「っと、こういう時こそ、儲け時……ってな」
　海上。
　歪虚『狂気』が撃破され、ある程度の平静は海域に戻ってきた。だが、その残党が駆逐されつくしたわけではなく、またそれとは関係のない脅威もまた、無いとは限らない。
　海は、未だに危険である。

　そんな中、一隻の商船が、その海を移動していた。
「船長、本当に大丈夫なんですかい？歪虚どもが襲ってきたら――」
「バカだなぁ。こういう時こそチャンスなんだよ」
　心配そうな部下の一人に、船長と呼ばれた男はそう返す。

「希少なもんは高く売れる。そういうもんだ。今回は別の依頼人から、たっけぇ金額での運搬依頼もあったしな。その荷物が、たった一つの小さな箱。儲けもんだ」
「……船長。ここに居るのは全員身内です。そういう建前は――」
　船室の積荷。その厚い布の下にあったのは……彼らが言う『箱』以外にも、多くの食料と、薬品。

「ああ、そうだな。ここでかっこつけてもしかたねぇか。…そうだよ。こんな時だからこそ、俺たちは、俺たちの故郷を見捨てるわけにはいかねぇ」
　タバコに一本、火をつける。
「あの箱の依頼人が護衛にハンターたちをも呼んだし、そいつらの仲間たちが大規模な作戦を展開して歪虚を駆除してるって話だ。俺たちがそう、運悪く遭遇する可能性は――」

　――ズズーン

　鈍い音と共に、大きく船が揺れる。
「どうした！」
　駆けつけたハンターたちを手で制しながら、船長と呼ばれた男は叫ぶ。
「分かりません！何かが横からぶつかったようで――ひ、ひぃ！？」
　ザシュ。
　肉を切り裂く音と共に、彼に答えた声は途絶える。
　すぐさま、ハンターと甲板に居た三人の男は、その理由を悟る。

　――水中から跳躍し、甲板へと次々と魚人が着地する。
「ちっ……」
　船長の『理屈』は間違っていなかった。ただ、運が悪いと言わざるを得ない。
　その残った僅かな『狂気』の眷属は、彼らを狙ったのである。

「おい、てめぇら！」
　乱暴な言葉は、余裕のなさからか。
「俺たち誰か一人でいい！操舵室まで送り届けてくれ！　下に居るだろうデカブツを……振り切ってやる！」

依頼目的は以下です。
・船が轟沈する前に、甲板に居る三人の内誰か一人を操舵室まで送り届ける事
・上記完了後、皆様が全滅せずに船に取り付いた魚人型歪虚を一掃する事
・積荷の内『欠片の箱』を奪われない事
尚、上記さえ満たしていれば、『失敗』になる事はございません。他の状況がどうなろうとも。

甲板の三人の男は船乗りだけあって腕っ節は強いですが、所詮は一般人。
皆様の初期位置は彼らの直ぐ付近となります。
直ぐ後ろは船室への入り口。階段の下に扉があり、それを船室の中から押さえつける形で残りの船員が歪虚の侵入を防ごうとしております。船室内の積荷には『欠片の箱』（歪虚の負のマテリアルに汚染され、辺境の巫女に浄化を依頼された物の一つ）も含まれております。
目標である操舵室は前方30スクエア先にあります。

敵は大量の魚人。力こそそれ程でもないものの、狂気の眷属だけあって痛みを感じず恐怖もなく、ただひたすらに捨て身で攻撃してきます。また、操舵室に男たちの誰かが到着するまでは次々と水中から飛び上がって着ます。（ターンごとに4-5体、初期10体）
水中では2Tに1回、大型歪虚の体当たりにより船がダメージを受け、戦闘開始から（オープニング中のはカウントしません）計8回目の体当たりで船は沈みます。
（この大型歪虚の正体は完全に不明で、魚人たちと違い狂気の眷属であるかどうかすら不明瞭です）

男たちが操舵室に辿り着いた次ターン、船は大きく加速し魚人の約半分を振り落とします。
以降、掃討戦となります。

尚、水中に落下した場合ですが…男たちは落水者一人につき一人、水中へと皆様を救助しに向かいます。

どうも、剣崎です。今回は【深棲】と新シリーズ【夜煌】の繋ぎに該当するシナリオですが、難易度高めでお送りしております。
しっかりとした知略を、力を以ってしないとクリアする事は難しいです。

命を落とす事を恐れぬ兵がどのような手を取るか、よく、お考えください。
何を取り、何を捨て、何を達成するか――己の力量と。知略とご相談して、確認してみてください。