• 冒険

すみれに似た花

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/05/20 12:00
リプレイ完成予定
2017/05/29 12:00

オープニング

●これは夢

 亜麻色の髪をふわふわさせた少女が、歩いていた。
 新芽が青々と輝く、木々に囲まれた道だ。森だろうか、山だろうか。
 少女は笑顔で歌っていた。
「いつか~、どこかで~、可愛いクマさんに~、会えたなら~」
 歌に合わせて、スキップもしていた。
「ちゃんと挨拶するわ~、あたしはボーゲン村から来たの~」
 少女は草むらをきょろきょろと見まわし、ジグザグに進んでいった。進めば進むほど、道はどんどん狭くなっていく。
「ないなあ。ないなあ。紫色のお花、ないなあ……」
 きょろきょろと探しているのはどうやら、その「紫のお花」であるらしかった。しかし、草むらにも木の上にも、それらしき花は咲いていない。少女の笑顔はどんどんしぼんでいき、スキップも止まってしまったが、それでも、諦めようとはしなかった。
 そして。
「あれっ」
 気がつくと、いつの間にか、少女を夕闇が包み始めていた。すっかり視界が悪くなっていて、もうどちらから来たのか、どちらへ進めばいいのかわからない。
「どうしよう……」
 すぐ近くにあった、大きな木の幹に身を寄せて、少女はかすかな光を求めて空を見上げた。そこには、細い細い月が弱々しく光っていた。



●これは目覚めた後

 夜半に、青年は目覚めた。目覚めてすぐ、シーツをかき分け部屋の明かりをつけ、ついさっきまで見ていた夢のことをノートに書きつけた。
 文とイラストを組み合わせて、できるだけ詳細に。これを見ながら何度も何度も夢の様子を思い出して、覚えておかなくてはならないのだ。
「ひとまず、こんなところか……」
 一息に書きあげてしまってから、青年はふう、と息を吐いた。驚くほど整った顔をした青年だった。黒い髪が額や頬に落とす影すらも美しく見える。
 青年はふと、窓の外に目をやった。真っ暗な夜。申し訳程度に引っかかっている月は細かった。夢で見たものとほぼ同じだ、と思って、青年は呟いた。
「今回は、まさに今起きていることを夢に見たということか……、いや」
 呟いてしまってから、青年はかぶりをふって自分の言葉を否定した。これだけでまさに今の夢だとは決められない。もしかしたらあの月は一カ月先の細い月かもしれないし、三年先の月かもしれない。もちろん過去のこともありうる。それも、五年前か十年前かわからない。短絡的な判断は禁物だ。
 しかし、過去であろうと未来であろうと、ひとつだけ確実なことがある。
 青年が見た夢は、必ず、現実の光景であるのだ。
 もう起こってしまったことなのか、これから起こることなのかはわからない。だが、確実に、現実の出来事なのである。
 世にも美しいこの青年は、そうした「現実を夢に見る」力を持っている。
「ボーゲン村、か……。地名がわかっているだけ、今夜はマシかな」
 青年は、ノートに書きつけた村の名前を何度も何度も読み返した。明日にでもここへ行こう、とそう決めて部屋の明かりを消すと、再び、ベッドの上で目を閉じた。



