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【陶曲】あいつさえいなければ

マスター:KINUTA

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 3~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
プレイング締切
2018/10/24 22:00
リプレイ完成予定
2018/11/02 22:00

オープニング



『ラルヴァ様あ、見てくれえ、おらっちのこの雄姿ぃ』

 頭上から落ちてくる鈍重な声に、嫉妬王ラルヴァは笑みを浮かべる。

「おお、すごいじゃないかサイゴン。短時間の間にこれほどまで成長するとはたいしたものだ」

『えっへっへ。ラルヴァさまに褒められた。おらっちうれしいなあ』

 この分ならもうすぐ、また新しい仕事をさせられるだろう。
 思いながら嫉妬王ラルヴァは、一息ついた。
 そして、息抜き代わりの小さなゲームをすることにした。舞台と筋書きはもう決めている。後は演者を送り込むだけ。

「さあ、行っておいで。私が今言った場所に、お前のいい遊び相手が待っているよ」

「ワカリマシタノヨ、マスター」

 ピクスドールが一礼し、彼の雨から姿を消す。




 ベレン学院――資産家の子弟子女が通う全寮制商船学校。 
 中等科1年生のルイ・ラデュロは寮の個室で、昼に配布された定期テストの成績順位表を見ていた。
 何度見ても自分の名前のすぐ下に、この夏編入してきたマルコ・ニッティの名がある。
 途中から入ってきたくせに、あいつはどんどん順位を上げてきている。
 それを思うと彼は、非常に不愉快だった。次はもしかしたら抜かれるかもしれないという焦りと恐れが、相手に対する敵意として形をとる。
 マルコの名前を尖った鉛筆で突き刺し、真っ黒に塗りつぶす。あんまり力が入り過ぎたせいで紙が破れた。それでもルイの手は止まらない。
 勢い余って、とうとう芯が折れた。
 あいつは孤児だ。親もなく家もなくまともな教育も受けてきていないというのに。社会の下層にいるべき存在だというのに、自分を脅かしている。

(あんな奴、そもそもこの学院に入る資格がないはずだ。だのに誰かの後ろ盾を受けて、場違いにも潜りこんできやがった。きっとどこかの金持ちの婆さんにでもうまいこと取り入りやがったんだ。クラスの女子はあいつに総じて甘い。女なんて皆考えなしだ。ちょっとかわいそうだと思うとすぐ同情するんだ)

 現実は、彼が考えているほどのことはない。
 確かに女子たちは社交辞令としての同情を、男子より多く見せる傾向がある。だが内心は……いかほどのものか。少なくとも単純に『かわいそうに』とだけ思っているということはあるまい。
 ルイは開いた教科書もそのまま、復習もそっちのけで、マルコを打ちのめすにはどうしたらいいのか考え始めた。
 いつの間にか鉛筆の尻をガリガリ噛んでいたが、本人はそれと気づいていない。
 勉強で負かすのは難しい。
 かといって暴力に訴えるのは剣呑だ。あいつの後ろ盾には、どうも物騒なコネがあるようだから。
 なら、どうすればいいのか。

「ナンダカ、オ悩ミノヨウネ」

 かん高い声が急に聞こえてきたので、ルイはびくっとした。
 ぎこちない仕草で顔を回してみると、ピクスドールが立っていた。スカートの端をチョンと摘まんで、かわいらしく小首を傾げる。

「人間サン、困ッテルナラ、ワタシ助ケテアゲテモイイノヨ?」







 ベレン学院中等科の1クラスにおいて最近、問題が持ち上がった。

「キミも?」

「ああ、やられた」

 学生の私物がちょいちょい失せるのである。
 筆記用具、手帳、装身具、といった細かなものが。
 始めのうちは単なる不注意でなくなったのかと思い、誰も騒がなかった。
 しかし同じ現象が頻発するとなれば話は別だ。
 どうも意図的な盗難らしい。だとすれば誰がやっているのか。
 クラス以外に被害が出ていないところからすると、内部の犯行臭い。
 ぜひとも犯人を見つけださなくてはならないと被害を受けたものたちは考えた。
 失ったものが惜しいからではない。同じものはいくらだって買える。そうではなくてこれはチャンスなのだ。誰かの失点を押さえるチャンス。その誰かを突き止めることが出来れば、この先利用出来る。自分の利益のために。
 そんな折も折、問題の盗品が見つかった。クラスメイトの一人である、マルコの寮部屋から。
 見つけたのは寮の職員。生徒達が登校している間に寮の清掃作業をしていた彼は、作業の途中、マルコの部屋だけ扉が開けっ放しになっているのに気づいた。
 不審に思って中を見てみれば、机の引き出しが開きっぱなしだった。
 そこを覗いてみたらこれまでなくなっていた品の数々が、溢れんばかりに詰め込まれていたのである。







