• 無し

【未来】年去り、来る

マスター:KINUTA

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 3~8人
ユニット参加人数
現在2 / 0~8
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
プレイング締切
2019/09/26 22:00
リプレイ完成予定
2019/10/10 22:00

オープニング

 王国歴1020年。歳末。



●グラウンド・ゼロは今



 今年の5月、グラウンド・ゼロにおいてエバーグリーンの都市『セントラル』が再稼働された。
 これによって当地で働くハンターたちの職場環境は、ぐんと改善された。テントで夜明かしし、ろくに風呂にも入れず、口にするのはほぼ携帯食――そんな苛酷な状態から、ようやく脱することが出来たのだ。
 転移門が開設されてからは、非汚染地帯との行き来も俄然しやすくなった。
 セントラルの中は負のマテリアルの影響を受けなくてすむので、一般人も滞在可能だ。目端の利く商人などは、早速小型店舗を開設している(グリーク商会も無論早々に乗り込んでいる)。
 浄化が進み人が安心して住める地になれば、セントラルは1つの拠点ではなく1つの都市国家として、大きな飛躍を遂げるであろう。




●リゼリオの歳末


 グラウンド・ゼロからリゼリオの自宅に戻ってきたカチャは、まず暖かいココアを飲んで一息ついた。
 窓の外。温暖なリゼリオには珍しく、雪がちらついている。
 建設中のナディアタワーが通りの屋根ごしに見える。
 リアルブルー様式で作られているタワーについて、市民の一部は、『都市同盟の伝統的町並みにそぐわぬ醜いものを建てて』と眉を顰めている。
 カチャはそうは思わない。確かに今は浮いているけど、自然に見慣れて行くだろうと考えている。物事、何でも慣れなのだ。

「――さてと」

 ココアを飲み干したカチャは、席を立つ。
 これから行かなければならないところがあるのだ。仲間と一緒に。



●ユニゾンの歳末



 今年ユニゾンは自由都市同盟に加入した。
 そして市民が増えた。
 目覚ましくというレベルではないにせよ、とにかく増えた。現段階で、総勢200人といったところか。
 一番多いのはやっぱりコボルドだ。島のコボルドたちから『とてもよいぼす・まごい』の話を伝え聞き『そんなにいいぼすがいるむれなら、はいりたい』とやってきたのである。
 だがほかの種族もぽつぽつ参加してきている。
 まず人間。ついでリザードマン――つい最近、ドワーフも島へ見学に来た。
 動機は、『これまでにない建築様式で出来た町があると聞いたので、ぜひ見たい』というものであったが、市民募集についても著しく興味を示していたとのこと。
 よく考えてみればユニゾンは、地下にも居住空間を作るし、もの作りと土木建築がことのほか好きだし、働くことはいいことだという通念を持つし……意外にドワーフと親和性が高いかもしれない。
 逆にエルフとは合わないかもしれない。
 そんなことを思いながらニケは、イルミネーションに彩られた港湾地区を眺める。水路の手摺りにもたれ、ポケットから取り出した細長い紙筒を咥える。魔導ライターで火をつける。息を吸い込む。
 その途端、紙筒がさっと口元から取り上げられた。
 ニケは傍らにきつい眼差しを向ける。
 そこにはマルコが立っていた。成長期にあるからだろう、彼は随分背が高くなっている。そろそろ、ニケを追い抜く勢いだ。

「……マルコさん、何のつもりですか」

「煙草は体に悪いですよ」

「返しなさい」

「息がヤニ臭いって、女性にとってマイナスイメージになると思いますけど」

 ふてぶてしく返してくる相手の胸元にニケの手が伸びる。ネクタイを思い切り引っ張り、顔を近づけさせる。
 とっさのことに固まるマルコ。
 その顔に息が吹きかけられた。すうっと冷たい、ハッカの匂い。

「ヤニ臭いですか?」

「……いいえ」

「でしょうね。安心してください。これは煙草じゃなくて清涼剤です」

 ニケの手がネクタイから外れた。
 マルコに取られたものを引ったくり返す。そしてまた口に咥える。煙をくゆらせる。

「この程度で動揺してるようじゃ、まだまだですね」

 マルコは悔しげにニケを見た。頭の半分が痺れるような感覚に、舌が少しもつれる。

「……してませんよ、そんなには」

 そこに近づいてくる足音。だみ声。

「ニケの姉さん、ハンターの皆さんが来られましたぜ。魔術師協会のタモンさんも」

「分かりました、ブルーチャーさん――行きましょうか、マルコさん」

「はい」



●新生スペット


 市民生産機関、ラボセクション。

 マゴイは手術カプセルのカバーを開いた。
 スペットの裸体のあちこちに絡み付いていた極細の管が、一本、また一本離れて行く。満ちていた溶液が引いて行く。耳、口、鼻に差し込まれていたチューブが引き抜かれて行く。
 ぴょこが近くでじれったそうに跳ねている。

