• 戦闘

ボラ族、同郷の仲間と大喧嘩する

マスター:DoLLer

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/12/02 09:00
リプレイ完成予定
2015/12/11 09:00

オープニング

 派手に鉄火を迸らせる鉄槌の音がリズムよく響く。
 ここは帝国の小さな港町。船舶工房ではボラ族と呼ばれる辺境からの移民がこうして船部品鍛造の仕事をこなしていた。
「かぁーか。ひと」
 そんな熱気あふれる鍛冶場の入り口でよちよち歩きの子供が、扉が開いたのを見てボラ族の女レイアの裾を引っ張った。
「こんに……」
 レイアが振り向いてそう言おうとした瞬間、言葉が途切れた。目の前にいるのは手入れのまったくできていない不潔な灰ヒゲの男。潮風で焼けた赤胴色の肌。磯で汚れた衣服は海の、それもあまり歓迎されない男達であることはすぐわかった。そしてその後ろにも似たような男達の姿が何人も見える。
 外に見える近所の人達は明らかに恐怖して訪問客を見やっていたが、レイアは汗を拭いて立ち上がった時に見せたのは輝いた笑顔だった。
「ノトの!」
「んぁ、レイア!? 久しぶりじゃねぇか。このガキはお前の子か?」
 レイアの笑顔に合わせて、ノトと呼ばれた一団も一斉に相好を崩した。にっこり笑う子を抱き上げて、高い高いをするその顔は周りから怯えられるような感じでもない。
「前族長スィアリ様の形見。名前はウル。春が来れば2才よ」
「おおお、マジか!? こりゃめんこい」
 ひげを押し付けて頬ずりする男に、ウルは片目を閉じてゾリゾリの感触に耐えてはいたが別に嫌そうな感じでもない。
 そうこうしている内に、鍛冶場で働く男達も、来訪者の存在に気付いたのか手を休めて、やって来た。
「ノトのゲールか! 久しいな」
 鍛冶場の一団をまとめるイグが大きく手を広げてノトの、つまり同郷の部族ノト族の彼らを歓迎した。
「イグ!」
 ゲールと呼ばれた男はウルを下ろすと、イグと腕をガシリと組み、再開の喜びを分かち合った。
「てめぇらボラ族がこんなところで何してやがる。ボラ族といえば北荻の歪虚を薙ぎ倒して赤き大地を守る孤高の戦士達だろ」
「負けてしまった。見ての通り、今は帝国の鍛冶屋だ」
 はははは。という笑い声が一瞬響いたが、それは徐々に冷めたものになる。
「……帝国の鍛冶屋ってなんだよ、そりゃ」
「我らの住んでいた豊穣の大地は歪虚によって失われた。泉はひび割れ、草木は枯れ果て、獣は逃げた。前族長スィアリ様も……」
 過去を触れられ、僅かに顔に影を落として話すイグの言葉にゲールは激昂した。
「それでなんで帝国人なんかになり下がってやがる! 帝国の力に物言わせるやり方を忘れたわけないだろ。その中でも誇りを忘れず立つのが辺境の民だ。てめぇ、辺境魂を金で売ったか!」
 ゲールはお構いなしに唾を吹き付けんばかりの勢いでイグに食って掛かるが、イグはそれに比べると冷静だった。怒るのも無理はない。という顔で。
「力が正義だとは思わない。だが帝国だ辺境だと人間同士でいがみ合う、それでは人類共通の敵、歪虚に勝てない。心を合わせることが大事だ」
「クソが! 結局負け犬根性がついて家畜に成り下がっただけじゃねえか!」
 烈火の勢いでゲールはイグの顔を思いっきり殴り飛ばした。続いてもう一撃と振りかぶったが、喉元に突きつけられた火箸によって制止させられる。
「ご高説はありがたいけどサ、あんた達ノトは海賊生活して辺境からも放逐された身だろ? 力で他人様に迷惑しかかけてない連中に説教垂れられてもねー」
 その言葉を放ったボラ族の少年ロッカにゲールの後ろにいた男たちの顔色もがらっと変わる。
 そして。


「ああ、もう仕事したくない……」
 帝国の地方内務課の職員メルツェーデスはげんなりした顔で港町の前で魔導車を降りた。そこには辺境の民の移民政策のモデルケースとして受け入れられたボラ族が待っているのだ。しかし、非常識の塊のような彼らといると、頭が痛くなる。
 ただでさえ家の事も忙しいし、北伐のことで仕事もめちゃくちゃだし。
 しばらく顔は出せなかった代わりに、移民助成金を数か月前渡しにしていたが、無駄遣いをしていないかも心配だ。ちゃんと節約を呼びかけるワッペンを縫いつけておいてはいたのだが。
 などと、ぶちくさ言ってメルツェーデスが町に足を踏み入れた瞬間。

