• 調査

小さい手が求めるもの

マスター:真柄葉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
サポート
現在0人 / 0~5人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
プレイング締切
2016/08/10 12:00
リプレイ完成予定
2016/08/19 12:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

●ノアーラ・クンタウの下町
「おかあさん」
 台所からは包丁がまな板を叩くリズミカルな音が聞こえてくる。
「ねぇ、おかあさん」
 今度はぽちゃぽちゃと鍋に材料を放り込んだ水音が聞こえた。
「おかあさんってばっ!」
 窓辺から動かず、少女は台所に向かって叫ぶ。
「うんー? なぁに?」
 そうしてようやく気付いてくれたのか、ドアの縁からお玉を装備した母親が顔を覗かせた。
「ひょろいないよ?」
「ひょろ? ああ、あのおじいちゃんね」
 エプロンで洗った手を拭きながら母親は少女の隣までやってくる。
「あら、ほんと居ないわね。いつもこの時間にはそこで大欠伸してるのにね」
「ねぇ、おかあさん。ひょろはなんでいないの?」
 少女の大きな瞳が不安で揺れる。
「そうね、お散歩にでも行ったのかもしれないわね」
「おさんぽ……?」
「そう、おさんぽ。カンナも大好きでしょ? おさんぽ」
「うん、すき!」
「それじゃ、さっさとご飯を食べてしまって、お散歩に行きましょうね」
「いくっ!」
 母親の巧みな誘導に気をよくした幼いカンナは、嬉しそうにテーブルへと走っていった。

 それから何日も過ぎた。
「おかあさん」
 今日も変わらない包丁のリズム。
「ねぇ、おかあさん」
 コトコトと煮えるシチューが放つ芳醇な香り。
「おかあさんってばっ!」
「はいはーい、どうしたの?」
 のんびりとした返事を返し、母親が間口から顔を覗かせる。
「ひょろ、きょうもいないよ……?」
「うーん、どうしたのかしらねぇ。散歩コースを変えちゃったのかしら」
「どこにいっちゃったの?」
「どこかしらねぇ……あのおじいちゃん、気まぐれだし。そのうち帰ってくるんじゃない?」
「そのうちっていつ? あした? きのう?」
「昨日はもう過ぎちゃったから、明日かな?」
「あした!」
「うん、明日。だからご飯にしましょ」
「はーい!」
 カンナは母親の手招きに答えるように台所に走って向かった。

 再び日は変わり。
「おかあさん!」
「はいはいー」
「ひょろいない!」
「あらぁ、今日もいないの?」
「いないの! あしたいるっていったのに!」
「そうだったかしら……?」
「いったもん!」
 早めの朝食を終え、母娘二人窓から外を眺める。
 鉱山へ向かう男達が大きな声で談笑しながら闊歩し、家を預かる女達は家事に勤しむ。そんな何十年も前から続けられる日常が今日もそこにあった。
「うーん、いないわねぇ」
「うぅ……」
 大きな瞳に涙を浮かべ下唇を突き出して俯くカンナ。
「カ、カンナ……?」
 爆発寸前のカンナに、母親も気が気でない。
「……ちょっとおでかけしてくるっ!」
 何か決意に満ちた声でそういうと、カンナは台にしていた椅子から飛び降り、駆け出した。
「え、ちょっと!? カンナ!?」
 呆気にとられる母親は、バタンと勢いよく閉められた戸を呆然と見つめた。

●ハンターオフィス出張所
「はい、次の人ー」
 どんと確認印をつくと同時に、受付嬢は次の客に向かうべく顔を上げた。
「これくださいっ!」
「はい、こちらですねーーーって、あれ?」
 しかし、目の前には誰もいない。
 受付嬢は空耳だったかと首を傾げ、次の客を呼ぼうとした。
「これ、くださいっ!!」
「え……?」
 再び響いた声に、受付嬢ははっと視線を落とす。
 そこには決意に満ちた大きな瞳。そして、小さい手に握られているのは、まだ何も記入されていない依頼募集の用紙だった。

「――なるほどね。話は分かったわ。お姉さんに任せておきなさい」
 少女の話を親身に聞いた受付嬢は決意に胸を叩く。
「いいの?! ありがとう! これおかね!」
 そう言って今度は、小さな小さな袋が机に載せられた。
 いったいどれくらいの頑張りによってその小袋は膨れているのか。
 受付嬢はそれを想像し、自然と表情が緩む。
「……ううん、これは持って帰ろうね」
「なんで?」
「いいからいいから。それはあなたの大事でしょ?」
「うん、だいじ!」
 手の中の宝物を大事に抱え、誇らしげに微笑むカンナに、受付嬢も笑みをこぼす。
「ちょっと待っててね。きっと誰か手を上げてくれるから」
 そう言って、ぽかんと口を開ける少女を残し、受付嬢は掲示板の前でたむろするハンター達の元へ足を運んだ。


解説

●目的
行方不明になった野良猫を見つけ出してください。

●人物
ひょろ:
カンナが名付けた老猫。その名の通り痩せた老猫で、目の色は金、毛色は灰色で手足の先だけ白いです。
どこかの飼い猫ではなく、この下町全体を縄張りにしており、住人からもよく知られた長老猫。
人をからかって遊んだり、舐めたような態度をとる気まぐれな猫さん。

カンナ:
今回の依頼主で5歳になる女の子。下町に住む鉱山労働者一家の娘さん。

●場所
ノアーラ・クンタウの下町の一つで、出稼ぎや避難民達が暮らす雑多な街。増築につぐ増築で、街は迷路のようになってます。

●目撃場所

民家:
狭い下町で居住スペースを確保する為、上へ上へと建て増しされた住居群。
密集した住居の屋根の上が老猫の移動ルートになっているようです。

噴水:
時々気まぐれのように水を吐き出す壊れた噴水。
噴水の縁で昼寝をしている姿がたびたび目撃されています。

酒場:
下町にある酒場の一軒。
ここの味が気に入っているのか、よく残り物を拝借に来ていたそうです。

墓地:
街の一角にひっそりと佇む小さな墓地。
墓標の上で日向ぼっこしてる姿が目撃されています。

教会:
下町の一角にあるエクラ教の小さな教会。
夕暮れ時になると、鐘楼の上でどこか遠くを眺めているそうです。

●補足
・依頼主が依頼主なので、報酬金額は寸志となっております。

マスターより

お世話になっております。真柄 葉(まがら よう)と申します。
今回のシナリオは、小さな女の子が持ち込んだ小さなお願い。

小さい子供には大人には無い何か特殊な能力があるのかもしれません。
うちの娘もたまにどことも知れぬ方を見て、何とも知れぬ会話をしていることがあります。
そこに何かが見えるのかもしれませんね(ホラー感

それでは、お気に召しましたら、ご参加お願いいたします。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/08/15 23:23

参加者一覧

  • オキュロフィリア
    アクアレギア(ka0459
    ドワーフ|18才|男性|機導師
  • 献身的な旦那さま
    テオバルト・グリム(ka1824
    人間(紅)|20才|男性|疾影士
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 淡光の戦乙女
    セレスティア(ka2691
    人間(紅)|19才|女性|聖導士
  • 憂う友の道標
    紅咬 暮刃(ka6298
    人間(紅)|17才|男性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/08/09 08:47:44
アイコン 猫探し
テオバルト・グリム(ka1824
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/08/10 11:09:39