• 戦闘

狙撃手に狙われた町

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/10/13 15:00
リプレイ完成予定
2016/10/22 15:00

オープニング

 辺境の山間の町フーディンではフルディン族の新族長就任式がしめやかに行われていた。
「汝を次代族長と成す」
 前族長のヴィブが厳かに告げ、長男のフルディンの頭に儀礼冠を被せた。
「おめでとう兄上!」
「おめでとう兄様!」
 次男のヴィオル、長女のスズリ、そして多くのフルディン族が祝の言葉と共に拍手を送った。
(遂に僕が族長に……)
 フェグルの胸に深い感慨が沸き起こる。
 幼い頃から病弱で身体が弱く、族長になる事は無理だろうと諦めた事もあった。
 それでも一族の者として務めを果たせるよう出来る限りの努力は欠かしてこなかった。
 それらは無駄ではなかった。
 それらが報われ、活かす時が来たのだ。
 ヴィブの前に跪いていた身を起こし、一族の方を向く。
 皆が新族長の言葉を待っていた。
「僕は……ごふっ」
 変な咳が出た。
 何かが喉の奥から込み上げてくる。
 耐えきれずに吐き出たそれは手を真っ赤に染めた。
 血だ。
「ごほっ!」
 再び咳が出た。
 更に血が溢れる。
(これは……)
 フェグルには見慣れたものだが、これほど大量に吐いたことは今までない。
「兄様!」
「フェグル!」
「兄上ー!」
(何故、こんなタイミングで……)
 会場が騒然となる中、フェグルの意識は急速に遠のいていったのだった。
 
 倒れたフェグルはすぐ病院に運ばれた。
 診察の結果、病が急速に悪化している事が判明する。
 持って3年。
 早くて半年。
 それがフェグルに告げられた余命だった。
「3年から半年……たったそれだけなのか」
 ヴィブは息子の余命の短さに愕然とした。
「兄上が……死ぬ?」
「嘘よ! 兄様が死んでしまうなんて……そんなの嘘ぉー!!」
 弟のヴィオルは呆然となり、妹のスズリは泣き崩れた。

 翌日、ヴィブはヴィオルとスズリ、そして部族の有力者を集めた。
 もちろん次期族長をフェグルに任せるかどうか話し合うためだ。
 だが話し合う前から今のフェグルに族長が務まらないのは誰の目にも明らかである。
「ヴィオル、お前が次期族長だ。よいな」
 だからヴィブがそう告げても誰も異を唱えなかった。
 唱えられなかったというのが正しいだろう。
「……はい」
 ヴィオルは胸の内で複雑な思いを抱きながらも受けた。
 受けるしかなかった。



 そんな騒動のあったフールディンの町から東に5km程離れた場所にも鉱山の町『デル』がある。
 デルはフルディン族が難民部族が暮らすために作った町だ。
 辺境では少数部族が町や土地を歪虚に奪われる事が往々にしてあった。
 フルディン族はそんな少数部族のためにデルの町を作って受け入れた。
 そして住む場所を与える代わりに労働力を要求したのである
 フルディン族は労働力を得られ、難民は住処と働き口と賃金を得られる。
 両者はそうして良好な関係を築き、問題なく暮らしていた。

 しかしデルの町で最近、人が無差別に殺される事件が起きていた。
 町を歩いている女性。
 鉱山で働いている男性。
 井戸で水を汲んでいる老婆。
 追いかけっこをしている男の子。
 場所、年齢、性別は様々であったが、どこからともかく狙撃され、殺されたのだ。
 町は恐怖に包まれ、町長はすぐに自警団の団長の『葛葉次郎』に対処を命じた。
 次郎は44歳の元ハンターだ。
 リアルブルーからの転移者で、転移直後に歪虚に襲われ、訳の分からぬまま戦い、傷つき、死にそうになっていたところをアリサという女性に救われる。
 それからはハンターとして暮らし、後に命の恩人であるアリサと結婚。
 子供は残念ながらできなかったが、妻を溺愛している次郎は幸せだった。
 そして余生を過ごせる程の蓄えが出来たのでハンターを引退し、妻と静かに暮らしていた。
 だが、ハンターの頃からの旧友であるフルディン族の族長ヴィブから、ぜひ団長にと請われ、妻と共に転居。
 この町を作る際には周辺に生息していたゴブリンや歪虚をほぼ1人で退治しており、今でもハンターとしての力は衰えていない古強者である。
 そのため住人の皆に頼りにされており、今回も次郎が何とかしてくれると期待されていた。

 次郎は団員を山の各所に配備した。
 これで犯行自体が行われなくなる事も期待したが、狙撃は行われた。
 次郎は弾丸を撃たれた角度から相手の位置を割り出し、急行した。
 だがこの町は作られて間もなく、町の周囲の開拓はあまり進んでいないため木が生い茂って深い森になっている。
 どうしても現場に着くには時間が掛かってしまう。
 そして到着した現場にあったのは、返り討ちにあって惨殺された団員の死体だった。
 団員の傷跡から犯人はかなりの剣の腕前の持ち主だろうと推測できた。
 少なくとも非覚醒者では相手にならないだろう。
 これでは団員に山を見張らせても犠牲者が増えるだけだ。

 自警団員まで殺されたと知れると、住民達は家から出る事を恐れ、街中には人気が絶えた。
 鉱山に足を運ぶだけでも命懸けとなり、鉱夫の足も鉱山から遠のき、鉱物性マテリアルの発掘も滞り始める。
 事態を憂慮した町長は、犯行が主に昼間だけだった事を理由に鉱山の作業は夜に行う事とした。
 だがそうすると今度は夜道に鉱山に向かう途中、明かりを狙って撃たれ、また死者が出た。
 そうなるともう働く鉱夫はいなくなり、鉱山は完全に止まった。