 目の前の民家が爆発音を立ててレンガ造りの壁がガラガラと崩れ去ると同時に、海賊の男が鼻を鳴らして瓦礫に向かって叫んだ。
「歪虚を戦うためと言って同族を兵士に仕立て奴らは後ろでのうのうとしてるんだ! 帝国は簒奪者だぞ」
「戦い方が違う。帝国のやり方を毛嫌いして学ぼうともしないのは、お前たち」
 崩れ去った瓦礫の中から電撃が迸り周りの物を吹き飛ばすと、ボラ族きっての超肉体派聖導士、ゾールが立ち上がり吼えた。
 途端に周りの壁は震え、屋内の棚にしまわれていた漁の道具が崩れ落ちて、家人の悲鳴が上がる。
「辺境の名の元に、リムネラ様の元に戻れよ。誇りを……」
「太陽の火よ、下りて燃やし尽くせ」
 一方では、レイアの詠唱と同時に爆発が起き、何人かの辺境の男が吹き飛んだ。
「大地が続く限り、風が吹く限り、どこも私達の故郷。勝手な線引きに惑わされているのは、そっち」
「この女ぁぁぁぁ」
 対抗するの相手も魔術師のようで、レイアの声がした方にアースバレットを叩きこんだ。
 と同時にレイアの真後ろにある厩から馬の悲鳴が上がる。突然の戦闘に恐慌状態になったのだろう。
「あははは、鬼さーん、こっちらぁ」
 その家屋の上ではロッカの可愛い、いや、小憎らしい挑発が響き、それを追いかける男が屋根の上を全力で走るのが見えた。
 だがどうも弱い部分を踏み抜いたらしい。そのままシュポンと姿が突如見えなくなり、色んな悲鳴が重なって聞こえてくる。
「そうやって逃げてばかりいるから犬になるんだ」
「あっははは、猪に言われたくないね。家畜にされたら豚だもんね」
 戦いは町の一部を完全に戦場にし、あちらこちらから、悲鳴と怒号が飛び交っていた。

「あああ、お役人さん。助けてくれ!! 鍛冶屋の連中と海賊が喧嘩を始めちまって! このままじゃ町が崩壊しちまうんだ」
 呆然としているメルツェーデスに逃げ惑っていた町の人間がすがりついてきたことで、彼女はこの惨状が悪夢ではなく現実だということを確認したのであった。
「お、お役人さん?」
 多分、町の人は気が付いたのだろう。
 メルツェーデスが真っ白になっていることを。
「ハイ、今、はんたー、呼ブワネ」

解説

●依頼主旨
帝国の小さな港町に海賊が現れました。ボラ族と呼ばれる辺境から移民した一団がたまたま戦闘能力があり応戦していますが、被害が大きいようです。
海賊を退治し、被害を食い止めてください。

●敵戦力
ノト族
リーダーのゲールを含めて50人ほどの集団です。ゲールを含めた5名が覚醒者です。
海賊なので犯罪者集団です。手加減無用と言いたいところですが一応捕らえる対象です。
しかし加減できず彼らが死んだとしてもあまり文句は言われません。

ボラ族
リーダーのイグを含めて30人ほどの集団です。イグを含めた4名(イグ・ゾール・レイア・ロッカ)が覚醒者です。
基本、海賊退治をしてくれていますが、彼らに任せると被害が拡大します。
殺してはいけません。殴って気絶させるくらいはOKです。
非常識なだけで言葉は理解しますので説得にも応じます。(聞き入れないこともあります)

●町
100戸に満たない小さな港町です。漁師町から少しランクアップした。そんな程度です。
既に7戸が半壊の被害に遭っています。建物は倉庫などがけっこうあります。
住人は約150人程度。ボラ族より強い人間はいません。
地図はありません。

●成功状況
町の被害状況で判断します。

●戦闘について
すでに乱戦状態であちこちで戦いが始まっています。どこに誰がいるのか把握するのも難しい状況です。
適当にスタートしてください。
なお、エキサイトしたボラ族から間違えて殴られる可能性も忘れてはいけません。

マスターより

場外乱闘のプロレスみたいな状態です。
依頼趣旨ではもっと被害がでるところをボラ族がくい止めている形になっています。
ボラもノトも喧嘩両成敗でどっちも叱ってあげたらいいと思います。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/12/09 03:04

参加者一覧

  • ボラの戦士
    アーシュラ・クリオール(ka0226
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 抱き留める腕
    ユリアン・クレティエ(ka1664
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 友と、龍と、翔る
    グリムバルド・グリーンウッド(ka4409
    人間(蒼)|24才|男性|機導師

  • 町田紀子(ka5895
    人間(蒼)|19才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 喧嘩の仲裁・制圧
アーシュラ・クリオール(ka0226
人間(リアルブルー)|22才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/12/02 01:20:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/28 21:01:28