• 調査

コボルドたちがどこかに消えた

マスター:KINUTA

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
6日
プレイング締切
2017/06/23 22:00
リプレイ完成予定
2017/07/02 22:00

オープニング




●辺境、タホ郷。


 郷は今、春祭りの真っ最中。


 祭りの役員を務めているカチャ・タホはほかの役員とともに、ぶっ続けで行われている宴の世話でてんてこ舞い。なにしろ周辺部族も参加しての盛大な祭り。山盛りに準備されていた飲み物や食べ物も、溶けるように消費されて行く。
 このままではまずい。というわけで母ケチャは、娘にお使いを言いつけた。

「カチャ、ちょっとジェオルジまで買い出しに行ってきてくれない? 肉が足りなくなりそうなのよ。ちびちび狩ってたんじゃ間に合いそうもないし」

 やけくそのように大鍋をかき回していたカチャは、ええ……と呻き声を上げる。

「……そりゃ買い出しはいいけど……なんでジェオルジ……もっと近くで買ってきてもいいでしょう?」

「肉はあそこで買う方が安いのよ。品もいいし。あなたは転移門が使えるからすぐ行って帰ってこられるでしょう? 1頭引っ張ってきて。大体その位は必要だと思うから」

 革の財布を渡されたカチャは、母に疑わしげな目を向けた。

「……お母さんも転移門、使えるんじゃなかったでしたっけ……?」

「ええ。でも役員はあなたよね。こっちは私がやるから行ってきなさい。ほら、早く」


●自由都市同盟領。人里離れた山奥。


「わふっ!?」

 仲間を訪ねてきたコボルドコボちゃんは驚いた。この前来たときと周囲の様子が、あまりにも変わっていたから。あちこちに穴がボコボコあいている。仲間が掘ったものとは明らかに趣が異なる穴が。

「うわしー、わしー……」

 一体どうしたのだろうと足を速め、仲間の巣へと向かう。そこでコボちゃんは、あんぐり口を開けた。
 目の前にあるのは、桁違いな大穴。巣があった痕跡どころか風景丸ごと、ごっそり消えてしまっている。切り立った縁に立ってみれば、底が遠く小さく見える。
 一体皆はどこへ。
 不安に駆られて周囲をくまなく捜し回る。大声で吠えながら。でも、誰も出てこない。

「わし……」

 探し疲れたコボちゃんは、しょんぼり地面に座り込む。
 仲間たちは引っ越して行ったのではない。それならば、ちゃんと痕跡が残っているはずだ。それにあの穴は一体。あんな穴コボルドはあけない。もしやドワーフに住処を追われたのだろうか。でもドワーフだってあんな穴あけないような気がする……。
 悩んでいるところ、頭上で、ぎゃっと声がした。見上げれば一羽のカラスが上下にぶれながら、よろよろ飛んでいく所だった。何かにぶつかった後ででもあるかのように――青空には障害物など、何もないのに。