 盗難品発見の報告を受け寮に駆けつけた担任教師は、クラスメートを向こうにして自室前に立ちはだかっているマルコの姿を見た。
 数人の生徒が彼に言い募っている。

「君、なんで僕たちを入れさせないんだ」

「あの机の中におれの万年筆があるんだろう」

「人のものとっといて、返さないつもりか!」

「俺は何も盗ってない」

「じゃあなんで、全部君の部屋にあるんだ」

「さあ、そこは俺にも分からない」

「なんだそれは」

「だからそれをはっきりさせるために、今は立ち入らないでくれと言ってるんだ。調査員がここに来るまで現場保存しておかないといけないから」

 ほかの生徒は様子見といった調子で一歩引き、騒ぎを取り巻いている。
 その人垣の中にいたルイは教師に駆け寄り、訴えた。

「先生、マルコ君をなんとかしてください。あの通り、盗品を返そうとしないんです――それだけならまだしも勝手にハンターを呼んだって言うんですよ、それがもうすぐここに来るそうなんです」

「え、何だって……マルコくん、一体どういうことかね、学院に外部の人間をむやみと立ち入らせるなんて、褒められたことではないよ。盗難について異議があるのなら、学院内の調査機関に申し立ててくれれば、それですむことじゃないかね」

 ついつい詰るような口調になる教師。
 しかしマルコは譲らなかった。

「申し訳ありません。でも、これはハンターじゃなければ始末がつけられない案件なんです。歪虚が絡んでいると思います」

 歪虚の二文字を出された教師は、息を飲んだ。

「……何でそう思うんだね?」

 マルコは黙って部屋の隅を指さした。
 そこにはクローゼットがある。
 閉まった扉からほんのわずか、桃色の布がはみ出ていた。そうちょうど、お人形のスカートのような柄と色。
 彼は声を潜め、教師だけに言う。

「多分あそこに何かいます。でも、気づかないふりしたほうがいいと思います」

 ハンターが現場に到着したのは、そのときであった。


解説

補足説明

これは歪虚人形を倒し、マルコくんの潔白を証明することを目的とするシナリオです。
歪虚人形は人が大勢来たので隠れている状態です。自分が見つけられたと気づいた瞬間襲ってきます。
人形は寮の職員が盗品を見つけた際にもいました。その際はベッドの下に隠れていました。職員がいなくなった後退散しようとしたら生徒達が来たので、再びクローゼットに潜み直した次第です。

人形はルイくんの『マルコの評判を落としてやりたい』という気持ちに反応しやってきました。
一連の行動は遊びとしてやっています。ルイくんに肩入れし救ってやろうと思っているわけでは全然ありません。彼女にとって彼は、ただの遊び道具です。
ですので誘導したら、ルイくんに不利なことをガンガン喋ります。そのせいで彼の立場がなくなったとしても、特に思うところはありません。面白がるだけです。歪虚ですから。

マルコくんは以前歪虚に恩人を殺されたことがあるため、それとつるむ人間を許せません。
ルイくんが歪虚と組んでいたと知ったら、躊躇なく殴ります。少なくとも一発は。



歪虚人形のデータ

形:お高そうなピクスドール。
大きさ:1メートル。
知能:小学生低学年程度。
武器:いきなり飛び出す長さ40センチのシザーハンズ(両手に仕込んでいる)
補足:力はないがスピードはある。回避率も高い。
性格:普通に悪い。守秘義務観念ゼロ。

マスターより

KINUTAです。
学園生活を満喫しているマルコくんなのであります。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/10/30 01:35

参加者一覧

  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/22 09:25:05
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 舞(ka0377
人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/10/23 09:03:46