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真昼の月が囁く刻

マスター:あまねみゆ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
サポート
現在0人 / 0~12人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
プレイング締切
2014/07/10 19:00
リプレイ完成予定
2014/07/18 19:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

 グラズヘイム王国において教育とは基本的に「等しく全ての人々は豊かでなければならない」という教会の教義に基づいたものであり、王国による初等教育(プルミエール)と、聖堂教会による講義(エクレシア)によって全王国民に最低限の教育を施すという形態が整えられている。
 六年制のプルミエールは入学金や年間費などがかなり安く、王国内在住の子どもであればほぼ誰でもいける。主要都市や町、場所によっては村などにも学級が存在し、生徒は最寄りの学級に通う形だ。


 * * *


「ヴァリオ、ありがとう。素敵な作文だったわ。じゃあ、次に読んでくれる人?」
 王都のプルミエールの教室のひとつで若い女教師が呼びかけると、次々と挙手をする生徒たち。自分を指してほしいと声を上げながら挙手する子、ちょっと自信なさげに控えめに手を挙げる子、指されたくないと身体を小さくする子と様々な子ども達がいる。
 このクラスを担当する教師のユルシュルはそんな子ども達の様子を、笑みを浮かべて見回して。
「では、次はネリー、読んでくれる?」
「はいっ!」
 目をキラキラさせて指されるのを待っていた三つ編みの少女が元気な返事をして立ち上がった。

「私のおばあちゃんは、遠くの村から王都のおじいちゃんのところにお嫁にやって来ました。
 私はおばあちゃんが話してくれる村のお話がとても好きです。
 この間、犬のペドロが死んじゃって私がしょんぼりしていた時に話してくれてたのは、たまに見える昼の空に浮かぶ月に関する言い伝えです。
 おばあちゃんの村では、昼の空に浮かぶ白い月をじっと見つめていると、亡くなった大切な人の声が聴こえるという言い伝えがあるそうです。おばあちゃんはおじいちゃんが亡くなってから、真昼の月を見つけるといつも見上げるのだそうです。
 おじいちゃんはどんなことを言ってくるのか、聞いたけれど教えてもらえませんでした。それは、おじいちゃんがおばあちゃんにだけ掛けた言葉だから、内緒なのだそうです。私は今度真昼の月を見つけたら、ペドロの声を聞いてみたいと思います」

 ハキハキと作文を読み終わったネリー。子ども達からはパチパチと拍手が起こる。しかし……いつまで経っても先生の声は聞こえてこない。
「……先生?」
 不審に思って教壇を見た少女が、先生の様子がおかしいことに気づいた。
「あー! ユルシュル先生泣いてる!!」
 少年のデリカシーのない指摘に、教室はざわつき始め……席を立った子ども達が心配そうにユルシュルの傍に集まる。
「な、なんでもない、のよ……ごめんなさいね、すぐに涙なんて止ま……」
 ポケットから取り出した白いハンカチを目に当てるユルシュル。だが、涙はいくら拭きとっても止まらない。子ども達は心配そうに声を上げる。
「何事ですか?」
 と、騒ぎを聞きつけて教室の扉を開けたのは、年配の女性教師だ。彼女が怖いのだろうか、子ども達はぴたっと黙りこむ。その隙にユルシュルは子ども達の包囲を抜けて女性教師の横をもすり抜けた。
「すいませんバルテレミー先生、少しの間子ども達をお願いしますっ……」

「ふっ……うくっ……」
 トイレに駆け込んだユルシュルは本能のままに涙をこぼした。
「危険な依頼じゃないから、危ない場所には行かないって言ってたのに……」
 そして顔を洗った後、窓の外から見える青空を見つめたのだった。


