クリームヒルトは断崖の上から、それを見ていた。
「ここがアドランケン鉱山か。立派なもんじゃないか」
　崖の下、馬車から降りて辺りを見回す男性には見覚えがあった。いや、知っているからこそこうやって待ち構えていることができたと言える。
「ベント伯……」
　旧帝国における大貴族の一人で、現体制に移ってからは魔導車開発の出資者として名をはせている。商才をもつ投資家で革命後も大貴族として響かせていた頃となんら変わりない生活を送っている。
　そんな彼に、クリームヒルトは己の後見人であるアウグストと共にその助力を願い出たこともあった。
　その辺りからだ。クリームヒルトが取り組んでいた地方活性化の産業起こしが次々と襲撃され闇に消えた。
　この鉱山だってそうだ。元々不法に占拠され過酷な労働をさせられていたこの鉱山を解放したというのに、最新の地図には未だ名前もあがらない。おかしいと思って調査にきたクリームヒルトがここで閉じ込められ、ゾンビの仲間入りするところだった。
　それが何故なのか、確認はできていない。
　だが、犯人の目星は少しずつついてきた。
「私の動きを確認できて、それを阻止する理由がある人間。そして……歪虚とつながっている人間」
　今現在、ゾンネンシュトラール帝国の大富豪としての彼は、旧帝国の人間と仲良くすることはできるだけ避けたいはずだ。
　ベント伯がクロとは限らないが、一般には存在していないこの鉱山を視察しに来たこと自体が、少なくとも裏のある人間であることを確信させた。

　村一つ消されたこと。
　罪もない村民や羊が殺されたこと。
　その骸をゾンビにさせられたこと。
　闇から解放した鉱山をまた闇に葬られたこと。
　解放した人々をも口封じか殺されたこと。
　そして。自分や協力してくれたハンターを殺し、ゾンビの仲間入りにさせようとしたこと。
「借りは、きっちり返してもらうから」
　ベント伯とその取り巻きが土砂の間から鉱山内に入っていくのを見届けると、クリームヒルトは崖上に貯めていた土砂を支える板柱を蹴った。支えを失った板は盛大に倒れ、土砂もろとも崖下、鉱山の入り口へと雪崩れる。同じ光景はもう３度みた。自分でやるのは初めてだが。
「なんだ！？」
　悲鳴のようなものが聞こえる。慌てふためいて動揺するも、分厚い土砂の壁はそう簡単にどうにかできるわけもない。

　じっくりと聞かせてもらおう。
　業と闇についてを。

●背景
　クリームヒルトは帝国の地方活性に尽力していましたが、何者かに頓挫させられていました。
　その黒幕、もしくはそれに近しい人物がベント伯であると睨んでいたところ、一般には知られていない筈のアドランケン鉱山に視察にいくという事実を掴みました。
　これで少なくとも白ではないと確信したクリームヒルトは、彼と取り巻きを鉱山内に閉じ込め、背景を吐かせようと考えています。

●目的
　ベント伯に計画していることを白状させる。

●有効なスキル
　交渉術

●流れ
　ベント伯と取り巻きを鉱山内に閉じ込めるところまでは成功しています。
　逃げられない彼らに恐怖を与えます。
　その後、追いつめた彼らに尋問タイムに移行します。

●制限
　明らかに非人道的すぎる行為は禁止します。
　具体例はあえて挙げません。不特定多数がリプレイを見る可能性がある事を念頭にご判断ください。

●ベント伯
　帝国の投資家。主に魔導車開発に関わっている。
　５０才くらい。男。非覚醒者。銃を所持しています。
　クラシックな印象のナイスミドルです。内務課に勤める娘がいます。
　
●その他
　皆さんは通気口がわりの搬出路から出入りできます。
　取り巻きは３人。戦闘経験はありますが、非覚醒者ばかりです。ベント伯も同様です。
　ＮＰＣクリームヒルトが皆さんの質問にお答えします。彼女は鉱山に一度入ってますので、内部について、そこそこ理解してます。

　廃鉱を舞台にホラーハウスを展開し、脅かす側になりましょう。がテーマです。
　中核はその後の尋問タイムなわけですけれど、恐怖に陥れたらその分尋問は楽になる設定です。
　ちなみにこの話は拙作のシナリオ「暗闇を暴く闇夜の使者になれ」「雨の夜に」「暗闇の底で」に関連しています。読まなくても全然大丈夫ですが読むと背景がもう少しわかるようになります。

　それでは追いつめる楽しさをお楽しみください。