「情けない! 古強者と煽てられておきながらこの様だ……」
 次郎は自宅で自らの力のなさを嘆いていた。
「ジロー、1人で悩まないで、あなたはよくやってるわ」
 妻のアリサが次郎の肩にそっと手を添え、次郎も自分の手を重ねる。
 手から妻の気遣いと優しさが伝わり、心が少し落ち着いた。
「犯人は町の人間を数人殺しただけで鉱山の機能を完全に止めた。おそらくこれが狙いだろう」
「でも、鉱山を止めてどうするつもりなのかしら?」
「どこか別の採掘場業者の仕業か。もしくは……歪虚か」
「歪虚!?」
「可能性がない訳じゃない。とにかく相手が何者だろうと排除する事に変わりはない」
「どうするつもりなの?」
「ハンターの手も借りるしかないな。ハンターオフィスに行ってくるよ」
「そうね」
「……すまない」
 次郎は不意に沈痛な面持ちで妻に詫びた。
「何を謝ってるの?」
「自分がこの町に来る事を承諾したため、君をこんな血生臭い事に巻き込んでしまった。やはりあのまま静かに暮らしていればよかった」
「何言ってるの。私この町気に入ってるわよ。住人はみんな良い人だし。食べ物は美味しいし。だからあなたは自分の役割を全うする事を考えて」
「ありがとう。もし君に危害が及ぶような事があっても俺が必ず守る」
「うん。お願いね。私のナイト様」
「あぁ、俺の命は君のためにある」
「それ、出会った時からずっと言ってるわね」
「あの頃からずっと君を愛しているからな。もし世界中を敵に回す事になったとしても、必ず君を守るよ」
 次郎は結婚して20年以上経っても妻への愛が変わらぬ男だった。

解説

目的:町を狙撃している敵を見つけ出して排除する

敵は町の周囲に群生している森のどこかから狙撃を行っています。

依頼者で元ハンターの葛葉次郎は町で囮役を行います。
機導師で所持スキルは『ジェットブーツ』『超重練成』『攻性防壁』
武器はツヴァイハンダー
次郎も敵の位置が判明すればそこに向かいますが、ハンターより到着は遅れます。

ハンターは以下のA~H地点のいずれかに潜伏し、敵の狙撃地点が判明し次第急行してもらいます。

A:町から北に200m
B:町から北東に200m
C:町から東に200m
D:町から南東に200m
E:町から南に200m
F:町から南西に200m
G:町から西に200m
H:町から北西に200m
AB間:160m
AC間:300m
AD間:360m
AE間:400m
AF間:360m
AG間:300m
AH間:160m

森の中は高さ1m程の草が生い茂っています。
馬やバイクでの移動は不可能です。
木々の幅が2m未満の場所が多く、長物の武器だと扱いづらい場合があります。

毎ターン、ファーストアクション時に1度『直感×2』以下で成功の判定ロールを行い、成功すれば敵を発見できます。
距離によるマイナス修正あり。
索敵に関連しそうなスキルによるプラス修正可能。


以下、PL情報

敵の出現位置は不明ですが、各ハンターの待機位置より町寄りに出現します。

敵は2人いて、東西2箇所に分かれています。
(注:ハンター側は敵の数を把握していません)

東寄りの敵
・甲冑歪虚
2m足らずの甲冑の歪虚。
装備は狙撃銃と長剣。身の丈ほどの盾。(盾の裏には隠し武器もあり)
会話可能。
倒してもすぐに同じ姿をした甲冑歪虚が現れます。

西寄りの敵
・16歳くらいの少年
装備は狙撃銃、拳銃、短剣、手投げ弾、煙幕。ギリースーツ。
ハンターに見つかったと分かると逃げます。
危険になると甲冑歪虚が援護に来ます。

何か質問がある場合はNPCのハナ・カリハにお尋ねください。

マスターより

辺境の鉱山町『フールディン』とその周辺を舞台とした地域密着型シナリオの第三弾です。
前回のシナリオのタイトルは『ドワーフ少女と宝石強盗』です。
今回のメインはフルディン族一家ではなく、元ハンターの葛葉次郎とデルの町、そして新たな敵です。
新たな敵と言いつつも片方は見覚えのある人もいるかもしれませんね。
ちなみに敵の少年は、とある理由からリアルブルー出身の覚醒者を酷く憎んでいます。
そのため彼に「リアルブルー出身か?」と尋ねられる場合がありますので、リアルブルー出身者は素直に答えるかどうかもプレイングに書いておいて下さると凄く助かります。

それでは皆様のご参加お待ちしております。

関連NPC

  • ハンターオフィス職員
    ハナ・カリハ(kz0194
    人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/10/20 19:48

参加者一覧

  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 特務偵察兵
    水城もなか(ka3532
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 狭間へ誘う灯火
    レオナルド・テイナー(ka4157
    人間(紅)|35才|男性|魔術師
  • 飢力
    不動 シオン(ka5395
    人間(蒼)|27才|女性|闘狩人
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめ(ka5800
    鬼|23才|男性|符術師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/10/11 21:24:08
アイコン 相談卓
保・はじめ(ka5800
鬼|23才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/10/13 05:07:33
アイコン 質問卓
保・はじめ(ka5800
鬼|23才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/10/10 15:53:08