• 無し

天声降り注ぐ朱の夜に

マスター:真柄葉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
サポート
現在0人 / 0~5人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/07/20 09:00
リプレイ完成予定
2016/07/29 09:00

オープニング


 天雲赫月の刻。
 緑繁茂する頂に、警世の徒、降り立ちて、賢たる畏人へ九星の釼を与えん。

●バ族の集落
「本当にやるのか?」
 滴る肉汁を舌で掬いつつ、少し焦げた腿へ齧り付いた。
「……んっ」
「……お前、事の重大さをわかってるんだよな?」
 呆れるままに肩を竦めた男は、手遊びしていた小枝を焚き火へ放り投げる。
「伝統だから。私達の代で途絶えさせるわけにはいかない」
 暗い満天へ舞い上がる火の粉を目で追い、夜空を見上げた。
「途絶えさせるわけには……ってな、そもそも今まで途絶えてたんだぞ。今更復活させる意味があるのか?」
「……関係ない。伝統を守るのが、この部族に生まれた者の使命だもの」
 湿樹の爆ぜる音と虫の音が織りなす静の音楽に、隣の男の溜息が混じる。
「……前にこの儀式が行われたのが24年前だ」
 しばらくの沈黙の後、口を開いたのは隣の男だった。
 淡々とした口調で語られていく、集落に今もなお口伝される惨劇の様子。

 儀式自体は、豊穣と繁栄を願い行われるどこの集落にもあるようなありふれた物で、中断されるまでは数年間隔で開かれていた。
 その年も代表に選ばれた若者が意気揚々と祭壇のある丘へと供物を持ち、村を発った。
 そして――。

「――いつになっても若者は戻らず、心配した村人10人が捜索に向かい……その10人も戻らなかった」
 男がこちらに体を向けたのがなんとなくわかった。
「うちの親父なんて、酔うといまだにその話をしてる。いや、あの事件を知っている皆が、今だにその話をする」
「……」
「スォンク、なんでだ? もう何十年も行われてない儀式に、なんでそんなに執着するんだ」
「……テイフ。私がその理由を話さなくても、あなたにもわかっているでしょう?」
「……」
 沈黙の内にテイフと呼ばれた男の気勢がしぼんでいくのが気配でわかる。
 彼もわかっているのだ。この儀式が集落に何を齎していたのかを。
「24年。この集落に起こった事をあなたも知っているでしょう? 寒波、洪水、飢饉、疫病……この20数年、いったいどれだけの厄災がこの集落にやってきたかを」
「そ、それは……。だけどな、それは……それが儀式と関係あるなんて誰が証明できるんだ? それに……もう、あの場所は昔みたいに儀式が行える様な安全な場所じゃないんだぞ!」
「それでも行くの! ここは私の……私達の集落なんだから!」
 満天の星空の元、スォンクは揺らめく炎に照らされた幼馴染の眼をようやく見つめた。
「……親父さんの事で責任を感じてるのか?」
「っ……。父の事は関係ない。そもそも顔も覚えてない」
 重ねていた視線を思わずそらしてしまう。
 24年前、最後の儀式の徒として選ばれたのが、スォンクの父親だった。
 スォンクの父親は、名誉ある儀式の徒として丘へと赴き、そして、それがあの悲劇の引き金となった。
「あれは事故だ。叔父さんのせいじゃない。お前が責任を感じる事なんて何もないんだ……」
「だからっ! ……だから父は関係ない、の。ただ、この集落が滅んでいくのを黙って見ていることが……できないだけ……」
 声がしぼんでいく。それが何を意味するのかを、幼馴染はわかっているのだろう。
「歪虚がいるっていう噂もある」
「もう何年も前にハンターが退治してる」
「そ、それでも! もし……もしもだ。歪虚がい――」
「いない! もう……もういないの……」
 遮られるままにぽかんと口を開けスォンクを見つめるテイフ。
「お、お前泣いて――」
「泣いてない!」
 大きく見開いた瞳の奥に、隠しきれないものが揺らめいているのが自分でもわかった。
「お前の気持ちはわかってきたつもりだ。だけど……」
「だけども何もないの! ずっと……ずっと、この時を待っていたんだから!」
 それでも、これだけは譲れない。
 幼いころからずっと、この儀式へ参加できる資格を得る年齢を待っていた。
 だから、いくら幼馴染であり、ほとんど兄妹の様に育ってきたテイフの言葉でも、諦めることは出来ない。
「……」
 自分の頑固っぷりは、彼が一番よく知っている。
 だから、引き止めないでほしい。これ以上、邪魔をしないでほしい。
 まだ言葉を重ねてくるのなら、口にはしたくない汚い言葉を吐かなければならない。
「……わかったよ」
 そんな決意をわかってかわからいでか、テイフが折れてくれた。
「説得は諦めた。お前の聞き分けのなさは理解してるつもりだ。だから、これはお願いだ。……必ず帰って来いよ」
「……うん」
 爆ぜて舞い上がる火の粉が消え入る様に、スォンクの返事も暗い夜空へ溶けて消えた。

解説

●目的
 長年行われていなかった儀式を行う対象を、隠密裏に護衛する事です。

●人物
 スォンク:26歳。女。真面目で頑固、曲がった事は大嫌い。その為か、同年代との交流もあまりなく、集落の中でもやや浮いた存在。今回24年ぶりに開催される伝統の儀式に並々ならぬ執着を見せています。果たして、その胸に秘めたる想いや――。

 テイフ:スォンクと同じく26歳。男。従兄にして幼馴染。集落の中でも孤立しがちなスォンクの事を何かにつけて気にかけています。今回の依頼主も彼になります。

●場所
 集落から徒歩で3日ほど行った先にある、小高い丘。
 背の高い木は生えておらず、足の長い下草に覆われています。
 また、3mを越える大きな塚が至る所にあります。
 さらに丘には大人一人がすっぽりと入る程の大きな穴が無数に開いています。
 穴は長い下草に隠されていて、注意深く探さないと発見するのは困難でしょう。

●補足
・依頼は隠密裏に護衛という事ですが、目的を悟られなければスォンクに接触しても問題ありません。
・冒頭の伝承は、古くから伝えられるものです。しかし、伝承の意味はよくわかっておらず、惨劇以前の儀式でも供物を捧げて終わりでした。
・惨劇にあった場所にいた歪虚は、数年前にハンター達の手によって討伐されています。討伐以降、現在までは歪虚の存在は確認されていません。
・儀式は必ず一人で行うのが決まりです。

マスターより

はじめまして、又はご無沙汰しております、真柄 葉(まがら よう)と申します。
WT8終了後、MS業務から遠ざかっていたのですが、この度、縁がありましてWT10のMSとして復帰させていただくことになりました。

復帰第一弾は、少しひねりを利かせた護衛シナリオになっております。
廃れてしまった儀式に並々ならぬ思いを抱く女性を護衛してあげてください。

それでは、皆様のご参加お待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/07/25 06:23

参加者一覧

  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • 黎明の星明かり
    マチルダ・スカルラッティ(ka4172
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 三千世界の鴉を殺し
    連城 壮介(ka4765
    人間(紅)|18才|男性|舞刀士
  • 剣心一撃
    クライヴ・バンフィールド(ka4999
    人間(蒼)|35才|男性|舞刀士
  • 機知の藍花
    静玖(ka5980
    鬼|11才|女性|符術師
  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥(ka6258
    エルフ|14才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
雨を告げる鳥(ka6258
エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/07/20 06:08:17
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/07/16 03:29:36