●射る先にあるモノ
　その人形は、元は求愛の証としてとある貴族の令嬢に捧げるために作らせたものだった。
　恋を成就させる妖精の人形と、その弓矢によって恋に落ちる男女と、その周りの人間を象った精巧な人形たち。
　ほぼ実寸大で作られたその人形たちはしかし捧げられる前に依頼人の死によって舞台に上がる資格を奪われる。
　人形師は青年と懇意だったため、完成した人形をせめて、と青年が求愛した令嬢へ贈ろうとしたが「死者から贈り物をもらうようで気味が悪い」と突っぱねられ、そこで物語は終わるはずだった。
　親友の思いを受け入れないどころか蔑んだ令嬢に対し激しい怨嗟を抱いてしまった人形師がその激情の果てに命を絶ち、長い間発見されなかった人形たちが雑魔となってさえいなければ。

「人形が雑魔化っていうのは結構あるみたいだね。去年の秋ごろお願いした菊を纏った人形退治もそうだったし、最近は人形館でたくさんの人形の討伐をお願いしたっけ。
　今回は物語を元に作られた人形たちが揃って雑魔化してたっていう依頼。
　どうも人形師が人嫌いで、唯一交流していた依頼人であり友人である青年の頼みで作った人形を、青年が捧げたかった相手に気味が悪い、といわれたことを恨んで、それが長い間残留思念のように残っていたらしい。
　それにさらされ続けた人形が雑魔化したって経緯みたいだね。
　物語は妖精の悪戯によって恋に落ちた男女と、その周りを描く古典劇のワンシーンなんだけど……雑魔化したせいか殺戮人形と化してる。
　恋を成就させる弓矢は強制的に魅了させる、殺傷力付きの弓矢に、男女は怨念を宿した剣や鉈を、周囲の人を象った人形もそれぞれ武装してる。
　今回も残念ながら雑魔化して長い間が経っているから形として残るのは衣類の一部程度だろうね。
　手入れして普通の人形として扱うことは不可能な状態まで雑魔が侵食している。
　場所は山の中にある人形師の工房兼住居。こちらから出向かない限りは人形たちはでてこないそうだ」
　人形絡みの依頼はどうもやるせないね。ルカ・シュバルツエンド（kz0073）はそういってファイルを閉じたのだった。

人形（男性型）：鉈を武器にしています。女性型をかばって行動します。
人形（女性型）：剣を武器にしています。男性型に比べ体力が少な目
人形（妖精型1）：弓矢を武器にしています。2に比べ体力が少な目
人形（妖精型2）：造花（茨と蔦薔薇）を操る能力を持ちます。妖精型1を使役する配役のためか妖精型1に守られています
人形（他三体）：老人や老女、ライバルの男性型の人形。農具を手にして攻撃してきます。

以上の討伐が成功条件になります。
討伐に成功した場合、どういう倒し方をしても人形は人形としての形を維持できず消滅します。

西洋人形を眺めるのは好きですが手入れする知識も器用さも持ち合わせていないのでネットで写真を見る程度です。
日本人形は…雛人形が身近な存在としてありますがどうにも怖さが先に立ちます。
偽りの生に縛られた人形たちにどうぞ安寧を。