• 無し

【空の研究】天駆ける紙の階

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在10人 / 6~10人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/05/12 12:00
リプレイ完成予定
2017/05/21 12:00

オープニング

 空の研究所・所長であるアメリア・マティーナ(kz0179)が、王国の危機に際した任務から戻ったのは、つい数日前のことだった。
 特に怪我はなかったものの、さすがに疲れ切っていたらしく、普段は寝食にかまうことなく魔法の研究に没頭しているアメリアが、そこからたっぷり二日間は寝て食べてまた寝る、という生活を送った。
 研究員であり医者でもあるキランと、事務職員のスバルの適切な対応も功を奏して、帰還から三日目にはほぼ通常通りのアメリアに戻った。
「面倒をかけましたねーえ。ありがとうございました」
 アメリアがふたりに礼を言うと、キランは白衣のポケットに手を突っ込み、逆立てた黄色い髪をひょこひょこと揺らしながら頷いた。
「まったくだぜ。留守番中、暇で暇でたまらなかったんだからな」
「はあ。それはすみませんでしたねーえ。しかしキラン、暇にまかせて何やら楽しい催しをしていたとも聞きましたが?」
「ぎく。……い、いやあ、それはさ、ちゃんと研究の一環だったんだよ」
 わかりやすく目を泳がせるキランに、アメリアは苦笑した。キランが謎解きと称したお茶会を開いていたことを、アメリアはちゃんと知っているのだ。
「まあ、そういうことにしておきましょうかねーえ。で? その研究は首尾よく行えたのですか?」
「えーっとぉ……」
「長い間留守番をしてもらったことですし、自分の研究のために少しばかり時間を使ってもいいですよ」
 アメリアが深くかぶったフードの下で微笑むと、キランは強張らせていた表情をパッと明るくした。白衣のポケットから手を出して、姿勢を前のめりにする。
「ほ、本当か!? ちょっと出かけても、いいか?」
「いいですとも。ただし、行き先と外出期間をきちんとわかるようにしておいてくださいねーえ」
「了解だ! 前々から採取に行きたい植物があってなあ、それを使って実験をだなあ」
「はいはい、わかりましたから」
 アメリアがひらひら手を振ってキランを遠ざける。キランはそれを少しも気にしたふうもなくスキップでもしそうな軽い足取りで旅支度に向かった。
「スバルくーん! 俺のリュックサックどこに仕舞ったっけ~?」



 そうしてキランが空の研究所を出発した、翌日のことだった。アメリア宛に、一通の手紙が届いた。差出人は『モーム倉庫管理事務所』。
「ははあ……。折角帰ってきたところだというのにねーえ」
 アメリアは手紙を読んで軽いため息をついた。スバルが紅茶を差し出しながら、どうしたんですか、と尋ねる。
「リンダールの森から一キロほど離れたところに、貸倉庫がありましてねーえ。私が研究で旅をしている間、持ち歩くことのできないノートや書物などをそこに預けていたのですよーお。この手紙は、その貸倉庫を管理している事務所からですねーえ。なんでも、その貸倉庫、ずいぶん老朽化が進んでいるそうでしてねーえ。近いうちに取り壊すから、中のものを引き払ってほしい、ということで」
「そうですか……。では、取りに行かなくてはいけないのですね。 お手伝いしましょうか」
「ありがとうございます。しかし、ふたりではとても運び出せないと思いますねーえ」
「そんなに大量なのですか?」
「まあ、図書館などとは比べるべくもありませんが、個人の蔵書としては多い方でしょうねーえ。私はその書物たちと、それを収めていた空間のことを『紙の階』と名付けていましたが」
「紙の、きざはし……?」
 首をかしげるスバルに、アメリアは微笑んだ。
「ええ。これらの本や研究ノートを足がかりに、私は空の力を借りる。空に近づくことができるようにと、上を目指す……。そういう意味ですよーお」
「なるほど。良い名前です。アメリア所長は意外とロマンチストなんですね」
 スバルが表情の乏しい顔をわずかに緩める。
「空の研究をしようなんて人間は、皆ロマンチストです」
 アメリアは少し笑って、さらりと立ち上がった。書棚から分厚いファイルを引っ張り出すと、どかり、とテーブルに広げる。
「これが、『紙の階』の蔵書リストです。重複しているものも多いのでそれらは廃棄するとしても……、大型の馬車で三台分は運び出したいところですねーえ」
「運び出して、どこへ持って行くんですか?」
「ここへ持ってくるんですよーお。研究所の地下室がまだ空っぽ同然でしょう。建てる際、空調をきちんと整備してもらった地下室ですからねーえ、あそこを全部書庫にします。新しい、『紙の階』ですねーえ」
 アメリアは、研究所の地下に書物が揃うことを思って、久々に心を浮き立たせた。スバルに新しい書棚を注文しておくよう指示をしながら、アメリアはハンターオフィスに依頼をしなければ、と考えていた。キランも留守にしていることだし、人員協力を願わなければとても引き上げられない、というのもあるが。
(書物や研究ノートを、運び出す……、ただそれだけで済めばよいのですがねーえ。何か嫌なことが起こりそうな予感も、するのですよねーえ)
「……よい風でも、吹いてくれたらいいですがねーえ」
 アメリアは研究所の玄関に立って、晴れ渡った空を見上げた。

