• 冒険

【空の研究】虹の橋は誰がために

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/03/25 19:00
リプレイ完成予定
2016/04/03 19:00

オープニング

 音もなく、霧雨に近いような細かな雨が降っていた。
 川のほとりに立てたられた、工事用の簡易テントから、雨の様子をうかがっている男が、五人。全員が、作業用のツナギを着ていた。
「やまねえなあ、雨」
 と、誰かがため息まじりにつぶやいた。
「もうやっちまいましょうよ、このくらいの雨なら大丈夫ですって」
 一番小柄な男がそう言って、木材置場へ歩き出そうとする。何人かが、それに続くようなそぶりを見せたのを。
「バカ野郎どもが!!!」
 ひげ面の男が一喝した。
「お、親方……」
「お前たち、もう忘れたのか! そういって工事を再開したからバリーもジョージも怪我をしたんじゃねえか! あの川を舐めちゃいけねえ」
「は、はい、すみませんでした……。でも、このままじゃいつになったら橋が完成するものやら」
 男たちが肩を落として、またため息をついた。そのとき。
「あのーう、お取込み中のところ、申し訳ないんですけれどねーえ」
 雨の中に、黒いローブの人物が現れた。フードを目深にかぶっていて、顔はほとんど見えない。
「ちょっと雨宿りさせていただけませんかねーえ」
「雨宿り? おわわ、ずぶ濡れじゃねえか! とりあえず、テントに入んなよ!」
「ありがとうございます」
 見知らぬ人物ではあったが、挨拶の丁寧さから考えても悪気を感じられず、気のいい男たちは、その人物をテントの中に招き入れた。
「助かりました、道に迷ってしまいましてねーえ。おや、皆さんは何かお仕事中だったのですか? お邪魔してすみませんねーえ」
 ずぶ濡れだというのにフードを外すこともなく、その人物は深々と頭を下げた。いやいや、と男たちは首を横に振る。
「気にすることないさ、仕事はな、進めることができんでいるのさ」
「まったく、勘弁してほしいよなあ。簡単になんか進められねえのに、催促だけは来るしよお」
「早く終わらせて欲しければもっと大規模に、って頼んでも、それは無理だって言われるしなあ」
 よほど鬱憤が溜まっていたのであろう、男たちが口々にぼやき始めた。かろうじて、ひげ面の親方がたしなめる。
「おい、やめないか、失礼だろう」
「いえいえー。何やら、事情がありそうですねーえ。よろしければ、お聞かせ願えませんかねーえ」
 フードの人物が、口元だけで微笑んだ。それがなんだか頼もしげに見えて、親方はしばらく迷っていたが、事情を説明しはじめた。



 目の前の川の向こう岸は、とてもさみしい所で、建物もほとんどなく、もちろん人通りもとても少ない。だが、そこにわざわざ別荘を建てた者がいた。ここ十年ほど、王国で力を伸ばしてきた商家・ルルド家の長男、カールである。実はこの別荘は、カールが恋人のキャスリンと逢瀬を重ねるために建てたもので、人気の少なさはむしろ好都合だったわけである。なぜそんなところでこっそり会わなければならないのかというと。
「ルルド家と、キャスリンさんのお家であるゴーン家は、昔から仲が悪いんだ」
「だから、交際がばれたりしたら大変なんだよ」
 なるほど、とフードの人物が頷くと、男たちのため息は一層深くなった。
「まあ、それに関しちゃ気の毒だとは思うけどよお……」
「もうちょっと違う方法はなかったのかねえ」
 人気の少なさは好都合だった。だが、人気が少ないが故に、道の整備は不十分で、別荘に行くには5キロも先の大きな橋を渡ってまた5キロ戻ってくる、という、片道だけで10キロの遠回りが必要になるのだ。
「だから、近道になるように橋を新たに作ってくれ、って依頼されたのさ。ところが、この川はそう深くはないにせよ、川岸の地盤が緩いんで工事がしにくい。もう二人も怪我人が出ちまった。大がかりに足場が作れれば安全対策もしっかりできるんだが、なにせ、秘密の別荘だからこっそりやってくれ、と言われたんで、大規模な工事ができねえ。怪我人が出てるんだ、と訴えたが、聞いてもらえなかったのさ」
「それは……、困りましたねーえ」
 フードの人物の声が、こころなし、低くなった。
「おや、雨があがってきたぞ」
「でも、地面が乾くまでは、まだ作業はできねえだろうなあ。明日にはカールさんとキャスリンさん、視察に来るって言ってたのになあ」
「また来るのか!」
 男たちが川を見つめる中、フードの人物は、雲間から光が差し出した空を見上げた。太陽の光が、独特の筋をつくり出しているのを見て、ふと、思いついたように微笑む。
「虹の魔法を、実験する良い機会かもしれませんねーえ」
 そう呟いてから、親方に向き直った。
「よろしければ、その橋の建造、少しだけ私に任せてみてはくれませんかねーえ」

解説

■成功条件
フードの人物・アメリアを手伝い、「虹の魔法」を成功させ、川の上に虹の橋をかけること。

■虹の魔法について(アメリア・マティーナより)
「これは、虹を硬化させる魔法です。虹の真下に魔法陣を正しく描くことで発動する、はずです、私の研究によれば、ですけどねーえ。
つまり、川の上に虹をかけて、硬化させ、橋にしてしまおうというわけです。魔法陣は私が形を知っていますし、川のサイズに合った虹も、水をまいて人工的に作ればいいでしょうが……、虹の真下に、魔法陣というのをどうしましょうかねーえ。虹の真下、は、そう、川。水が流れているわけですからねーえ」

■川
川幅約20メートル。水深はもっとも深い所で2メートルほど。流れは比較的緩やかであるが、増水するととても立ってはいられないほどになる。泳いで渡れないことはないが、不慣れな者には危険。
川岸は地盤がゆるく、立っている分には問題ないものの、杭を打ち込むなどすると広範囲に崩れる恐れがある。

■橋の建造依頼人
ルルド家長男、カール・ルルド、及び、ゴーン家長女、キャスリン・ゴーン。
三日に一度は、逢瀬のついでに(?)橋の建造の視察にやってくる。
視察には来るものの、怪我人が出ている等、工事作業員の要望にはほとんど耳を貸さない。

マスターより

虹でできた橋を渡ってみたい、と思ったことは一度ならずありますよねーえ(あ。口調がうつった……)
シリーズでございますが、これまでのお話を知らなくても何の問題もなく参加していただけます、よろしくお願い致します!
虹の下、つまり、川の上にどのように魔法陣を描くか。そのへんがポイントになりそうです。どうぞ力を貸してやってください!

関連NPC

  • 空の研究者
    アメリア・マティーナ(kz0179
    人間(クリムゾンウェスト)|25才|女性|魔術師(マギステル)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/04/01 02:29

参加者一覧

  • 幸せ歌う双兎
    アルナイル(ka0001
    エルフ|13才|女性|聖導士
  • 世界爪弾く双兎
    シリウス(ka0043
    エルフ|13才|男性|魔術師
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • もふもふ☆教祖様
    しろくま(ka1607
    人間(紅)|28才|男性|聖導士
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 黎明の星明かり
    マチルダ・スカルラッティ(ka4172
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
シリウス(ka0043
エルフ|13才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/03/25 17:46:14
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/03/24 20:38:28