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アイリス・レポート:回顧編

マスター:神宮寺飛鳥

このシナリオは3日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/05/26 12:00
リプレイ完成予定
2016/06/07 12:00

オープニング

 帝都バルトアンデルス。大通りに面したカフェが店先に咲かせたパラソルの下、二人の男が向い合い腰掛けている。
「参考までに聞いていいか? なんで俺がいるってわかったんだ?」
「君、この町中で完璧に気配消しすぎだよ。こういう雑踏では、むしろ気配駄々漏れの方がバレないよ」
 男、エルフハイムの執行者ハジャの質問に、少年、エルフハイムの咎人キアラが答えた。
 ハジャが帝都に来て既に二ヶ月ほどが経過する。彼の任務は機導浄化の権威、ハイデマリー・アルムホルムの護衛。
 既に彼はハイデマリーを狙った襲撃を三度食い止めていた。流石に襲撃者も一筋縄ではいかないと学習したのか、最近は平穏が続いているが。
「俺はあの錬金術士のねーちゃんの件だが、おたくは何してんのよ?」
「僕は今は帝国の使い走りさ。尤も、国家ではなくヴィルヘルミナ・ウランゲルという個人の、だけどね」
 キアラはポットから紅茶のおかわりを注ぎながら語った。
 あの日、監獄都市アネリブーベに送られた後、かつての同胞であるジュリと再会。更に監獄都市を率いるゼナイドは、革命戦争においてタングラムと肩を並べたことを知る。
 ゼナイドは荒唐無稽な人物だが、人種や素性を差別しない。本人はもう話したことさえ忘れただろうが、キアラのある質問に応じてくれた。
「そこで僕は知ったんだ。アイリスは、森都を裏切ったわけじゃない。あの事件を起こした人物は他にいるんだって」
「ですよねー」
 ストローでアイスコーヒーを啜りながらハジャは呟いた。アイスコーヒーは、帝都に来て初めて知った好物だ。
「アイリスの事はさんざん調査した。何か隠してる事くらいわかる。で、問題はその犯人が誰かって話だ」
 もし、アイリス……タングラムにとって“告白”が痛みを伴わないのなら、さっさと白状するはずだ。
 タングラムが犯人ではないのに真実を隠したがる理由。それは、“犯人をかばっている”としか思えない。
「が、それもおかしい。あれだけのことをしでかした犯人だ。その後の咎人認定もあってアイリスは犯人を憎んでいるはずだ。それでも庇うとしたら、犯人は一人しかいない」
「彼女の義理の家族。つまり――ジエルデ・エルフハイムだ」
 しかし、それも妙に思う。ジエルデは現在器の管理者としてその人生の全てを捧げている。
 あの事件は、アイリスが器を無断で外部に持ちだそうとした事が発端のはずだ。ジエルデが犯人なら、その罪を償う為に器の管理者になったとも考えられるが。
「そうじゃねぇと思う。あいつも“犯人”じゃねぇ。だが、“犯人を知ってはいる”んだ」
「流石だねハジャ。執行者なんかやめて帝都で探偵やったら? 結構似合ってるよ。毎日コーヒーも飲めるし」
「うっせ。コーヒーは買って帰るわボケ。で、犯人はどこのどいつだ? 俺達の森に火をつけやがったクソ野郎はよ」
 視線をぎらつかせるハジャを前に、キアラが取り出したのは古びた白黒写真だった。
 そこには草原に立つ数名の男女が写っている。見知った顔はなかったが、お目当ては右端に立つ男。
「ネストル・アサエフ。元帝国軍第一師団所属、最終階級兵長。革命戦争ではヒルデブラント・ウランゲルと共に戦った一人。もう50代だね」
 写真を指先で摘み、ハジャは目を細める。
 ヒルデブラントは革命戦争で帝位を簒奪した英雄にして独裁者。徹底した貴族主義の排除と歪虚への抗戦を唱えた革命王。
 そればかりが目立つが、実際の功績は別にある。それまで亜人を冷遇していた帝国から人種差別を取り払おうとした事。戦争直前の状態にあったエルフハイムと不可侵条約を結び、師団長にエルフを任命したのも彼だ。
「お前の雇い主、ヴィルヘルミナの親父か」
「直に話してわかった。彼女も革命家の血を引いているね。尤も、今はそれどころじゃないけど……」
 話を戻そう。そう言ってキアラは腕を組む。
「革命戦争が始まる前、エルフハイムと帝国の関係性は最悪だった。尖兵同士の直接的な戦闘行為すらあったくらいだ。帝国……人間はエルフの森を、都合のいい資源としか考えていなかった」
 件の事件の正確な発生日を二人は知らないが、これまでの情報から推理するに恐らく十数年前。革命戦争が始まる直前。
「その頃、エルフハイムではようやく維新派という考え方が広まりつつあった。それもこれも、“人間との戦い”の結果さ」
 歪虚、そして人間の侵攻に無抵抗だった者達の中から、運命に逆らおうと言う考え方が生まれ、その当時、大きく拡大した。
「俺もガキの頃だが知ってるぜ。維新派が盛り上がったのには理由がある。“帝国と和平を結べるかもしれない”という噂が流れたからだ」
「けど、それが失敗してあの事件が起きた。真相はわからないけど、人間と手を組んだアイリスが器を持ちだそうとしたという噂が流れた。結果として、維新派は大きく後退する事になった」
「今や維新派はユレイテルの下で勢力を大きく拡大してる。その十……六年くらい前だったか? の事件のことはすっかり忘れられてるな」
「その後、エルフハイムでの緊張は高まり、革命戦争で帝位が簒奪されるまで一触即発の状態が続いた。それを丸く収めたヒルデブラントの手腕は大したものだね」
「それよりこのネストルって男だ。元第一師団なのにヒルデブラントについたってことは、皇帝を裏切ったのか」
「裏切らざるを得なかったのかもね。自身の失敗を隠匿する為に……」
 そう言ってカップを傾け、キアラはびっしりと書き込まれたメモの束をテーブルに晒す。
「単刀直入に言う。僕と取引しないか、ハジャ」
「おい、勿体つける気か!?」
「僕はアイリスを陥れた奴を絶対に許さない。無論簡単には殺さない。僕らの森を穢した罪の重さを思い知らせ、生まれてきたことを懺悔させてやる」
「ほーん、大まかには同意だ。で、こいつはどこにいる?」
「探してる最中だ。だから手分けをしよう。こいつは今、反政府組織……ヴルツァライヒに属している。別件の……人身売買と武器の密輸で帝国軍が捜査している。こいつを締めあげて、本当の事を吐かせてやる」
「んだよ。真実に至ったんじゃねぇのかよ?」
「断片的な情報をまとめているだけだ。最終確認は本人からする。僕は想像の中でこの件を終わりにする気は全く無い」
 二人の間に重い沈黙が広がる。が、おもむろにハジャが片手を上げ。
「悪いなねーちゃん、コーヒーおかわり!」
「僕にも紅茶をもらえるかな?」
 二人はニコリとウェイトレスに微笑んだ。
「こいつから締めあげた情報を俺は利用するぜ?」
「構わないよ。どちらが捕まえても情報は共有。こいつを殺すのは二人が一緒にいる時だけにしよう」
「おめーその約束守れんのかよ……」
「守るさ。僕も少しは――大人になったからね」
 おかわりを飲み干して二人の男は席を立った。正反対の、しかし同じ道を歩むために。

