• 戦闘

決別のドワーフ兄弟

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/11/23 12:00
リプレイ完成予定
2016/12/02 12:00

オープニング

 アルナス湖から流れるアルナス川の河口付近の山間にある鉱山町『フールディン』。
 町で暮らすフルディン族の鉱夫達は新族長のフェグルによる鉄の増産計画で過酷な労働を強いられていた。
 しかし。
『鉄の増産によってフルディン族の生活はより良くなる』
 皆その言葉を信じて働き、新坑道も完成した。
 だが労働環境は改善せず、日々の暮らしも変わらない。
 そんな状況に住民達は日々不満を増大させていた。 

「フェグルは何を考えておるのか……」
 前族長でフェグルの父であるヴィブは住人の不満に対して頭を悩ませていた。
 そろそろフェグルが目に見える成果を出すか緩和策を行わないと大問題に発展しかねないからだ。
 その時、ドアがノックされた。
「あの……旦那様。おられますか?」 
 ドアを開けると、家で長らく家政婦兼乳母を勤めているマームが深刻そうな表情で立っていた。
「どうしたマーム?」
「少しお話が……」
「そうか。入りなさい」
「お話しすべきかどうかずいぶんと迷ったのですが……」
 部屋に入ったマームはしばらく躊躇った後、重い口を開いた。
「フェグル様は、その……歪虚と通じておられるかもしれません」
「何を馬鹿な! 何を根拠にそんな事を?」
 思ってもいない事を言われ、ヴィブは声を荒げた。
「フェグル様がまだ病気で伏せってらした頃、わたくしが夜半にフェグル様に薬をお持ちした時、扉越しでしたが聞いてしまったんです。『分かった。僕を歪虚にしてくれ』とハッキリおっしゃっているのを……」
「なんだと……」
「鍵穴から室内を覗くと、フェグル様が何か影のような物と話しているのが見えました。そしてその影がフェグル様の胸を穿って……」
 マームがその時の光景を思い出したのか身震いする。
「そして翌日からフェグル様は健康で力強くなられました」
「そんな、馬鹿な……」
 ヴィブは否定したが、声に力がない。
「わたくしも嘘だと信じたいです。ですが……」
「……」
 室内に重苦しい沈黙が流れる。
「……よく伝えてくれたマーム。この事はワシに任せてくれ」

 翌日、ヴィブはフェグルを訪ねた。
 しかし日が落ちてもヴィブは家に帰ってこなかった。

 更に翌日、今度はヴィオルがフェグルを訪ねた。
「兄上、父上が昨日から戻らないのだが、何か知らないか?」
「父さんなら旅に出たよ」
「旅?」
「あぁ、族長を僕に譲って身軽になったから、あちこちを回って来ると言っていたよ」
 嘘だと分かった。
 なぜならヴィオルは父からマームの話を聞いていたからだ。
 そして自分が戻らなければフェグルは歪虚である可能性が高いと言っていた。
 だから確信した。
 兄は歪虚なのだと。
 そんな確信などしたくはなかったというのに……。
「……そうですか」
 眩暈のする思いを抱えてヴィオルは執務室を後にした。
(どうしてこんな事に……)
 自分達の降り注いだ災厄を呪いながら。

 その夜、ヴィオルは頭を抱えて悩みこんだ。
 歪虚となったフェグルが何を企んでいるかは分からないが、それが町の住人にとって良い事である訳がない。
 一刻も早く対処しなければならない。
 しかしフェグルが歪虚だという確証はないし証拠もない。
(どうやって証明すればいいのだ? そもそも何故歪虚となった者が町で暮らせているのだ?)
 歪虚は常に負のマテリアルで周囲を汚染し続けるため、共にいれば自然と気づけるはずなのである。
(何か理由があるはずだ……)
 懊悩するヴィオルの脳裏にクズリ石のネックレスを首に掛けたフェグルの出で立ちが浮かぶ。
(あれか!)
 龍鉱石と同じ効果のあるクズリ石で負のマテリアルが周囲に漏れるのを防いでいたのなら辻褄は合った。

 翌日、ヴィオルは再びフェグルを訪ねた。
「兄上、今日は剣の稽古をつけていただきたく参上しました」
「剣の稽古?」
「という名目で、前回兄上に負けたのが悔しくてリベンジしたいのです」
「正直なヤツだな。まぁいいだろう」
 フェグルは苦笑しながら執務椅子から腰を上げた。
「では町外れの訓練場まで行きましょう」
 ヴィオルが促すと、フェグルは全身鎧を着込んだ5人のドワーフを連れてついて来た。
「その者達は?」
「私の近衛だ」
(全身鎧を着た兵など我が軍にいただろうか?)
 疑念を抱いたヴィオルは密かに近衛の者達を観察する。
 すると全員クズリ石のネックレスを身に着けている事に気づいた。
(まさかこの者達も!?)
 戦慄したヴィオルが息を呑む。
「どうしたヴィオル?」
「い、いえ、兄上との稽古を前に緊張しただけです」
 嘘や隠し事が得意ではないヴィオルはそう言って何とか誤魔化した。

