• 戦闘

異種族に友情は芽生えるか

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/01/15 07:30
リプレイ完成予定
2016/01/24 07:30

オープニング

 そのコボルトは生まれながらに虚弱だった。
 体は通常のコボルトよりも二回りも小さく、力も弱く、臆病だった。
 同じ群れの他のコボルト達には疎まれ、爪弾きにされ、群れの中では孤立して暮らしていた。
 獲物を狩るだけの力はないが仲間は狩りを手伝ってくれない。
 だから虚弱なコボルトには虫を捕まえるのが精々だった。
 しかしそれでは腹を十分に満たす事はできず、力はつかず、体も大きくなれなかった。

 雨が長く続いた事があった。
 虚弱なコボルトは虫すら捕まえられなくなり、長雨の間は何も食べる事ができなかった。
 だから雨があがった頃には虚弱なコボルトの体は弱りきっていた。
 それでも群れのコボルトは誰も助けない。
 だから虚弱なコボルトは1人で狩りに出る。
 森を歩くと木々の葉に残っていた雨粒が体を濡らし、虚弱なコボルトを冷やして更に弱らせた。
 空腹と冷えでどんどん体力が失われ、虚弱なコボルトは遂に動けなくなってしまう。
 身を温めるために体を丸め、目を閉じるとだんだんと眠たくなってくる。
 それは死への眠りだったのかもしれない。
「あーー! ワンちゃんだっ!」
 しかしそんな大声で虚弱なコボルトの眠りは覚まされた。
 目を開けると、自分と大して背丈の変わらぬ人間の姿があった。
 虚弱なコボルトが初めて見る人間だった。
 子供なのだろう。小さく、弱そうだ。
 それでも虚弱な上に弱っている今のコボルトよりは強いかもしれない。
「グルル……」
 虚弱なコボルトは警戒心を露にして唸った。
「どうしたのワンちゃん?」
 しかし人間の子供の方は無警戒に近づいてくる。
 虚弱なコボルトは後ずさった。
「もしかしてお腹空いてるの? これ食べる?」
 人間の子供は背負っていたリュックからおにぎりを出して地面に置いた。
 虚弱なコボルトの目がおにぎりに釘付けとなる。
 初めて見る物だが、匂いで食べ物だと分かる。
 自然とよだれが垂れた。
 しかし食べ物と人間の子供との距離が近い。
 このままでは近づく事ができず、虚弱なコボルトの視線がおにぎりと子供の間を行ったり来たりする。
「ミミカ何もしないよ。おいで」
 ミミカというらしい人間の子供が手招きするが、虚弱なコボルトはもちろん近寄らない。
「もー……。じゃあミミカ離れてあげるね」
 ミミカが背を向けて離れてゆく。
 その瞬間、虚弱なコボルトは猛ダッシュでおにぎりに喰らいつき、猛ダッシュで草むらに飛び込んだ。
 そこで思いっきり咀嚼する。
 美味かった。
 食べ物の味が口中に染み渡った。
 脳が、腹が、全身が、歓喜で満たされる。
「やっぱりお腹へってたんだね。はい、これもあげる」
 ミミカは地面にクッキーを置いたが、その場を離れなかった。
 そしてニコニコしながら虚弱なコボルトが来るのを待つ。
 虚弱なコボルトの中で警戒心と食欲が天秤にかかる。
 そして……食欲が勝った。
 空腹による欲求に抗えなかったのだ。
 ミミカの視線を気にしながらジリジリと近づき、クッキーを取った途端に再び猛ダッシュで草むらに飛び込んだ。
「ここで食べてよ~」
 ミミカが不満そうに口を尖らせながら虚弱なコボルトのいる草むらに向かって言う。
 クッキーを食べ終えた虚弱なコボルトは草むらから顔を出し、ミミカを見た。
 警戒心が薄らいだ訳ではないが、まだ何かくれるかもしれないという期待はあった。
「ごめんね。ご飯はもうないの」
 そんな期待を感じ取ったのか、ミミカが申し訳なさそうに謝る。
「じゃ、またねワンちゃん。バイバイ」
 ミミカは手を振ると去っていった。
 虚弱なコボルトはミミカの気配が感じ取れなくなるまでその場を動かなかった。


 その後もミミカはほぼ毎日食べ物を持ってきてくれた。
 ミミカに勝手にロブと名付けられた虚弱なコボルトは飢える事がなくなった。
 何日も会っていればロブも自分がミミカより力が強いと分かってそれほど警戒しなくなり、食事もミミカの傍で取るようになった。
「わーい! ロブの毛ふっかふかー」
 そうするとミミカが無遠慮に触ってくる。
 最初は逃げていたが、すぐに害はないと分かり、今では好きにさせている。
「ミミカ、昨日は学校のテストで100点とったんだよ。凄いでしょー」
 ミミカはロブがご飯を食べている間に色々な話をしていた。
 ロブには人間の言葉は分からないが、ミミカが楽しそうにしているのは分かる。
 ロブは無警戒で弱いミミカを狩って喰う事も考えたが、そうするとミミカの持ってくる食い物が食べられなくなる。
 だからロブはミミカを襲わないでいた。
 少なくとも最初の理由はそうだった。