解説

●目的
ネストル・アサエフを探せ!


●概要
おっす! 知っている人も知らない人もお待ちかね、ハジャでーす。
さて、今回の依頼は俺と共同戦線だ。本当はもう一人協力者がいるが、そいつは別のアジトをあたってる。
反政府組織ヴルツァライヒって覚えてるか? ちっと前に一花咲かせてそのまま散っちまった犯罪者どもだ。
今も残党がしぶとく悪事をやってるらしい。その中の一人に用があってな。
ネストル・アサエフというジジイだ。こいつを捕まえたい。
ネストルは既に帝国軍の捜査を逃れる為に各地を転々としている。
帝国軍がその潜伏先と思しき場所を発見、突入するのは俺らの仕事ってわけ。
見た目はただの小さな廃村だが、地下に売買する人間を閉じ込めるデカめの牢獄があるらしい。
もしまだ捕まってるヤツがいるなら保護するぞ。
で、歪虚が警戒してる。って事は歪虚を操れる奴が居る。契約者ってやつだな。
人質を取られると面倒なので、先に開放したほうがいいかもしれんが……ま、そこはあんたらに任せる。
ネストルが居た場合、殺さず確保だ。そういう意味でも、騒ぎは最小に抑えたいところだな。


●敵情報

「ネストル」
高齢の元軍人。革命の英雄、裏切りの騎士。
詳細は不明。

「契約者」
ゾンビを操れる装置を持ってる契約者。
詳細は不明だが、ネストルはエルフの部下を好むという噂。

「ゾンビ兵」
帝国軍の軍服を来たゾンビ。剣や銃で武装。
廃村のあちこちに立って見張っている。見つけた敵を攻撃する程度の知能。
契約者が操っているからおとなしく見張っているが、制御が外れると暴走する。


●友軍情報

「ハジャ」
疾影士。徒手格闘で戦う暗殺者。
かなり強いし頭もキレるので、アテになる。
可能な限りゾンビ兵を無視して地下を目指す。

「人質」
というより捕まっている人達。
ネストルはエルフ専門のブローカー。
故に捕まっているのは全員エルフである。
地下牢にだけ捕まっている。他の場所を探しても意味は無い。

マスターより

お世話になっております、神宮寺です。

というわけでアイレポの続き。ハジャとキアラの共闘編です。
ネストルはハジャやキアラが霞む程度のゲス野郎ですが、殺さないでください。
本格的な戦闘が始まるとネストルは逃げる準備を始める為、基本的にはスニーキング推奨です。
ただ、場合によっては派手に戦った方がよい可能性は否定しません。

それではよろしくお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/06/05 20:16

参加者一覧

  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • 大いなる導き
    ジェールトヴァ(ka3098
    エルフ|70才|男性|聖導士
  • 運命の回答者
    リサ=メテオール(ka3520
    人間(紅)|16才|女性|聖導士

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジュード・エアハート(ka0410
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/05/26 08:19:23
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/21 00:45:50