• 日常

春、萌す

マスター:KINUTA

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
参加費
500
参加人数
現在13人 / 1~25人
報酬
普通
相談期間
7日
プレイング締切
2019/03/13 22:00
リプレイ完成予定
2019/03/27 22:00

オープニング

●ユニゾン


 ここは、市民生産機関の会議室。机の上には白い花籠が、壁には白い花輪が飾られている。

『……異論がないようなので……国際人道支援についての特例解釈をユニオン法第54条7項に……付け加えますことを仮決定いたします……この特例解釈は……市民への公布を経て24時間経過の後……有効となります……皆様ご協力ありがとうございました……』

 会議室で一人会議を終えたマゴイは、安堵したように一人ごちる。

『……これにて……法整備は一段落……』

 もたもた会議室を退室し、その足でウテルスへ向かう。
 とくとく脈打ち息づいている機関に、優しく語りかける。

『……そろそろ……長期休暇から……第一期のワーカーたちが戻ってくるわ……生殖細胞の採集も進むので……楽しみに待っていて……』

 粒ぞろいの小さな市民がウテルスから出生する様を思い浮かべ、ほんわりした表情になる。

『……きっと……とてもかわいらしい……』

 それから、ラボに向かう。
 黄色い溶液に満たされた四角い容器の中で、スペットから採取した生体細胞が順調にすくすく分裂していた。

『……こちらも順調……』



●辺境



 タホ郷では今年の春結婚するカップルが、ひいふうみいよの5組いる。
 辺境を取り巻く環境は厳しさを増しているが、これはまことにおめでたきこと。 だものでタホ郷は部族を上げ、力いっぱい祝う所存だ。

「かなり大規模な宴になりそうじゃの。近隣の部族にも一声かけるか」

「それはええ。まあ、あまり集まらんかもしれんけどな。怠惰と戦うために、人手を多く割いておるところが多いで」

「ケチャさんのところは部族外から迎え婿するそうだな」

「婿? 嫁ではなかったか? 相手は女と聞いたが」

「ケチャさんとこの子も女じゃったろ」

「まあ婿でも嫁でもどっちでもええわい。とにかく宴になれば酒が飲めるでな」

「飲める機会にはしこたま飲むべし。それがタホ族の教えじゃ」

「その通りその通り」



●自由都市同盟



 絵の具の匂いがこびりついたアトリエ。窓からは、柔らかい日が一杯に入ってきている。
 画家兼ハンターの八橋杏子は腕組みをし、キャンバスを見据えた。壁一面を覆うほど大きい、真っ白なキャンバスを。

「さて、と……」

 彼女はこれから描く絵をヴァリオスのビエンナーレに出品するつもりだ。今年のではなく、次のビエンナーレに。
 これだけ大きな画面に挑戦するのは初めてだが、不安はない。自分ならやれるという自信がある。
 だけど、さあ、何を描くか。

「うーん……」

 方向性はぼんやりと定まっているのだ。明るいもの、前に進もうとするもの、喜ばしいもの、それらを感じさせる力。
 だが、輪郭が――テーマがはっきり定まらない。
 どうしたものかと考えあぐねた杏子は、いったん頭を冷やそうと思った。アトリエから、春の息吹の感じられる町に出る。
 歩いていると花屋が目に入った。店頭にはミモザが花盛り。
 わきあがるような黄色に心を引かれ入って行ってみると、顔見知りにぶつかった。








 ベムブルの花屋はここのところ忙しい。大口の注文が相次いでいるのだ。内容はどれも同じく『結婚式の式場を飾って欲しい』というもの。
 今日もまた一組、そんな客が訪れてきた。

「――というわけで、僕たちこの春結婚することになったんです。会場の飾りつけの方、お願い出来ますか?」

 と言ってくるのは男。
 その傍らにいるのも男。
 同性カップルである。しかしベムブルは、そういうことを全然気にしなかった。異性にせよ同性にせよ本人達が幸せならそれでいいじゃないか、という意見の持ち主なのだ。

「はい。分かりました。日取りは大体いつ頃になりますか? それと、ご希望のカラーなどは」

 そこへ別のお客が入ってくる。スケッチブックを小脇に抱えた女。

「あら、ジュアンにアレックス。久しぶりね」

「おー、杏子」

「お久しぶり」

 どうやら彼女と彼らは顔見知りなようだ。早速世間話が始まる。

「聞いたわよ、二人とも、この春に結婚するんだって?」

「そうなんだ。ようやく、やっとって感じだよ。ね、アレックス?」

「ああ、年貢の納め時って感じだなー、我ながら」

「なんだよ、もうちょっと素直に喜んだら? 杏子さんも、式に来られそうなら来てよ。招待状送っとくから」

「ありがと。今から予定組んどくわ――そういえば、カチャも同じくらいの時期に結婚するんだって?」

「あー、予定ではな。なんでもタホ郷の方でやるらしいぜ。本人は『一応聖導士なんだからエクラ教会風にしたいなー』とか言ってたけど、部族の方で承知してもらえなかったみたいでな」

「そっかー。あっちもこっちもお祝い続きねえ」

 と呟いた女は突如、パンと手を打つ。場を離れて行く。
 残された男たちは顔を見合わせた。

「どうしたのかな」

「さあ? 何か忘れ物でも思い出したんじゃないか?」






 杏子の目はキャンバスの上を撫でる。頭の中で線を引き、ものや人の配置を何パターンも模索する。
 テーマは定まった。『愛情』だ。
 さて、それをどう表現しよう。
 せっかくの大画面なのだから、群像劇のような感じに仕立てたい。
 男女の組み合わせに限定する必要性はない。同じ種族同士でなくたって構わない。そういう組み合わせが現実において、確実に存在しているのだから。

「――モデルが必要ね。なるべくたくさん」

 彼女は再度スケッチブックを手に、町の通りへ出て行く。
 まず真っ先に捕まえたのは、カチャであった。

「え? モデル?」

「そう。なってくれる?」



解説

これは、行動フリーな日常シナリオ。
現状において何がどう進んでいるか確認するための回。
参加される方、まずは杏子のスケッチのモデルとなってください。
誰か好きな人がいるならばスケッチされる際、その人についてのことを話してください。杏子の創作意欲がより増しますので(別にそんな人いないという方は、話されなくても結構です)。
モデルとなった後の行動は、自由です。
タホ郷、ユニゾン、都市同盟。どこに行ってもかまいません。

マスターより

KINUTAです。

各地で戦いが続いておりますが、その裏で別のこともまた着々と進んでおります。
大事なことをうっかり見過ごすかもしれないので、ここらで確認一休み。


関連NPC

  • 荷を運ぶ者
    カチャ・タホ(kz0150
    人間(クリムゾンウェスト)|13才|女性|聖導士(クルセイダー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2019/03/20 01:55

参加者一覧

  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • また、あなたと
    リナリス・リーカノア(ka5126
    人間(紅)|14才|女性|魔術師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士
  • 天鵞絨ノ風船唐綿
    ミア(ka7035
    鬼|22才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 【シツモンタク】
メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2019/03/10 16:25:27
アイコン 【相談卓】
メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2019/03/11 01:34:16
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/03/12 21:21:53