 そんなある日、コボルトの集落をゴブリンが襲うようになった。
 ゴブリンの方が知能が高くて強いが、コボルトの方が数が多くて地の利もあったため、両者の力は互角だった。
 そのため、コボルトとゴブリンの抗争は何日も続いた。
 もちろんロブもゴブリンと戦わされた。
 ミミカの食べ物のお陰で少し力の付いていたロブは何とか生き残る事ができていた。
 もしミミカと出会っていなければとっくにゴブリンに殺されていただろう。
 だがゴブリンとの抗争のため、ロブはミミカに会えなくなっていた。

 そしてコボルトとゴブリンの抗争の事はミミカの住む村にも伝わっていた。
 森にコボルトが住んでいる事は以前から知られていたが、今まで村に害はなかっため放置されていた。
 しかしゴブリンはコボルトより恐ろしい存在だ。
 もしコボルトが負けてゴブリンが住みつくようになれば村も襲われるかもしれない。
 そう思った村人たちはハンターを雇い、ゴブリンと、ついでにコボルトも退治してもらう事に決めた。

 雇われたハンターが村にやってくると、村長が迎えに出た。
「よく来てくださいました。ですが、ゴブリンとコボルトはまだ戦っておりまして。今日明日中には終わると思いますから、生き残った方を退治していただけますか」
 村長がそう話していた時、1人の女性が血相を変えて駆けてきた。
「ミミカがっ! ミミカがいないんですっ!!」
 詳しく話を聞くと、娘のミミカの姿が見当たらず、森へ入っていった可能性が高いという事だった。
「もしゴブリンやコボルトに見つかっていたら……」
 村長の顔も青くなった。
「ハンターさん! お願いします! 今すぐゴブリンとコボルトを退治してください! でないとミミカが……ミミカがぁー!!」
 母親が涙ながらにハンター達に訴えてくる。
「私からもお願いします! どうか今すぐ退治に行って、この人の娘さんを助けてあげてください!」
 村長もハンター達に頭を下げた。

 その頃、ミミカはロブを探して森へ入っていた。
「ロブー。ロブー!」
 しかも普段は行かない森の奥へまで入ってしまっていた。
 そのまま進めばコボルトのテリトリーに入るとも知らずに……。

解説

目的1:ミミカという10歳の女の子の保護
目的2:ゴブリンとコボルトの退治


戦場は大きく分けて3つあります。

A:主戦場
樹上にいるコボルト3体と地面にいる5体が、地面にいるゴブリン5体と戦っています。

B:脇戦場
主戦場から少し離れた場所で、1~3体のコボルトが1~2体のゴブリンと戦っています。

C:ロブとミミカがいる脇戦場
主戦場から少し離れた場所で、2体のコボルト(内1体はロブ)が2体のゴブリンと戦っています。


ハンターはまず主戦場に着きます。

サブアクションで『直感』以下で成功、のロールを行い。成功すれば脇戦場を見つけられます。
ロールは1人1ランウドにつき1回可能です。
『幸運』のスキルを持っている人は『直感』に+10を加えてロールできます。
『直感』の2倍以上の数値で失敗すると敵に見つかり、戦闘を仕掛けられます。

脇戦場は複数あり、一度に複数箇所見つかる可能性もあります。
見つけた脇戦場にミミカがいるかどうかは行ってみないと分かりません。

主戦場から枠戦場までの距離は100スクエアです。
枠戦場から枠戦場までの距離も100スクエアです。

コボルトの攻撃は『投石』『爪』『牙』『拾った剣』のどれか。
ゴブリンの攻撃は『剣』です。


 以下PL情報

ハンターはロブとミミカの関係を知りません。
ミミカを見つけた時、ハンターからはロブがミミカを庇いながら戦っているように見えます。
ミミカの元への到着が遅れると、ミミカはゴブリンに殺されてしまいます。

ハンターがロブを殺そうとすると、ミミカが
「止めて! 殺さないで! どうして殺すの? ロブは何も悪いことしてないよ!!」
と、お願いしてきますので、プレイングにはミミカのお願いをどうするか書いておいて下さい。

マスターより

私は猫が大好きです。
でも今回はワンコのお話です。
ただのワンコではなく二足歩行するワンコですけどね。

今回登場するコボルトやゴブリンは、シナリオ内の事だけに限れば人間に害を成していません。
(今シナリオより過去で害を成している可能性はありますけど)
そんな対象でもハンターは退治を依頼されれば戦う事になります。
果たしてこのシナリオに参加してくださったハンターはどんな対処をしてくれるのか?
今から楽しみです。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/01/22 23:13

参加者一覧

  • 弓師
    八原 篝(ka3104
    人間(蒼)|19才|女性|猟撃士
  • 刃の先に見る理想
    ブレナー ローゼンベック(ka4184
    人間(蒼)|14才|男性|闘狩人
  • イコニアの夫
    カイン・A・A・カーナボン(ka5336
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめ(ka5800
    鬼|23才|男性|符術師

  • 月叢 虎刃(ka5897
    人間(蒼)|28才|男性|格闘士

  • オシェル・ツェーント(ka5906
    人間(紅)|19才|男性|符術師
  • 大局を見据える者
    仙堂 紫苑(ka5953
    人間(紅)|23才|男性|機導師
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎(ka6016
    人間(蒼)|22才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
カイン・A・A・カーナボン(ka5336
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/01/15 05:25:33
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/01/11 13:06:10