『のう、μよ、βは無事かの、かの。起きてこんのじゃが』

『……静かに……』

 ひゅっと息を吸い込む音がした。
 目が開く。猫の目ではなく、人の目が。
 寝ぼけたように瞬きを繰り返した後、正気づいて起き上がる。
 自分の顔を触って歓喜の声を上げる。

「――戻っとる……戻っとるぞー!」

 ぴょこもつられて騒ぎ出す。

『おお! βの顔が人になったのじゃ、のじゃ!』

 マゴイは間髪入れず『理性の声』を口にした。

《落ち着いて、落ち着いて、落ち着いて》

 条件反射によってぴたっと動きを止められる、もとワーカーとソルジャー。

「……お前な、そういうの止めろやいうて、ハンターに言われてるやろ」

『……そうだったわね……でもここで騒いでは駄目……ウテルスは今……新しい市民を育成している……そして今日また……新しく市民になる受精卵を迎える……この時期は安静が一番大事……』

「あのな、ここでどんだけ声あげたかて、ウテルスには聞こえへんやろ」

『聞こえるとか聞こえないとかそういうことは問題ではない……とにかく騒いでは駄目……いけない……駄目と言ったら駄目なので駄目……』

 神経質になっているマゴイに何を言っても無駄だと、スペットは嘆息する。
 なんだかもう彼女自身が、卵を抱いているかのようだ。


●去り行くもの



 市民生産機関、遺伝情報セクション。

 高い高い天井。螺旋を描き、はるか下の暗がりへ――ウテルスへ降りて行く可動式の棚。
 棚の片隅に、半透明の小さな箱。触ればふにりと柔らかい。だが、果てしなく丈夫だ。中に収めた大事な大事な卵を守るために。
 アスカとジグは分厚い壁に穿たれた小さな窓ごしに、ゆるゆる降りていく箱を見送っている。
 それ以上のことは出来ない。ここから先は完全にマゴイの領域だ。ステーツマンを除く他の階級は、入ってはいけない。
 アスカの顔色は非常に悪い。ジグも、いいとは言えない。

「……あれが生まれるところ、見られないね」

「……そんなことないだろ、そのくらいまでは持つだろ」

「……あんたはそうかもしれないけど、私は無理……ところであんたまで、何で遺伝情報を登録したの?」

「……お前と似たような感じ。なんか残しておきたくて」







解説

補足説明

これは、ちょっと先の【未来】のお話。
OPにありますように、時間軸は、1020年の末。
クリムゾンウェストの未来年表によれば、来年3月にはリゼリオにナディアタワーが完成する予定。



現状一覧


カチャ――外見年齢が16、7くらいになった。変わらずリゼリオに住んでいる。レクエスタの隊員。スペット顔復元のお祝いをするため、ユニゾンを訪れている。

ニケ――商談のため島に来ている。一応関係者なので、スペットについても少しは祝うつもり。

マルコ――学院の長期休暇を利用し、ユニゾンにあるグリーク商会出張所へバイトに来ている。成長期ということもあり、背が随分伸びた。そろそろニケを越す勢い。

ブルーチャー――グリーク商会出張所において、社会奉仕活動(という名のただ働き)。まだ刑期は明けていない。これより1年後には明けている。

スペット――顔を戻してもらった。もう猫ではない(ただし覚醒すると猫顔になる設定)。まだ刑期は明けていない。これより1年後には明けている。

タモン――課長クラスに昇進したそうだ。

ぴょこ――スペットの付き添いに来た。

マゴイ――スペットの顔を直したり、ウテルスの世話をしたりと忙しそう。市民がウテルスにいるので、ややナーバス。

ジグ、アスカ――もう寿命がつきそう。遺伝情報を残していく。




年末年始のためユニゾンは、ただ今イルミネーション真っ盛り。

ウテルスは現在すでに登録手続きを終えた遺伝情報を元にし、新しい市民を生産中。
アスカとジグの遺伝情報は、これからウテルスの中へ送られます。それが人になって出てくるまでには、11カ月程度かかります。


アスカとジグの登場は、今回で最後となります。
次の未来シナリオのとき、彼らはもうこの世にいません。彼らの遺伝子を受け継いだソルジャーは生まれているでしょうが。
言いたいことやしたいことがある方は、遠慮なくそうしてください。悔いが残りませんように。


マスターより

KINUTAです。

未来第一弾、近未来が届きました。
ひとまずは来年度の分をどうぞ。

関連NPC

  • 荷を運ぶ者
    カチャ・タホ(kz0150
    人間(クリムゾンウェスト)|13才|女性|聖導士(クルセイダー)
  • 俺は猫ちゃうぞ
    スペット(kz0223
    人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|魔術師(マギステル)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2019/10/03 01:03

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
エルバッハ・リオン(ka2434
エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2019/09/23 18:16:46
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/09/20 19:59:39
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2019/09/25 21:10:18