腕が閃き、背後に忍び寄っていた強盗犯を音もなく昏倒させたので、彼女の言葉には全く説得力がなかった。

●概要
　戦闘シナリオです。
　受付嬢ジェーン・ドゥの昼休みが終わるまでの十分間の間に、ハンターズソサエティ近くの喫茶店に押し入った馬鹿な男たちを懲らしめてください。
　街中ですし、店内なので夥しく血が飛び散るような戦い方は避けた方がいいでしょう。
　テーブルや椅子が倒れる程度の被害は構いませんが、店の壁に穴が開くなどの大きな被害を出すのもいけません。
　人質に怪我人を出してもいけません。人質を死なせるのは論外です。
　相手は一般人ですので、倒すこと自体は難しくないでしょう。

●達成条件
・強盗犯全員を気絶させる

●喫茶店について
　二十メートル×二十メートル、座席数十六席程度の小さな喫茶店です。
　店員三名、客二名が人質に取られています。
　出入口が複数ありますので、逃げられないように注意する必要があります。
　大まかな間取りですが、フロアからは厨房と、トイレに行くルートがあります。
　入り口正面のカウンター裏には食器や飲み物のボトルが並び、その奥に厨房があります。厨房には従業員用の裏口があります。
　トイレはフロアの隅にあり、大きめの窓があります。多少の身体能力があればこの窓からも外に出れるでしょう。
　フロアの壁には飾り棚があり、中にはアンティークが飾られています。料理が並んだままのテーブルもあるようです。
　なお、強盗犯たちはジェーンの行動に呆然としていますので、素早く動けば先手を取れるかもしれません。

●敵
〇強盗犯……十六人
　百六十センチ。本来は二十人いましたが、既に四人ジェーンに無力化されています。見た限りでは剣や槍などで武装しているようです。店内に散らばっていますが、五人ほど人質の傍にいます。

●PL情報
強盗犯のうち三人は魔導銃を隠し持っています。

こんにちは、初めまして。
マスターのきりんです。
今回のシナリオは強盗犯を鎮圧するシナリオとなります。
実は受付嬢ジェーン・ドゥはうさんくさいハンターな受付嬢だったのです。
でも、今までそんな素振りは見せていませんでした。うさんくさいですね。
うさんくさいですが味方ですので、加勢してあげてください。
PL側から希望がない限り彼女にスポットが当たることはありませんが、参加人数が少ない場合はジェーンも積極的に戦闘に参加してくれるでしょう。参加人数が多い場合は戦闘よりも人質の確保や出入口の確保などを優先します。
また、どちらの場合でも適切に指示をすればその通りに動いてくれるはずです。
それでは楽しんでくださいね。