牧畜犬が吼え猛る。
　羊達は驚き怯え、数頭が転びかけてしまう。
「どうしたんだ」
　牧童が目を剥く。
　相棒は羊に舐められるほど優しいたちでで、吼えることなんて滅多にない。
　牧畜犬は羊達を追い払うと羊の首を一噛みで食いちぎれそうな顎で牧童のズボンを噛んで引っ張る。
　その瞳は、強すぎる恐怖で濁っていた。
「え？」
　わふん。
　相棒とは明らかに違う鳴き声が聞こえた。
　牧童より倍は重い相棒が分厚い筋肉を震わせる。
「野犬？」
　西から３頭の犬が近づいてくるのに気付く。
　相棒の喉奥から悲鳴が漏れる。
　３頭の灰色犬の形が不自然に変わっていく。生気のない灰色の野犬から、犬の要素を残した。のっぺりした金属質の人型へ。
「ヴォ……」
　歪虚だ。
　頭が現実を認識するより早く足が動く。
　１８０度反転。前傾姿勢から全力疾走。
「ヴォイドだー！　やだー！」
　ヴォイドの腕が振り下ろされ、小型砲弾の着弾じみた爆発と衝撃が発生する。
　幸いなことに効果範囲は広くなく、人型の速度も速くない。
　きゃうんきゃうんと哀れっぽい泣き声の相棒と共に、牧童は走って半日の距離にあるハンターソサエティ支部を目指すのだった。

●ハンターズソサエティ本部
　少女型というには少し幼いパルムが、宙に浮かんだ灯りを追って元気に駆けている。
　リアルブルー出身者なら灯りではなく３Ｄ投影ディスプレイと表現したかもしれない。
　灯りに意識を集中する。
　ディスプレイは複数に別れ、そのうちの１つがあなたの目の前に飛来し停止した。
　内容は草原を現す地図と３つの雑魔を現すシンボルだ。
　最初犬の形で動いていたシンボルが人型に変形しボクシングっぽく腕を突き出す。
　拳が光っているので多分魔法攻撃だろう。デフォルメがきついのでちょっと自信が無いけれども。
　地図の端に視線を向ける。
　王国西部を現す地図に切り替わった……のはいいのだが敵の所在を示すマークが大きすぎる。直径２０キロメートルはあるはずだ。
　先程のパルムが別のディスプレイを追いかけている。
　ディスプレイは先程と同じように複数に別れ、そのうちの１つがあなたの手元に到着する。
　映っているのは精根尽き果てた牧童１人とドーベルマンっぽい牧童犬１頭。
　彼等に案内してもらってヴォイドを捜索後撃破、または彼等から情報を引き出しハンターのみでヴォイドを撃破しろということらしかった。
　パルムはかけっこに飽きたらしく、珍しい物を求めて本部の外へ飛び出していた。

　戦闘依頼です。
　リプレイは戦闘場面の描写が中心になります。

　牧童犬か牧童（非覚醒者）か両方がいた場合は短時間でヴォイドを発見できハンターの疲労が少ない状態で戦えます。このときは彼等の護衛に戦力が裂く必要があるかもしれません。
　どちらもいない場合、ヴォイドは見つかりますがハンターが疲労した状態で戦うことになるかもしれません。

　戦場となるのは背の低い草の生えた平地で、ハンターが誘き寄せたり罠を仕掛けたりしない限り障害物や罠になる地形はありません。
　昼間で天気は晴れです。近くに羊はいません。

●登場敵戦力
犬型ヴォイド３体
　雑魔です。
　犬の形をしているときは、全力の疾影士に２割程度劣る速度と頑丈さと回避能力を持ちます。攻撃手段は前方に対する噛みつき（単体弱物理攻撃）のみ。
　人型になるには１ラウンド必要で、その間攻撃も移動もできません。変形後は頑丈さと速度が低下し回避能力が極端に低下する代わりに攻撃能力が大幅に向上します。射程２の爆風付きパンチ（魔法）を使ってきます。
　ハンターが誘き寄せたり分断しようとしない場合、３頭連れだって行動し犬かそれ以上の大きさの生物を見つけると攻撃を仕掛けます。
　人型から犬型になるには３ラウンド必要で、その間攻撃も移動もできません。
　知性は良くて獣並み。変身時に体力や怪我が回復することはありません。

　馬車猪と申します。初依頼、よろしくお願いいたします。