●ボーゲン村

 村はいつになく大騒ぎだった。
「いったい、どこへ行ってしまったんだ……」
「もう二日目よ……」
 真っ青な顔で震える、ひと組の夫婦がいた。この夫婦の一人娘が、昨日から行方不明なのである。
「村長がさっき帰ってきたぞ、隣村を見てきたって」
「どうでした!?」
 近所のパン屋が知らせてくれた言葉に、夫婦は身を乗り出すが、パン屋は申し訳なさそうに首を横に振った。見つからなかったらしい。
「ああ、どうしましょう」
 母親が、泣き崩れた。
「あきらめるな、村長さんがハンターを呼んでくれたから。きっとすぐに捜し出してくれるさ」
 夕方になっても帰ってこない娘を心配した両親が、村の住民に捜索の協力を要請したのが、昨日のこと。幼い少女の足では遠くまで行けまいと、村の中を夜中ひたすら探したが、見つからず、今日になって村周辺の原っぱや隣村にまで範囲を広げたのだ。
「あの」
 心配しきりの夫婦に、突然声をかける者があった。見知らぬ男、それも、そうはお目にかかれないとすら思えるほどの美しい青年だった。
「娘さんがいなくなってしまったらしいですね。もしかして、その娘さん、五歳くらいの、亜麻色の髪をした子では?」
「そうです、ジェーンです!! まさか、どこにいるかご存じなんですか!?」
 母親が、青年につかみかからんばかりの勢いで声を荒げた。
「ええと、ご存じ、というか夢に見て。この村の近くに森はありますか? その森にいます。たぶん」
「……は? 夢? 何を言っているんだ?」
 父親が不審そうに顔をしかめた。青年はそんな反応には慣れっこだというように平然と頷く。
「はい。信じてもらえないとは思いますが、俺は現実を夢に見るんです。ああ、じゃあやっぱりあの子なんですね。その森はどっちですか」
「ここから西へ行ったところだが……、何しに行くんだ」
「何しに、ってその子を探しに行くんですよ。いなくなったのは昨日でしょう? きっとまだ生きているでしょうからね」
 生きているか、いないか。そんな、夫婦が口にするのをためらっていた種類の言葉をさらっと吐いて、青年は歩き出した。その迷いのない行動を見て、父親の中から、青年を不審に思った気持ちが不思議と消えた。
「待ってくれ!」
 青年を呼びとめて、父親は言った。
「その森に、ひとりで探しに行くのは危険だ。もうすぐ、ハンターが来てくれるはずなんだ、一緒に行ってくれないか。……その森には、クマが出るんだ……」
「なるほど……、承知しました。そうしましょう。そして、急がなければなりませんね」
「どうして、森なんかに……!」
 母親が、顔を覆って泣き崩れた。夢での少女のセリフを思い出して、青年が言う。
「紫の花、とやらを探していたようですが」
「すみれのことだわ。でも、もう今年はすみれの時期は終わってしまったのよ、ってちゃんと話したばかりなのに。ああ、ジェーン……」
 母親の困惑した声に、青年はあいまいに頷いた。ジェーンとは誰だっただろうか、と思いながら。
(夢以外のことは、すぐ忘れてしまうんだよなあ)

解説

■成功条件
森を捜索し、少女を連れて帰る

■青年の夢
必ず「現実」のことが夢になる。今回青年が見た夢は「少女が姿を消した日の昼から夜にかけて」の夢。
この青年が何者なのか、どうしてそのような力を持っているのかは不明。
なお、この青年は夢の出来事以外を覚えておくことが非常に苦手で、人の名前もすぐ忘れてしまう。

■森
青年が見た夢の光景と、村人の情報を照らし合わせた結果、森は以下のようになっていると思われる。
・細い道があるが、クマを恐れて立ち入らなくなってきたため、かなり草が生い茂っている。
・村人には「むやみに森へ入らないように」と通達が出ており、特に小さい子どもには注意を言い含められていた。
・道は森の奥へ行くほど細くなり、森の中腹を越えたあたりでほぼ消える。
・森の最奥には大きなクスノキがあり、少女(ジェーン)は夜、ここにたどり着いたと考えられる。
・秋にはキノコ狩りを楽しむことができる森だが、小川や泉などの目立った水源はないほか、人間の食用となるような木の実も少ない。

■クマ
村人が確認している生息数は二頭。体長は二メートル近くある。小グマが生まれている可能性もあるが、不明。
ねぐらの位置などもわかっていないが、比較的、森の入口付近で目撃されており、それゆえに森へ立ち入る人が減ったという。
今までに村人が襲われたことはない。

■少女
名前はジェーン。
元気いっぱいで、外で遊ぶことが好き。両親とはとっても仲良しで、いうこともよくきく。

マスターより

皆さまごきげんいがかでしょうか、紺堂です。
新シリーズ「夢追い人」がここからスタートと相成ります!
どうぞよろしくお願いいたします。
夢を見る青年の名前は、今後、物語の鍵になってきますので今は内緒です(考えてないから書かなかったわけじゃないよ!)
依頼自体はシンプルです。クマは必ずしも倒す必要はありませんが、倒しちゃっても問題ありませんのでお任せします。
また、これも必要、というわけではありませんが「両親のいうことをよくきく少女」がどうして森に入ってしまったのか、ということも少し考えていただくと、面白い方向に話が運ぶかもしれません。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/05/26 03:06

参加者一覧

  • タケノコの心得
    浪風悠吏(ka1035
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • ケンプファー
    ユルゲンス・クリューガー(ka2335
    人間(紅)|40才|男性|闘狩人
  • 冒険者
    セシル・ディフィール(ka4073
    人間(紅)|21才|女性|魔術師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • 孤独なる蹴撃手
    骸香(ka6223
    鬼|21才|女性|疾影士
  • 一肌脱ぐわんこ
    小宮・千秋(ka6272
    ドワーフ|6才|男性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ユルゲンス・クリューガー(ka2335
人間(クリムゾンウェスト)|40才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/05/20 02:13:30
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/17 03:10:35