解説

■成功条件
貸倉庫から書物を運び出し、馬車で王都の研究所まで輸送する。また、その護衛。

■紙の階
アメリアが個人で所有する書物・研究ノート等の紙資料の総称。
五千冊近くあるとみられているが、今回運び出すのはそのうちの三千五百冊ほど。

■梱包および輸送方法
書籍用のコンテナ80個(1つに約50冊入る)と馬車三台(一台につきコンテナ三十個ほど)はアメリアが準備。
ただし馬車の御者がいないため、ハンターの内三名は御者になっていただく。
貸倉庫内では運び出す本の指示をアメリアが行う。

■輸送路
貸倉庫から大通までの三キロほどが見通しの悪い小道になっている。
地面は平坦だが、ところどころ砂利が多い部分がある。大型の獣の目撃等はなし。
小道の両脇は高さ一メートルほどの低い木が多い。赤い花を咲かす季節で、その花の蜜を目当てに虫が集まることも。
また、天気の良い日は近隣住民の散歩道にもなっている模様。
この小道を抜けた先は王都へ続く一本道。交通量も多く、周囲には商店や宿泊所も立ち並ぶ。

■アメリアの懸念
過去、不審な人物にさらわれたことがあり、どうやら何者かが空の魔法の研究を狙っているものと考えられる。
その者の正体および単独犯か組織かも不明。
(必読というわけではありませんが、気になる方は過去の依頼をお読みください。アメリアがさらわれるのは『戦艦白雲』です)

※質問には、回答可能な範囲でアメリアが対応します。

マスターより

皆さまご機嫌いかがでしょうか。紺堂です。
「空の研究」、新章に入りましてございます。これまでのお話にかかわってくださった方も、そうでなく今から参加、という方もどちらも大歓迎でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて。
本の虫たる紺堂カヤ、書きながら涎が出そうになったOPです。五千冊の蔵書!羨ましすぎか!
メインの作業は地味な本の梱包ですが、それだけでは済みそうにありません。
解説にわかりやすく注意ポイントを書きこんだつもりですので、ぜひ参考にして頑張ってくださいませ。

関連NPC

  • 空の研究者
    アメリア・マティーナ(kz0179
    人間(クリムゾンウェスト)|25才|女性|魔術師(マギステル)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/05/19 00:35

参加者一覧

  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 黎明の星明かり
    マチルダ・スカルラッティ(ka4172
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 【魔装】猫香の侍女
    ライラ = リューンベリ(ka5507
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥(ka6258
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 一肌脱ぐわんこ
    小宮・千秋(ka6272
    ドワーフ|6才|男性|格闘士
  • 丘精霊の絆
    フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
    エルフ|20才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 書物輸送相談卓
ジルボ(ka1732
人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/05/12 00:48:48
アイコン アメリア・マティーナへの質問
フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
エルフ|20才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/05/11 14:24:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/11 15:09:40