●ハンターオフィス・ジェオルジ支局。


 朝一番のジェオルジ支局。職員のジュアンとマリーは、コボちゃんから一枚の画用紙を渡された。
 そこには以下の文字が記してある。



『なかま いない さがす おおきい あな やま いく こぼ』



「何、これ」

「どうやら依頼を出したいみたいだね」

 ジュアンの言葉を肯定するようにコボちゃんは、「わし!」と吠えた。

「え? コボルドがオフィスに依頼を出して……いいんだったっけ?」

「さあ。これまで例がないような気もするけど……でもはっきり禁止されてるわけでもないしね。掲示するくらいはいいんじゃないかな」

「……まあそりゃそうだけど……あ、ちょっと待って。コボ、この依頼報酬はついてないの?」

 マリーの質問にコボちゃんは、首を傾げた。

「わうしゅー?」

 言葉の意味がよく分からなかったようだと察し、言い直すマリー。

「つまり、ごほうびはないのかってことよ。この頼み事を引き受けてくれる相手に対してのごほうび。分かる?」

 コボちゃんは踵を返し、とたたとオフィスを出て行った。そしてすぐ戻ってきた。両手一杯の骨を抱えて。

「わし」

 ジュアンは額を押さえ、マリーは半眼になる。

「いや……それだと成立はかなり難しいんじゃないかな。コボちゃん」

「あのね、必要なのは骨じゃなくてお金よ、お金。分かる? おかね!」


●ジェオルジ。


 のどかなのどかな田舎道。丸まる肥えた一匹の牛を引き、カチャが行く。

「……よく考えたら転移門て、エクシードじゃない人間がくぐったら体力根こそぎにされるんだったような……この牛大丈夫ですかね……」

 呟きながら見上げてくる相手に牛は、長いげっぷで応じる。
 もしこの牛が倒れたら、私が郷まで背負って運ばなきゃならなくなるのでは?――という嫌な予感を押さえることが出来ないカチャ。
 その時道の向こうから、空き缶三味線を背負ったコボちゃんが走ってきた。

「わし! わしわし!」

「あ、コボちゃん。なんです?」

 コボちゃんは質問に答えず三味線をかき鳴らし一曲披露。それからおもむろに手のひらを差し出す。意味するところは明らかだ。コボちゃん本人もこう言っている。

「おわね! かね! わね!」

 何故大道芸を押し売りされなきゃならないのか。得心行かない思いを抱きながらも先を急ぐ身、カチャは100Gのおひねりを渡す。
 コボちゃんは貰ったお金をポシェットにしまい、さっさと来た道を引き返して行った。
 一体あのお金どうするつもりなんだろう。
 興味が湧かなくはないものの道草しているひまは無い。カチャはそのまま牛を引き、タホ郷へと帰って行く。そして予想通り、へたった牛を背負い郷に帰還する羽目となった。


●自由都市同盟領。人里離れた山奥。


 大地の精霊もぐやんは土の中を進む。地面を掘って進むのではない。巨体を土と一体化させ、進んでいる。木の根や虫や小さな動物などを傷つけないように。


 よいとこしょお、どっこいしょお、そーれそれ


 のどかに歌っていたところ急に体が土からすっぽぬけ、広い空間に出た。
 随分上に四角い空――周囲も四角い壁。


 もう。誰だべ。こんなところにこんな大きな穴をあけてはいかんべえ。


 言いながら彼は大地の傷を、いそいそ修復にかかる。そこで待ったの声が聞こえてきた。頭の上から。

「わしわしわし!」

「ちょっと待って、その穴埋めるのちょっと待ってー!」


 おんや?


 見上げてみれば穴の縁から、コボルドとハンターたちが覗いている。


解説

補足説明。

これは行方不明になったコボルドたちを探すシナリオです。
コボルドたちを直に見つけられなくてもかまいません。手がかりだけでも得られれば、それで成功と見なします。

依頼相手はコボルドコボちゃん。近隣住民並びに通りがかりの人々から募金を募ったかいあって、参加者全員に、報酬が払えるようになりました。希望者には骨も配ります。コボルド的に大盤振る舞いです。

コボルドの仲間がいなくなった場所までは、コボちゃんが誘導します。コボちゃんは人間の言葉について、5~6才程度の理解力を持っています。簡単な単語なら(コボルド訛りが入りますが)話せますし、書けます。

『桁違いな大穴』の大きさは縦100メートル横100メートル深さ150メートル。ほかの穴もそうですが、掘ったというよりその部分だけが消失しているという感じです。

 OPの最後で大地の精霊もぐやんが穴を見つけ埋めにかかり始めました。
 しかしこれは、PCたちの現場到着と時を同じくして起きている出来事です。『行ってみたら既に埋められた後であった』ということは起きませんので、ご安心ください。

 
 このシナリオは『歪虚お届けです』と直に繋がる話です。
 もぐやんの詳しいプロフィールについては、『【初心】さよならタカアシガニ』でご確認下さいませ。


 カチャは故郷での仕事があるので、今回の依頼には同行出来ません。

マスターより

KINUTAです。

これはもう完全にマゴイさん案件ですね。

関連NPC

  • 荷を運ぶ者
    カチャ・タホ(kz0150
    人間(クリムゾンウェスト)|13才|女性|聖導士(クルセイダー)
  • ジェオルジ支局のお姉さん
    マリー・スラーイン(kz0222
    エルフ|23才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/06/29 01:54

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • 解を導きし者
    エーミ・エーテルクラフト(ka2225
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 知るは楽しみなり
    ソラス(ka6581
    エルフ|20才|男性|魔術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/06/20 12:12:07
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2017/06/23 17:42:21