 * * *


「お願いします!」
「先生を元気にしてあげたいの!」
 ハンターオフィスで職員に詰め寄っているのは子ども達だ。聞くところによると、プルミエールの生徒らしい。
「事情はわかりました。ユルシュル先生が泣いたきっかけは、ネリーちゃんの作文みたいね。でも、ネリーちゃんが悪いんじゃないから、そこは気にしないこと。きっと、ユルシュル先生の心の中に、その原因があると思うの。何か、これまで先生に変わった様子はなかった?」
 職員の問いに子ども達は首を傾げる。精一杯記憶をまさぐっているのだろう。そして一番最初に声を上げたのは、おとなしそうな少年だった。
「あ、あの……去年ね、先生、突然一週間くらいおやすみしたことがあったんだ。代わりに来た先生は、ユルシュル先生は体調を崩しちゃって、安静にしていないといけないから暫くおやすみするって言ったんだけど……」
「あ、あたしも覚えてる! おやすみする前はすごく嬉しそうだったのに、おやすみしたあとは元気なかったよ。いつもみたいに笑ってたけど、元気なかったよ!」
「うーん、なるほどね。その間に何かあったのは間違いなさそうだけど……」
 職員は言葉を切って、自分をじっと見つめる子ども達をぐるりと見渡した。そして。
「君達は、好奇心で先生に何かあったか知りたいだけ? それとも、元気が無いのが心配で、純粋に、元気をだして欲しいの?」
 職員の言葉に子ども達ははっと表情を変えて顔を見合わせあった。そして。
「もちろん、心配なんだよ!」
「先生に、元気になってほしい!」
「ぼくたちの大切な先生だもん!」
 身を乗り出すようにして訴えかける子ども達。用意出来た報酬はお小遣いをかき集めたわずかばかりのお金と、家から持ち出してきた現物だけれど。
「そうね……」
 職員も、一生懸命な子ども達の依頼を断るの気が引けて。少ないとはいえ報酬を用意してきているのだから、これは立派な依頼なのだし。
「分かった、じゃあ協力してくれるハンターを探してみるから」
 笑顔で告げられた職員の言葉に、子ども達はわぁっと歓声を上げた。


 * * *


 もしも、もしも死んでしまったあなたの声が聞けるのなら。
 もう一度、もう一度だけ、愛してるって言ってほしい。
 お願い、聞かせて、真昼の月よ。
 あの人の、声を……。

解説

・目的
 ユルシュル先生に少しでも元気をだしてもらおう!
 元気を出すことが無理でも、子ども達が納得する方向に持って行こう!

・依頼人
 ユルシュル先生の教え子数人

・その他
 ユルシュル・アルシェ(25)……プルミエールの先生。恋人がいた様子はあり。最近はどこか影のかかった様子だとか。

 ユルシュルは二日後に、真昼の月を眺めに休日のプルミエールの屋上に来ます。

 ユルシュルと一緒に真昼の月を見上げて、亡くなった誰かの声を聞いてみたいというのも歓迎です。
 あくまでとある村に伝わる言い伝えを試すだけですので、本当に聞こえるかどうかはわかりません。聞こえると信じていれば聞こえた気がするかもしれません。
 聞こえた気がする場合はどんなことが聞こえたか、プレイングに書いて下さい。

マスターより

 はじめまして、こんにちは。
 あまねみゆと申します。以後お見知り置きを。

 今回はプルミエールの子ども達からの依頼です。
 依頼人の子ども達が納得すれば、ユルシュルが完全に元気を取り戻さなくても成功です。そもそも、彼女の影は、すぐに他人が何とか出来るものではないかもしれません……。

 心情を添えていただけると、キャラクターをつかみやすくなりますので、字数に余裕がありましたらぜひお書きください。

 それでは、いってらっしゃいませ。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/07/30 19:49

参加者一覧


  • プリムラ・モデスタ(ka0507
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 笑顔を咲かせて
    紅・L・諾子(ka1466
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 挫けぬ守護者
    エヴリル・コーンウォリス(ka2206
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/05 00:09:35
アイコン 相談卓:真昼の月が囁く刻
エヴリル・コーンウォリス(ka2206
人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/07/10 08:43:26