 訓練場に着くと、ここに来るまでの間に自分達を見かけた住人達の口伝で噂を聞きつけたか、それなりの数の観衆が集まっていた。
(あまり集まられると困るのだがな……)
 もしフェグルが本当に歪虚だった場合、ここにいる住人達は危険に晒される可能性があった。
 一応、確実に信頼できる部下も連れてきているが、その数は少ない。
 フェグルが歪虚だと証明できたとしても、フルディン族の私設軍の兵をすぐに族長であるフェグルに反攻させる事は難しいからだ。
 そのため足りない分の人員はハンターを雇って補っていた。

 ヴィオルとフェグルが木剣を手に、訓練場の中央に立つ。
「いくぞヴィオル」
 フェグルが上段から鋭く打ち込んできた。
 ヴィオルは剣を掲げて受けたが、やはり重い。
 細身のフェグルが打ち出すのは異常とも思える重さだ。
 だが前回とは違い、フェグルの剣の重さと速さは分かっている。
 どうにか捌き、互角に打ち合えた。
 そして鍔迫り合いの形に持ち込む。
 木剣を挟んで眼前間近に精悍な兄の顔がある。
 歪虚などとは到底思えない。
(どうか……間違いであってくれ!)
 ヴィオルは万感の願いを込めて腕を伸ばし、フェグルのクズリ石のネックレスを掴んで引き千切った。
「なに!?」
 そして驚くフェグルを体当りして跳ね飛ばし、距離を取る。
「それが狙いだったのかヴィオル。お前にしては知恵を使ったな。それとも父さんに吹き込まれていたのか?」
 怒気を纏って睨んでくるフェグルからは負のマテリアルが漂っていた。
 生を否定し、全てを滅ぼす禍々しい気配が。
「兄上……」
 ヴィオルは愕然とした。
 信じたくなかった。
 だが厳然たる事実を目の前にしては信じるしかなかった。
「どうして歪虚などに……」
 ヴィオルが悲痛な面持ちで尋ねる。
「ヴィオル……健康な身体で生まれたお前に私の気持ちは分からない」
 フェグルはそう言い捨てると指笛を鳴らした。
「ヴィオルを捕らえろ!」
 そして後ろに控えていた近衛に命じる。
「兄上っ!!」
 この瞬間、ヴィオルは自分と兄の運命が完全に分かたれたのだとハッキリ知覚させられた。
「皆逃げろ!! この者達は歪虚だ! 兵は住人を守れ!」
 ヴィオルは周囲の者達に警告すると、短剣を抜いて兄だった者に突きつけた。

解説

目的:ヴィオルと住人を守る

場所は町の郊外の訓練場

ヴィオルは23歳のドワーフで、フルディン族の私設軍の長です。
短剣と皮鎧しか装備していません。
訓練場の真ん中に居いてフェグルと戦おうとしています。(見物客エリア中央から南に5スクエア)

10メートルの円形の訓練場は周囲を木製の柵で覆われており、柵の外側の見物客エリア(訓練場北側に左右5スクエア)に『見物に来た20名の住人』と『ハンター』がいます。
ヴィオルの連れてきた5人の兵士が柵の西外側(ヴィオルの位置から西に5スクエア)におり、見物客エリアに向かって走り出しています。

シナリオに参加するハンターはヴィオルに雇われており、見物人の中に紛れています。
ハンター達はフェグルが堕落者の可能性がある事を聞かされています。
見物客エリア内なら何処に居ても構いません。

敵は
・フェグル
・全身鎧姿の5人の兵士
・ワイバーン3体

フェグルは27歳のドワーフでフルディン族の長です。
病弱だったため細身ですが、今は堕落者です。
装備は木剣と皮鎧だけですが、魔術師なので魔法が使えます。
訓練場の真ん中にいます。(見物客エリア中央から南に5スクエア)

敵の兵士は標準的なドワーフサイズです。
訓練場の東の柵の内側に居て、ヴィオルに向かって駆け出しています。(ヴィオルの位置から東側に5スクエア)
全員歪虚の可能性があります。(PL情報)
1人だけ別格な強さの者が居ます。(PL情報)

ワイバーンは5ターン後に訓練場上空に現れて爆弾を落とした後、降下してきます。(PL情報)

20名の見物人は状況が理解できていないため動かず、兵士(もしくはハンター)に追い立てられるかワイバーンが現れてから逃げ始めます。


何か疑問や質問がある場合はNPCのハナ・カリハにお尋ね下さい。

マスターより

辺境の鉱山町『フールディン』とその周辺を舞台とした地域密着型シナリオの第五弾です。
前回のシナリオのタイトルは『ファイヤーレスキュー』です。

今回からフールディンでの問題が本格化し始めます。
起承転結で言えば『起』の終盤ですね。
なのでこれからは自然と戦闘シナリオが多くなってゆきますよ。

ちなみに、オープニングイラストは立派な闘技場ですが、シナリオ内の訓練場は木の柵で囲っただけのすごく簡素なものですよ。
イラストは単なるイメージですから。

それでは皆様のご参加お待ちしております。

関連NPC

  • ハンターオフィス職員
    ハナ・カリハ(kz0194
    人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/11/30 06:32

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • カコとミライの狭間
    ジョージ・ユニクス(ka0442
    人間(紅)|13才|男性|闘狩人
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめ(ka5800
    鬼|23才|男性|符術師
依頼相談掲示板
アイコン 打倒!偽兵士
コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
人間(リアルブルー)|25才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/11/23 00:15:25
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/19 17:38:36